今、俺は俺自身と戦っている。いや、正確には過去の俺だ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼」
過去の俺=ダークメフィストは右手から「メフィストクロー」を出現させ、今の俺=ウルトラマンネクサスに襲いかかる。
(何で……何で俺自身と戦わなきゃならねぇんだ⁉)
俺はメフィストの攻撃を避けながら、先程のスカリエッティいや、ダークザギの言葉を思い出していた。
―――――君の心に闇を作ってあげるよ
そうか……奴は、ザギは俺の心を闇に染めるために過去の俺と戦わせてる。
つまりこのメフィストは……俺の記憶。それなら……
「目を覚ませ‼……そして、お前の本当の心を取り戻せ‼」
「黙れ‼…俺は守れなかった。あの子のいない世界など、消えてなくなればいい‼」
「そう……以前の俺はそう思っていた。でもな、そんな事をして彼女が喜ぶと思ってんのかよ……ふざけるな‼彼女は、お前さえいれば何もいらなかったんだよ‼だからどんな無茶もできた……どんな苦しみにも耐えられた。彼女は……更識簪は、他の誰よりもお前を信じてくれてるんだよ‼お前は、そんな事も分からないのかよ‼」
これは、メフィストに対する言葉ではあるが、俺自身に対する言葉でもあった。
「俺は……俺は…………」
「いいか、よく聞け。お前は……俺だ。姫矢一輝だ」
俺のエナジーコアが点滅しているが、気にしてはいられない。
メフィストの動きが止まっている。それを見かねたザギは…
「所詮はただの記憶か……ならば、これだ」
ザギは更に何かを呼び出した。
スペースビースト・ノスフェルだ。
「もう記憶などに用はない。……死ね」
ノスフェルはメフィストに鋭い爪で襲いかかる。俺は……
「なぜだ?」
ザギは疑問を持った。なぜなら、俺はノスフェルからメフィストを守るために爪に斬られたからだ。
「な……なぜ……どうして」
「…言っただろ、お前は俺だって……自分の身は、自分で守らくちゃな」
「だからって……こんな事しても、彼女は喜ばないだろ…」
「確かにそうだ……だがな、そんな事でも、あの子が喜ばない自己犠牲でも……俺はやっちまう。俺は、好きでやってんだよ……格好、つくだろ?」
「バカが……そんな事で、くだらねぇ事やってんじゃねえよ‼」
「それだけでもない……俺は、今と未来、そして…過去も守りたいんだ……だから、これでいい。……お前は、闇の巨人なんかじゃない」
…………やべえ、意識が……早く……言わなくちゃ……
「お前は…ウルトラマン……メフィスト……」
俺の意識は、ここで途切れた。
目を覚ました時、そこはベッドの上だった。
俺がどうしてここにいるのか。その記憶が丸々抜けている。
「目が覚めたようだね、一輝クン」
「あ……アコースさん。無事でしたか」
俺は起き上がろうとするが、アコースさんに止められる。
「まだ起きちゃダメだ。一応君は死にかけたんだから」
「あの……なのはちゃんは?」
「ああ、彼女なら無事だよ。そういえば、君が戻ったとき、相当取り乱していたから、後が怖いね」
「……。吹っ飛ばされないように努力します」
「しかし、びっくりしたよ。あの時、君が戻ったと思ったら、二人いたんだから」
「二人?」
「あ、そうか。君はあの時意識を失ってたんだね」
アコースさんが言うには……
「もう少しだ。……なのはちゃん、砲撃の準備を」
「はい‼」
なのはちゃんが魔法陣を展開した時、アコースさんは遂に見つけた。
「ここだ…なのはちゃん、撃って‼」
「ディバイィィィン…バスタァァァァァ‼」
なのはちゃんが砲撃を放った瞬間、狙い撃った壁の前に、「ノスフェル」が立っていた。
「え……?」
「これは、ちょっとマズいかなぁ」
ノスフェルはその巨大な爪でなのはちゃんを殺そうとしたが、それは一人の巨人によって阻まれた。
それは過去の俺、「ウルトラマンメフィスト」だった。
―――――大丈夫か⁉
「「……一輝クン(くん)⁉」」
―――――なぜ、俺の名前を?……そうか、アンタたちが未来の俺の仲間か。なら話は早い、そこに転がってる俺を安全な場所まで運んでくれ。コイツは…俺が倒す‼
「分かった。…未来の君は、僕らが必ず守るから安心してくれ」
アコースさんとなのはちゃんが俺を安全な場所まで連れて行くと、メフィストはノスフェルと戦い始める。
過去の俺の戦い方は……まあ、ちょっと……な。
―――――よくも、俺自身と戦わせやがって…生きて帰れると思うなよ‼
メフィストは、ノスフェルの爪を回避すると、手刀で右腕を切り落とし、それでノスフェルの腹を切り裂き、怯んだ瞬間口から生えている牙をもぎ取って背中に突き刺す。
「一輝クン……あんな戦い方してたんだ」
「フォワードのみんなが見たら……泣いちゃうかも」
今の俺から見ても、全く同意見だ。
―――――どうした、もう終わりか?ほら立てよ‼
メフィストは倒れたノスフェルを起こして、尾を持ち地面に叩き付ける。その中で、ノスフェルの尾はちぎれたが、メフィストはそれを捨てて、更に攻撃を加える。
―――――そろそろ頃合いだな
メフィストは、立つことすら危ういノスフェルに、必殺光線を放った。
―――――ダークレイ・シュトローム‼
ネクサスの「オーバーレイ・シュトローム」と同等の威力を持った光線を受けたノスフェルは、原子分解して消滅した。
ノスフェルを倒したメフィストは、人間の姿(あの学園の制服を着た俺)に戻り、なのはちゃんたちの元へ駆け寄った。
「もう大丈夫だ。……?どうしたんだ?」
「あ……いやぁ、同じ一輝くんでも、違うんだなぁって」
「…何だそれ……とにかく、今はこの、未来の俺の命を救うことだ」
「そんな事が出来るのかい?」
「出来るさ。俺を誰だと思ってやがる?……ウルトラマンだぜ」
すると、過去の俺の身体が輝き出す。
「俺が目覚めたら……例を言っといてくれないか?」
「「お礼?」」
「俺の大切なものを、思い出させてくれて…ありがとう」
「……必ず、伝えるよ」
なのはちゃんは強く頷いた。
「じゃあな。……がんばれよ」
そして、光になって俺の身体に入っていったらしい。
(ってことは、俺は過去の自分に救われたってことか。……こっちこそ、ありがとうよ)
「さて、君の意識も戻ったし、僕はそろそろ失礼するよ」
「え?」
「君たち二人の邪魔はしたくないからね」
「二人?」
アコースさんが下を指さした。俺が目線を落とすと……なのはちゃんが眠っていた。
「ずっと君が起きるのを待っていたんだ。……じゃあ、またね」
アコースさんは出て行き、俺は……
「迷惑かけっぱなしだったな……ごめんね」
俺の言葉に応えるようになのはちゃんが目を覚ます。
「……一輝くん?…………一輝くん⁉」
「……えっと…………おはよう?」
俺は寝起きのなのはちゃんにレイジングハートで殴られた。
「本当に一輝くんだよね⁉本当に今の姫矢一輝くんだよね⁉」
「本当……本当だから殴るのやめて‼マジで痛いから‼」
「あ、ごめん……でも、心配したんだから」
俺はけが人を殴るお前の頭が心配だよ。
その後、俺の病室に押し掛けた六課メンバーの過剰な見舞いで、数ヶ月の入院生活を強いられた。
次回、「弟分-レキ-」