緋弾に迫りしは緋色のメス   作:青二蒼

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霧ちゃんはサイコにカワイイ

ちょーっと話の切りどころがなかったので短めですが投稿。

あ、明けましておめでとうございます。

軽い新年の挨拶ですが今年も私の小説をよろしくお願いします。


105:楽しい日常

 

 引き続き武偵高を離れて一般校での私――赤桐 亜金に戻る。

 そして相変わらずのキンジは授業中の様子がおかしい。

 生活音には多少慣れたみたいだけど、授業の内容には慣れず。

 微分積分とか普通でしょうに。

 そっちの計算より犯人を捕らえる計算の方を重要視してるせいだけどね。

 昼休みに入るところで私はいつも通りに棒付きの飴を舐めてキンジの傍に。

「本格的に勉強教えようか? 何が目的かしんないけど見てらんない」

「そ、そうだが……大丈夫だ。ちゃんと当てがある」

 声の震えがあるにしても当てがあるようには見えないんだけど?

「本当に~? 貸しとか借りと気にしてたらその内前に進めなくなるんじゃないの?」

「何でそんな心配してくれるんだよ?」

「言ったでしょ、見てられないって。見てるこっちが恥ずかしくなってくる」

 と、私が言ったところでキンジは顔をしかめる。

 同時にキンジの携帯にメールが届く。

 それからすぐにメールを見たところでどうしようか、キンジは悩む。

「ああ……背に腹は替えられないよな」

「何が?」

 そう考えたところで望月が近付いてくる。

「赤桐さん、ちょっといいかな? さっきの授業で聞きたいことがあって」

 そしてここまであからさまだと私も気付く。

 悪意はないけど、嫉妬してる感じ。

「いいよ、あっちで話す?」

 そのまま私と望月はキンジから離れてさっきの授業で使ってた教科書を取る。

 教科書を広げながらも私は本題に入る。

「なに、望月さん?」

「えっと……赤桐さんは、その……土曜日に予定あったりしないかな?」

「予定? ないけど。その時に遠山の勉強を私が教えようかと思ってるし」

「へっ!??!」

 嘘が()けない性格だね、本当。

 それに正直に私がするから邪魔しないで、と強引にいえる性格でもないし。

 優しくて無垢だねえ……からかい甲斐があると言うか。

 

 汚したいというか……解体(バラ)したいというか……

 

 ――きっと中身も綺麗なんだろうな。

 思わず萌の首に手を伸ばしつつもそのまま肩に手を置く。

 ……あっぶな……衝動(マイナス)に引っ張られるところだった。

 影響が出てる。

 それはそれとして――

「あー……望月さん、もしかして遠山に」

「な、な、何の話ッかな?」

「わあ、わっかりやすーい」

 ここまで分かりやすいのは神崎くらいだ。

 まあ、あっちに比べて素直な反応ではあるけど。

 でも同時に哀れに思う、キンジに関わるなら平穏な生活は終わって奈落に落ちるような終幕を迎えるかもしれない。

 その事を彼女は知らない。

 実に……無知で、堕とし甲斐もある子だよ。

 今は幸せな思いと夢を魅せてあげよう。

「仕方ないから土曜日は予定あることにしてあげるよ。その代わり、進展したかどうかは聞かせて貰おうかな?」

「うぅぅぅ……複雑……」

 望月は私の言葉に両手で顔を覆って赤くなりそうな顔を隠す。

「いいでしょ、それくらい?」

「……分かりました」

「それじゃあ、健闘を祈るよ」

 私はそれだけを言って再びキンジの所へ。

 それからキンジは申し訳なさそうな顔をする。

「その、亜金……さっきメールがあってな勉強の当てが出来たんだが」

「そっか、私もさっきメールが来て土曜日に予定が出来てね。勉強なら学校にいる放課後でもできるし」

「あ、ああ……気を遣ってくれてありがとうな」

 キンジがそう言って私は席に戻る。

 さて、少し暇が出来そうだけどどうしたものかな?

 武偵高に戻って少しは友達や家族の様子でも聞いておこう。

 みんな頑張ってるかな~?

 

 

「ってな訳で連絡してみたのさ」

 私は少年の声に変えてある人と連絡を取る。

『相変わらず唐突ね~。……私も暇ではないのだけれど?』

 相手はR.I.P。

 穏やかな口調で暇ではないと言いながらどこか嬉しそう。

「そう言う割には嬉しそうだな」

『それはほら、私は人気者だから……貴方とは別の意味でね』

「本来の意味なら確かにそこまで人気ではないさ。我々の意味では成功してると思うがね」

『それで? 本当にそれだけなの?』

「ああ、それだけさ。それとも雑談も出来ない程に忙しいのか? フランスの眠り姫さんは」

『眠り姫というより眠らせ姫なんだけどね。別にそういうことじゃないわ~。息抜き出来てるのかな~って?』

 さらっと本質を突いてくるね。

 だからこそ彼女は恐ろしいんだよ。

 私からすれば好ましい、だけど。

「そりゃあ、息抜きは出来てる。欲求は不満だが」

『なら大丈夫ね。ロンドンを"眠る街"にする日を楽しみしているわ』

 私達の大それた話、お姉ちゃんの筋書(シナリオ)通りの計画。

 それを誰も知らない。

 全てはあとのまつりになって気付くだろうからね。

「そうだな。幸せと最悪のシナリオ(ゲームオーバー)は一緒にできるさ」

『そうね。それはそうと、私も息抜きをしてみたいわね。貴方のお姉さんの話だと香港(ホンコン)は良い舞台になるって』

「ああ、なら好きにするといいさ。いい前座になるだろう」

『そうね』

「助けは?」

『いらないわ。今まで"1人"だからこそ上手くいってた。そうでしょ?』

 確かにね。

 その言葉に私は共感する。

「みんな我がままだからな」

『ええ、そう言うことよ。私の好きにさせて貰うわ~』

 それから通話は切れる。

 

 ◆       ◆       ◆

 

 全く本当に大それた人ね~

 だからこそ、手を組んだとも言えるけれど。

 試験管を軽く振って反応を見る。

 ん~……気化させても効能を持たせる。

 簡単に思えて難しいわね~

 でも、試作品としては充分だしやっぱりテストはしないといけないわよね~

「博士? ペロー博士?」

 と、女性の助手が入室してくる。

 バインダーを持って次の患者のカルテ……処方箋かしらね。

「ええ、どうしたのかしら~?」

「次の方の処方箋です。既存の薬剤では効果がないらしいので……」

「へ~そうなの~」

 言われながらバインダーを受け取る。

 67歳男性・症状は心筋梗塞末期。

 既存の薬物治療で使用されるである抗血小板凝縮薬や脂質改善薬も効果は無し。

 それから体力的に手術を受けるのは難しい。なるほどね~。

 ……この人はもうダメね~

「いいわよ~。頑張ってみるわ~……でも、どうしようもない時はどうしようもないものなのよ?」

「またまた……博士は薬剤界のパイオニアですよ」

「そうね~、取りあえずは最善は尽くすわ~」

 それから一礼して助手は去る。

 パイオニアね~

 私は医学会の権威……って訳ではないわ。

 それでも薬剤に関しては自信があるだけ。

 私には大それた犯罪を企てる知能なんてとてもない。

 ジャックにはいつもお世話になってる。

 彼女の知識と財力……そのお姉さんの影響力は不可能を可能にする。

 もう、私は人に苦しんで欲しくない。

 苦悩、苦痛、病、寿命、差別、比較、血統。

 最初の4つはともかく、そう言った人の醜いモノからも私は解放したい。

 そうして思いついた結果……私の"救済"は完成された。

 きっと世界の人は救われるわ~

 眠るように、二度と目覚めない夢のように。

 童話のように眠るように死ねるなんてきっと幸せだと思うもの。

 だからこその私はR.I.P――Rest In Peace――安らかな眠りを与える者。

 香港行きのチケットは無事に取れた。

 それに香港の方に用がない訳ではないのだしね。

 きっと実りのある救済になるでしょう。

 救済を持ち出すのはロクでもない存在?

 そんなのとっくに私自身が知ってるわ。

 ええ、(ジャック)の言葉を借りるならきっと楽しく眠れるでしょう。

 

 




エニグマ1人がちょっとだけ登場。


初期メンバーだしきっと強いんだろうな~って?

ええ、まあ……人の救済持ち出す人なんて大概ロクでもないに決まってます。

だって彼女は自分を救うことは諦めてるから。

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