作戦室の扉を開けると複数人の艦娘が中央の作戦海域の海図と地形図から目を離しこちらに最敬礼で東雲を迎えた。
最敬礼を受けた以上東雲は最敬礼で答えるのだが最敬礼を受ける身では無いことを心中に潜めた。
「ご苦労、君達が万里一海の娘達かよろしく頼む」
敬礼を解き東雲の一声を聞かず幾人の艦娘を除き彼女達は海図と地形図を食い入り作戦を作家が走り書きするように立案しては違う、もっと~だとまとまりを偽っていた。
唯一東雲を見ていたのは叢雲とどこかで見たことのある感じのする居酒屋の女将が似合いそうな和服を来た女性だけであった。
紺の瞳と、より深い紺の長い髪を馬の尾のようにし、前髪は七三分けにしたおっとりした顔立ちが特徴。和服の袖をタスキで縛り、紺色の袴を履き、下には白い長靴下を履いている。
右手には弓道などで用いるユガケを着用している。弓道でも高段者の女性は胸当てを付けず、タスキをかけている。
叢雲は仲間に幻滅でもしたのか、栄えある横須賀に幻滅したのか顔を顰め呆れている。
提督がいるのになんたることかと。勝とうといった気概がなく感じられたのであろう。
もう一人の女性は東雲の前まで歩くと一礼する。そこでやっと東雲はこの人物が誰だったかを認識できた。
「彼方はもしや東郷の奥さんのほ、鳳翔さんか」
「はい。東郷提督の妻、航空母艦鳳翔型1番艦の鳳翔です。今回の召集に来てくださりあの人に代わりましてお礼を申し上げます」
鳳翔が頭を下げたからなのか作戦室の空気は一瞬にし止った。東雲の反応を伺うためなのか、それとも思いもよらぬ利が艦娘達にあるからなのか。
東雲に言葉を選ぶ時間はなかったがしっかりした意思を持ち返事をする。鳳翔の真意を読み取った故の返事をする。
「鳳翔さんには申し訳ないが私は横須賀鎮守府の提督としてここに立っている。前任の者を思いながら敵討ちや復讐といった考えは一切ない」
「それならばなお更のことです。貴方が来て下さった。それだけでいいのです。復讐に身を任せられておられたのならば即刻ここから去っていただいただけのことです」
誰に向けられていたのか、少なくとも東雲に向けられた言葉でないことをこの場にいた全員が理解した。
途端、この部屋は海の底から出てくる深海棲艦と人界の海とを隔てる万里の壁となる。
全ての艦娘は提督に敬意を払い。抜錨し物の怪を撃滅せんがために出向する。
自己の役目とはそれであるのだと。少女を捨て兵士となる。
「戦力と敵戦力はわかるか?」
戦の狼煙が今あがる。