すみません。またしても書いてる内に長くなってしまったので話を分けました。
ちなみに今回は会話らしい会話はありません。
エキサイト翻訳とあとは他のサイトを駆使してロシア語を表記してます。
夏祭りから随分と経った。
大体、4ヶ月くらいかな? つまりは12月で、もう終わろうとしてる。
「Ля~Ляляля~♪」
陽気に鼻歌を歌いながら、私は薄暗い通路を静かに堂々と歩く。
歌って言っても単に『ラ~ラララ~』って言ってるだけだけどね。
私が今いるのはロシアの辺境にある研究所。
首都モスクワから北に離れたところ。
そして、今の私はロシア人なんだよね。
研究員の一人である女性に成り済ましてこの研究所を破壊工作中と言う感じ。
ここの主な研究は
ただの人工天才じゃないんだよね~。
お父さん曰く、イロカネに同調する子を育てる施設なんだってね。
まあ、私もしばらくここの職員に成り済ましてたから充分に分かってる。
いや~……面白かったな~。
まさか、肉体を半
そこら辺はアメリカとは違うアプローチだったね。
イロカネの同調は二の次で、結局はアメリカと同じ戦える兵士を育成する事に専念してたっぽいけど。
いいね~いいね~。
面白いね~。
これだから、人を
………………。
そうだ……そう言えば人工天才も処分の対象に入ってるんだった。
確か、この通路の向こう側のドーム状の建物――実験施設にいるんだよね。
「
突然の声に振り向いてみると、どうやら施設防衛の兵士らしい。
まだ残ってたんだね。
人数は2人、防弾チョッキを着て、こちらにAK47の後継銃――AK74を構えて発砲する。
通路じゃあ確かに避ける場所なんてないし、向かってくるとしても一方向だけだから撃てば当たる。
だけど――弾の密度が同じ訳じゃない。
私には見える。列を成して飛んでくる弾丸の薄い場所が。
だから私は両手にサバイバルナイフを持って、そこに向かって獣のように駆ける。
当たりそうな弾丸は切り裂き、迫る。
私が近づく度に二人の兵士の顔が驚きと恐怖に染まって行く。
距離が縮まり……兵士と兵士の間を風のように通り抜ける。
そして、少しの静寂。
彼らに横顔が見えるくらいに後ろを向くと、何も体に変化がない事を不思議に感じてるのかお互いに顔を見合わせてる。
その反応に私は思わず笑みが零れる。
プシュッ――
そんな音が僅かに聞こえた時には、彼らの首から鮮血が流れる。
そして糸の切れた人形のようにバタリと倒れ、沈んで逝く。
再び静寂に包まれた通路を私は進む。
しばらくして、重厚そうな隔壁のような白い扉へとたどり着く。
電気・通信系統は既に破壊した筈なんだけど……予備電源が作動してるのか扉を開けるためのパネルが動いてる。
なら、IDカードとパスワードで開くかな?
カードスキャンにIDカードを通して入手してる8ケタのパスワードである数字を打ちこむ。
すぐに反応があり、下から扉が開いていく。
中に歩いていけば、そこはまるで闘技場のように広い空間。
端から端までは20メートルかな? 薄暗くて分からないけど、そのぐらいはありそう。
さてと、この先に目的の人工天才が……いや、向こうから来てくれたみたいだね。
手間が省けたよ。
薄暗いながらも確かに見える人影、そしてこちらを確かに見ている感覚がある。
でも……その2つの
どれもが機械的で空虚だね。
哀れな自動人形。
悪いけど、人間ならともかく人形に興味は無いんだよね。
「
この声は……研究所の主任だったね。
どうやらこの空間に一つだけある、防弾性のマジックミラーの向こう側にいるっぽいね。
取りあえず、この人形を壊して残りの職員にも死んで貰わないといけないから、早いとこ終わらせたいんだけどね。
「……
向こうはそうさせてくれない……か。
静かに聞こえる声は少女のもので、段々と見えてきたその姿も10代のロシア人少女。
その背中には何か大きな箱状の物を背負ってるように見える。
彼女がここの研究所で作られた人工天才で名称は『
名称と言っても、ただロシア語で6とつけただけ。
つまりは人工天才の6体目。
残りの5体は知らないけど、十中八九もう処分されてるだろうね。
なんて考えてると、向こうはいつの間にかガトリングガンを2門も構えてる。
しかもアレ、YakB-12.7だったっけ?
ロシアの戦闘ヘリ『ハインド』に搭載されてる機関銃……4銃身のガトリングガン。
随分と物騒な物を装備してるんだね~。
しかもさすがは体を半機械化してるだけあって、あんな重い物を片手で持てるなんて……
だけど、1門は無力化させて貰おうかな?
見えない速度での早撃ち――『
M500でやるとは思わなかったけどね。
ドウッ! ドウッ!
ガキン!
おかしいな? 1発は心臓付近に撃ち込んだのに弾かれた音しかしない。
しかし、やっぱり2発しか撃てないね。
まあ、そもそも早撃ちに適した銃じゃないし、仕方ないか……
と、考えてる場合でもないか。
聞こえてくる駆動音――来る。
ヴヴヴヴヴヴヴッ!!
薄暗かった空間が写真のフラッシュを連続で焚いたみたいに、明るくなる。
そして迫る弾丸を私は右に避け、走り続ける。
私の軌跡を追うようにして弾丸が引き続き迫る。
銃口に撃ち込んだもう1門の方は、暴発する可能性を考慮して予想どおり撃たないか。
それどころか既に捨ててる。
心臓が無理なら……頭や首ならどうかな?
走りながら再び2発の不可視の銃弾を放つ。
途端にガトリングの銃声が止み――
ギンッ! ギンッ!
金属音が2回響く。
さすがに頭部や首は守ったか……
成程ね。最初の弾丸はプロテクターつまりは鎧みたいな物があって、防がれただけだったか。
だけど首や頭部は防護してないっぽいね。
しかし、よりにもよってガトリングの銃身で薙ぎ払うようにして防ぐなんて、どんだけ馬鹿力で反応速度がいいんだか。
だけど発砲が止んだ。距離を詰めるチャンス。
ガトリングの駆動音がする前に
行けるかな?
このまま懐に入って首を狩っちゃえば――
そう思って左手にスペツナズ・ナイフを取り、懐に入って首に向けて振るう。
ガキンッ!
再び鳴り響く金属音。
右手の手甲みたいので防いだか……
チリチリと金属同士が擦れ合う音を響かせながら、人形の顔を見るけど――やっぱり空虚だ。
外見的には人形のように整った顔立ち、少し癖のある白に近い金髪に薄いグリーンの瞳ね。
全く、私の邪魔なんかしないで人形らしく寝てて貰いたいんだけどね。
と言うか、もうチェックメイト。私は右手の銃が残ってる。
向こうは左手にガトリングを握ってて防ぐ手は見当たらない。
本当は刃物で壊したかったけど、お父さんからの任務が最優先だからこれで終わり。
「
ロシア語で『さようなら』を告げて、銃を向けようとした瞬間に人形の左手が素早く動く。
やっぱり反応速度が凄いなあ……まあ実際、半分は機械で出来てるから何もおかしい事は無いんだけど。
ガトリングを左手から離したかと思うと、そのまま左手が迫ってくる。
いや、手首から何か刃のような物が伸びてる!
ヒュン!!
そんな風を切る音と共に私の顔へと迫る。
危なっ!? 首を動かして間一髪……何とかかわした。
髪を掠めちゃったよ。
素早くバックステップで人形から離れると同時にスペツナズ・ナイフの刃を射出する。
強力なスプリングで飛ぶ刃が人形の首に向かって行くけど、またしても右手の手甲で防がれる。
そして、そのまま右手を私に向けてくる。
なに? ロケットパンチでもしてくるのかな?
と思ったけど、手甲の先には銃口が見える。
防具かと思ったら、同時に武器だったんだ。
ココ――
そう思ってると、手甲からマズルフラッシュがすると同時に弾丸が飛んでくる。
ま~た距離を稼がれるよ。
後退しながら飛んでくる弾丸を左右にかわす。
もう、面倒だな~……
刃を射出したスペツナズ・ナイフを捨てて、代わりにグロックを抜く。
フルオート射撃でお返しするけど、やっぱり白いプロテクターで弾かれる。
今のでマガジン1つまるまる使っちゃったよ。
フルオートで距離が開けたまま、顔に当てるのは私でも厳しいか。
セミオートじゃあ火力負けするし、防がれもする。
弾幕をかわしながら思考するけど、どうしたものか……
フラッシュ・バンを使おうと思ったけど、多分あの
大体、私は真正面で戦うなんてあんまり好きじゃないんだよ。
やっぱり、固めた相手に有効なのは一点集中かな?
反応速度的にもまあ、間に合うでしょ。
それにこの方法なら"プロテクターごと"撃ち抜ける。
M500に残ってる最後の弾丸を
そして、またしても右手の手甲で防ぐ。
当然、銃撃は止む。
私はその瞬間を逃さずにすかさずグロックを仕舞い、M500専用の弾である.500S&Wを空中に浮かせる。
そして、シリンダーに入ってる弾を抜いてからの空中リロード。
足を止めて、西部劇のガンマンがやるように腰元で構える。
名付けて、"継ぎ矢"ならぬ継ぎ弾。
――
ドドドドドウッ!
あまりの連射速度にいくつもの銃声が重なる。
そのまま弾丸は綺麗に一列に並びながら人形の心臓へ。
プロテクターがあるから防ぐ必要がないと思ってるのか、人形は機械的な動作で手甲をこちらへと向ける。
やっぱり所詮は人形だね~
私はもう避ける必要がないから、このまま立ってても良いけど――向こうはどうだろうね。
ガガガガガン! バキンッ!!
金属音と共に何かが砕ける音が空間に響く。
ま、そうなるよね。
プロテクターで止まろうとした最初の銃弾が次弾によって釘を打つように撃ち込まれる。
それが連続で4回なんだから、この結果も当然だよ。
心臓を撃たれた人形は衝撃で背後へと少し飛ぶ。
少し手間取っちゃった。
あと、この技はあんまりやりたくないね……
腕が痺れるし、腕自体が使い物にならなくなっちゃう。
この技、他の誰かに教えようかな?
使う使わない以前に私には合わないや。
「
この声……研究所の主任ってばまだいたんだ。
さっさと逃げてればよかったのに、もしかしてこの状況でも研究データを取ってたのかな?
ありがたいことだけどね。
さてとここで人形に使わなかった貴重な貴重な武偵弾を取り出して、グロックのマガジンに詰める。
使うのは
曲がりなりにも研究所の実験場所だから1発じゃあ不十分だろうし、中にいる人を殺す事は出来ない。
あそこに行こうとすれば普通に逃げるだろうしね~
それにあの人形のせいで時間も食い過ぎた。
本当は切り裂きたかったけど、もういいや……あの人形で我慢しよう。
「と言う訳で、さようなら」
躊躇いなく銃を防弾性のマジックミラーに向けて放つ。
瞬間的に轟音と爆発、そして爆発の余波が私の体に伝わってくる。
2回の爆発で完全にマジックミラーは砕け散り、もう1発は部屋の中で弾けた。
これで生き残る可能性は完全に無くなった。
あとは、あそこの人形だけ……
建物が崩れる事は無いだろうけど、楽しんでる時間はあんまり無い。
は~あ……何の反応も無い人形を切り裂いても面白くないんだけどね~
と言うか、もう死んでるか……
臓器とか装備とか剥いでおくかな~。
…………………。
……何だろうこの違和感。
確かに心臓を撃ち抜いた筈だけど、人形の胸が上下に動いてるのが近づく度に分かる。
胸が上下に動いてるって事は……生きてる?
もしかして、プロテクターのせいでずれたのかな?
なんて思いながら、さらに近づいて行くと確かに生きてるのが分かった。
息を荒げてぼんやりしながらも、近づいたこちらに気づく。
そして――、
「……
たった一言、震えながらそう言った。
さっきまでとは何か違うな~
別の違和感を感じる。
そう……なんて言うのかな? 瞳に光があると言うか、意志があると言うか。
ああ、そっか。さっきと違って怯えてるんだ。
つまりは……そう。
私が今まで見てきた人と同じで、『死』に対する恐怖みたいな感じ。
死ぬ直前で恐怖だけど、感情が芽生えたのか……なるほど、なるほど。
そんでもってこの雰囲気が、理子に似てるんだよね~。
何となくだけど。
どうしようかな? お父さんからは
取りあえず手短に連絡しておこう。
連絡用の端末を取り出して、コールする。
『やあ、どうしたんだいジル君? 任務中に電話なんて珍しいね』
ほどなくしてお父さんから反応が返ってくる。
「うん。ロシアの人工天才の件なんだけどね~。殺さないとダメかな?」
『どうしてだい?』
「ちょっと、勿体無く思えてね。別に、処分しないといけないって言うのなら言われた通りにやるけど?」
『いや……君がそう思ったのなら僕は咎めはしないよ。君に好きにするといい。職員の方は全員言われた通りにしたのだろう?』
「そっちはちゃんと済んでるよ」
『なら、問題は無いよ』
「これも推理の内だったりして」
『ハハハ、そこまで万能ではないよ。結局は僕も人だ。神様ではない自覚はあるよ。それと人工天才の方はさっきも言った通りに君の好きにするといい。イ・ウーに連れてきても構わない』
「りょーかい」
お父さんは「フフ……」と小さく笑った後に電話を切った。
随分とご機嫌そうだったな~
よく分からないけどね。
さてと、まずは治療かな?
と思って彼女の方を見ると、いつの間にか気絶していた。
うん。運び出す前にやっぱり治療だね。
兵器紹介
YakB-12.7……ソ連の開発した4銃身のガトリングガン。ロシアの代表的な攻撃ヘリである『ハインド』に搭載されている。本体だけの重量は45kg。常識的に考えて片手で持てない。だけど、彼女はサイボーグだから大丈夫。
ガス圧駆動方式によって動いてる――つまりは外部の電源供給を必要とせず。単体で動かす事が出来る。
使用する弾は12.7x108mmで対物ライフルなんかに使用される弾丸。
スペツナズ・ナイフ……文字通りソ連の特殊部隊であるスペツナズが使用していたであろうナイフ。持つ所が円筒形になっており、その筒の中には強力なスプリングが内蔵されている。位置的に鍔(つば)の部分にスイッチみたいな物があり、押す事で刀身を射出する。
有効範囲は10mくらい。ちなみにほとんど使い捨て。再装填がしづらいらしい。
技解説
連続継ぎ弾(ロビンフッド)……簡単に言うとトリコの釘パンチ。同じ場所に弾丸を当てる技。かの有名なおっぱいリロードアニメ『グレネーダー』で同じ技をしてた気がする……。
由来はアーチェリーでは継ぎ矢、的に当たった矢に矢を当てる事をロビンフッドと言うので、それから取りました。その前にM500を連射したらきっと腕が痺れるじゃすまないと思うけど、気にしない。
最近思ったこと……金一の空中リロードってグレネーダーを参考にしてるような気がした。だから、なんだって話なんですけどね。