アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹   作:ザトラツェニェ

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後日談と茶番回です。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。


第十八話

side 優月

 

「透流の病室ってどこだ?」

 

「こっちだ。如月」

 

私たちは巴さんの案内で学園内の病棟を歩いています。

なぜこんな所を歩いているかといるかと言うと、透流さんのお見舞いに来ているからです。

あの《生存闘争(サバイヴ)》からはや三日、私の打撲痕も兄さんの怪我も良くなってきた頃にユリエさんに誘われて来ました。

 

「ここです。トール、起きてますか?」

 

そう言いながら、ユリエさんは病室の扉をノックするとーー

 

「ああ、起きてるぜ。何か持って来てくれたのか?」

 

元気そうな透流さんがベッドの上で出迎えてくれました。

 

「どうぞ、アップルティーです」

 

「……うん、ありがとうな」

 

事前に何か暇潰しが出来る何かを持って来てほしいと透流さんが言っていたーーとユリエさんが言っていたので私たちは皆、何かを持って来ています。

しかしユリエさんのアップルティーは暇潰しが出来るものではなく、透流さんは微妙な顔をしていました。

そして私たちもユリエさんに続く形で病室へ入りました。

 

「と、透流くん、元気……?」

「九重、調子はどうだ?」

「ふん、いつまで寝ているんだ」

 

「俺だってとっととこんなとこ出たいっての……」

 

「とは言ってもしっかり休めよ、さあ!それじゃあおみやげを渡すとしますか!まずはみやび!」

 

いきなりテンションを上げて、皆のおみやげを一つ一つ見ていこうとする兄さん。

正直、いきなりテンション高くしていたので私自身びっくりしてますが……。

 

まず、編み物セット(みやびさん)ーー透流さんの右手が使えないので断念してました。

 

「そ、そっか。ごめんね、透流くん……」

 

「次!タツ!」

 

ダンベル(タツさん)ーー怪我人なのでこれも断念しました。

 

「悪いな、タツ。怪我がもう少し良くなったら使わせてもらうから」

 

「う〜ん……橘!」

 

教科書(巴さん)ーー凄く嫌そうな顔をしている透流さんでした。

 

「ふふっ、暇潰しになるし授業にも遅れる事もなく、予習も出来て一石三鳥ーーー」

 

「みやび、タツ、ありがとうな。トラ、なんでお前は何も持ってきてくれないんだよ……」

 

「ふんっ、顔を見せてやっただけありがたいと思え」

 

「待て、九重!なぜ私だけを無視するのだ!?」

 

「……ユリエ、悪いんだけどお湯を沸かして来て(もら)えるか?」

 

「ヤー」

 

ユリエさんが頷いてお湯を沸かしに行きました。

 

「俺らもあるぞ?まずは優月から!」

 

「はい!透流さん、ちょうど良かったですね♪」

 

そう言って私は手に持っていた袋を開け、中身を皆に見せました。

 

「おお……」

「これは、美味しそうだな」

「クッキーだね?優月ちゃんが作ったの?」

 

「はい♪ちょうどいいので、皆で食べましょう!」

 

私が持ってきたのは、手作りのクッキーです。私は何か暇潰し出来るものは持っていなかったので仕方なくお菓子を持ってきたと言うわけです。

でも皆さん喜んでくれたらしくとても嬉しいです。

 

「俺が持ってきたのは、これだ」

 

「これは……?」

 

「ゲームだ!『神座万象』っていうのを持ってきたぞ?後はこっちもあるが……」

 

「……暇潰しは出来るが、何でそんなもの持ってるんだよ!」

 

透流さんはそう突っ込みましたが、顔がとても嬉しそうでした。

 

「とりあえずやってみるか……それを」

 

「ああ!準備するぜ!」

 

透流さんの言葉を聞いて兄さんは、病室のテレビにゲームのコードを差し込み始めました。

そこへーー

 

「皆さん、アップルティーが入りました」

 

ユリエさんが皆さんの分のカップを持って歩いてきました。

と、そこへさらにーー

 

「……騒がしいわね……何をしているの?」

 

黄金の少女ーーリーリスさんが入ってきました。

リーリスさんは呆れながら私たちを見回しました。

 

「今から、ティータイムしながらゲームするんです。リーリスさんもどうですか?」

 

「あら?気が利くわね。なら少しだけど遠慮無くーーー」

 

「アップルティー、もう一つ準備しますね」

 

リーリスさんの返事を聞き、ユリエさんはまたお湯を沸かしに行きました。

そして数分後、ユリエさんがアップルティーを持ってきて皆さんが透流さんのベットの周りへ集まりました。

 

「それじゃあ、皆さん召し上がってください!」

 

『いただきます!』

 

私たちは挨拶をし、アップルティーとクッキーを食べ始めました……。

 

 

side out…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーここはヴェヴェルスブルグ城内。

(はな)やかな装飾が(ほどこ)され、奥には玉座が見えるその場所にはーーー

 

「ふむ、ベイよ。これはどういうつもりかね?」

 

黄金の獣ーーラインハルト・ハイドリヒは自分に向けて杭を打ち出そうとしているヴィルヘルムを見る。

 

「ハイドリヒ卿、こんな事言うのは嫌なんですが、あまりにもなんで言わせてもらいますぜ。最近思うんですが、先陣切って敵に突っ込むのは確かに俺自身が一番望んでいる事ですが……それとは別に最近俺の扱い(ひど)くないっすか?」

 

「そうかね?卿は私の爪牙として良く思っている。そして何より頼りにしている。故に様々な事を頼んでいるのだがーーー」

 

「ハイドリヒ卿!頼みますから、もう少しマシな頼みをしてくださいよぉ!?買い物とかなんで俺が行くんすか!?」

 

「……それは卿が扱いやすーーあ」

 

 

「死森の薔薇騎士!

Der Rosenkavalier Schwarzwald!」

 

 

ヴィルヘルムは何の躊躇(ためら)いも無く、創造位階を発現した。

ヴィルヘルムの創造でラインハルトは力を吸い取られているがそんなものに構わず聖槍を呼び出し、応戦体制へ入る。

 

「待て、ベイよ!卿は私の大事な爪牙だ。故にーーー」

 

「ハイドリヒ卿!待遇改善を望みますぜ!」

 

ヴィルヘルムはラインハルトにそう叫びながら杭を打ち出し、突っ込んでいく。

 

「仕方ない……来い、ベイよ。そう思うのなら、卿の力で私の考えを改めさせてみよ」

 

それに対し、ラインハルトは聖槍で杭を撃ち落としながら言う。

 

「「うおぉぉぉぉぉ!!!!」」

 

そしてヴィルヘルムはラインハルトに向かって拳を、ラインハルトはヴィルヘルムに向けて聖槍を、互いに突き出しそれがぶつかり合った瞬間ーーー眩い光が起きた。

そしてその眩い光が収まるとそこに立っていたのはーーー

 

「ぐふっ……ハイドリヒ卿……待遇を……」

 

「ふむ、やはり卿では私を(こわ)せなかったな」

 

ラインハルトだったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『K・O!!』

 

 

 

side 優月

 

「……何だこれ、圧倒的じゃないか!?それとなんだあの会話!?」

 

「やっぱり、ラインハルト強いな!!」

 

「トール、次は私がやります。コントローラ貸してください」

 

「影月、あたしにも貸してちょうだい!!」

 

私は兄さんが持ってきたゲームで盛り上がっている兄さん、透流さん、ユリエさん、リーリスさんを横目で見ながら、アップルティーを飲んで、クッキーを食べました。

ちなみに今やっているゲームは兄さんが『神座万象』と言っていた(正式名称は『神座最強決定戦』)格闘ゲームです。

 

「優月ちゃん、美味しいね。何か特別な事をしたりしたの?」

 

「普通に作っただけですよ?まあ、それでもしっかりと味見してちょうどいい感じにしましたからね♪美味しいのは当然です!」

 

私がみやびさんとそんな事を話しているとーーー

 

「ああ!?ユリエずるいわよ!?攻撃が当たらないなんて!!」

 

「ナイ、シュライバーは攻撃が当たりませんからね」

 

「バカモノ、マキナとシュライバーでは相性最悪だぞ!」

 

「なんか皆ハマったな……」

 

兄さんが苦笑いしながらそう言いました。

ゲームを始めてから早くも三十分……すでにほとんどがゲームに夢中になってしまいました。

 

 

『K・O!!』

 

 

 

「ああ!?負けた……」

 

「ヤー、やりました、トール」

 

「……ああ、よくやったな。ユリエ」

 

「次は僕がやってやる!誰か相手を頼む!」

 

「じゃあ私がやります」

 

私はトラさんと対戦する事にしました。キャラをお互いに選び、ステージを選びました。

ステージ名はーーー『座』、そしてキャラはーーー

 

『では、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めようか』

 

トラさんはメルクリウス、対して私はーーー

 

『俺はただ一人になりたい。俺は俺で満ちているから、俺以外のものは要らない』

 

波旬を選びました。

 

 

《BGM:波旬・大欲界天狗道》

 

 

「おい!優月!何さらっと最強キャラ選んでんだよ!こいつに勝てるの限られてんの知ってるだろ!!」

 

「知ってますよ!!そしてメルクリウスは勝てますよ!!」

 

「メルクリウス一人だったらほぼ勝ち目無いわ!!しかも勝つというより、共倒れだからな!?」

 

そう言い合いをしているうちにゲームは始まりーーー波旬の腕の一振りでメルクリウスの体力ゲージが一瞬で減り、すぐに終わってしまいました。

 

『何の茶番だこれは』

 

 

『K・O!!』

 

 

「ーーー」

 

「見ろよ……もれなく全員固まってるじゃないか!!」

 

「え〜……分かりましたよ。波旬は使いませんから、次誰がやりますか?」

 

そうして、病室での遊びはもうしばらく続きましたーーー。

 

 

side out…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病棟の騒ぎを聞きながら、闇色の髪をし、漆黒の衣装(ゴシックドレス)を纏う少女ーー九十九朔夜(つくもさくや)は薔薇の咲いた庭園にいた。

騒ぎと言っても楽しそうな声が聞こえていて、それを朔夜も内心楽しく聞いていたーーが。

 

「相席よろしいかな?お嬢さん」

 

そんな朔夜の背後から声を掛ける者がいた。

 

「別に構いませんが、ここは関係者以外立ち入り禁止ですのよ?……まあ、それはそれとしてあなたの名前をお伺いしたいですわ」

 

「おや、これは失礼、私はカール・クラフト。他にもカリオストロ、サン・ジェルマン、パラケルスス、トリスメギストス、ノストラダムス、クリスチャン・ローゼンクロイツ、マグヌス、ヨハン・ファウスト、名は星の数ほどあるが、この世界ではメルクリウスと名乗った方がよろしいかな?」

 

朔夜はそう軽口を言いながら、声の聞こえた方へ視線を向ける。

そこに立っていたのは、軍服を纏った不気味な雰囲気を纏った男ーーーメルクリウスだった。

メルクリウスは名乗ってから、朔夜の向かい合う形で座った。

 

「ではメルクリウスさんとお呼びいたしますわ。お噂はかねがね聞いています。私は九十九朔夜と申しますわ」

 

「これはこれは、あなたを朔夜殿とお呼びしようかな?それともーーー《操焔の魔女(ブレイズ・デアボリカ)》と?」

 

メルクリウスはニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべながら、朔夜の顔色を見ながら言った。

それに朔夜はその二つ名で呼ばれた事に対する二度目の動揺を隠しながら返事を返す。

 

「……出来れば、前者でお願いしますわ。それで、何の御用ですの?」

 

「特に用は無いが、強いて言うならーー世間話を、と」

 

「なら構いませんわ。で、何をお話しますの?」

 

朔夜がそう問うと、メルクリウスは少し考えるような素振りを見せーー

 

「この前開催した催しについて聞きたいと思ってね。まずは、あなたたちの教え子に対する見解を聞かせてもらおう」

 

うざい笑顔でそう言った。

朔夜はその顔を見て彼の本当の本心は何だと思ったが、とりあえず問われた事を答える。

 

「そうですわね……他の生徒の皆さんはまだまだですわ。ただ、ユリエ=シグトゥーナと九重透流は化けると思いますわ。それこそ私が目指すーーー」

 

「《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》に至ると?なるほど……では、あの兄妹はどうかね?」

 

そうさらに問われ、朔夜はこの男の本心に薄々気が付いた。

この男、色々知っているが、純粋に第三者ーー《焔牙(ブレイズ)》に詳しい自分に意見を聞きたいだけなのだと。

ならば自分も嘘偽り無く、自分の思う事を言った。

 

「お二人は本当に《異常》ですわ。《焔牙(ブレイズ)》もそうですし、あの能力もーー私は《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》に至るのが目的ですけど、あれが至るものは全く違うものでしょう。それが私には怖いですわ……あれはまさしく人ではない者、私の理解が及ばないものになりますわ」

 

「おや、あなたが生み出した《超えし者(イクシード)》も人ならざる者ではないのかね?それも十分一般の者には理解が及ばないと思うのだが」

 

「くすくす、あなたの秘術も一般人の理解には至りませんわ」

 

「それもそうだが、まあ、彼らの《焔牙(ブレイズ)》は確かに《異常》だと言えるだろうな。あなたからしたら」

 

「ならば、逆に私から問いますわ。あの二人の《焔牙(ブレイズ)》をあなたはどういうものなのか知っているんですの?」

 

朔夜の問いにメルクリウスはわざとらしく悩んだ振りをして答えた。

 

「知らないと言えば嘘になるが、例えそれを知った所であなたに何か出来るのかね?」

 

「…………いいえ、何も出来ませんわ。ですが……」

 

朔夜は澄み渡るような青空を見上げながら答えた。

 

「……彼らの事が気になり、彼らとずっといたい。と思う事がたまにありますわ」

 

「ほう……なぜかね?」

 

メルクリウスは驚いたように少し目を見開き、理由を聞く。

 

「能力について怖いと言いましたが……その力をしっかりと使いこなそうとしていて、さらに他人を強く思いやる気持ちがあるのを二人から強く感じるのですわ。救ってもらった事もありましたから、こんな事思うのは似合わないでしょうが、惹かれたのでしょう。何とか力になりたいと思っていますわ」

 

「人柄に惹かれた……という事かね?それともーーー」

 

メルクリウスの言葉が途切れ、気になった朔夜はメルクリウスの方へと視線を向けると、殴りたくなるような笑顔でーー

 

「恋や友情、かな?」

 

「!!??」

 

瞬間、朔夜の頬が真っ赤に染まる。一方のメルクリウスはニヤニヤして朔夜の反応を見ている。

 

「な、何を言うんですの!?私が恋や友情なんてーーー」

 

「おや?図星かな?先ほどより冷静さが無くなっているように見えるが?」

 

「ーーっ!!」

 

朔夜はこの時、こいつの顔面を本気で殴ってやろうと思ったというーーー

 

「さて、それでは私はそろそろ行くとするかね」

 

「ーーーはぁ……帰るのですね。私の所へ来たのは世間話とからかいに来ただけですの?」

 

「然り、こう見えてもやる事は他にもあってね。まあ、あなたの評価も聞けた事だからここに来た意味あったがね。では」

 

「お待ちになって」

 

席を立ち、立ち去ろうとするメルクリウスへ朔夜は先ほどの真っ赤な顔からいつも通りの冷静な顔に戻って、メルクリウスを引き止める。

 

「最後に一つだけ聞かせていただきますわ」

 

その言葉にメルクリウスは立ち止まり朔夜の方へと向く。

 

「あなたは二人の事を知っているのですね?」

 

「然り」

 

「ならーーーあの二人の行く末も知っているんですの?」

 

その言葉に今度は真面目に考える素振りを見せるメルクリウス。そして黙って答えを待つ朔夜。

病室から聞こえてくる賑やかな声を背景に聞きながら数分は経った頃、メルクリウスが口を開いた。

 

「大方どのような結果になるのか、私自身思い描いてはいる。そして今回は既知にーーー予想通りに事が進まなければ話にならない。本来ならば一石投じて諦観に徹するのだが、今回はそうもいかない。ーー先ほどの質問、是と答えよう」

 

「やはりあなたが全てを仕込んで……一体何の為ですの?なぜこんな事を、彼らは何の為に……?」

 

「やはりあなたは聡明のようだ。ふむ……ならばここであなたに私の本当の目的を言ってみるのも一興か。それであなたがどのような行動をするのか見てみるのもいいだろうなーーー私が動くのは女神の為でしかないが……今回はーーー」

 

その時、少し強い風が辺りに吹き渡り、メルクリウスが続けた言葉は風によってかき消された。

しかし、メルクリウスに最も近かった朔夜だけはしっかりとその言葉を聞き取った。

唯一それを聞いた朔夜はメルクリウスの言った言葉の意味を脳内で反復させ、顔を青ざめさせながら問いただす。

 

「そ、それは本当ですの……?だとしても意味が分かりませんわ……!」

 

「ふむ……ならばもう少し砕いて説明しようか。なぜそうなるのか、そしてそれに対して今私は何を考え、何をしているのか、そして彼らの事もーーー」

 

そう言って、メルクリウスは椅子に座り直し朔夜に向かい合った。

 

 




格ゲーのイメージはキャラ、ステージ選びの時はスマブラみたいな感じで、戦う時はMUGENみたいな感じです。あるいはdies格ゲー風のアレをイメージしてくれればいいです。
そしてこの作品の水銀はマイルド……水銀じゃないって言う人いるかもしれませんね……。
次回は説明回の予定。
誤字脱字・感想等よろしくお願いします。
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