ガンバライダーAGE   作:狸吉 ガンバライダーどん兵衛

3 / 3
ガンバライダーAGE2話中編になります
前編後編で終わるとは言ってないだろ!




2話中編 「相反するHERO」

かつて日本は、敗戦国でありながら著しい科学的進歩を遂げ、先進国として名を轟かせるまでに至っていたが、第三次大戦にて、1000人を超えるA級戦犯を生み出し、世界的に批判を受けた国でもあった。

その点においては優秀な人材と指導の賜物でこそあるが、如何せん誇れることではなく、一般的には負の遺産として扱われる。

そんな負の遺産の根源、数多くの士官を生み出してきた旧千葉県桜連隊司令部、そのすぐ真上に浮かぶのは、零課の特務飛行艇「CROWD」、そして現在進行形で落下している男達がいた。

「さーて、お仕事お仕事!せめて給与分は働かないとな!」

空中で腰に巻かれたバックル型装置、「ライジングギア」を起動するその男、黒羽ノゾムは、嬉々とした様子でライダーメモリーをベルトに差し込んだ

『Ready?』

「変身!」

『Change!BLAST!』

落下地点上空に長方形の光の扉が生み出される。そこを通ったノゾムの姿は、漆黒の機械じみた鎧を纏ったガンバライダーへと変貌していた。

ちなみに、もう1人落ちてくる男がいるのだが

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」

葵火牙刀、零課に新しく入ったこの男は、ノゾムと違ってアドリブに長けている訳でも、ましてやこの高さから落とされる経験もなかった。

『聞こえますか火牙刀さん、変身シークエンスは既に起動してますから、早くメモリーをドライバーに差し込んでください、死にますよ』

「ふざけんなふざけんなふざけんな!!!!!!!!!!!!」

涙目で腰のカードホルダーからメモリーを取り出してライジングギアに差し込む火牙刀

『beginning……Deus!』

地面目前に開かれる光の扉、そこを頭から通ったガンバライダーは、地面に着地することなど叶わず

 

地上でショッカー連盟の戦闘員と戦闘を繰り広げる零課の機動隊が見たものは、空中から華麗に登場し、着地ともども数人のショッカー戦闘員をブラスターで撃ち抜いた漆黒のガンバライダーと、盛大に頭から地面に激突して動かなくなった、灰色のガンバライダー。

数十分前に翼から連絡を受け、先遣隊の本部が襲撃を受けているとの旨を伝えた副部隊長は、ただただ唖然として上から降ってきた援軍と死体を眺めていた。

「イーッ?」

死体が落ちてきたすぐそばで機動隊と戦闘を繰り広げていたショッカー戦闘員のひとりが、死亡確認でもするかのようにその死体をつつく、と

ズシャッ、とまた上空から降ってきた機械的な斧、ガンバトマホークと呼ばれる武器に、その戦闘員は頭から両断された。

「…………ぜってぇ許さねぇあのクソ上司共め……」

突如そんな声が聞こえると、死体だと思っていたガンバライダーがむくりと立ち上がる。

「……イィッ!?」

偶然の惨殺に唖然としていた他のショッカー戦闘員も、ここに来て新たな脅威をやっと認識し、一斉にその名も知らぬガンバライダーに襲いかかる。が

「……フッ!」

片手でトマホークを掴み軽々と振り回したガンバライダー、その鮮やかとも言える光の刃の軌跡は、襲い来る戦闘員達の命を摘み取るまで至った。

1人は脳を焼き切られ、1人は首をやられ、1人は頭から両断され、まるで魚でも捌くかのように、黒タイツを骸に変えていく。

「……凄い」

副部隊長の隣にいた機動隊員は、そのあまりの鮮やかな殺戮に、もはや魅了すらされていた。

武術などにはあまり精通していない自分にでもわかる、あの動きは天賦の才やシステムアシストによるものではない。

「単に動きに無駄がない」だけである

まるで全てが決められてるかのような流れる動きは、一切の迷いもなく、故に一切の隙もなく。

その点、もう1人の漆黒のガンバライダーは、彼とは対照的な戦い方を繰り広げていた。

先程のように数で攻めるショッカー戦闘員、しかし、漆黒のガンバライダーの持つブラスターの放つ光弾が、彼等に膝をつかせた。

「よっ、ほっ、ほっ」

四方八方から襲い来る戦闘員を、漆黒のガンバライダーは踊るように躱し、舞うように撃ち殺していく。

「あっちは……ノゾム中尉か!」

GRZ社の古参社員でもあるノゾムは零課の面々にはよく知られている、もちろんそのガンバライダーの姿も、その力も。

すると、その快進撃に待ったをかけんとばかりに、先程までの黒タイツの戦闘員とは違う、5mと大柄な牛の顔を模した兜をつけている男が立ちはだかる

「貴様、なかなかの手練と見た、我名は牛鬼丸!貴様も名を名乗るがいい!」

ショッカー戦闘員の性能は人間とさほど変わりはしない、せいぜい成人男性二人で挑めば難なく倒せる程度だ。

が、この強化兵士は違う、1人1人が何かしら特殊なスキルを保持しており、基礎能力も人間のそれを大きく超えている。

ショッカー連盟の強化兵士とショッカー戦闘員は、言うなればGRZ社のガンバライダーと機動隊員のような関係性である。

そんなショッカーのガンバライダーとも言える敵に対して

「あー、ごめん。お前だけ相手にしてる暇そんなねぇんだ……つーかなんだよこの雑魚の多さはよォ!通りで機動隊員と奈々だけで抑えきれないわけだ!」

牛鬼丸など目にも入れない様子で、どんどんショッカー戦闘員を打ち抜いていくノゾム。

同じように火牙刀も異様な数のショッカー戦闘員相手に手を焼いていた……のだが、そのひとりを見て謎の違和感を感じる。実験感覚である行為を試して見ると、予想は大当たり。

「おい!こいつら……死んだまま動いてる!」

「は?お前何言って……うわぁ……」

火牙刀が指さす先では、ガンバソードを頭に2本、胸に1本刺したショッカー戦闘員が、ほかと変わらない動きで襲い掛かってくる光景があった。

「いや、火牙刀、幾ら死体とわかっていたとしても、流石にこれは正気を疑う……」

マスク越しでもわかる、ドン引きするノゾム

「しょうがねーだろ!たまたま頭と胸に刺さってたやつに3本目指したんだし!」

「二本刺さってるだけで分かれよ!」

お互い背中合わせで迫ってきたショッカー戦闘員を捌いている2人のガンバライダーを満足げに見下ろす牛鬼丸

「ガハハハハ!どうだ、我が主の力、まさしく百鬼夜行なり!死してなお貴様らを蝕む呪いの兵士、ここが貴様らの墓場なり!」

先程ガン無視された怨みをはらすかのように高笑いする牛鬼丸。

だが、その顔から笑顔が消えるまで、二秒とかからなかった。

「はーい、全員後退した?味方いない?いないね?んじゃ!本気でやりますか!」

漆黒のガンバライダーが右手をあげると現れた真後ろの空間に浮かぶ何百もの金色の水の波紋、そこから出てくるのは、バーストモードのガンバブラスター。

「え、ちょっと、お前何するつも_」

「全砲門開け!AWAKE(アウェイク)!」

火牙刀の静止虚しく、数百のガンバブラスターがフルバーストされ、周囲の地面を抉りながら、ショッカー戦闘員達を跡形もなく消し去っていく。

ここまでの広範囲攻撃でありながら、ブラストの攻撃の先にGRZ社の機動隊員は見えない。

ノゾムのブラストの力、αタイプの所以たるこの力は、零課の面々なら誰しも知っている。その信頼がなせる技だと言うことを、火牙刀は知る由もない。

砲撃がやみ、周囲にいたショッカー戦闘員

突如ブラストとデウスを囲むように空間に開く暗黒の穴、そこから流れ出る漆黒の泥から、新しいショッカー戦闘員が『産み落とされる』

「は?」

ノゾムが気の抜けた声を発すると、先のようにショッカー戦闘員が襲い掛くる。

「イイッー!」

しかし、その対象は全て、2人のガンバライダーと地上部隊ではなく__

「ッ……上か!」

火牙刀は飛行船を狙った戦闘員達を迎撃せんと跳躍し宙に浮く戦闘員のミサイルを果敢に叩き落としていく、が

その真上に開いた暗黒の穴から現れた1人の「ガンバライダー」が、その鋭利なデスサイズで火牙刀を地上へと叩き落とした。

「ぐうおっ!」

落下時の衝撃も加わり、かなりのダメージが蓄積されたデウスのアーマーに、再度振り落とされる刃。

それをまさしく間一髪で避け、形成したガンバソードを向けるデウス。

その先にいたのは、ノゾムと同じく漆黒のボディ、しかしノゾムとは一線をなすような流線型のアーマー、それもところどころが黒い「何か」に汚染されているガンバライダーの姿があった。

「なんだ、あの白いライダーと違って意外と壊れねぇんだなお前」

恐らく男と思われる多少低い声、手に持つのは趣味の悪い、装飾華美なデスサイズ。

少なくともこれが正規の零課のガンバライダーとは思えない。

「てめぇ……盗まれたドライバーを使ってるのか……」

「なんだ、言い方が悪いぞ」

突き刺さっていたデスサイズを地面から抜くと、ゆらりと立ち上がる漆黒のガンバライダー、マスク越しだが、その顔には歪な笑顔が張り付いているような気がした。

恐怖すら感じるその佇まいに戦慄する火牙刀。

「俺はな……選ばれたんだよ、こいつに!この力に!あの時とは違う!なったんだよ!ライダーになぁ!」

漆黒のガンバライダーがデスサイズを構えたと思うと、その切っ先を地面に触れさせる。するとその切っ先から出た黒い泥が地面を穢し、うねり、一つの形を作り出す。

「ふおおお!完!全!復!活!牛鬼丸、ここに見参!」

先ほどブラストの砲撃に巻き込まれていた(と思われる)牛頭の戦士が、先のように大刀を背に抱え、火牙刀の前に現れる。

「複製……いや、新しく産み落とした……どうなってんだ!?」

目の前のガンバライダーの恐ろしい能力、これでもZクラス、忌み嫌われる禁忌の力を持つほどではないという事実が火牙刀の畏怖を更に掻き立てる。

「ほうけてる暇などあるのかァ!」

背負っていた大鉈を片手に持ち変えると、一瞬で跳躍する牛鬼丸、火牙刀に向けて降ろされる、巨体の質量を加えた大鉈の一撃。

それを

「ヌゥオオオオオオオ!」

「ん?よっと」

火牙刀はガンバソードのエネルギーを暴発させ、エネルギーブレードを何倍にも膨張させた一撃を牛鬼丸の胸にぶち込み、動きを停止させる。

「……え、死んだ?」

火牙刃の素っ頓狂な声が響く。

「あー……ったく、使えねぇな、曲がりなりにも魑魅魍魎の一味だろうに」

呆れたように頭を搔く仕草を見せる漆黒のガンバライダーだが、すぐにデスサイズに纒う泥を飛ばして、また牛鬼の形の泥を形成する。

「ぬぅおおおおおお!完!全!……」

「んじゃ!後はよろしく、仕事終わったし帰るわ」

「復!活!……ってえぇ!お、お待ちくださいヘルズ様!?目的はこの龍脈の確保では!?」

「それはお前らの役目だろ、俺の仕事は終わり」

ライジングギアに片手をかざし、出現させた光のゲートを通って姿を消す漆黒のガンバライダー。

復活してすぐに上司から見捨てられる牛鬼丸に少し同情を覚えつつ、剣を構える火牙刃。

「さてと、大物は狩り損ねたが……本来の目的はちゃんと果たさねぇとな!」

先程まで腐るほどいたショッカー戦闘員を捌ききり、新しいブラスターを生成して構え直すブラスト。

2人のガンバライダーを目の前にしても、牛鬼丸は後ずさる事もなく、仁王立ちを崩さない。

「……心得た!この牛鬼丸、殿を務めよう!さぁ来い戦士達よ!我が命尽きるまで、汝等の剣、我が受け止めようではないか!」

ガンバソードを構え、踏み込もうとするデウスは、ブラストに肩を掴まれ、動きを止める。

「悪ぃ火牙刃、ちょっと機動隊の支援回ってもらっていいか?」

「え、なんで俺が……そういうのはお前が適任じゃねぇの?」

「いいからいいから。閣下から現場でのデータが取りたいって頼みなんだよ」

すると、ちょうどノゾムの後ろに、ゲートが出現して、そこから見覚えのあるバイクが出てくる。

自立走行か、デウスの隣まで走ってくるとピタリと止まる。

「なるほど……デウカリオンの稼働テストか」

「そういうこった、行ってこい!」

デウスが跨り、アクセルをかける。

漆黒のバイクが他の戦場に爆走していく野を見守ったあと、ノゾムは改めて牛鬼丸と対峙する。

「今まで待ってたのは武士の情って奴か?」

「フン、武将たるもの堂々と勝負するのが道理というもの、それに体も十分に固まった。先はあの戦士に遅れをとったが、貴様の貧相な玩具で傷つく様な我ではない。どうせ先の一撃はもう使えんのだろう?」

牛鬼丸は鼻で笑う。

「さて……そいつァどうかな?」

するとブラストはベルトのカードケースから

なんと先刻まで火牙刃が持っていたカードネックレスを取り出した。

そのままベルトを操作する。

『limit over!READY?』

途端、ブラストの前に先程変身した時に出たものに似た光の壁のようなものが出現する。

しかしその壁には、先程のアーキタイプガンバライダーの文様は確認出来ず。

仁王立ちしたブラストのような、しかし顔の四角いパーツがポッカリと穴のように抜けているガンバライダーが描かれている。

「さて……葵正成の遺児の恩恵に、あやからせてもらおうか!」

ブラストは持っていたカードを壁のちょうど穴に重なる部分に投げつける。

カードがその穴に重なった途端

そこには、見た目の変わらぬ黒いガンバライダーがホルスターからガンバブラスターを抜いて、牛鬼丸を捉えていた。

「な______それは、まさか…何故だ!貴様らは、GRZ社は既にその力も、それを使いこなせる者も失ったはずだ!」

先程の余裕は何処へ、突然の再変身に驚きを隠せない牛鬼丸に、ノゾムは不敵に微笑み、その銃の引き金を引いた。

 

 

 

その頃、デウカリオンに乗ったデウスは、まだ残っていたショッカー戦闘員達を、ありがちな無双ゲームかのように黒タイツをひたすら轢き続けていた。

「あー……楽でいいや!」

後方から飛び込んできた戦闘員をガンバソードで貫きながら、前方から襲い来る戦闘員をフロントフォークに付けられたウイングで切り伏せる。

「イィーッ!」

多勢に無勢と察したのか、来た道に逃げ去っていく戦闘員の大軍。

「っと……潮時だな」

右翼をあらかた轢き殺したデウスは、撤退する戦闘員達を遠目で見守る。

「あの……追撃はしないので?」

おずおずと後方から出てきて、支持をあおぐ機動隊員達

「戦意を失ってんだ、それからは防衛戦じゃない、ただの殺戮になる」

____例え戦士であれど、殺戮の徒であってはならない

火牙刃は頭の中でその言葉を反芻させていると、ドライバーの共通回線に上空の飛行艇の着陸の旨を伝える通信を受信する。

「ガンバライダー殿!こちらでもCLOUD着陸の旨を了解しました。本部へ案内致します!」

先の機動隊の副隊長と思われる男が、後ろの部下達に敬礼を促し、自らも立派な敬礼を見せる。

「あー、やめろやめろ。俺はそんなタチじゃないんだ」

火牙刃は照れくさくなったのか、敬礼をやめろ、と左手で合図する。

「あぁ、それと……」

火牙刃はバイクを降りると、敬礼をやめた機動隊員の前で、変身を解く。

「俺は葵火牙刃だ。これから長い付き合いになるかもしれないから、よろしく頼む」

 

 

 

旧桜連隊司令部の建物を簡易補強したらしい機動隊本部の眼前に着陸した司令部の建物より大きい飛行戦艦の後方、車両用ハッチにて、先ほど合流した機動隊員達と火牙刀はただただ唖然としていた。

「なんじゃこりゃ………」

縦20m強、横は100mを軽く超える超大型飛行艇の格納庫に所狭しと並んでいるのは、幅1m、高さ20m程度の大きな「輪」、正確には輪の形をした謎の機械。それが何百も並べて置いてあると、流石に迫力が違う。

「お帰りなさい火牙刀さん、非常に良い戦績でした。ガンバライダーとしての本格的な戦闘はあれが初めてですか?でしたなら基本操作の訓練は必要無いようですね。予約していたシミュレーションルームでのチュートリアルはキャンセルしておきますので、これから支持があるまではフリーとなります」

と、圧倒されている火牙刀達を他所に、格納庫に現れたウアサハは火牙刀の腰のポーチに入っているドライバーに幾つかコードを接続し、片手の端末を弄りながら早口でブツブツ話している。

「なぁウアサハ……なんだこれ?」

「例のHDゲートです。思ったより小型ですが、まぁ良しとしましょう。」

HDゲート、とこれまた聞き慣れない単語を並べるウアサハ。

すると、管制塔に繋がる大型エレベーターの扉が開き、中から朝霧とセンナ、あと確か紅麗と呼ばれていた女が_____女?

あどけない中性的な顔立ちも丸眼鏡も確かに変わらず、しかしその格好は明らかにノゾムが纏っていたGRZ社男性用スーツそのもので。

先刻まで茶色だった長髪は、見るものを魅了させるような、憂い魅力に満ちている落ち着いた銀髪のショートヘアに変わっている。

「あ、火牙刀君お疲れ様でした。ノゾム君は単独で遊撃に出ているようで、あなたはそちらの隊員のゲートの設置作業の護衛お願いできますか」

朝霧の言葉に耳も貸さず、紅麗の顔をまじまじと見つめる。

「え、えっと・・・・すみません今持ち合わせはあんまり・・・・」

「いや別に金せびりに来たわけじゃねえわ!」

何故か財布を恐る恐る差し出された、これ、故意でもないのに間違われる側は案外つらいものだと皆知らないのだ。普通間違われることなどないし。

「・・・・こんなこと聞くのもあれだが,お前男なの?女なの?」

思い切って切り出した火牙刃だが、その選択をすぐに後悔することとなった。

突然訪れる沈黙、先まで作業音や隊員達の声でにぎやかだった格納庫の空気が一瞬にして張り詰めた。

その沈黙に呼応して、紅麗の顔がどんどん赤くなっていく。心なしか小刻みに震えているようにも見えなくもない・・・

「………そん・・・いです・・?」

「え?なんだって?」

「そんなに!!!男に!!!見えないのかってきいてるんですよ!!!」

いままでのおどおどした態度からは想像もつかない怒号にも見た悲痛な叫び声おあげた紅麗は恥ずかしさのあまり風のように格納庫から走り去ってしまう。

(あ、やってしまったか・・・・・)

それはこの場にいた人間の総意が起こした奇跡とでもいえばいいのか、誰の口からでもない、しかし確かに全員の声がこのだだっ広い空間を確かに満たしていた。

「…女心はわからないもんだな」

「いや男ですから」

火牙刃のうわ言をピシャリと切り捨てるのは鼻の先に絆創膏をつけたセンナ、多分先ほどのローリングアタックが主な原因だろうが今追及すると二人目の脱落者が出てきてもおかしくないので何も言わないでおくことにする

「・・・・・」

なにより、先ほど発言を無視された朝霧が、いつもの笑みの裏で火牙刃を射殺さんばかりに利かせていた睨み、否、「笑み」に内心ビビっていたのであった。

 

そんなこんなで朝霧にちゃっかり押し付けられた仕事を終えた火牙刃だが、心も体も疲弊しきっていた。

「はぁ・・・・」

と、野営地に設置されたテントの外で腰かけていた火牙刃の前にGRZ社のロゴが入ったカップが差し出される

「お疲れさまでした、まさか一人でゲートの運搬を行うとは、つくづく思っていましたが火牙刃さんはやはり馬鹿なのでは?」

「息をするように俺の心を抉るなよ・・・・」

事実、デウスに変身した火牙刃はあの巨大なリングをなんと一人で持ち上げ、飛行艇からここまで約一キロ、馬鹿正直に運んできたのである。

わざわざ飛行艇の搬入口に大型の運送用トラクターがあるにもかかわらず

しかも躍起になって機動隊員の制止も聞かず

更にはそのリングに接続する台を置いてきた結果ウアサハがトラクターを運転して設置台のみを持ってくる始末

「ハハハ・・・ホント笑えないぜ・・・」

と、うな垂れている火牙刃の後ろで突如閃光が走った。

反射的に腰にあったライジングギアに手を掛ける火牙刃、だがその閃光の出所を見て、動きが止まる

「なぁウアサハ、あのでっかいリングなんで光ってんだ‥?」

リングのすぐ下では朝霧と機動隊員の複数人、そしていつのまにか復帰した紅麗が操作台に群がっている

「あ、開通したようですね、次は搬送作業がありますので準備をお願いします、今度はもっとわかりやすいところに機材を設置しておきますので」

「開通・・・?搬送・・・?」

話がトントン進みすぎて何言ってるのか理解が追い付かない。

とてとてと人の群れに向かって走るウアサハに着いていくと、それに気づいた朝霧がこちらに顔を向ける。

「おや火牙刃君、ご苦労様です。先程荒っぽい運ばれ方をされたハイパーゲートの稼働テストをしていました、てっきりもうダメかと思いましたが、案外使えるものですね」

「もうその話はやめてくれって……んで?これは?」

すると、朝霧が目をぱちくりさせる。まさしく鳩が豆鉄砲を食らったような顔だが。

「もしかして、何一つ説明を受けてないと?」

「むしろ俺にどれを説明したか数えてみろよ」

「はー、なるほど。よくよく考えたらウアサハにその類の話を教えるように言ってませんでしたね、申し訳ない」

そう言いつつゲート台にある電子パネルを耐えず操作する朝霧は、空いている手で器用に自分のタブレットを操作し、ドキュメントファイルを開いて火牙刃に渡す。

「外交部の移住計画において最も重要視されたのが、エンブレイス及び他開拓予定地との交通手段です。空路、航路、陸路。そのどれもがショッカー連盟に襲われるリスクと隣り合わせになりますし、かと言って武装したガンバライダーを常に配備しておく余裕もありません。そこで、ガンバライダーにも採用されているハイパージャンプシステムを使う事で、ゲートを通してエンブレイスと各地域を直接接続する事にしました。電力供給については戦時下に無理やり開通した地下のパイプラインが幸い生きていましたので、それを無理やり拝借することでハイパーゲートの常時稼働を実現しています。これにより我々はゲート近辺を護衛する機動隊を配備するだけでいい。これまでの方法と比べて人的資源が大きく抑えられました。後は十年もすればエンブレイスと同等の自衛力を各地域に構築することが可能ですし、我々は政府に対して恩を売ることが出来る。いい事だらけのプロジェクトですよ」

膨大な情報量を表示する資料を見ながら朝霧の思ったよりわかりやすい簡潔な説明を聞く火牙刃だったが、一つ不可解な点を発見する。

「待て、政府に恩だと?どういう事だ。そもそもこの国に政府なんて呼べるもんは全くと言っていいほど存在しないだろ、それこそお前らの会社がやってる事が1番政府っぽいがな」

「……近いうちに、時期としては1年以内にエンブレイス内での行政を務める機関がGRZ社の後ろ盾を得て設立されます。戦後の無統治国家を今更になってよく思わない連中が出てきたようで」

呆れた様子で頭を搔く火牙刃

「今になって政府新設だと……?ったく、また戦争沙汰はゴメンだ、今度は何カ国が核汚染地域になると思ってやがるんだ」

「……お言葉ですが火牙刃君、戦争は起きるべくして起きたものです。君たちの様に事の顛末しか知らないものがあの時起きた事をとやかく言う権利は無いかと」

「……」

「と、これは失礼しました。火牙刃君も先程の機動隊の皆様と共にエンブレイス内からの物資受け入れの準備をお願いします、何分人手がどれだけあっても足りないものでして」

「はーいよ」

それ以上何も言わずにゲート近くの格納庫へと歩を進める火牙刃。

しかしあの時の、朝霧の声が突然低いトーンへと変わり、氷のような鋭さを持ったあの瞬間を一分たりとも聞き逃さなかった。

 

「あ、お兄さん!」

「お、マサヤ!良かった、元気にしてたか!」

ゲート前で物資受け入れ作業を開始していた火牙刃の前にゲートを通って見慣れた子供が顔を出した。

センナから聞いた話なのだが、アクートとの戦闘後ぶっ倒れた火牙刃を運ぶついでに、ノゾムがマサヤのGRZ社での保護申請を出してくれたらしい。家に一人でいるのもどうかと言うことで、センナと仲のいいスタッフが数人ついて社内探検をしているらしい。

「って、お前なんで来たんだ?連れのスタッフさんは?」

「あっちで色々と話し込んでるよ。その間折角の機会だしお姉ちゃんやノゾムの兄ちゃんに会って来いって」

「ん?マサヤ、あのノゾムと知り合いだったのか?」

歩くスピードをマサヤに合わせながら、センナ達のいるテントを探す火牙刃は、彼らの意外な関係性を知る。

「ノゾム兄ちゃんはね、僕が生まれる前から僕のお父さんが担当してた第1セクターでガンバライダーをやってたんだって、そのせいでお父さんとお母さんが死んだ後もちょくちょく面倒見てくれたんだ、だから僕にとってはお父さんみたいなものかな」

「ほー、あいつそんなに長くGRZ社にいるのか……お、いたいた」

マサヤの話が終わる頃にテントについた火牙刃達が見たのは、テントの外のベンチでだらしなく寝っ転がったノゾムと、その後ろで恐らくノゾムのであろうドライバーを分解しているセンナとウアサハだった。

そういえば、あの時低よく追い払われてからノゾムを全く見てなかったが、今まで何をしていたのだろうか?

たわいのないことを頭の片隅に浮かべながら、パタパタ姉に向かって走っていくマサヤを見守る

「お姉ちゃん!」

「きゃあ!?ってマサヤ!?何でここに?って言うか美空さん達は?」

予想外の人物の登場に、作業の手を止めるセンナ、その悲鳴を聞いてノゾムもベンチから起き上がる。

「んお?チビじゃねぇか!お前、なんでこんな所にいるんだ?」

「美空さん達がこっちにこなきゃいけないから、折角だしお姉ちゃん達に顔見せて来いって」

センナの腰に抱きつきながら答えるマサヤ、その一方で盲点だった、とばかりに頭を抑えるのはノゾムだった。

「しまった、そりゃ監査員の美空さんはこっち来るわ……当たり前だ……」

「まぁいいんじゃねーの?こっちだって危険こそ多いが、人手は多いだろ?むしろ目に見える範囲にいた方がお互い安心するだろ」

今の今まで雲隠れしていたノゾムに文句を言わんと近づいてきた火牙刃だったが、流石に子供の前でそんな悪態をつくほど腐りきってはいない。笑いながらフォローを入れる。

が、その瞬間ノゾムが声色を変えて、まるで小馬鹿にするように話を続けた

「よく言うぜ、その危険一つ排除できない甘ちゃんの癖して」

「……なんの事だ?」

火牙刃が睨み返す。

「とぼけんなよ、さっきまで俺はお前が逃がしたショッカー戦闘員の残党の大掃除してたんだよ。全く最新のライダーズギア使ってそのザマとはな、お前ガンバライダーには向いてないんじゃないか?さっきセンナから聞いたがハイパードライブエンジンの適性も無かったみたいだな、どおりでZ等級のドライバーな訳だ」

その言葉を聞いた時、火牙刃はハンマーで頭を殴られたような感覚に陥った

「大変だったんだぜ?蟻ん子みたいに散ってった黒タイツ共を全部見つけて処理すんの、しかも何故か知らんが戦闘意欲がない奴らばっかり、お陰で何匹か逃がしそうになっちまって……」「待てよ」

ノゾムが気だるそうに話す中、火牙刃はノゾムの服の襟を掴む。

「……何だよ」

ノゾムの目の色が明らかに変わる。

「……殺したのか、逃げてったあいつらを」

「そうだって言ってんだろ?外交部のヤツらは頭まで火薬で出来てんのか?大体……」

ノゾムがその続きを話すことは叶わなかった。次の瞬間には、火牙刃の拳がノゾムの顔に鋭い一撃を放っていたのだ。

「ってぇ!お前何すんだよ!」

「ふざけんな!」

火牙刃の悲鳴にも似た怒号に、周囲にいた職員や機動隊員が手を止め火牙刃達の方に目を向ける。

「あいつらはもう戦う気はなかった、これ以上戦ったところで無駄死にするだけだって、分かってたんだ!だから逃げ出した。人の命を奪う事より自分の命を守る事を良しとした、だから俺も追わなかったんだ!それなのにお前は……」

「それが甘いって言ってんだよ!」

先の火牙刃の怒号に負けない大声が響く。

「アイツらは人の命を無闇に奪おうとした罪人だ、てめぇのそれは優しさなんてもんじゃない。命を奪う事に臆病な甘ちゃんの戯れ言だ、てめぇの甘さがお前を殺すだけなら俺も文句は言わねぇよ。だけどな、その甘さは今はマサヤやセンナを殺すかもしれないんだ、お前が手に入れた力の意味を考えてみろ!」

「マサヤやセンナだけじゃない、命を守るための力だろ!」

「ちがう!命を奪うための力なんだよ!俺も、お前も、あのヘルズも!皆に等しく与えられた罪深き兵器なんだよ、この力は!」

互いに睨み合うノゾムと火牙刃、永遠に続くとまで思われた緊張は、しかし火牙刃が乱暴にノゾムを突き放したことで瓦解した。

「……これでよく分かった、お前とは絶対に相容れない」

「こっちのセリフだ、馬鹿みたいな理想論に振り回されやがって」

そのままテントの中に入っていく火牙刃とそれを見送るノゾム。

誰もがその光景を見守っていた後ろで、ウアサハのノゾムのドライバーの修理は着々と進んでいた。

 

その日の夜、機動隊のテントから少し離れたゲート下の簡易プレハブにも2人のガンバライダーのいざこざの話は伝わってきていた。

やる事が山積みの中で面倒事を起こさないで欲しいのだが、と朝霧拓人は面倒臭そうに溜息をつく。

「ははは、あの二人、やはり息が合わんか。私の言った通りになったぞ、朝霧。帰ったら研究室の掃除でもしておくれよ」

笑いながら朝霧に語りかけるのは、淡いクリーム色の髪を靡かせる黒衣の女性。病弱さすら感じさせるその白い肌とは裏腹に、してやったりとしたり顔をしている

「……彼らのわだかまりは出来るだけ取り除いておきたい、何か案はあるので?」

「良かろう、多少なりとも考えがある。最悪の事態にはならないようにするが、もし上手くいかなきゃいきなり手詰まりになるが」

そう言って黒衣の女性はハイパーレーダーに接続されているモニターの接続を朝霧のPCに移す。

途端、険しい表情になる朝霧。

「やるだけ価値はある、が得るものは信頼、失うのも信頼、はっきり言って無駄足になってもおかしくない訳だが」

また意地悪そうに微笑む黒衣の女性。

「そうして得た信頼はかなり強固なものになる。後の展開を考えれば、これの成功は大きな一歩です」

「あぁ、あくまで内密にな。誰かに悟られようものならまずうまくは行かないだろう」

「…それなら俺が立ち回ろう」

朝霧と黒衣の女性以外は誰もいないプレハブ内で突然後ろから聞こえた声に驚愕する──ことなどなく朝霧はキャスター付きの椅子を後ろに転がし現れた男に座るよう促す

「どうでしたか武蔵さん、あちらの状況は」

武蔵、と呼ばれた男。零課の頭を務める隊長こと獅子堂武蔵は、ドンと椅子に深く座り込み、咥えていたタバコを火消しに乱雑に突っ込む

「どうもこうもねぇ、七年前から変わらず荒れっぱなしだよ」

「それは良かった、酷くなってはないのだな、安心したさ」

その場の空気に似合わずケタケタと笑う黒衣の女性

「それで、お前に悟られないようになんとか出来るのか?お前は知らないだろうが奴らは案外お前への信用が薄いんだぞ?」

「構わねぇよ、どうせ終わった後はお互い使い使われの関係だ、思い入れがあっちゃ困るのは皆一緒だろ」

「……それではお願いします、正直頼めるのはあなたくらいしかいないですので」

そう言って古びた鍵を武蔵に渡す朝霧、それを受け取った武蔵は、気だるそうにプレハブを後にして夜闇の中に消えた。

「……スカアハ、あなたはどちらに掛けますか」

モニターとにらめっこしていたスカアハ、と呼ばれた黒衣の女性は朝霧の方を向いて、ニヤリとイタズラをした子供のように微笑んだ

 

「____当然、私は成功だとも。どちらに転んでも、な」

そしてモニターの方に顔を戻すと、またポツリと呟いた。

「何せ、お前が失敗はさせんだろう、なぁ?ヘルズ」

 

 

「___さぁて、どうかな?」

光の届かない闇夜の中で、聞こえているはずもない声に応えたヘルズの後ろには、生命の定義を覆すような歪な命が腐るほどに群がっていた。

「戦争が始まるぜ。止めてみろよ、影の国の女王様」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。