・夾竹桃が悪役
・主に夾竹桃視点
・前回と同じくほぼ再構成
あとは……なんだろう。
最近、私の描く悪役が原作よりも悪役してる気がするような気がします。
どうやら、理子は負けたみたいだね。
神崎が飛行機から出て来たのを見てそう分かった。
元々殺すつもりでやってたんだから、生きて帰って来た時点でそう判断出来る。
まあ……HSSのキンジと戦う時点で理子の手には余るんだけどね。
ある意味この結果も当然と言えば当然だけど、正直な話として神崎が死んでキンジが帰って来ると言うのが私の理想だった……
ま、さすがにそこまで都合よくは行かないか。
次は夾竹桃の方か、秘術の取得と間宮 あかりの拉致。
私が武偵高の管轄にいる以上、下手に白野 霧がいなくなってジャックが代わりに現れたら……まあ、簡単に怪しまれる。
それに、これは夾竹桃の仕事だし、情報提供ぐらいしか出来ないんだよね~。
ああ、もどかしいと言うか……私自身の手であの子を連れ去りたい。
と言っても、絶対に欲しいと言うほどそこまで
出来れば欲しいと言うだけであって、手に入らなかったら手に入らなかった。
間宮の技術だけでも私にとっては収穫。
それにあの子の心は神崎に向いている。
連れ去っても神崎の教えとか本人に、じゃなくて復讐に心が向かなければ意味がないんだよね。
そう言う意味で、あの子が絶対に欲しいって訳じゃない。
ちょっとでも隙があれば、漬け込むけどね~。
強引に連れ去ろうと思えば……あの子の妹や縁者を連れ去るなり人質にするなりで、脅せば……まあ出来ない事は無いけど。
何にしても、夾竹桃には頑張って貰わないとね。
そのために情報提供を色々として上げたんだから。
失敗したら……別にどうもしないか。
喋ってはいけない事ぐらい、何か分かってるだろうし。
◆ ◆ ◆
間宮 あかりからメールが来た。
文章は取引に前向きとも言えない「2人きりで話しがしたい」と言うもの。
ジャックの情報で、彼女が私の物になることは限りなく低い。
それに……決裂する前提なら、私も糸を張り巡らせる事が出来る。
間宮 あかりに私の居場所を教え、私はのんびりとシャワーを浴びて待つ。
そろそろ来るころかしら。
考えながら、私はホテルの浴室を出る。
「あら……?」
ホテルの部屋にいたのはあかり、私を見て赤面してる。
「えっちね。覗きをするのが趣味なの?」
「ち、ちがいますっ! メールにあったように話しがあって来たの! と、とにかく服を着て!」
銃を取りこぼしそうにしながら、あかりは言ってくる。
銃を持ってきて話しがしたいなんて……随分と強引な話なのね。
どうやら、ジャックの言う通り交渉を受ける気は無いわね。
考えながらも、私はクローゼットへと向かい、服を着ながら無駄だと思いつつも話を続ける。
「取引の内容はいたってシンプル。あなたの秘毒『
「……秘毒? 何か誤解してるようだけど、鷹捲は毒じゃない」
毒じゃない? トボケてるのかしら?
私は盗んだ間宮の秘伝書を見せるように、床へと放り投げる。
「これは……!?」
「そう。あなた達から盗んだ間宮の秘伝書よ。鷹捲の項目にはこうあった、『千本の矢をすり抜け、一触れで死を打ちこみ、死体に傷が残らない技』とね。そんな手段なあるとしたら、現実的に考えて
左手に手袋を
「鷹捲は、高難度の技。あたしが成功する確率は3分の1……そんな技をあなたが使える訳がない」
「……私はね、知らない毒があるのが嫌なの。私なりのこだわりと言うモノよ」
そう言いながら私は間宮に迫り、そして囁く。
「ねえ、
「……っ! 渡せない、あなたみたいな犯罪者には渡せない!」
私から素早く離れて、あかりは銃を構えて叫ぶ。
「いいのかしら……
「復讐? どう言うこと……?」
「――切り裂きジャック」
私の言った名前にあかりは目を見開いた。
そのまま私は続ける。
「あなたの母親を傷つけた張本人。その人物がいる近い場所へとあなたは行けるわ。2年前の復讐が出来るわよ?」
「――ッ?!」
「もし、このチャンスを逃せば……あなたのお友達や妹が傷つく事になるかもしれないわ。母親と同じようにね」
私の言葉に、あかりは揺らいでいる。
「どうやらジャックはあなたの事を気に入っているみたいだし、あり得ない話じゃない。もし……誰も傷つけたくないのなら私と一緒に来なさい。傷つけられる前にジャックを倒せば、復讐も出来るし、お友達も救う事になるわ」
手を差し伸べて、
「さあ、来なさい……あかり。あなたは"イ・ウーに選ばれた"」
しばしの間、静かに時間が流れる。
あかりは顔を伏せて、その顔に影が出来る。
私とあかりの間に一匹の蝶が舞い、外へと出て行く。
その瞬間に、あかりは顔上げて――
「――お断りします! そんな犯罪者がいる危険な所に、あたしは行かない!!」
確かな意志を持って、拒絶した。
浅ましい決断ね。
刹那……あかりは何かを投げる。
その後、激しい閃光と音が部屋を包み込んだ。
私はすぐに部屋の外へと飛び出る。
そして、空中に張り巡らした
ホテルのベランダに躍り出たあかりに向かって、言って上げる。
「夾竹桃の花言葉は『危険な愛』……あなたの決断が後悔するように、お友達をじわじわと
月の光と、私が飼ってる蝶が周りを包み込んでる中、宣言する。
「――さあ、遊びましょ」
そう言って私はあかりに背を向けて、ワイヤーを飛び移りながら降りて行く。
私を呼び止める「待って!」という言葉が聞こえるけど、素直に待つ訳がないわ。
パァン! と言う音と共に私の頬を掠める。
進行を止めてその方向を見れば、
「ふむ、もう少し待てばよかったでござるな」
火縄銃を持っている武偵高の制服と忍び装束を合わせたような姿をした子。
私のワイヤーを利用して逆さ吊りになっている所から、普通にワイヤーの上に乗った。
あの子が、ジャックの話していた風魔の子ね。
私は左手の手袋を外して、問いかける。
「一応、死因の希望は聞いてあげるわ。どっちにしろ毒死だけど、どう言う風に死にたい?」
「老衰して畳の上で大往生と決めているでござる!」
言いながら2枚の手裏剣が放たれ、私が乗ってるワイヤーを切る。
「あら大変」
落ちながら言い、ガス缶を投げる。
だけど、風魔の子は缶から出てくる煙に怯むことなくその中を突っ込んで降りてくる。
「……な、これは!?」
すぐに変化は訪れる。
驚いてる間にも風魔の子の服は段々とボロボロになる。
「空気で毒すると思った? 残念だけど、間宮の子が後悔するように戦ってるの。そんな面白くない事はしないわ。それに、あなたは風魔の子でしょ?」
「な、なぜ……
「残念ながら、あなた達の情報は筒抜けなの。交渉が決裂してこうなる事も既に予期していたわ」
これだからジャックは侮れないのよ。
他人に成り代わり、情報を聞く。
私よりも人の心に入り込む毒のような存在。
だけど、殺人鬼を
ギブアンドテイクの関係では、良好な相手とも言える。
逆に裏切れば、命を弄ばれて死ぬことになるんだけど。
「何にしても、あなた達がどういう作戦を立ててきているかも丸分かりよ」
「そんな……くっ!」
最後の力を振り絞るように私にクナイを複数投げてくる。
避けながら、私は風魔の子に近づく。
目の前へと迫り、彼女の特徴的なポニーテールを引っ張り地面へと横たわらせる。
「耐毒経験はあるみたいだけど、どうやら限界みたいね。どうせ、その口の布には防毒効果もあったのでしょ? そのためにわざわざ皮膚から侵入する毒ガスを巻いたのよ」
「本当に、某達の情報が……漏れて……」
「ええ、あなた達の知らない所でね」
そのまま口当てに手を掛ける。
「や、止めるでござる。素顔を見られるのは、
「だから見たいのよ」
風魔の子の言い分を無視してそのままむしり取る。
思ったよりも良い顔してるのね。
「素顔が見られちゃったわね……その顔を見て、満足したわ」
悔しそうに私から顔をそらす風魔の子に、私は左手にある弛緩毒の爪を彼女に突き立てる。
少しだけ声を漏らしたかと思うと、彼女は力無く倒れた。
ついでに彼女の耳に付いているインカムを拝借して、呼び掛ける。
「よくお聞きなさい、間宮の子……早めに決断しないとお友達が1人1人無力化されて行くわよ。あなたとバックアップにいるCVRの子も含めて、残り4人」
『――ッ!?』
通信越しに息を呑むのが聞こえる。
インカムを捨てる時に目に入った、スカートに付いた小さな物。
発信器ね。
さっきのクナイの一つに掠めた時に付いたのでしょう。
まあ、利用しない手は無いわ。
私は倉庫街へと歩き出す。
「夾竹桃……一体どこにッ!」
そう言って今度来たのは随分と長身で金髪の子ね。
「どこに逃げたんだ?」
アサルトライフルを構えながら、探すけれど、私が逃げるなんて……心外ね。
「あなたは誘い出された蝶。そして私はクモよ。どちらが捕食者かしら?」
そう言って背後から彼女のアサルトライフルのトリガーに南京錠を付ける。
私に気付いて素早く距離を取って構えるけど、撃てない事とその原因に気付く。
すぐさま彼女は銃を捨て、跳び上がり、私に回転を加えた両足蹴りを当てる。
まあ、跳び上がった時点でそんなモノは予測できたこと。
わざわざ当たった後のカウンターとして露出した彼女の太ももに毒を打ちこみ、私はワザと後ろへと跳んだ。
壁にぶつかる訳でもなく、ゴミ袋のクッションのおかげでそれほどにダメージは無い。
狙ってやったんだけどもね。
「すぐに毒されそうな体ね。私に肌を見せるのがどう言う事か分からないのかしら?」
「どう言う意味――ッ!?」
すぐに変化は出た。
彼女は艶めかしい声を出して、膝を着く。
「……こ、これ……なんだ、よ」
「媚薬よ。快感が強過ぎて体に毒だけど、好きな子でも考えながら楽しみなさい」
「どうし、て……んぅ!」
「あなたみたいな強気そうな子って、大体
マンガでもよくあるパターンよ。
……夏コミ、そう言えば考えてなかったわね。
早く原稿の構成ぐらい考えないと。
考えながらも彼女のインカムを取り上げる。
「残り3人」
そう言って、私は目の前の子に投げて返してあげる。
「あぅ……!!」
服越しに当たったとは言え、この反応。
ちょっと強過ぎたかしら。
(まあいいわ……)
私は一旦、その場を去る。
「ラ、ライカお姉様ッ!? 大丈夫ですか……?」
「
「は、はい……すみません、ですの。すぐに車に乗ってください」
随分と早くに来たわね。
「エサに釣られて、またエサが来る」
私は言いながら倉庫の影から出て、彼女達の前に再び現れる。
「そ、そんな……発信器の反応では、別の方角に……」
ハマーのような車の傍にいるのは、ロリータファッション風の制服に身を包んだ小柄な少女が私を見て驚く。
「逆手に取るに決まってるでしょう?」
煙管を吸って一服し、仕舞う。
私の言葉に悔しそうな顔をしながらも、さっきの長身の子――ライカが私の前に立ちはだかる。
意外に根性があるのね。
「麒麟、下がれ……」
「そ、そんなお姉様を置いてなんて」
ライカの言葉に麒麟はたじろいでる様子。
良い友情ね。
好きよ、そう言うの。
「ライカお姉様、早く車に乗って逃げるんですの!」
「そんな事許してくれるような奴に、見えるかよ……」
足をガクガクさせながらも彼女は守ろうとしてる。
本当はこんな無粋な事はしたくないんだけど、行動してしまった以上、そんなに時間は掛けてられないの。
ライカの意識が私から外れてる
「――お姉様、前!」
麒麟の言葉に私の方へ向き直るけど、もう遅いわ。
トン、と軽く彼女の肩に触れるだけ、
「ンあっ――!!」
媚薬に
私はそのまま歩みを進める。
そんな私に、カンフーの構えで立ち向かおうとする麒麟。
「
そう言って私に飛び掛かって来る。
……無謀ね。
飛んできた右手を私の左手の爪が刺す。
「……あ、あれ? お姉様が、3人?」
「幻覚を見せる神経毒よ。後遺症とかは残らないから安心なさい、すぐに効果は切れる」
そのままフラフラととした足取りをした後に、パタリと麒麟と言う少女は目を回して倒れる。
どことなく幸せそうね。
車の中にある通信機を使って、間宮の子に教えてあげる。
「残り2人、レインボーブリッジで待ってるわ」
私がその場を去ろうとすると「チク、ショウ……」と言う、声が背中から聞こえる。
そのまま、私は気に留めずに去る。
レインボーブリッジ手前で事故を起こし、封鎖させる。
私は用意したトランクをイスの代わりに、煙管を吸いながら待ち人を待つ。
――ピリリリリリ!
こんな時に電話……誰かしら。
「どちら様?」
『いやはや、どうもどうも。ジャックです』
お気楽そうな少年の声が返って来た。
「……大事な時に何か用かしら」
『いやいや、随分と順調そうなものですからね。慢心してないかと』
「あなたに心配されるほどにはしてないわ」
『そうですか。なら良いのですがね』
「そう言うあなたは高みの見物?」
私の問いかけに彼は愉快そうに笑って答えた。
『そうですよ。まさか、こんな武偵高の
「用件は、私に釘を刺しに来ただけ?」
『随分と冷たいですね。いえいえ、それだけではなくて逃走手段はちゃんと確保しているのかと思いまして』
「私が負けると思ってるの?」
『世の中には死ぬこと以外に絶対はありませんからね~。『if』は考えておくべきかと……用意していないのであれば、オルクスをあなたが今いる橋の下に呼び出しておきますが?』
……抜け目がないわね。
だけど――
「遠慮するわ。あなたに貸しを作ると高くなりそうだもの」
『それはそれは、残念です。どのような結果になるか楽しみに観ています』
それだけを言って、ジャックは通話を切った。
――観ています、ね。
「遅かったわね」
ようやく来た待ち人に対して、そちらの方を見ずに、私はそう言う。
「夾竹桃……! あたしの友達を、よくも!!」
私の事を恨むように彼女は視線と銃を向けてくる。
もう1人はどこに行ったのかしら……考えるまでもないわね。
「決戦の舞台として、ここを用意して上げたの。お礼を
「ふざけないで! あたしの友達を、みんなを傷つけて……絶対に許さない! それに、ここはあたしの思い出の場所なの! 犯罪者なんかにいて欲しくなんかない!!」
相当に怒ってる割には、冷静そうね。
ジャックほどではないけど……私も人の心には
「この結果を選んだのは、あなた自身よ。それを忘れてもらっては困るわ」
「……ッ!!」
「もう一度言うわ。イ・ウーに来なさい」
私の誘いを、
「――断ります!」
またしても拒絶した。
「そう、残念ね」
私は煙管を仕舞い、そう言ってトランクから降りて、開ける。
取り出すのは、ココから押し売りされた無反動のガトリングガン。
「――なっ!?」
あかりが驚いている間にもモーターが回り、すぐに幾多の弾丸が火を吹く。
その瞬間に下のグレーチングから飛び出してきたのは、あかりの仲間の1人。
やはり潜んでいたのね。
あかりをかばう形で、彼女は剣を盾にするなどと言うあまり意味を為さない行為をする。
弾丸が日本刀を貫き、彼女の体をも貫いて行く。
防弾制服の上とは言え……相当の衝撃でしょう。
私が撃つのをやめると同時に長い黒髪ストレートの彼女は、後ろに倒れて行く。
回転が静かに止まり、銃身からは硝煙が漏れるのを見て、ようやくあかりは気付いたみたい。
「……志乃ちゃん? 志乃ちゃん!?」
あかりは彼女を抱きかかえ、名前を叫ぶ。
弱装弾とは言え、相当な連射速度に大口径の弾丸。
防弾繊維の服の上とは言え、内臓系にダメージを負う可能性もある。
最悪、死んでしまうかもしれないわね。
そんな事は関係ないのだけど。
あかりは彼女を抱えながら私を射殺す眼をしている。
それこそ、あかりのアパートで見せた以上の殺気。
あの眼はまさしく人を殺める覚悟をした眼。
なるほど……ジャックが彼女に殺しの才能があると言うだけはあるわ。
「あかりちゃん、堕ちたら……ダメだよ」
「……志乃、ちゃん?」
「同じになっちゃ……ダメ。あかりちゃんは、あかりちゃん……武偵高でのあかりちゃん、だよ。武偵憲章……10条、あきらめるな、武偵は……決してあきらめるな。忘れないで、あきらめ、ないで――」
そう言って、あかりに志乃と呼ばれた黒髪の子は倒れる。
気絶しただけみたいね。
「志乃ちゃああああん!!」
お涙ちょうだいのドラマのように、あかりは叫ぶ。
「気絶しただけよ。もっとも、すぐに治療をしなければ危ないかもしれないけど……これで、残りはあなた1人」
「――どうして、こんな事をするの?」
ゆらりと立ちあがって、私にそう問いかけてくる。
「欲しいからよ。あなたの……間宮の技術が。本来なら、あなたのお友達を殺しても良かったの……2年前と違って皆殺しにしていいルールだから。だけど、私はそれをしなかった」
あかりは黙り、私が一方的に話す形となる。
「あなたの心象を悪くしないためよ。既に心象は悪いでしょうけど……誰か死んだら、あなたはもっと抵抗するでしょう。だから生かしておいたの」
「………………」
私の言葉に、あかりは言葉ではなく、構えで返した。
先程とは雰囲気が違う。
「その構えは?」
「――
あかりの言葉に、私は打ち震えた。
「そう……そう言うことだったの! あなたも毒手使いだったのね!!」
灯台下暗しとはこの事、彼女も私と同じだった!
しかも中距離で使える毒手。
これほどまでに喜んだ事はないわ!
「いいわ、見せて
再び回るモーターの音の後に、すぐに放たれる銃弾。
対してあかりは、落ち着いた様子で銃弾に向かってくる。
そうして彼女は――飛んだ。
空中魚雷のように、彼女が飛来してくる。
確かに千本の矢の代わりである弾丸をすり抜けてくる。
そのまま彼女は私ではなく、ガトリングガンへと辿り着き、触れた。
バチ、バチバチバチ!!
一体、何が――!
そう思った瞬間に、ガトリングガンは"砕けた"。
その衝撃は、私にも振動となって伝わり、衣服をも粉砕した。
(……毒じゃ、なかったのね)
気付けば、下は海。
ああ、私は橋から落ちたのね。
(どうしよう――私、泳げないのよ)
冷たい海に落ちて、沈みゆく体。
ジャックの言う事、聞いておけばよかったわね。
もう後悔しても遅い、か……
意識も一緒に……沈んで行く。
ザバァと言う、水の音。
微かな意識の中で隣を見ると、間宮の子がそこにいた。
どうやら……私を引き上げたみたい。
そのまま私を見てその腕に、
「夾竹桃、逮捕!」
そう言って確かな敗北を掛けた。
◆ ◆ ◆
理子に続いて夾竹桃も敗北か~。
夾竹桃の敗因は……間宮の秘毒とやらに拘り過ぎてた事かな~。
どうやら、様子を見るに思っていたモノと違ったみたいだし。
双眼鏡を下ろし、高みの見物を終了する。
間宮の子が使った最後の技。
あれは、2年前にあの子の母親が私に使った技だね。
つまりは、あれが夾竹桃が話してた『
振動で物を破壊する。
その結果が、ガトリングガンの粉砕。
なるほどね~。
あの技、2年前から地味に気になってたんだよね。
振動で破壊する仕組みは分かったんだけど、問題はその振動をどうやって発生させてるのか……
2年前の間宮の母親とその娘である彼女が使ってる所の共通点を見て、ようやく分かったよ。
おそらくはアレに必要なのは回転。
回転で……おそらくは人体の微弱な電気信号を集約させて、それを振動に変えて対象を破壊する。
理論としては、それで合ってるはず。
だから、回転さえあれば良いんだから……何も体全体を回転させるんじゃなくて、腕の回転だけでも多少は出来るはず。
かなり難易度は高そうだけどね。
ま、ちょっと挑戦してみよう。
わたしは武偵高の屋上の貯水タンクから降りて、深呼吸。
肩を軽く回して、壁に向かって走り出す。
そして、間宮の子がやってたみたいに跳んで空中を
電気信号を集約させるイメージをする。
槍みたいに手を尖らせて構えるのじゃなくて、壁に対して面になる様に手の平を構える。
壁へと勢いよく手を着いて、腕を曲げて衝撃を殺して、落ちる前に着地して壁から離れる。
「さすがにそう簡単には上手くいかないか……」
当然の結果と言えば当然の結果だけど。
これは――要練習だね。
私は
ジルにとって技術は盗むモノ。
と言う訳で、最後のシーンが意味するのはつまり……
刀語のお姉ちゃんの見稽古ほどチートじゃありませんよ?
一応、練習は必要ですからね。
色々と山場を越えて、次回は1巻の終盤。
あの巫女さんが帰還します。
それと、活動報告にちょっとしたアンケートを取りたいと思います。