アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹   作:ザトラツェニェ

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不定期と言いながら、順調に投稿できてる件(苦笑)



第二話

side 影月

 

昊陵学園(こうりょうがくえん)―――

 

東京湾北部、懸垂型モノレールでのみ立ち入ることの出来る埋め立て地に存在する。

周囲を巨大な石壁に(おお)われ、そのサイズに見合った門が唯一の入り口となっていて、敷地の中央には学外からも望むことの出来る巨大な時計塔がそびえ立っている。

校舎や学生寮など、内部の建造物は馴染(なじ)みのない西欧風で、学校と言われると少々違和感を覚えてしまう。無論内装も同様であり、まるで洋館を思わせる内装の廊下を俺は優月(ゆづき)とともに教室へと向かっていたのだが―――

 

「……あの兄妹?」

「そうみたい。聞いた所によると、女の子の方は《焔牙(ブレイズ)》から閃光を出して多くの新入生が気絶したって……」

「剣から閃光?そんなこと出来るわけ……」

「でも、そう聞いたよ……そして男の子の方は、《焔牙(ブレイズ)》を向けただけで相手が気絶したそうよ……」

「なんだよそれ……異常じゃないか……」

 

周りからは、さっきの決闘での俺たちの事をひそひそと話している生徒が多かった。

 

「……異常……か」

 

「仕方ありませんよ。理事長から《異常(アニュージュアル)》と言われたんですから……まあ、そんな事は気にせず早く行きましょう」

 

実はさっき聞いた話だがなんと優月も、あの理事長九十九朔夜(つくもさくや)に《異常(アニュージュアル)》と言われたらしいのだ。

確かに俺たちの《焔牙(ブレイズ)》は他の人たちのものとはどこか違った雰囲気を持っていた。《焔牙(ブレイズ)》とは自らの《魂》を具現化したものであり、それが他の人たちより《異常》だと事は、つまり俺たちの《魂》そのものが《異常》なのだろう。

しかしなぜ《魂》が異常なのか?と聞かれても、俺たちも分からないので答える事が出来ない。

生まれながらにして《異常》だったのか、それとも何か別な理由があるのか……。

 

 

 

「あ、ここですね。入りましょう」

 

「……ああ」

 

そんな事を考えている間に、俺たちは教室へと着いた。

教室内へ入ると、室内に並んだ机は小中学校で使っていたような個人用ではなく、二人で使用する横幅が広い形のものが多く置かれていた。

俺たちは入り口付近の適当な空席に並んで座り、HR(ホームルーム)が始まるまで適当に喋って待つことにする。

室内にいる新入生はまだ全員(そろ)っていない(入試の際に一部の生徒が直接的な攻撃で怪我をしたらしいので治療中)ので、開始まではまだ時間があるのだ。

 

「それにしても、入学試験が隣の人との決闘とは……随分と思い切った事をやりますね」

 

「そうか?俺は戦闘技術を教える学校だって言うから、身体テストとか《焔牙(ブレイズ)》を得たら教師と模擬戦するんじゃないかと思ってたぞ?」

 

「う〜ん……まあ、どっちにしても簡単に入学出来るとは思っていませんでしたけどね……」

 

「俺からしたらまあ、楽だったけどな……」

 

そんな事を話していると前の二列の席の男子二人がこちらに振り向いて話しかけてきた。

 

「あの……」

 

「ん?……ああ、君はいつぞやのパートナーを変えてほしいって理事長に言っていた……」

 

俺はその生徒の髪型などから、入学試験でパートナーの変更を申し出た生徒だと予想して言う。するとその生徒は苦笑いをした。どうやら当たったようだ。

 

「ああ、あの時は少し事情があったんだ。俺は九重透流(ここのえとおる)。気軽に透流って呼んでくれ。そして、こっちのメガネをかけたのは―――」

 

虎崎葵(とらさきあおい)だ。僕の事はトラとでも呼んでくれ」

 

「透流にトラだな?俺は如月影月(きさらぎえいげつ)、普通に影月って呼んでくれ。そしてこっちは―――」

 

「初めまして。兄さんの妹の如月優月(きさらぎゆづき)です。優月って呼んでくださいね?」

 

「影月に優月だな?分かった、これからよろしくな」

 

「はい!こちらこそよろしくお願いしますね、《異能(イレギュラー)》の九重さんとトラさん!」

 

透流は優月に《異能(イレギュラー)》と言われると、恥ずかしいのか頬をかいた。

 

異能(イレギュラー)》―――それは俺たちがたった今話した彼、九重透流の異名だ。なぜそう呼ばれるのか―――それは本来武器の形になるはずの《焔牙(ブレイズ)》が、彼だけ防具である《(シールド)》を具現化したからだ。

それを聞いて俺たちと通じる所はあるのだろうかと思ったが、俺たちは《異常》と言われても見た目は普通の武器の形になったので比べれるものではないかと思い、考えるのをやめる。

……まあ、閃光が放てたり、向けた威圧だけで相手を倒すとか出来る辺り、そこまで普通の武器でも無い気がするが。

 

自己紹介を済ませて俺はそんな事を考えていたが、1人の人物が教室へと姿を見せたことにより、一瞬ざわめきが起こり、そして誰もが言葉を失った。

 

「なんだ?」

 

「……あの子は」

 

教室の入り口には入学式の時に見た銀色の少女が静かに(たたず)んでいた。

 

「知り合いか?」

 

「いや、そういうわけじゃないが……あの見た目だし、入試ではかなり目立つ戦闘をしていたからな……覚えていただけだ」

 

俺は、入学試験を一瞬で終わらせてしまったので他の戦いを見ていたが、彼女は非常に闘い慣れしているようだったのを覚えている。もしかしたら何か武術でも習得しているのかもしれない。

 

(強そうだな……)

 

内心、そう思いながら闘ってみたいとも思いつつ、銀色の少女へと再び視線を向ける。

講堂の時とまるで同じように周囲への視線を全く意に介したような様子も無く、彼女はゆっくりと教室内を見渡し―――その深紅の瞳(ルビーアイ)がある一点で止まった。

 

「んっ?」

 

間違い無くこっちに。

いや、若干前の方に視線が向いているから透流かトラの方か?

 

「トール」

 

「えっ?」

 

すると銀色の少女の口から透流の名前が呟かれた。どうやら視線を向けていたのは透流の方だったらしい。

そして銀色の少女は皆が注視するの中で、コツコツと靴音を響かせながら歩き出した。

腰近くまである銀髪を揺らし、表情を一切変えず、チリン、という鈴の音と共に歩くその様は非常に絵になる。この風景を書いたら間違い無く何かしらの賞がもらえそうな程絵になる。

俺は机に肘をつきながら、その銀色の少女の一挙手一投足を見ていた。

まさに講堂の再現だが―――最後だけが違った。

 

「…………」

 

銀色の少女は透流のすぐ傍まで来ると、僅かな時間だが透流を見つめ―――ぺこりと頭を下げる。

それを見た透流も少し困惑しながらも頭を下げた。

そして頭を上げた銀色の少女は()()()()()()へと座った。

空いている席はまだまだ多いのに、わざわざ透流の隣へ、だ。

しかも―――

 

ちらっ……ちらっ……

 

横目で何度も透流の事を見始める。

本人はこっそり見ているつもりなのだろうが、どんなに鈍感な奴だって気が付く程バレバレだ。

「…………。なあ、知り合いなのか?」

 

「「それは俺/僕のセリフだっ!!」」

 

こちらを見て真顔で聞いてくる透流に俺とトラが突っ込む。

 

「わ、悪い……この状況に少し混乱しててな……」

 

「まあ、分からなくはないですけど……」

 

「どう見ても透流を見ているな……」

 

「……貴様から話しかけてみたらどうだ?」

 

「そうだな…………あ、あのさ」

 

「っ!!」

 

チリンッ

 

透流が意を決して話し掛けた瞬間、銀色の少女はものすごい速さでそっぽを向く。

 

「…………」

 

「…………」

 

そしてそのまま沈黙(ちんもく)。呼び掛けられても聞こえないフリを通すつもりのようだ。

それを見た透流は前を向く。すると銀色の少女は再び透流の事をチラチラと見始める。

 

「……なあ」

 

チリンッ

 

「――――――」

 

二回目の呼び掛けも失敗。透流はなんとも言えない顔をしてから再び前を向く。そして銀色の少女もまた透流を見始め―――

 

「……ふっ!」

 

チリンッ

 

三回目もまた失敗する。

 

「ほう……やるな」

 

「いや、感心するなよ……」

 

トラの発言に透流は疲れたようにツッコむ。

そして透流は一つ溜息を吐くと、俺たちとたわいもない話をし始めた。どうやら俺たちと話しながら、話し掛けるタイミングを見計らうつもりらしい。あんな反応を見せる彼女を相手にして話しかけるタイミングなんて無いと思うが。

 

 

 

それから数分後、俺たちと話している間も銀色の少女はずっと透流に視線が向けていた。

 

「お前、本当に知らないのか……?」

 

「知らないって……」

 

透流は小さく溜息を吐き、トラも呆れたように首を振り、俺と優月は苦笑いをする。

そんなこんなで時間が経ち、少しずつ怪我の治療を終えた生徒が教室へと入ってくる。

周りを見ると、ほとんど全員揃ったんじゃないかと思ったその時―――

 

「ハロハロー♪ あーんど試験お疲れさまー☆ あーんど入学おっめでとー!」

 

突然、ガラガラッと大きな音を立てて()()開いたかと思うと、そこから女の人が教室へと飛び込んできた。

しーんと教室内が静まりかえる中、女の人は教卓に立ってポーズを取る。

 

「はっじめましてぇ、月見璃兎(つきみりと)でーす♡ みんなの担任だから一年間よっろしくー!親しみを込めて、うさセンセって呼んでんねーっ☆」

 

俺を含めたクラスの全員、反応無しで固まる。というかどう対応しろと……?ってか担任が教卓の上に乗るなよ。

 

「……ありゃりゃん、どうしたの?」

 

そんなツッコミをしようか迷っていると、きょとんとした表情を浮かべて自称担任と口にする女の人が教室を見回す。

銀髪の少女とはまったく別の意味でクラス中の視線を一身に集めた彼女は、教師とは思えないくらい若い。そう、俺たちと同年代と言われても信じてしまうくらい若い。

何より教師と言われて信じられないのはその服装だ。どこからどう見てもメイド服を着込んでおり、あまつさえ頭にはウサギ耳のヘアバンドまで着けているのだから。

そんな彼女に対してクラス内は、相変わらず無表情のまま透流を見ている銀髪の少女を除き、誰もが呆気(あっけ)に取られてたままだった。

 

「はっ!? もしかしてアタシの可愛さに見惚れちゃってたりする?やーん♡そういうのは結構慣れているつもりだったけど、さすがに新入生全員がってのは嬉し恥ずかし照れまくりだよ~♪」

 

頬に手を当て、いやいやと照れ臭そうに頭を振る自称担任だったが―――

 

「……いや、どう反応していいか分からなくて、引いてるんだが……」

 

「なーんだ、引かれてただけなのね―――って、えええっっ!!見惚れてたんじゃなかったのぉ!?」

 

俺の呟きを耳にし、驚きの声を上げるのだった。

 

「いきなり窓からウサ耳着けたメイド服の人が超ハイテンションで入ってきて、さらには担任なんて言ったら普通こうなるだろ……つか、なんでそんな都合よく解釈してるんだ……」

 

「みんなが黙って見つめてたから♪」

 

(本当にこの人が担任で大丈夫なんだろうか……)

 

親指を立てていい笑顔をする彼女を見た瞬間、クラスの全員がきっとそう思ったことだろう。

 

月見(つきみ)先生、あまり新入生を不安にさせないで下さい」

 

そんな俺たちの気持ちを代弁したのは、普通に扉から教室へ入ってきた二十代後半の男性―――入学式で進行役を務めていた三國(みくに)という名の男性教師だった。

背が高く、整った顔立ちに室内のあちらこちらから「ほぅ……」という溜息にも似た声(幸い男子のものは無し、あっても全力スルーする)が洩れる。

 

「あっれー? 三國センセってば、どーしてここにいるんですか?」

 

「新人教師の監督です。あまりふざけているようですと別の方に代わって頂きますよ」

 

「だーいじょうぶですって。泥船に乗ったつもりで任せて下さいな♪」

 

「いや、泥舟って」

 

「沈みます」

 

「さーて、それじゃ改めて自己紹介いっちゃうよー☆」

 

『…………』

 

三國先生のツッコミを完全にスルーし、月見先生が喋り出す。

 

「というわけでどもども月見の瑠兎(りと)ちゃんでーすっ。この春、昊陵学園(こうりょうがくえん)を卒業したばかりの若き乙女なので、至らないことはたーっくさんあると思いますが、精一杯やってくつもりだからよろしくねーっ♪」

 

(この春卒業ってことは俺たちと2、3歳位しか違わないわけか……ここの教員資格とかってどうなってんだ?)

 

とは思ったが、そもそも常識外の学校へ常識的な事を求めること自体が無駄だと思い、そこで考えるのを諦めた。考えても答えは出ないだろうし。

 

「月見先生は昨年の卒業生の中でも特に優秀な成績を修め、本年度の特別教員として抜擢されました。人格はともかく、技術や能力に関しては申し分ありませんのでご安心を」

 

(人格はともかくって……まあ、言いたい事は分かるけどなぁ……)

 

 三國先生によるフォローを聞き、安堵(あんど)のため息がそこかしら洩れる。

 

「何かすごくトゲのある言い方された気がするけど、みんな気にしないでサクサク進行しようねー。……と言っても今日は初日だから、自己紹介と今年度のスケジュールをさくっと説明するくらいだけど☆」

 

「その前に、まず《焔牙(ブレイズ)》についての注意事項です」

 

「あ、そーだったそーだった♪ えーっと《焔牙(ブレイズ)》は学園側の許可無く具現化しちゃダメだよ? 勝手に出したらすーっごく怒られるからね。以上っ☆ それじゃあ自己紹介を始めるよー♪」

 

三國先生のおかげで、無事に初日のHR(ホームルーム)が動き出す中―――俺は横目であるものを見る。それは透流の隣に座る銀色の少女。

彼女は相変わらず透流へ謎の視線をずっと向けられていた。

 

じ――――――――――――――――っ。

 

……もしも視線で人が殺せるとするなら、すでに透流は軽く百回以上はあの世送りにされているだろう。

周囲が教壇へ視線を向ける中、彼女だけは透流を見る。じっと見つめる。見続ける。

多分、本人は気付かれていないと思っているのだろうが、視線というものは自分で思ってる以上に感じ取れるものだ。現に透流はとても微妙な顔をしているのだから。

なんにしても、なぜここまで彼女が透流を意識しているのか俺にはまったく分からなかった。

 

「―――してるキミ」

 

「ん?」

 

「そこで考え事をしてる前から三番目のキミッ!ちっこい男子の前のキミだってば!」

 

「誰がちっこいか!!」

 

「お前しかいないだろ……」

 

「貴様は黙ってろ!」

 

透流はどうやら考え事をしていて、自己紹介の順番が来たことに気付かなかったようだ。

そして誰がちっこいのかご丁寧に補足してやったらトラに怒られてしまった。どうやらちっこいとか小さいとかは彼にとってNGワードみたいだ。

 

「九重透流です、よろしくお願いします」

 

「……九重?ああっ、キミが噂のっ!」

 

「噂?」

 

「職員室で噂になってるよ。今年の一年には《異能(イレギュラー)》がいるーって☆」

 

異能(イレギュラー)》―――おそらく意味が分からずとも、何か特別なのだろうと周りも理解したのだろう。クラス内でざわめきが起こる。

 

「それじゃあ次。隣の超目立つ銀髪ちゃん」

 

「……はい(ヤー)

 

銀色の少女は頷くと、席から立ち上がって自己紹介を始めた。

 

「ユリエ=シグトゥーナです。みなさんよろしくお願いします」

 

再び、教室内がざわめきに包まれる。ただし、透流の時とは意味合いが違うざわめきだ。

透流は珍獣みたいな反応をされたが銀髪の少女、ユリエの場合は見るからに異国の少女という外見に似合わず、流暢(りゅうちょう)な日本語を口にしたことへの驚きだ。

 

(……容姿的に北欧出身か?まあ、なんにしても日本語が上手いもんだ……)

 

しかしながら、ユリエは相も変らず周囲の反応を気にする事無く着席。

そしてまたしても横目で透流を見ようとして―――

 

「っ!」

 

透流と視線が重なった、と思った瞬間にそっぽを向いてしまう。

けれどある程度時が過ぎると、再び横目で透流の顔をちらちらと覗き始めるのだった……。

 

 

そこから少し自己紹介が進み、俺の番になった。

 

「次!そこの黒髪の男子!」

 

「はい」

 

俺は席から立ち、自己紹介を始める。

 

「如月影月です。よろしくお願いします」

 

「……如月?あっ!って事は隣の女の子は〜……?」

 

「あ、はい。如月影月の妹の如月優月です。みなさんよろしくお願いしますね」

 

優月もついでに立ち上がって皆に向かって微笑みながら自己紹介する。すると教室のあちらこちらから「はぁ……」とか「ほぅ……」と言ったような溜息(男女共にあり)が聞こえた。

 

「キミ達ね!職員室でもう一つの噂になっているのは!」

 

「噂?……《異常(アニュージュアル)》って異名の事か?」

 

「その通り☆後、影月くん敬語☆」

 

俺がそう言うとクラス内で再びざわめきが起こった。

と言っても何が《異常》なのか分からないのか、透流などの時のようにそこまでざわめきは大きくなかった。

 

 

やがて、自己紹介が終わり生徒手帳と通学証、寮生活のしおりが配られた。

 

「全員に行き渡ったかな〜?校則、寮則については後ほど空いた時間で各自目を通しておかないと、めっ!だからね♪あと、学生証はクレジットカードとして使えるから無くさないように注意するんだよー」

 

「へ〜……これがクレジットカード代わりか……」

 

「……兄さん、分かってると思いますが無駄使いは―――」

 

「分かってるって。まず俺はそんなに無駄使いなんてしないって知ってるだろ……」

 

限度額は月々十万円とのことで、それを聞いてかなりの人が色めき立つ。

 

「はいはーい、気持ちは分かるけど静かにー。最後にうちのガッコの()()()()()と、寮の部屋割りの話をしたら今日は終了だから騒ぐならその後でーってなわけで。まずは特別な制度について話をするけど、すーっごく大事なことだからきちんと聞くんだよー♪」

 

 パンパンと手を叩きつつ、月見先生は特別な制度とやらについて話し出す。

 

「うちのガッコには《絆双刃(デュオ)》って言うパートナー制度が存在するのね。パートナーって事から分かるだろうけど、二人一組になって授業を受けたりするわけ」

 

(似たような言葉を最近聞いた気がするな……)

 

「……卒業後にいきなりチームで行動しろと言われても無理だろうから学生のうちに慣れさせておく、という事ですね?」

 

「その通りっ!分かってるね、(たちばな)さん♪それで《絆双刃(デュオ)》についてなんだけど、さっきも言った通り二人でいろんな授業を一緒に受けてもらう訳ね。で、その関係上、ちょーっと駆け足で悪いんだけど今週末までに正式な相手を決めて貰うんで、明日の授業で自分に合ったパートナーを頑張って見つけてねって事で!ふぁいとっ、おー☆ ……もし決まらなくてもこっちで勝手に決めるから安心していいよー♪」

 

(パートナー制度―――《絆双刃(デュオ)》か……。まあ、優月と組めばいいか)

 

隣を見ると優月もこっちを見ていて、目が合うと微笑んでくれた。どうやら優月も俺と同じ事を考えていたらしい。

 

「……で、本題はここからなんだよねー。実はうちのガッコって《絆双刃(デュオ)》を組んだ後は、お互いをより深く知り、絆を強くする為にもできる限り一緒の時間を過ごせーって校則があるのね。まー何が言いたいのかっていうとぉ……寮で相部屋になるってことなんだけど♪」

 

確かに長い時間を共に過ごせば信頼は深まるだろう。

性格の不一致が浮き出てくる可能性も十分あるにせよ、ここまで常識外の事ばかりだったこの学園にしては理に適っている。

どちらにしても俺たちは兄妹で組もうとしているので、元々信頼はお互いに十分してるし、性格の不一致も無いのだが。

 

「あの、すみません。質問があるんですけど」

 

「はいはーい、《異能(イレギュラー)》の九重くん、なんでしょー?」

 

そこで透流が質問を投げ掛ける。

 

()()()()に《絆双刃(デュオ)》を決めろって言いましたが、()()()()の寮の部屋割りはどうなるんですか?」

 

「ふふっ、ナイス質問。そこに気付くなんてうさセンセちょー嬉しい~♡ いい子いい子してあげよっか?」

 

「お断りします」

 

即答だった。俺ももし言われたら透流と同じで即座に断るが。

 

「ぶぅ~、残念。……さてさて気を取り直して、九重くんの質問への答えも含めて、寮の部屋割りの話をするよ~♪」

 

そう言って月見先生が笑顔を浮かべる。その笑みはどこか楽しげにも怪しげにも見えた。

 

「週末までは、()()()()()()()()()()と同居してもらいまーす♪」

 

「……へ?」

 

「つまり仮の《絆双刃(デュオ)》ってことだね。これは校則なので、拒否は無駄無駄ァ!ダメダメェ!不許可!だよ☆ ねっ、三國センセ♪」

 

 胸の前で手を交差してバツを作る月見先生へ、溜息を吐きつつ無言で頷く三國先生。

俺としては仮でも正式に組むのも優月とするつもりなので特に何とも思わなかった。逆に都合がいいとすら思ったくらいだ。

だが、先ほど質問した透流だけは違った。なぜなら彼の隣は……。

 

「イエスッ♪ 九重くんの同居人は銀髪美少女のユリエちゃんで〜す!男子三十八人、女子十六人の新入生どころか全学年で男女同居するのは如月兄妹とキミ達だけだよ。きゃー、らっきー♡……あ、そうそう。不純異性交遊をすると退学になっちゃうから気をつけるよーに。わかりやすく言えば教室(ここ)で口にするのは躊躇(ためら)うような事をして、三人めの同居人が―――」

 

「するかぁああああああああっっっ!!」

 

透流は目の上の敬意を忘れて怒鳴って立ち上がる。

直後、透流の絶叫で我に返ったクラスメイトが大騒ぎし始めた。

 

「マジかよ!?」

「あの子とか、いいなぁ……」

「きゃーっ、同棲(どうせい)よ同棲!!」

「ま、待ってくれ! いくら校則だからって常識的に考えて色々マズイだろ!」

 

言いたい放題騒ぎ立てられる中で透流が慌てて講義するも―――

 

「……透流、入試で闘いあう学校がマトモか?」

 

「そういう事だよ♪というわけで九重くん、ふぁいと!!」

 

俺と月見先生がそう言うと透流は愕然とした顔で机に手をつき、()()()()()()()()を見た。

 

「よろしくお願いします」

 

「よ、よろしく……」

 

俺たちはそんな透流と銀色の少女(ユリエ)の様子を見て、苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

あの後、敷地内にある寮へ移動し、寮則(門限や、食事等)について聞かされ、そのまま食堂に案内されて早めの夕食を終えた後―――

 

「問題ありませんわ」

 

俺たちは男女同居がいいのか、理事長室にいる九十九朔夜に直接聞きに行った。

聞くと二人一組で男女と言うのはドーン機関の治安維持部隊でもそうそう無くて珍しい事らしいが、完全に無いわけではないようで問題は何も無いらしい。

ましてや俺たちのような兄妹で組むと言ったような例も稀によくあるそうだ。

「ならよかったです。わざわざ答えていただきありがとうございました。行くぞ、優月」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

「ええ」

 

俺たちは理事長室を後にし、自分たちの部屋へと戻った。

 

 

 

「さて、俺は荷物整理するから先に風呂入ってもいいぞ?」

 

「分かりました〜」

 

優月は俺に向かって微笑んだ後、風呂道具と着替えを持って浴室へと入って行った。

それを見送った俺は荷物整理を始める。テレビでニュースを見ながら、自分の服をクローゼットの中にあるハンガーにかけたり、教科書などを出したりして明日に備える。

そして俺の荷物の整理が大方終わった頃に優月が風呂から上がって来た。

 

「兄さん、上がりましたよ?」

 

振り返るとピンクと白のチェック柄のパジャマを着た優月が立っていた。

 

「ああ、じゃあ俺も入るかな……」

 

俺は風呂道具と着替えを持って浴室へ入る。

そして、風呂から上がった後はテレビを見ながら今日あった入学試験や、教室での透流達の話のこと、そして明日の授業の確認などをしてから布団に入った。

疲れていたのか、あっという間に俺の意識は眠りへと落ちていった。

 




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