アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹   作:ザトラツェニェ

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いよいよ小説二巻も終わりに近づきます。ではどうぞ!


第十四話

side 優月

 

「さーて、交流試合の事を(おぼ)えてる人はどれだけいるかなーっ☆」

月見先生の質問にクラスの大半が手を上げました。

無論、()()()()()()()()()()()()ですが。

 

「……九重くん。ど・お・し・て、憶えてないのかな〜?」

 

「今、聞いて思い出しました」

 

「殺すぞ」

 

一瞬だけ素に戻り、ぼそりと呟くと再び笑顔の仮面を被った月見先生。

 

「さてさて、先生の話を憶えてなかったとーっても残念な人がいるみたいだから、もっかい説明するよ♪今月の下旬に二年生との交流試合を行うの。その名も《咬竜戦(こうりゅうせん)》☆オッケー?」

 

「《新刃戦(しんじんせん)》のようなものですか?」

 

「そそっ。ただし今回は《絆双刃(デュオ)》での勝負じゃなくて、学年対抗になるの。一年生対二年生の選抜メンバーって形でね♪」

 

なぜ二年生が選抜メンバーなのかというと、二年生全員だと勝負にならないという事らしいです。

二年生へ進級するには《(レベル2)》へ昇華する事が条件なので、人数で一年生が勝っていても戦力差では絶望的でしょう。

月見先生はルール説明を始めました。細かく分けるとややこしいので纏めるとーーー

 

○一年生は全員、二年生は選抜された四組の《絆双刃(デュオ)》。

 

○《焔牙(ブレイズ)》の使用可。

 

○制限時間は一時間。

 

○場所は格技場。

 

○時間内に中央へ設置された旗を倒せば一年の勝利。

 

「……つまり棒倒しと思っていいのですね」

 

「身も蓋もなさすぎる言い方だな……橘」

 

「いえすっ♪」

 

身も蓋もない言い方に突っ込んだ兄さん。でも実際簡単に言うとそういう事なので仕方ないのです。

しかし、《新刃戦》と比べるとこちらは遊戯(ゲーム)のようなものだと感じます。確かに交流する試合と言う意味では遊びみたいなものだと分かりますがーー

 

「一年生が有利なんじゃないかって顔だねぇ?」

 

「……ま、まあそう思ってます」

 

どうやら透流さんがそのような顔をしていたらしく、月見先生が補足を入れてくれました。

 

「一応、これまでの勝率は二年生が七割ってところなんだよねー、これ」

 

人数だけで見るなら一年生の方が多く負けるとは思いませんが、二年生は既に一年間の厳しい訓練を乗り越えている上に、大抵の場合は《(レベル3)》が数人含まれるらしいです。

 

「先生、質問なんだが」

 

「はいはーい、何かな?影月くん♪」

 

兄さんが突然手を上げ、月見先生へ質問しました。

 

「俺と優月は……どうなるんだ?全員参加なら俺たちも出るだろうが……俺たちの《位階(レベル)》は知っているだろう?」

 

『えっ?』

 

その言葉にクラスメイトがざわめく。それは当たり前の事で、なぜそのような質問をしたのか分かった者はおそらく月見先生以外誰もいないでしょうーーー私たちは以前の《昇華の儀》で《(レベル3)》並の身体能力や《焔牙(ブレイズ)》だと理事長に言われました。そんな私たちが入ったら、勝てるとまでは言えなくても戦局は分からなくなります。

 

「確かに俺たちはここにいるクラスメイトたちより強い。《位階(レベル)》が《位階(レベル)》だからな……まあ、相手からしたら《(レベル3)》が二人いるくらいなら向こうも多少驚くくらいだろう。だが俺たちの《焔牙(ブレイズ)》は文字通り《()()》だし、優月が本気を出せば様々な意味で戦局を左右すると言っても過言では無いんだが?」

 

兄さんが今言った事は実際私も気になった事です。

確かに私たちは《(レベル3)》になったばかりで相手の方が一年間経験が多く、技術や知識などが多く私たちより有利でしょう。ですが私たちは他の人とは違いかなり異質な《焔牙(ブレイズ)》ーーー本当に左右します。さらに私があの技を使えば勝利の確率はかなり上がるでしょう。でも月見先生はーーー

 

「問題無し☆文字通り交流が目的だし……《新刃戦》とは違う動きを見たいって言うのと将来何があるか分からないから訓練の一環としてって言うのが学園側としての目的でもあるからねー。だから問題無しだよ♡あ、でも瞬殺はやめてねー♡」

 

と言われました。問題無しと言われたので兄さんと私は少しホッとしました。やはり私も兄さんも上級生と戦いたいとは思っているようで、参加禁止と言われたらどうしようか……とか思っていたようです。そして私もあの技を使うのは控えようと思いました。釘を刺されましたし。

 

「あ、そうそう。二年生は今日これから選抜メンバーを決定するって話だし、これからみんなで偵察に行ってみよっか♪」

 

「先生……それは偵察とは言わないですよ……」

 

「こっそり行くから偵察だよ☆」

 

「四十人以上いるけどな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、堂々と見学をさせて貰おうとクラス全員で格技場へと移動しました。

中央の闘場では既に二年生がメンバー選出のバトルロイヤルを開始しており、俺たちは観客席に腰を下ろして、観戦を始めました。

視線を少し来賓席に向けると理事長もおり、三國(みくに)先生と二年生の担任が闘場へ視線を向けていました。

闘場には二年生の集団。身体能力は当然ですが、《絆双刃(デュオ)》と抜群のコンビネーションを駆使して闘う姿に感嘆の息を漏らしました。

中でも目を引くのは三人。しかも、動きからして《(レベル3)》なのでしょう。三人の内二人は《絆双刃(デュオ)》のようで、互いの隙をカバーしつつ専守防衛に徹底しています。

何度か相手に狙われるも、その度に見事なコンビネーションで撃退していて、残りの《(レベル3)》の人もかなりの腕で、身体能力の差もあり次々と相対した生徒を倒していきます。

やがてバトルロイヤルは終わり、《(レベル3)》の三人は当然のように勝ち残りました。

 

「どう見る?勝てると思うか?」

 

「総合力ではこちらが厳しいだろうが、旗を倒すというルールなのだから策次第だろうさ」

 

透流さんが隣に座っていた巴さんに振ると巴さんはそう答え、その言葉に続くようにユリエさんやトラさんも感想を口にしました。

 

「見た所月見先生より(わず)かですが速さが劣るように見えます。一対一ならば《位階(レベル)》の差はあっても決して勝てない相手では無いですね」

 

「ふんっ。たとえ身体能力の差があろうと僕なら勝ってみせる」

 

「あ、あの……旗を倒せば勝ちなんだよ?みんなの話を聞いていると《(レベル3)》の人と闘おうとしてるように聞こえるんだけど……」

 

みやびさんが透流さんたちの様子を見て困惑を……それに対して三人は。

 

「ま、どうせなら闘いたいしな」

「ヤー。その通りです」

「ふんっ、闘って勝つ、だ」

 

「やれやれ……気持ちは分かるが《咬竜戦(こうりゅうせん)》はクラス全体が仲間なんだぞ。戦略上で必要とあらば一対一てわ闘うこともあるだろうが、基本的にはクラスの勝利を優先に考えてくれると助かるのだがな」

 

透流さんたちの反応に巴さんが苦笑いしつつ意見を言いました。

 

「……匹夫(ひっぷ)(ゆう)、一人に敵するものなり、か……」

 

「兄さん……」

 

兄さんが小声で呟いた皮肉のような(ことわざ)に私は苦笑いしてしまいました。透流さんたちには聞こえていなかったようですがーーー

 

「くはっ、辛辣だねぇ《異常(アニュージュアル)》」

 

どうやら月見先生にも聞こえていたらしく、小声でくっくっと笑っていました。

 

「まあ、力がある俺たちなら油断しなければ大丈夫だろうが……」

 

「そうですね。月見先生、戻りましょうか?二年生のメンバーも決まったようですし……」

 

「そうだな……さーて、それじゃあ二年生のメンバーも決まったし、みんなは教室へ戻って作戦会議しよっかーっ☆負けたらみんな、ぶっとばしちゃうぞー♡」

 

((冗談に聞こえません/聞こえねぇな))

 

心の中で兄さんと私は同じ事を思っただろうと思いつつ、席から立ち上がった時。

 

「あ……」

 

透流さんの声が聞こえて向くと闘技場の外へと通路へと視線を向けている透流さん。

その方向を見るとーーー

 

「リーリスさん?」

 

「…………」

 

リーリスさんは透流さんを睨んだ後、私と兄さんの方も見て睨んできましたが、声をかけずに闘場へと降り立ちました。

 

「……何をするんでしょうか?」

 

その疑問は私だけではなく、クラスメイトの一年生のみならず、選抜メンバーとして決まった八人の二年生もリーリスさんへと注視する。

 

「……どうせろくでもない事じゃないか?」

 

何が起こるか分からない中、唯一疑問に思ってなさそうな兄さん興味が無さそうにふとそんな事を言った。

 

「ろくでもない事……?」

 

その言葉の意味が分からず、私が考えているとリーリスさんが闘場の中央で立ち止まると、耳を疑うような事を言い出しました。

 

「選抜メンバーが決まったばかりで悪いけど、今から《咬竜戦(こうりゅうせん)》を行なって貰えないかしら?ただしそちらの疲労を考慮して、あたし一人がお相手するわ」

 

『ーーなっ!?』

 

格技場に驚きが駆け巡りました。内容が内容だけに、大半の者は呆気に取られてリーリスに視線を向けるばかり。

そんな空気の中、一番初めに話したのは兄さんでした。

 

「突然出て来たと思ったら……《咬竜戦(こうりゅうせん)》をしろとか、一人で相手するとか……何が目的なんだ?」

 

「……目的ね。それを言う為にまずはこっちから片付けましょうか」

 

「は?今何て……」

 

「二度は言わないわ」

 

聞き返した二年生の選抜メンバーが聞き返しましたが、リーリスさんはーーー

 

「《焔牙(ブレイズ)》ーーー」

 

《力ある言葉》に呼応して《焔》が舞い散りーー《無二なる焔牙(アンリヴァルド・ブレイズ)》が具現化されました。

 

「そ、それって……」

 

存在しないと聞かされていた《(ライフル)》の《焔牙(ブレイズ)》。

その銃口を向けられた男子がーーいえ、ほぼ全ての生徒が目を疑っていました。

直後、銃声が響き、男子は一瞬体を震わせた後に倒れました。

その姿を見たまま、リーリスは手元で《銃》をくるりと回した後ーーー

少しの沈黙、そして怒号。

 

「何しやがる!!」

「ちょっとどういうつもり!?」

「ケンカ売ってんのか!!」

 

殺気立つ二年生、一年生は固唾を呑んで見守っています。

視線を一身に集める中、涼しげな笑みを浮かべてリーリスは来賓席へ顔を向けました。

 

「どうにも丸く収まりそうにないし、《咬竜戦(こうりゅうせん)》の許可を貰えるかしら、理事長?」

 

「自分から手を出したのに、よくそう言えるな?」

 

「……随分と唐突な話ですのね。理由をお聞かせ頂きたいですわ」

 

「終わったらでいいかしら」

 

兄さんの批判を無視(少し反応はしていましたが)しつつ、理事長と話すリーリスさん。

 

「まったく……貴方の気まぐれは本当に困ったものですわね……分かりましたわ。今から《咬竜戦(こうりゅうせん)》を行う事を()()に許可します」

 

「感謝するわ、理事長。さて、それじゃあ許可も出たことだしーーー《咬竜戦(ゲーム)》、スタートよ!!」

 

理事長へウインクした後、選抜メンバーへ向き直り、言い終わると同時に一気に《(すい)》を持った女子の懐へと潜り込みました。

 

「ーーっ!!」

 

まさか《銃》の利点を捨てて、懐へ来るとは普通は思わないでしょう。呆気に取られる女子に《銃》を突きつけたまま、リーリスは忠告をしてーーー

 

「ぼんやりしているとすぐに終わるわよ……こうやって、ね」

 

再び銃声が響き、女子が倒れ伏しました。

 

「……あと六人ね」

 

ここでようやく選抜メンバーが戦闘態勢へと切り替わりました。

そんな彼らに対し、蒼玉の瞳(サファイヤブルー)がすっと細くなり不敵な笑みを浮かべ、手に持った《銃》を回しました。

 

(ん?なぜ回すんでしょう?)

 

そんな疑問を持っていましたが、リーリスさんの一言で考えるのを切り上げました。

 

「さあ……次に狩られたい人は誰かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけ言うと、リーリスさんの圧勝。二年生には《(レベル3)》が三人もいるというのにーーしかも後で聞きましたが、リーリスさんの《位階(レベル)》は《(レベル2)》。

身体能力でも確実に劣るリーリスさんに勝利をもたらしたのはその《銃》の力と技術でした。

私たちはその力を見せつけられました。

正確に頭や胸を撃ち抜く射撃の腕、攻撃を受けた際後ろへ飛び衝撃を打ち消したり、曲撃ちを放ったりする身体能力や技術をーーー

 

 

二年生の選抜メンバー六人は僅か一分程度で全滅してしまいました。

全滅した後、理事長がリーリスさんへ語りかけました。

 

「《咬竜戦(こうりゅうせん)》とは、一年生にとって戦略次第では格上の相手と互角に闘うことが出来るとーーー時には倒す事も可能という事を経験させる為のものですの」

 

「ええ、知っているわ」

 

「ならば何故このように貴方一人で、しかも本日の日程を崩して《咬竜戦(こうりゅうせん)》を行う事を希望したのか、約束通り教えて頂きたいですわ」

 

「パーティーを開きたいのよ」

 

「おい、待てよ」

 

そこへ兄さんが待ったをかけました。

 

「何かしら?」

 

「それが《咬竜戦(こうりゅうせん)》と何の関係がある?そしてそれに俺たちが()()()()()()、何かメリットはあるのか?」

 

巻き込まれての部分を強調しながら兄さんはおよそクラスメイトのほとんどが思っているだろう事を聞きました。

 

「大々的にクラスメイトと親睦を深める為のパーティーを開きたいと思ったのよ。でも、《咬竜戦(こうりゅうせん)》の日程と被っていたからーーー」

 

「さっさと終わらせたと、そしてそれの代わりとなるものをやりたいと?呆れるな……」

 

「……なるほど。つまり貴方はダンスパーティーを催すということですのね」

 

「ええ、そうよ。あたしたちは踊るの。着飾るのは《焔牙(ブレイズ)》で、流れる楽曲は剣戟となるダンスをね」

 

「くはっ、とんだじゃじゃ馬お嬢様だな」

 

小さく口にした言葉とは裏腹に、笑みを浮かべた月見先生。

 

「……へぇ、でも面白くなりそうだな」

 

そういう兄さんの口元にも楽しそうな笑みを浮かべました。

 

「そうね、曲名(タイトル)はーーー」

 

言いながら、リーリスさんの視線が一点ーーー透流さんで止まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「《生存闘争(サバイヴ)》」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーとゆーわけで護衛対象とともに外に出る場合は、とにかく位置取りを注意する事ね♪襲撃はもちろん、狙撃に対しても常に意識を配ってーーー」

 

(狙撃……三日後か……)

 

私は月見先生の授業を受けつつ、頭の片隅でそんな事を思っていました。

生存闘争(サバイヴ)》のルールは以下の内容です。

 

○一年生チーム対リーリスさん一人。

 

○《焔牙(ブレイズ)》の使用可。

 

○制限時間は一時間。

 

○場所はあらもーど北館。

 

○一年生チームの勝利条件は次の二つのいずれか。

A.全滅(全員が気絶)しない事。

B.リーリスさんが胸元につけている薔薇(ばら)の花を散らす事。

 

 

 

変わったのは三つでまずは相手。

相手は二年生の選抜メンバーをあっさり倒したので油断は出来ません。

次に場所。

あらもーどを選んだ理由は二つで、一つ目は遮蔽物がある場所にしなければ、一年生チームが圧倒的に不利となるだろうとの事。確かに遮蔽物が無い格技場ではかなり不利になるのは納得出来ます。

そして二つ目は学校よりもショッピングモールで闘った方が面白そうだから(リーリスさん談)という事らしいです。

 

最後に勝利条件です。リーリスさんは逃げ回ったり、隠れたりする私たちを全滅させる必要があります。Bの条件は普通に闘えば負ける事が無いという自信の表れ故に、ハンデを自分に課したみたいです。

 

勝利条件はこちらの方が有利ですが、一筋縄ではいかない相手なのは変わりません。おまけに射撃武器ーーー接近型の武器が大抵の《焔牙(ブレイズ)》の形なので対策を立てなければ皆さん近づく事も難しいでしょう。

私自身が()()()()を使えば簡単なのですがーーあまり使い慣れていない上にそういう事をするのはやはりする気が起きません。やはり私自身も本当に楽しみたいようです。

 

「もっしもーし!九重くんっ!!」

 

「あ……」

 

「せんせーの話を聞いてたかなー?」

 

「あ……す、すみません、聞いてませんでした……」

 

透流さんが謝るとクラスのそこかしこから笑い声が聞こえました。

 

「きちんと聞いててくれないと困るよー……って言っても、少し早いけど教える事は教えたから授業はもう終わりねって話してただけなんだけど☆」

 

「だったらわざわざ注意しなくても……」

 

「ぼんやりして最後は聞いてなかったでしょ?」

 

「う……」

 

透流さんが言葉に詰まると、月見先生が顔を寄せて声を出さずに口を動かしてました。

 

『めってしちゃうぞ』

 

滅っするの間違いでしょう。

 

「ところでー、九重くんはなーにをぼんやり考えてたのかな?もしかしてリーリスちゃんの事とか?」

 

「……ええ、そうです。といっても変な意味じゃなくて、《銃》を相手にどうやって闘えばいいのかと考えていたんですけどね」

 

「銃弾を避ければいいじゃん☆」

 

「無茶言うなっ!」

 

透流さんが叫んでいましたがーーー

 

「簡単だろう?」

 

兄さんの言葉でさらにクラスメイトまで驚きの声を上げます。

 

「むー……影月くんと優月ちゃんは出来るかもしれないけど……本当は()()()()では無理なんだよー?」

 

月見先生のその発言で透流さんを含めた数人が表情を動かしました。

 

「はーい、せんせー。質問があるんですけどー」

 

少し間延びした女子の声は吉備津(きびつ)という女子のものです。

ぼんやりしている性格故に実技訓練はあまり良く無いですが、学業成績はそこそこいい子です。

みやびさんとは仲が良く、話している姿をよく見ます。

 

「今は無理って事は、そのうち避けられるって事ですかー?」

 

「うん、《位階(レベル)》が《(レベル4)》になると多少は避けられるようになるかな♪」

 

「本当なのか、それ……」

 

「九重くん、敬語♡」

 

「本当ですか、それ……」

 

「もちもち☆なんとか見えるくらいにはなるよー♪」

 

「確かに銃弾ならまだ避けられるでしょうね。でもーー」

 

「待て、優月。あれをここで出すのはダメだぞ?あれが打ち出す杭は銃弾より上だと思うからな。威力的にも速度的にも」

 

「そうそう、私もあの時の映像見たけど、明らかに速いよ♡ただ結構大きかったからまだ良かったと思うけど。それにあれとは普通戦わないし……戦った君たちは運良く生きてるって事だけど☆」

 

『えっ!?』

 

月見先生の言葉でクラスの全員が驚きの声をあげました。

それと同時に突き刺さるような視線を感じました。

 

「話を戻すけど、《(レベル4)》に到達出来るのは毎年多くても三、四人くらいだよ☆あ、でもでもぉ、《(レベル3)》になったらその時点で卒業資格が出るから安心していいよ☆」

 

月見先生が話を逸らしてくれました。おまけに先ほどの話の内容で安堵した人も多かったようです。

ただ、数人だけは何か言いたげに私たちを見ていましたが。

 

「確か位階が上がりづらいんですよね?理由は《(レベル4)》から《焔牙(ブレイズ)》の()()()を引き出せるから上がりづらい……でしたよね?」

 

以前理事長から聞いた事を月見先生にさらに問いかけました。

 

「そうだよ☆ま、その力がどんなものかはその時に自分の目で確かめるよーにって事で、授業はしゅーりょー!」

 

そこへタイミングよくチャイムが鳴り響きました。

 

「それじゃあ午後はいつもどーり体力強化訓練だから、遅刻しないよーに☆」

 

そう言って月見先生は教室へ出ていきましたがーー

 

「ーーあ、そうそう」

 

逆再生のような動きで戻ってきました。

 

「可愛い可愛い教え子の為に、そして九重くんが泣いてお願いするから《銃》の対策を教えてあげるね♪」

 

透流さんは泣いても無いし、お願いもしてないのですが対策は気になるので黙って聞く事に、クラスの全員もその対策を聞こうと月見先生の言葉を待ちます。

そしてかなり長く溜めーー

 

 

 

 

「気合いで避けろっ♡」

 

「まさかの気合い避けをしろと!?」

 

思わず敬語を使わずそう返してしまいました。

 

「あー……銃弾の速度はマッハを超えるから、実際本当に気合い避けだな。何か盾みたいな物があればそれを使うのがいいと思う。後は急所を出来るだけ晒さないようにするくらいか。まあこんな所だ、行くぞ、優月」

 

代わりに兄さんが助言のような事をクラスメイトに言った後に、私と一緒に教室を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……共闘?」

 

本日は晴天なりという事で、今日は外の芝生にシートを敷いていつものメンバーで昼食を摂る事にしたのです。

暖かい陽射(ひざ)しの下、学食のビュッフェで思い思いのおかずを詰めた重箱を囲むというものは普段とは違う趣があります。

 

そこで透流さんに共闘をしないかと話を振った巴さんが説明を始めました。

 

「うむ。既にチームを組んでいる者がいることはキミも知っているだろう?私も同じようにチームを組んで彼女に挑んだ方がいいと思ってね」

 

「確かにチームを組んだ方が戦略も広がりますし、勝率も高まりますね」

 

「キミたちさえ良ければどうだろうか?」

 

透流さんやユリエさん、トラさんたちや私たちを見回す巴さん。

 

「……まあ、俺はそれでも構わないけど、ユリエは?」

 

「トールが望むのでしたら」

 

どうやら二人とも《絆双刃(デュオ)》で闘うつもりだったようで組む事になったみたいです。

 

「それなら組んでみるか。よろしくな、橘」

 

と、言いつつハンバーグをゲットしている透流さん。

 

「うむ、決定だな」

 

「ふふっ、一緒に頑張ろうね、ユリエちゃん」

 

「ヤー」

 

「トラ、お前はどうする?」

 

「ふんっ。本来なら群れて闘うのは気に入らん……だが、現時点ではバカ正直に闘って、勝てる見込みは限り無く低い事は分かっている」

 

(素直に組むって言えばいいのに……)

 

きっと皆さん思った事でしょう。タツさんも口に食べ物をいっぱい詰め込みつつフガフガと頷いた事で、いつものメンバーによる共同戦線が結成されました。

そして透流さんはタコさんウィンナーを摘もうとしたので、私が素早くそして自然にタコさんウィンナーを取っていきました。

 

「キミたちは?」

 

「俺たちか?今回は分かれて動こうと思ってる。つまり《絆双刃(デュオ)》じゃなく個人で動く。まあ、それでも全体のフォローだったり色々するよ。試したい事もあるし……」

 

兄さんの方針は私は知っていたので何も言いませんでしたが、他の人たちはーーー

 

「色々?」

 

そう言いながら、透流さんが取ろうとしたチキンナゲットを今度は兄さんが自然に取っていきました。

 

「ああ……また襲撃もあるかもしれないから、防衛線を張ったり……まあ、屋上はなんとか大丈夫……だろうし」

 

「待て、襲撃だと!?」

 

兄さんの言葉にトラさんが待ったをかけた。

透流さんは驚きながら竜田揚げを頬張っていました。

 

「そうだ。まあ、そのへんの話をする前にーーー」

 

兄さんは透流さんへ顔を向けてーー

 

「お前は肉以外を食べろよ!」

「ーーっ!?」

 

「九重……私が気付いていないとでも思っていたのか!?如月や優月も阻止してくれていたのだぞ!?」

 

やはり巴さんも気付いていたようでした。

私は驚きすぎて、肉を喉に詰まらせている透流さんに注いだお茶をすぐに渡しました。ユリエさんは透流さんの背中をさすっていました。

 

「大丈夫ですか、トール」

 

「あ、ああ。なんとか……」

 

「さて、言いたい事も終わったから本題に入ろうか……」

 

何事も無かったかのように話を始める兄さん。透流さんが若干恨めしい感じで見ています。

 

「《新刃戦》の時、後半に俺たちは襲撃を受けた……襲撃者は一人、対してこっちは俺たち二人だった。でも、圧倒されたんだ。正直あの時は運が良かったよ……比較的軽傷だったからな。本気を出して来られたなら……俺たちは今ここにいないだろうな」

 

「なっ!?」

 

巴さんもが驚きの声を上げる。他の人も目を見開いて驚いているようです。

 

「橘が聞きたがっていた魔人の集団って奴だ……」

 

「その魔人の集団ーーー名を聖槍十三騎士団黒円卓。第二次世界大戦中に作られた首領ーーラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒが率いる組織です」

 

「ちょっと待て!!ラインハルトだと!?」

 

そこでトラさんが再び待ったをかけました。

 

「キミたちが言っているのは、あ、あの人か?ドイツで首切り役人って言われたーーー」

 

「合ってるよ、橘。そう、実際彼は死んでなかったんだ」

 

「バカなっ……」

 

その言葉にトラさんと橘さんが揃って驚きました。一方他の人たちは何が何だか分からないようです。

 

「……ラインハルト?誰だそれ?」

 

「……まずは、ラインハルトの説明からしましょう」

 

そして、私と兄さんはラインハルトさんが第二次世界大戦のドイツのゲシュタポ長官であり暗殺されたと思われていたが生きている事、そしてラインハルトが組織を作り世界的に莫大な懸賞金かけられているほどの敵として見られている事、そしてその集団はとても危険な能力を持っている事を伝えました。

 

「百八十年前の組織で、不死身の集団か……」

 

「姿が昔から変わっていないらしいです……そして、学園にその組織の団員が現れたんですよ。裏の世界に公開されている情報と一致したので間違いは無いようです。現れたのは黒円卓第四位、ヴィルヘルム=エーレンブルグ・カズィクル=ベイーーあの時は手加減されていたとは言え、一歩間違えば殺されていました」

 

『…………』

 

その言葉に話を聞いていた全員が押し黙りました。

 

「そんな人たちがまた来たら……どれほど大変な事になるか分かるだろう?そして現状、なぜ襲ってきたのかの理由もよく分かっていない上にあれと闘えるのは少なくとも《(レベル4)》くらいじゃないと瞬殺されるだろうな」

 

「……その時私は擬似的でしたが《焔牙(ブレイズ)》の《位階(レベル)》が《(レベル4)》相当だったので、何とか退ける事が出来たんです」

 

『ーーーーーー』

 

さらに皆さんが絶句しました。

 

「だからこそなんだ。俺はあらもーど内を広く監視して、優月はクラスメイトたちの護衛……いや、盾となってもらうんだ。もちろん《生存闘争(サバイヴ)》の手は抜かないけどな」

 

「……そ、そうか……」

 

巴さんが納得したようですが、透流さんやトラさんが何か言いたげな顔をしていました。

 

「まあ、とりあえず学園側もその辺り分かってるだろうから……気にするな」

 

そう言って兄さんは笑みを浮かべた。

 

 

そして作戦会議や、私たちは他のチームの作戦などを見て軽く助言や注意するべき所を指摘しながら《生存闘争(サバイヴ)》開始まで過ごしました。

 

 

そして《生存闘争(サバイヴ)》開催30分前に話は続きますーーー

 




次回は《生存闘争(サバイヴ)》です!
誤字脱字・感想等よろしくお願いします!
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