アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹   作:ザトラツェニェ

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もう駄文でもいいと思ってしまう今日この頃(泣)
今回もお楽しみください!



第四十一話

side 影月

 

 

ラインハルトとメルクリウス、そして榊の襲来から数時間後ーーー俺たちは理事長室で朔夜に何があったのか聞かれていた。

 

「榊様……まさか《太陽(ソレイユ)》と呼ばれし者が、当学園に現れるとは……」

 

「彼の狙いは見た限り、《K》の口封じだったようだ。まあそれも、すでにラインハルトにやられていたようだが……」

 

あの後、周囲の捜索なども行われたものの、《K》は見つかっていない。あの牢獄から逃げ出すとは考えにくいのでおそらく殺されたーーーと考えるのが妥当だろう。

 

「…………影月、一つ聞いていいか?」

 

そこで透流から声が上がる。透流はどこか思い悩んだような顔をしていて、俺は透流が聞くだろう話を予想しながら彼に続きを促す。

 

「なんだ?」

 

「お前はあいつをーーー榊を知っているのか?」

 

まるで聞きたくないとでも言いたげな表情を浮かべ、透流は真っ直ぐ俺の目を見る。

それに俺は素直にあの時思った事を話す事にした。

 

「初めは知らなかった。でも彼を見たらーーーなんかすぐに何者か分かったよ。それは多分向こうも」

 

「…………なら、奴は何者なんだ?」

 

「……少なくともラインハルトの一撃を少しは耐え切れる奴だ」

 

俺はある事の言及を避けて言う。

 

「……九重、彼とは知り合いなのか?随分と我を忘れて怒っていたようだが……」

 

今まで沈黙していた橘が透流へと質問する。知り合いか?という質問の答えはここにいる俺と優月と安心院(二人には俺が以前話をしておいた。その事は透流に了承済み)、幼馴染のトラ、そして《絆双刃(デュオ)》であるユリエ以外は知らない事だろう。

 

「……あいつは鳴皇榊(なるかみさかき)、俺の幼馴染だった」

 

「だった……?」

 

「……透流、どういう事だ?なぜ生きている?榊は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

そしてトラが一気に核心に迫る質問をする。

その質問に対して、透流は黙り込んでしまう。それも無理のない事でその答えを言ってしまえば、彼の想いがーーー榊に対する復讐という意志が芋づる式にトラたちに気付かれてしまう可能性がある。

かといって関係が無い俺が口を挟むわけにはいかず、フォローもしてやる事も出来ない自分を歯痒く思っているとーーー

 

 

 

 

 

 

 

突然、理事長室に設置されている固定電話が鳴り響く。

朔夜は受話器を手に取り、耳に当てる。

 

「どうしましたの?ーーー来客、ですか……その方は?ーーーご用件は?ーーー分かりましたわ。ならばすぐに理事長室にお連れしなさい。ええ、では……」

 

朔夜が受話器を置くと、俺たちの方へ向きーーー

 

「聞いていましたわよね?残念ですが、この話はまたいずれ……貴方たちは寮に戻りなさい。それと影月、優月、安心院。貴方たちは残ってくださいな」

 

偶然とはいえ、話の流れを断ち切った朔夜。

そのような用事を言われると、流石にトラもそれ以上問い詰める事は出来ずーーー

 

「……ふん、言いたくないのならそれでいい。僕も無理やり聞き出すのは気分が悪いしな」

 

トラはそう言いながら立ち上がり、部屋を出ていく。

 

「ねぇ朔夜、あたしも残ってはダメかしら?」

 

「なりませんわ。いくら《特別(エクセプション)》とはいえ、この事はあまり知られたくありませんの。それでもと言うのであれば……実力行使いたしますわ」

 

「うっ……わ、分かったわよ……」

 

リーリスはバツが悪そうに部屋を出て行った。その後をおそらくトラと同じような気持ちであるだろう橘が出て行き、そしてみやび、タツ、ユリエと退室していく。そしてーーー最後に透流が朔夜に一礼して出て行った。

 

 

 

 

 

「……はぁ……何とかなったか……」

 

「はい……透流さんの意志は他の皆さんに伝えるべきものでは無いですからね……」

 

「復讐なんて聞くと、特に巴ちゃんとかは止めようとするだろうしなぁ……」

 

「丁度、来客が来てよかったですわ……」

 

「あれ?朔夜ちゃんも透流君の目的知ってるの?」

 

「ええ、あの事件が公に公表された後、ある人物から……」

 

朔夜は少し目を伏せながらそう言った。だがそれよりーーー

 

「それよりも朔夜さん。来客って誰ですか?」

 

「僕たちが残ったという事は僕たちと関係のある人って事だよね?」

 

「そうですわね……そして私も会った事がありますわ」

 

朔夜も会った事のある人物……それは誰だろうと思案するもーーー理事長室のドアをノックする音で、意識がそちらに向く。

 

「朔夜様、お連れいたしました」

 

「待っていましたわ。どうぞ」

 

朔夜がそう言うと、ドアが開く。

入ってきたのは、来客を案内してきた三國先生とーーー

 

「やあ、元気だったかい?」

 

中々カジュアルな服を着た戒さんが笑顔で片手を上げて入ってきた。

 

「戒さん!花火大会以来ですね!元気ですよ?兄さんも私も!」

 

そう言って優月は戒さんの元へと向かう。確かに朔夜とは以前会った事がある人物だなと思いながら、俺も近付く。

 

「来客って戒さんだったのか……」

 

「うん。突然来てびっくりしたかな?安心院も朔夜様も元気だよね?」

 

「当然だぜーーー元気だよね?朔夜ちゃん?」

 

「………………ええ」

 

……おい朔夜、今の間は何だ。

 

「……入ってきた時から気になってたけど、数日くらい寝てないみたいだね。目の下に薄っすらクマがあるよ」

 

そこで戒さんが苦笑いしながらそんな事を言う。確かによくよく見てみれば目の下には薄っすらとクマがある。

 

「……寝てないんだな」

 

「…………え、影月、優月……その、そんな怖い顔しないでほしいですわ……」

 

「しっかり寝てくださいよ!しっかり寝ないと大きくなりませんよ!?」

 

そう言う優月。一方の俺はそんな優月のある部分を見る。

 

(大きく……か……)

 

「兄さん、その視線やめてください。私だって自覚あるんですから……叩きますよ?」

 

そう言って胸を隠して、睨んでくる優月。

 

「俺は何も言ってないぞ……とりあえず朔夜はしっかりと寝ろよ……それで倒れたら心配だしな」

 

「影月……」

 

その言葉で頬を少し赤らめる朔夜。だがーーー

 

「もう惚気は十分だぜ。それよりも用件を聞こうぜ?」

 

安心院がその場の空気を断ち切り、戒さんを見る。それに戒さんは頷いて話始める。

 

「ああ、実はーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数刻経ち、日が傾き始めて空の色が濃さを増してきた頃ーーー俺、優月、安心院、戒さん、そしてなぜか朔夜まで私服(朔夜の私服は安心院が出した)に着替え、電車に揺られていた。

無論、遊び目的の外出ではない。ではこれは何かと言うと戒さんの案内によるものだった。

 

「……で、俺たちに会って話を聞きたいって言ったのはそのーーー」

 

「藤井蓮ーーー永遠の刹那って呼ばれている僕らの大将であり、女神の守護者だよ」

 

「いよいよお会い出来るのですね……待ち望んでいましたわ」

 

朔夜が笑みを浮かべてそう言った。

朔夜は前々から藤井蓮さんに会いたいと言っていたので、やはり嬉しいのだろう。どうやらそれも俺たちと共に来た理由の一つのよう。他にも幾つか理由はある様だ。

 

「それにしても、こうも早くベアトリスさ……ベアトリスの約束を果たす事になるとは……」

 

「目的は遊びに行く事じゃないけどね。どちらにしろ、ベアトリスも居たら喜ぶよ。ーーーさあ、着いたから行こうか」

 

ドアが開くと戒さんがホームへと降り立ち、その後に俺たちも続く。

改札を出ると目的地である街ーーー皐月へと到着した。

 

 

 

皐月市ーーー県北西部に位置し、複数の路線が乗り入れるこの街には、数多くの商業施設が構えられている。

特に活気と賑わいに満ちたアーケードには、日々多くの若者が集まっているらしい。

そんなアーケードの中を戒さんはどんどん進んでいき、俺たちはそれについていく。

 

「人が多いなぁ……朔夜、手離すなよ?」

 

「もちろんですわ」

 

「それにしても、結構大きい街ですね……」

 

「県内で二番目か三番目に大きい都市だからね」

 

「こんなに人が多いと酔いそうだなぁ……まだ着かないのかい?」

 

「もう少しだよ」

 

そしてどんどんと歩いていくとーーー

 

「……ん?」

 

「……なんだかクラブの前で言い合いしてるみたいだね」

 

突然女の子の怒鳴り声が聞こえてきたと思うと、安心院がある方向に指を指す。

そこには俺たちと同い年くらいの女の子が、何やら柄の悪そうな男二人に囲まれていた。

 

「邪魔だよ!そこをどけってんだよ!!」

 

「うるせー!!お前みたいなベラドンナがこのクラブに何の用だ!!」

 

「落ち着いて……どうしたんだい?」

 

そんな言い合いを繰り広げている彼らに戒さんが仲裁に入る。

 

「あ、戒先輩!はい、この女がクラブのトップに用があると……」

 

「先輩って言うのはやめてくれって前も言っただろう?それで……君はここのトップに何の用だい?」

 

「うちは、ここにいるテメーらの仲間が邪魔するから文句を言いに来ただけなんだよ!!」

 

「僕らの仲間?」

 

戒さんは囲まれていた女の子からの言葉を聞き、女の子を囲んでいた男二人を見る。

 

「あ、いや、俺たちは邪魔してないっすよ!?俺たちに言われても……」

 

「じゃあ、クラブに入れようとしなかったのはどうしてなんだい?ここは誰でも入っていい筈だろう?」

 

「そ、それは……」

 

戒さんの問い詰めに先ほどとは打って変わって、どんどんと恐縮していく男たち。というか戒さんの気迫が少し怖い。

 

「ここは君たち専用の溜まり場じゃないんだよ?他の人たちにも利用出来るようにしないと。もちろんこの近くにあるお店とかもね」

 

「は、はい……」

 

戒さんにそう咎められた男たちはその後、女の子に謝り、事なきを得る。

 

「じゃあ、後の事は僕に任せて君は行くといい」

 

「あ、ああ……」

 

女の子はそう言うと、人混みの中へと消えていった。

 

「ふう……すまないね、なんか巻き込んじゃって……」

 

「そんな事無いです。戒さんかっこよかったですよ?」

 

「まさに正義のヒーロー!って感じだったぜ?まあ、このクラブの人と知り合いの時点で正義って言えないかもしれないけど……」

 

「確かにそうだね。それに僕は正義のヒーローって柄じゃないよ。それよりも早く入ろうか」

 

そう言って俺たちは目的地であるクラブへと入っていくのだったーーー

 

 

 

 

 

 

 

入った瞬間、俺たちは耳を塞ぎたくなるような大音量のクラブミュージックに気圧される。

そこにさらに充満する濃い煙が眼と喉にくる。おそらくドラッグを摂取する時に発生している煙だろう。ギラギラと充血した視線が、俺たちに無数に絡み付いてくる。

 

「ぐっ……三人とも、大丈夫か?」

 

「わ、私はなんとか……けほっ、大丈夫です……けほっ!」

 

「……僕も一応大丈夫だよ。けど長居したくないね」

 

「はぁ……けほっ!苦しいですわ……」

 

「ここはいつもこんな感じなんだ。早く移動しよう。苦しかったら少し息を止めておいた方がいいよ」

 

戒さんはそう言って早歩きで奥へと進んでいく。

その後を口を押さえている朔夜の手を引きながら急ぐ俺、俺の服の裾を掴んで付いてくる優月、そしてあまり匂いを気にしていなさそうな安心院が続く。

そして戒さんは一番奥の部屋へ通じるドアを開ける。

 

 

「ここまでくればいいかなーーーさあ、この部屋だよ」

 

俺たちは急いで戒さんが開いた部屋へ入り込む。

 

「はぁ……ここの空気の方がマシだな……」

 

入った部屋はVIPルームとでも言うのだろうかーーーおそらく他の部屋とは違い、豪華な装飾が施されている。そうして部屋を見渡すと、ソファに腰掛けている男と女が目に入る。

 

「まずはここのトップを紹介するよ。遊佐くん、連れて来たよ」

 

そして俺たちは、このクラブのトップと対面する。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、戒くん。そしてそこの少年少女たちはようこそ。あたしたちの底なし穴(ボトムレススピット)へーーー」

 

「さて、そっちの口と鼻押さえてる子はここに来るまでの道に色々言いたい事もあるだろうが、まずは座ってお互い自己紹介から行こうぜ、親友」

 

そう言った男の対面にあるソファに俺たちは腰掛けながら、俺は眉をしかめる。

 

「俺は親友じゃないぞ……如月影月だ」

 

「如月優月です」

 

「僕は安心院なじみ。親しみを込めて安心院さんと呼んでくれて構わないぜ?」

 

「九十九朔夜と申しますわ」

 

「お?最後の嬢ちゃんは見た目に違わずしっかりしてるね。流石はとある学園の最高責任者なだけあるか」

 

その男の言葉に朔夜は表情を曇らせる。そして今度は相手が自己紹介を始める。

 

「で、俺は遊佐司狼(ゆさしろう)ってんだ。そしてこっちが本城恵梨依(ほんじょうえりい)。苗字で呼ばれると嫌がるから、気をつけろよ」

 

「あのね、だったらなんで教えてんのよ」

 

「いやだって、こう言っとけばこいつらが何て言うか楽しめるだろ?」

 

「あんた、だいぶ前にも蓮くんにも同じ事言ってたよね……」

 

「まあな」

 

そう言って司狼さんは面白そうに笑う。

 

「あ、俺の事は司狼って呼び捨てで構わないぜ。地の文もそうしてくれよ。それとタメで話してくれていいからな」

 

「またあんたは訳の分からない事を……あたしの事はエリーって呼んでくれて構わないから」

 

「あ、はい……それで……」

 

「あんたたちを呼んだ蓮くんなら少し前に、すぐ戻るって言って出ていったよ」

 

「ま、待ってたらそのうち戻ってくるんじゃね?それまで世間話でもして時間潰そうぜ」

 

そう言って司狼はニッと笑う。

 

「世間話って言われてもな……まず二人は藤井蓮さんの何なんだ?」

 

俺はまず一番初めに気になった事を聞く。

 

「俺はあいつのダチだ。まあ親友って言っても間違いじゃねぇけどよ」

 

「あたしも似たようなものね。まあ昔は少し違ったけど……昔は言うなればダチのダチ?」

 

「そうなるな」

 

「そうですか……じゃあ、司狼さんはなぜ兄さんの事を親友と……?」

 

優月が先ほど司狼が言った言葉に疑問を呈す。

 

「あ〜ノリだよ、ノリ。ま、それ以外の理由もあるけどよ。それは蓮が来たら多分分かると思うぜ」

 

「そうか……じゃあ次に、ここのトップってどういう事だ?」

 

「ああ、なんつーか、成り行きだ。なんだかんだで俺やこいつ(エリー)も暇してたからな。暇つぶしにこの世界で適当にウロウロしてたら、丁度根城に出来そうなクラブ(ここ)を見つけてーーー」

 

「ホールにいた奴らを纏めたと……」

 

「そ、何かと効率的に遊ぶんなら、手足ーーー御輿(みこし)があった方がいいからね」

 

「ま、纏めたっつっても特に何もしてねぇけどな」

 

「あ、そうそう。一応表の連中にはあんたたちに手出しはしないようにきつく言っておいたけど、気を付けなよ。よくない薬を勧められるかもしれないからね〜」

 

「……肝に銘じておきます。蓮さんってどんな人なんですか?」

 

優月が質問する。

 

「そうだな……まず、見た目はそっくりイケメンだよな。ま、俺様には及ばないけどな」

 

「そうだね。一瞬「ん?」って二度見しちゃうくらい似てるよね」

 

「…………そんなにか」

 

「世の中には似た顔が三人は居るって言うけど、まさにその言葉を体現してるね」

 

「つまり影月君と」

「ついでにメルクリウスと」

「藤井蓮ーーーツァラトゥストラ様が似た顔を……と言っても私たちは、まだツァラトゥストラ様にお会いした事はありませんので本当に似てるかどうか分かりませんけれど……」

 

安心院、優月、朔夜が順番に言う。というか何だ、その連携……。

 

「……性格は流石に似てないよな?」

 

「う〜ん……今話している限りはあまり似てないかな?」

 

「だな。あいつはアタマおかしいんじゃねぇかって位、何の変哲もない毎日を過ごす事を望んでやがる」

 

「何の変哲もない……か。分からなくはないが、面白みが無いな」

 

「お?そこは蓮と似てねぇな」

 

「まあ……少しは騒ぎに首突っ込みたくなるよな」

 

「「「えっ?」」」

 

そこで優月たち三人が声を上げる。そんなに意外なのか?結構厄介ごとに突っ込むの嫌いじゃないんだが。

 

「言うねぇ。俺たちと気が合いそうじゃね?」

 

「……どうだろうな」

 

ただ目の前の二人のようにいつも突っ込むような真似はしないが。

 

「どうだ?俺たちのグループに入んねぇか?」

 

「やめとけ、面倒な事に巻き込まれるぞ」

 

とそこで第三者の声が響いた。その声色は俺と同じで、司狼と軽口を叩きながらこちらへ歩いてくる。

 

「お前ら、こいつらを余計な事に巻き込んでんじゃねぇよ。ただでさえメルクリウスとラインハルトに弄ばれてるってのに……」

 

「おう、予想より遅かったな蓮。もう少し遅かったら、お前の嬉し恥ずかしい昔話でもしようと思ってたぜ」

 

「勝手に人の昔話をしようとするな」

 

そう軽口を叩きながら、背後の扉から現れた男を見て、俺たちは一瞬言葉を失う。

 

「ーーーーーー」

 

「ーーーあ……え……?」

 

「うわぁ……本当に……」

 

「…………見間違える程、ですわね……」

 

優月は俺とその男の顔を交互に見て、安心院は珍しく本当に驚いたという顔をし、朔夜は何とも言えない顔をしていた。

その男の顔はまさに双子と言っても差し支えない程似ていた。

 

「さて、初めましてーーーだな。俺が藤井蓮だ」

 

「貴方がツァラトゥストラ様ですわね?」

 

朔夜の言葉に蓮さんは顔を顰める。

 

「そうだけど、その呼び方はあまり好きじゃないからやめてくれ。蓮って呼び捨てで構わない」

 

「分かりましたわ」

 

そして蓮は司狼の隣へと座り、改めて自己紹介をした。

 

「で、話を聞きたいって言ったらしいが何を聞きたいんだ?」

 

「ここ最近の黒円卓の事だよ。俺たちも見てるけど、近頃よく現れてるだろ?」

 

「そうだな……それどころか今日の昼だって……」

 

「分かってるよ。ラインハルトがあれだけの《力》を集めて放出すれば、嫌でも感じる」

 

「で、ハイドリヒ卿は何しに学園に来たんだい?」

 

今まで黙っていた戒さんがそう聞く。

 

「俺たちの事を見ているなら、《神滅部隊(リベールス)》の事は知ってるよな?」

 

「ああ、ゴグマゴグって組織の一部隊“だった”とこね」

 

「そうだ。そこの隊長だった《K》ーーー本名ケヴィン=ウェイフェアを爪牙に加えたいと……」

 

『………………』

 

あの時、ラインハルトから聞いた言葉を言うと蓮たちは額に手を当てる。

 

「……前々から思ってたんだけど、ラインハルトの能力って何?」

 

そこに安心院が質問を投げかける。確かにそれは俺たちも知りたい所だ。

 

「……まずあいつの聖遺物は知ってるか?」

 

「あの槍か?」

 

俺はラインハルトが手にしていた黄金の槍を思い浮かべる。

 

「そうだ。あいつの能力は簡単に言うとその槍で殺したり、あいつの創造で生み出した、いわゆる「城」で死んだ奴を取り込んで、自分の軍勢として率いる能力だ」

 

『……………………』

 

蓮がそう言うが、いまいち話のスケールが大きすぎて要領を得ない。そこで戒さんが補足説明をする。

 

「死者を喰らい、率いて、己の力とする……そして喰われた者は永遠殺し合い、戦い続ける……死んでも蘇生されてね。そんな能力だよ。そしてハイドリヒ卿は流出位階に達しているから……」

 

「流れ出したら、世界はそれを唱える黄金に飲み込まれる……なるほど、メルクリウス様の仰っていた意味はそういう事ですのね……」

 

「なんだよそれ……地獄じゃないか……」

 

そんな世界は嫌だと断言出来るだろう。死んでも永遠戦い続ける楽園(ヴァルハラ)ーーーそんなのはよっぽどの戦闘狂くらいしか喜ばないだろう。

 

「まあ、実際今この世界を包んでいる理はそんな物よりよっぽど素晴らしいものだけどな。それよりも話を戻そう」

 

そう言って蓮さんは問う。

 

「なんで黒円卓の連中があんたたちの学園に現れるのか、その表向きの理由は警備って事は分かってる。でもそうまでして奴らが何を企んでいるのか分からないんだよ。だから一番彼らと関わっているあんたたちなら知ってるじゃないかって思ったからーーー」

 

「ここにお前たちを呼んだわけだ。お前らメルクリウスかラインハルト(あいつら)から、何か聞いてねぇか?」

 

それに対し、俺たち三人は朔夜を見る。見た目幼い子に任せるのはあれだが、こういうのは朔夜に任せるに限る。

その視線を受けた朔夜は平然と言い放つ。

 

「彼らの目的なら知っていますわ」

 

「だよねぇ〜知ってたら苦労しな…………え?マジ?」

 

「知ってるのか!?」

 

「ええ、メルクリウス様からおおよそ全てを……」

 

意外な返答だったのか、狼狽える蓮さんたち。朔夜はそんな狼狽える姿を見て、楽しそうに笑う。

 

「けれど教えませんわ。そんな事したら面白くないでしょうし」

 

「それは、そうかもしれねーけどよ……」

 

司狼が言い淀む。やはりおおよその内容は知って、危険な内容だったらそれを防ぐように動いたりしたいのだろう。だがーーー

 

「心配はいりませんわ。安心なさい、今回のメルクリウス様の“歌劇”は上手く事が運べれば、大きな利益になりますわ。貴方たちにも、私たちにも……くすくす……」

 

『……………………』

 

なんとも言えない朔夜の含むような笑みに、俺たちも蓮さんたちも無言になる。

 

「……さて……他にお聞きしたい事はおありですの?」

 

朔夜は話を切り上げて、蓮さんたちを見渡しながらそう言う。

 

「あ、ああ……他にも聞きたい事はある」

 

 

 

 

 

 

それ以降は様々な事を話した。《焔牙(ブレイズ)》の具体的な説明を求められたり、俺たちがなぜ永劫破壊(エイヴィヒカイト)の力を使えるのか、などだ。

幸いにも朔夜が居てくれたお陰で色々と難しい説明はしてくれた。もしかしてこうなる事を見越してたのだろうか……?

そしてーーーあの鳴皇榊についても説明した。

 

「手加減していたとはいえ、ラインハルトの一撃を止めたのか……一応頭の片隅に留めておくか。さて、こっちから聞きたいのはそれくらいだな。逆にそっちから聞きたい事ってあるか?」

 

そこで今度はこちらが色々と聞く番になった。そして聞いたのは昔の黒円卓との戦いの事や、蓮たちの能力、そして一部黒円卓団員の能力などを聞いた。

 

 

 

それらを話した後は軽く雑談をしていたがーーー

 

「おい蓮、そろそろバカスミ帰ってくるぜ」

 

「そうだな。他にも色々調べてるベアトリスとかも戻って来そうだ」

 

「私たちは時間ですのでこれにて帰らせていただきますけれど……ベアトリスは何を調べているんですの?」

 

朔夜がふと気になった事を聞いた。それに答えたのは司狼だ。

 

「あ〜、ここ最近この繁華街にあるもんが出回ってて、迷惑してんだよ。これだ」

 

そう言って司狼は懐から取り出した物を無造作に机の上に放り出した。

それは透明な袋に入った白い粉だった。

 

「これは……ドラッグ?」

 

「そう、これを吸ってた連中から《禍稟檎(アップル)》って呼ばれててね。でもこれは普通のものとはちょっと違ってね。効果と副作用が半端じゃない」

 

「中毒性も高い。少し前にこの繁華街で暴行殺人事件が起きたんだけど、どうやらこのドラッグも関わっていたらしくてね……」

 

「そういえば、そんなニュースやってたねぇ……」

 

エリーと戒さんがそう説明する。

 

「俺たちは戒やベアトリスにも協力してもらって、このドラッグの出処を探っているんだ。香純は違う用事だけどな」

 

「なるほど…………司狼、これ貰えるか?」

 

「ああ?別に構わねぇけど、吸う気かよ?」

 

「絶対吸わない……朔夜、これを研究の片手間でいいから……」

 

「ちょっと分析してほしいと?」

 

「そうだ。それに俺たちもたまにでいいから、この繁華街にこのドラッグに関係する手伝いに来たいんだが……」

 

「そうですね。私も手伝いたいって思いますし、ベアトリスさんとも会いたいですし……」

 

「僕も同じ気持ちだぜ。……ダメかい?朔夜ちゃん」

 

「………………」

 

その言葉に朔夜は考え込みーーー

 

「……分かりましたわ。貴方たちには帰ったら無期限任務を与えましょう。内容はこの皐月市に出回っている《禍稟檎(アップル)》についての情報収集、そしてこれをばらまいている者、あるいは組織の特定ですわ。まあ、そのばらまいている元凶をどうするかは後々決めますけれど……」

 

「こちらとしてはありがたいけどいいのかよ?危険かもしれねぇぜ?」

 

「もう危険には慣れてるつもりだ。ありがとうな、朔夜」

 

「構いませんわ。機関の方にも一応調査を依頼しておきますわ」

 

 

 

 

その後はお互いの協力関係を改めて確認し、ベアトリスたちによろしく伝えてくれと言った後、お開きとなったーーー

 

 

side out…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ーーーある大国の高速道路ではおよそ現実とは思えない光景が広がっていた。

 

 

 

『現場のヘリから中継です!現在、高速道路で何も無いのに車が撥ね飛ばされるという謎の事故が多発していますーーーあっ!また車が!!』

 

ヘリに乗り、現場の実況をしていたアナウンサーが指した方向にテレビ局のカメラが向けられる。そのカメラに映し出されたのはーーー車が撥ね飛ばされて地面へ激突し、爆発炎上した様だった。

 

 

 

現在高速道路は黒煙と火柱が噴き上がり、阿鼻叫喚の巷と化していた。

道路はクレーターのような陥没が幾つもでき、高速道路を支えている支柱が幾つか崩壊していく。

また、ある車は先ほどのように爆発炎上して辺りに広がる森に落下、大火事を引き起こしたり、またある車は風圧か何かを受けて高速道路から地面へと激しく転げ落ちたり、または数トントラックが数十メートルは宙に弾き飛ばされるなど、目を疑いたくなるような現象が次から次へと起きていた。

 

そんな恐ろしい光景は唐突に終わる。

高速道路を走行中の大型タンクローリーが横転、大爆発を起こしーーーそれが最後の合図なのか、ピタリと謎の大事故が終了する。

 

 

 

 

 

この死傷者が三百人を超える謎の大事故は瞬く間に世界中に広がり、人々の記憶に深く刻まれる事となった。

さらにそれから僅か数刻後ーーーその高速道路から程近い所に建っている、ある組織の建物で大量虐殺事件が発生。

その建物を警備していた者たちと、他の支部に向かっていた幹部を除き、ほとんどの幹部が見るも無残に殺されていた事が(おおやけ)となり、これまた人々の記憶に残る事となる。

警察はこの高速道路の事故と、大量虐殺事件が何かしらの関係があると見て調査を開始。それに軍なども協力、さらに一部の研究機関の協力も借り、調査を進めたがーーー原因は分からず、謎多き事件として迷宮入りし、後世に伝えられる事となる。

 

 

 

 

また裏の世界でもこの事故と事件は大きな衝撃をもたらしていた。

なぜなら、大量虐殺が起きたその建物はゴグマゴグという表向きは真っ当に見せかけていた組織の本部であるからだ。そんな組織が襲撃を受け、関係者がほとんど殺されたというのだから無理もないだろう。

 

 

この襲撃に気付いたドーン機関を始めとした幾つかの組織は、情報収集を開始。ゴグマゴグに関する様々な情報をどさくさに得たがーーー肝心の襲撃者についての情報はどの組織も得る事が出来なかった。

ゴグマゴグ本部内に設置されていた防犯カメラの映像も、()()()()()()()()()()()()()()()()()という怪奇現象のような映像しか無かったのだ。

そしてそれらの映像の音声に記録されていたのは、幼い少年の身の毛もよだつ狂ったような笑い声だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

結局、どちらの世界でもこの襲撃の首謀者である黄金と水銀の影どころか、彼らの爪牙である幼い白髪の少年の仕業である事にも辿り着けずに、この事件は終息した。

 




最後の方の大事故や事件は誰の仕業か……分かる人なら分かりますよね?(苦笑)
彼はラインハルトに命令されてゴグマゴグを処理しに行っただけです。高速道路のあれは彼の独断によるものです……うん。

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