THE NIGHT PRINCESS TAKE"2" 作:(´Д` )
伝承、童話、神話、歴史...人は多かれ少なかれ、そういった物語と触れ合いながら成長していく。
誰かは昔々の人物に思いをはせ、あるいは偉大なる神々のその荘厳さに憧れ、もしくはヒロインや主人公の悲劇に涙するものだ。
そう、物語というものは私達に多くのものを与えてくれる.......
.....と、同時に一つの疑問が残る。それ即ち、その物語は本物だったのか?と。
夢物語は確かに私達の世界を広げてくれる。だがその世界はニセモノだ。何故ならその物語を見ている私たちは高みの見物、身体を動かさず、汗も流さず、感動だけ分けてもらおうとする横着者だからなのだ。
そう、最早それは虚構ですらあった.......。
ここは幻想郷―――
ーーー"だった"モノ。
かつて神や妖…そして人間が危ういながらも平和に暮らしていた長閑な世界。
そんな世界がどういう訳かおぞましい程の混沌に包まれている。
人間達が集まり、耕し、そして芽吹かせた人里も、
河童や天狗、その他妖怪が集まり力関係こそありながらも活気があった妖怪の山も、
"あの"旧地獄も、
"あの"竹薮も、
"あの"湖も、
"あの"天界も、
"あの"冥界も、
"あの"魔界も、
あれもこれも、アイツもコイツも、全てが台無しだった。
闇より黒く血より赤い。
ヘドロ状のソレは幻想郷の全てを飲み込まんとしていた―――。
最初の"ソレ"は小さな小さな水溜まりのようなモノだったらしい。
幻想郷の管理者は"ソレ"についてこの世界特有の神秘の誤差と判断したという。
しかし"ソレ"は日に日に幻想郷を蝕み、腫れ物のように肥大化していった。
世界の異常に気付いた管理者は直ぐに巫女を派遣。
それに続くように暇を弄ぶ者達が我先にと異変の解決に急いだ。
これで今回の異変も解決。何時ものように騒ぎが静まり、何時もように平和が訪れる―――。
そんな"当たり前なことを"誰もが思い、そしてそれを信じて疑わなかったのだ。
…巫女の消失。幻想郷のルール(法則)が少しずつ、少しづつ歪みを持ち始めた。
○●○●
巫女の消失。まるでそれに応えるかのように消失を始めた幻想郷の住人達。
全てを悟った管理者は思わず歯噛みした。
自ら生み出した理想郷は自ら怠った管理不足で滅びるのだ。
正しく世界の終わり。
幻想の住民達に逃げ場など最早無く、多くの人々が意味もなく倒れる。
逃げ場がない。
"一体コレは何だ?"
それは幻想郷の管理者も
"何が起こっている!!"
同じだったのだ。自身の誇る驚異的な頭脳、能力もこの混乱の最中、全く役にたたなかった。
死の河に怯え、
"―――幻想入り?"
世界の境界に引きこもっていた彼女だが、ど
"なら一体何が?"
うやらそれも此処までのようだ。
"そんな事を考えて何になる?''
混沌が境界をノックする音がする。
"…まさか?"
何も無い空間にまるで蜘蛛の巣のように亀裂が張り巡らせ
"ひっ…"
そして堰を切るかのように死が溢れ、満たし、また少し――
"………。"
――世界が一つとなった。
○●○●
巫女と管理者、二柱を失った幻想郷。その姿を保てる訳もない。理想郷は少しずつ、少しずつ崩壊していく。
実相と幻想の境界が撓み神性、神秘、伝説、奇跡の体現者達が消え去るそんな中、
幻想郷のパワーバランスを担う程のとある勢力が今も尚、見えぬ光の中、ゴールの無いレースを只真っ直ぐにに狂奔する。
そんな妖がいた。
まだ幻想郷があった頃、霧の湖と呼ばれていた畔に建つ紅く窓が少ないとある洋館の当主。
"紅い悪魔"
"永遠に紅い幼き月"
"濃霧の吸血鬼"
"紅色の世界"
"幼きデーモンロード"
"ツェペシュの幼き末裔"
"カリスマの具現"
数多の二つ名を持ち、化け物揃いの幻想郷の一角を担う吸血鬼。
ーーーレミリア=スカーレットその人である。
「が、あ、ガアアアアアァァァッッツ!!!」
....焼け焦げる死肉のにおい。
....噎せ返る程の血潮のにおい。
....炎のにおい。
....暴力のにおい。
....。
幻想郷を塗りつぶして行く混沌。吐き気を催す程の醜悪な匂い。
世の中にこのようなモノが存在して良いのか?
理解ができない、頭が破裂しそうだ..。
しかし、この惨憺たる状況。
普段のレミリアなら絶望に打ち震えていたのかもしれない。吐瀉物を辺りにぶちまけていたのかもしれない。
あるいは、心の底から信頼し、何処か尊敬し、信用のおける仲間たちと共にこの名状しがたい異変に最後まで足掻き、もがくのかもしれない。
しかしどうだ?今宵のレミリアは何処か違う。
彼女は最早"魔"でもなく"妖"でなく、一つの"暴力"だった。
怨嗟に震え、白目を剥き、牙を出し、爪を尖らせ、血涙を流す。
妖という生き物はどうすればここまで怒り狂うことができるのだろうか?
レミリアという"暴力"は忿怒の形相で混沌
カオス
に激しく反発する。
「ご、あ、あ、アアアアアッッッアアアアァァッ!!!」
愛しい....家族....部下.....従者....友人.....
荒々しくも豪快に混沌を腕で薙ぎ払う。
私は...
"腕がもげる"
わたしは..,
純粋な身体能力や神秘の余波のみで、ドス黒い混沌に穴を開ける。
"右眼が腐り落ちる"
仲マたチを....
左足が"混沌"に触れ、掴まり、爛れる。
守れナカった....
そのまま"混沌"に引きずりこまれる。
「あ、グ、ガ、」
....ーーーー。
視界が塞がる。ジワジワと混沌が身体を犯す感覚がする。
......畜生。
このレミリア=スカーレットを最後に生命が消え、全てが一つの混沌となり、とある理想郷の終わりを告げる。
世界を善とするならば、今や世界そのものとなった混沌はどうだろうか。
世界(カオス)は笑い、無情に服す。
徐々に薄れていく意識のなかでレミリアは最後の最後まで仲間達を失った事を後悔していた。
何か、何かあった筈なのだ。
皆を守り、皆で異変を解決し、皆で笑う。
そんな、ハッピーエンドが...。
私か犠牲になってもいい。
もしかしたら身投げのような自己犠牲に意味はないのかもしれない。
手遅れかもしれない。
だいいち私らしくない。
「どうすれば良いのか?」という遅すぎる自責の念の中、ゆっくり、ゆっくりとまどろみの中に溶けていく。
それでも、私は........,。
.......。
"やれやれ、何だい?折角この私が気持ち良く凱旋してきたというのに。"
声が、聴こえた。
......気が、した。
それは一匹の少女が怪物と謳われるまでに至る壮絶なる軌跡。レミリアスカーレットエピソードゼロがはじまる。