注意事項
・女子力
・女性関係のもろもろは作者の妄想と理想と他のラノベの参考で成り立っています。
そんなこんなで新幹線に乗る時間。
前もって白雪と話してキンジの隣の席は彼女になるよう取り計らった。
新幹線に乗る前のホームで理子は、
「…………」
ちょっと暗めの表情で妹が気になる様子。
「まあ、大丈夫だよリリヤは」
「やっぱり知ってたんだ」
「そりゃそうだよ。キンジ達が襲われてるところを助けたのは私だし」
「……!」
ここで暴露。
当然、理子は反応する。
顔を勢いよくこっちに振り向けての反応で何を言いたいかは分かる。
「ちなみに私はもちろん、やってないからね。キンジは……そう言うのイヤだからしないだろうし。おそらくやったのはウルスの姫だろうね」
「……そっか」
「そう暗い顔しない」
「うえ!? ……いひゃいいひゃい」
背後からムニムニと理子の頬をつまみ上げる。
もちもちしたこの触感。
思わず切りたく――うん、そう言う思考はカットカット。
それからすぐに離して上げると、涙目で見上げてくる。
うむ、良い表情。
「家族を守るには……どうすれば良いか分かるでしょう?」
背後に回り込んで、私がそう問い掛ければ理子は迷わず頷く。
「うん、分かってる。
「そう言うこと」
そこで東京行きの新幹線が来る。
この新幹線にキンジ達も乗る筈だけど……と思ったらいた。
どうやら白雪も一緒らしい。
けど、席は少し離れてるのかこのキンジ達は16号車の先頭辺りの扉で私達はその16号車の最後部の扉にいる。
そのまま私達はその最後部の扉の中に入って行き、乗車券の席に行くと――
「あら、偶然ね」
神崎がそこにいた。
入ってきた私達にすぐに気付き、声を掛けてくる。
「この新幹線だったんだ。あ……隣、私の席だから失礼するよ」
そう言って私は神崎の前を通ってその隣に座る。
そして、カチリと何かのスイッチを押し込んだような感触。
……あー、この席……文字通り地雷だ。
座ったお尻の微妙な違和感。
これ、感圧スイッチでしょ。
それがここにあるって事は……この新幹線のどこかに爆弾がある可能性が高い訳だよね。
何でこんなピンポイトに、そう思ったところで私は通路を挟んで向かいの席に座る理子を見て理解した。
そう言えば理子は本来、神崎達と一緒に帰るはずだった。
わざわざ離れた席を取るより知ってる顔で固まった方が色々と気楽に決まってる。
だから多分、この席は理子が乗る予定だった席。
でも理子はリリヤに呼ばれたために一足先に京都へと来て、その空いた席に私が予約した……と。
運が良いのか、悪いのか。
どっちにしても下手には動けない。
この新幹線内にいるのは確か。
無線による爆弾の起動なら、確実に作動させるためには乗り物自体に乗っている必要がある。
こんな電子機器が山盛り積んでる上に高速で移動する物なら尚更……電波は確実性に
飛行機の時も理子は退路を確保した上でジャックした。
乗客に紛れてるのか、はたまた……既に運転席に潜んでいるのか。
「ねえ、ちょっと話があるのだけれど」
「……ん?」
神崎に声を掛けられて私は短く返事する。
「キンジ、なんだけど……どんな様子かしら?」
「私がキンジの様子を知ってる前提の話じゃん」
「何となくよ。実際、どうなの?」
と、神崎は何だかんだキンジが気になる様子。
雰囲気的にまた喧嘩でもしたんだろうけど。
そして、相変わらずの勘の良さだよ。
「どんな様子って言ってもね。いつも通りと言えば、いつも通りだけど」
「一緒に、いたんだ……」
「まあね、ちょっとばかりトラブルがあって」
「何よ、トラブルって」
「レキさんが負傷した」
「――なっ!?」
目を見開いてそのまま私に詰め寄りそうだったので軽く手で制すように、手のひらを神崎に向ける。
ここで話しとかないと、あとで面倒臭そう。
と言うかどうせこの新幹線はジャックされて嫌でも協力せざるを得ない状況になる。
その時にキンジが情報提供でもすれば自然とバレる。
キンジの事だから私に「話さなかったのか?」とか言ってきそうだし。
「あんた、そう言う大事なことを何で言わないのよっ。報連相は基本でしょ?!」
「神崎さんに言われたくはないね。一応、キンジは白雪さんの携帯で連絡はしてたみたいだけど……出なかったみたいだし」
「それは……野暮用があったのよ。念のため聞いておくけど、レキは……大丈夫なの?」
どうでもいいけど、とは言わないあたり根はお優しいことで。
本人はそんな感じのつもりらしいけど、心配そうな表情がありありと見える。
相変わらず感情がちぐはぐな女だ。
手を下ろして私は答える。
「一命は取り留めた。けど、しばらくは安静だね。今は星伽の京都分社で寝てるよ」
「そう。犯人は分かってるの?」
「私が助けた時にいたのはロシア人の少女だったよ。パイルバンカーみたいな物騒なの持ってて、機械的な装備を身に
「まさか、シェースチ……?」
ご明察。
横浜ランドマークタワーの屋上でジャックと一緒にいた少女ですよー。
まあ、犯人は1人じゃないけど"私が"見た時にいたのはリリヤだけだったし。
「何にしても、もう一度襲ってくることはないよ。向こうも重傷だったし」
「本当でしょうね」
「嘘を言ってどうするの」
私は基本的に嘘は言わないようにしてる。
ただ、真実をぼかすだけ。
矛盾してたら困るからね。
「……無事なら、いいわ」
ちょっと複雑そうな感じだね。
ウルスの人形姫はキンジを奪った張本人だし、私のいない間に何かしらのトラブルもあったみたいだし。
「それで……あんたはその後にキンジと一緒に何してたのよ?」
おっと、これは嫉妬の予感。
無意識の内か神崎のツリ目が鋭くなってる。
「別に、大した事はしてないよ」
「ほんとでしょうね?」
「ちょっと私に付き合ってもらって京都の町をブラブラしてただけだよ」
ここで理子の方がいちご牛乳を変に飲んだらしく、飲み込んだあとに咳き込む。
ちゃっかり聞き耳立ててるよね、我が妹。
「そう……って、そそそれってデ、デ、デートじゃない!?」
この恋愛処女のことだから気付かないと思ったのに。
「普通に食事とかして、色々と観光もしたけどデートじゃないよ」
「ニヤニヤしながら言うのやめなさい! あ、あたし知ってるんだからね。観光名所で、その……食事したり、色んな場所を見たりするの! そう言うのがデートの定番って雑誌に書いてあったもの!」
神崎は顔を赤くしながらまくし立てる。
ほーう、そう言う雑誌を見ると言うことは私が思ったよりも恋愛処女ではないらしい。
「ふふ、本当に違うよ。キンジが今回の借りをどうしても返したいって言うから、そう提案しただけ」
私は座席を軽くリクライニングさせながら答える。
だけど、神崎は疑惑の目だ。
「ホントに、ホントでしょうね? 私の知らないところで変な事してないでしょうね?」
変な事は……してはいないけど、何かはしたと言うか。
今、思い返してみる結構大胆だったね、本当に。
京都駅の南遊歩道でのキス。
中学にした時とは"違うモノ"を感じる。
何でだろう……あの時を思い返すと妙に体が熱い。
色金の影響、かな。
何にしても、
「変な事はしてないよ」
だって健全な男性と女性なら普通だと思うし。
私は人差し指を唇に当てながら、微笑む。
何か理子がいちご牛乳のパックを片手に私の方を見て、呆然としてるんだけど。
別に大した事はしてないはずなのに、何そのリアクション。
お姉ちゃん気になるんだけど。
神崎は私の言葉に安心したのか「ならいいけど」と、そこで会話を途切れさせた。
イベントが始まるまで私はゆっくりさせて貰おう。
◆ ◆ ◆
何、今の。
お姉ちゃんがすんごい魅了スキルの高い微笑みしちゃったんだけど。
ゲームで言えば男性はほぼ確定で行動不能になるレベルの表情だったんだけど。
完全にだってアレ、女の顔ってヤツになってましたけど?!
少女が夏を越えたら少女じゃなくなってた的な成長をしちゃってるんですけどー!?
うわわ……とんでもないモノを見てしまった気分。
別に理子に向けた表情じゃないのに、思わず顔が熱くなる。
やっぱりお姉ちゃんは魔性の女で悪女だよ。詐欺師になれるね、間違いなく。
はーあ……
ある意味喜ばしいんだけどやっぱり複雑だよね。
このまま行けば、理子が恋を盗むまでもないんじゃないかな?
問題はキーくんの周りにはライバルがたくさんいる事だけど。
ラノベの主人公かって言う話だよ。
べ、別に理子はキーくんなんて興味ないし。
横浜ランドマークタワーの時のは借りだし?
惹かれてなんかいない。
うん……やめよ。
心の中でそんな事を自問自答しても虚しい。
飲み干した紙パックを袋に入れながらリリヤの事に切り替える。
リリヤ、大丈夫かな。
腕とかあのままなんだろうか。
こう、左腕を結合とかお姉ちゃん出来たりしないかな?
お姉ちゃんなら出来そう。
だってお姉ちゃんだし。
相談してみよ。
さすがに妹が五体不満足なのは見てて辛い。
何だかんだ乗車して30分ぐらい経って――
「ねえ、霧。相談があるのだけれど」
「相談ね……。私でよければ」
アリアが少し横になってるお姉ちゃんに向かって、勇気を出したような感じでそう話し掛ける。
む、これは……面白そうな予感!
「ほっほう、アリアが悩み事ね」
通路を挟んで反対の席のあたしがそう割り込むと、アリアはすぐに否定した。
「あ、あたしじゃないわよ。これは、その……あたしの友達に相談された話で。ほら、あたし……そう言う恋愛話って分かんないから。霧なら分かるかなー……って思って」
「りこりんのアドバイスもいる?」
「あんたはふざけそうだからいいわ」
何と言う塩対応。
半分分かってましたけど。
「それで? そのお友達は、どんな恋愛の悩みをお持ちで? 喧嘩別れしてどうしたらいいのか分からない、とか? それとも、もうすぐどこかに行くからその前に仲直りしたい、とか?」
普通に答えてはいるけど、内心面白くないだろうな~お姉ちゃん。
って言うか、お姉ちゃんが言ってるの全部アリアの事じゃん。
「よ、よく分かったわね」
アリアはアリアで既に話す内容を見抜かれているとも知らずに、そのまま話を続ける。
前の席にいるキンジにも気付いてない。
確か、アリアの前って不知火だったよね。
キンジがこっちに来る前に彼は素早く、席に潜り込ませるように腕を引っ張ったのが見えた。
恋愛関係の話になると途端に視野が狭くなるね、アリアは。
「そうなのよ。あたしの、その……友達は、まあ仮にAさんと呼ぶわ。それで、そのAさんはある男子……まあ、これはK君。Kは、べっ別に好きとかハッキリ言ったり言われたりした訳じゃないんだけど……その、まあ、一緒に行動してたのよ。何ヶ月も」
「なるほど。で、何ヶ月も一緒に行動してる内に何かに気付いたのかな?」
「そ、その通りよ。Kは――やる気は無いけど、やれば出来る男子だったのよ。それでAさんは協力関係になって、喧嘩友達みたいになってたの。それで、その内……Aさんは、Kを『自分のもの』みたいに感じるようになって……」
「……へえ」
お、お姉ちゃん……!?
や、ヤバい、素が出てるッ。
すぐに納得した風な顔に切り替わったけど、アリアの「自分のもの」辺りで一瞬だけ目が据わってた。
最近は情緒不安定な感じがヤバい。
その内、武偵高から本当に1人、2人ぐらい人が消えそう。
「つまりは、独占欲が出てきてしまった訳だね。それも正式にお付き合いする前に」
どうしよう……アドバイスしながらも面白半分でからかおうとか思ってたけど。
さっきのお姉ちゃんの反応のせいでアリアが地雷を踏まないか見守る感じになってしまった。
頼むから、お姉ちゃんを刺激しないでっ。
じゃないと死を体現したような雰囲気を
それ見たら自分が解体される夢を見るから!
あー、イ・ウーでのお姉ちゃんとの初対面を思い出したくないけど思い出す。
ブラドのところから抜け出して心身共に弱ってた上に、幼女にあの殺気はキツかったなー。
「で、でもね。Aさん、もうすぐ転校することになっちゃったの。Kを武偵高に置いて」
何て軽くトラウマが再発しそうになってたら、アリアは少し必死な感じで語る。
「そんな時にキン、あっ、その、K君は別の女子に近付かれたの。これは……Rさんて言う女の子ね。性格も能力もAさんとは違うタイプで……優秀な子よ」
喧嘩したとは言え、そこら辺は認めてるんだね、やっぱり。
「その後、KとRさんは一緒に行動するようになって……その……」
「つまりAさんはさっきの独占欲と相まって、Kを取られたと思った訳ね」
「そう、なの……」
「面倒な子だね、そのAって言う子」
「面倒って何よ、真剣な悩みなのよ!」
お姉ちゃんの今の毒の吐き方は完全にワザとだ。
アドバイスもするだろうけど
さすがはアリア……的確につついたらボロボロ出てくる。
「英雄色を好むってヤツでね。出来る人程、案外女の子にも積極的になるんだよね。まあ、科学的に証明された訳じゃないけど……出世とホルモンは強く関係するらしくてね。実験でも証明されてるらしいんだけど、そのK君は普段やる気はないけど出来る人間なんだよね?」
「そ、そうね。でも、能力と言うか調子に波があるみたいだけど」
「でも、ここ一番の勝負では負けない。逆境に強い人間じゃない?」
「よく分かるわね……あんた」
「経験豊富ですから♪」
経験豊富(処女)ですね、分かります。
う……。お姉ちゃんから不穏な視線。
観察眼スキルが凄いの分かってるんだから下手なことは考えないでおこう。
「何にしてもだね。私が面倒だなって思うのは、そんなに束縛したいの? って話だよ。私が思うに、良い女の条件があるんだけど」
「な、何それ。教えてちょうだいよ」
食いついてますな、アリア氏。
「待つ女だね」
「待つ?」
「そう、待つ。男なんて移ろい易いモノなんだよ。可愛い女の子がいれば、外国人だろうが漫画だろうが目移りしちゃうくらいには。それにいちいち怒ってたらキリがないし、男もちょっと違う女性と食事に行ったぐらいで怒られたら嫌になるに決まってる。だから、私的には待つ女が良い女で……どんなに女たらしでも最後には自分のところに帰ってくれればそれで良いかな、って思うんだけどね~」
やだ、あたしのお姉ちゃん思ったよりも女子力が高い。
女子力どころか、大人の女性だよ――
……あのプライドの高いアリアが頭を抱え込んでる。
気のせいか「負けたわ」って敗北宣言をするくらいには、打ちひしがれてる。
「それで、そのAさん……誕生日が近いんじゃない?」
「ホントによく分かるわね」
「こんなものは推理の初歩だよ」
「それをあたしに言うのは、流石に人が悪いわ」
アリアの
「失礼。何にしてもだね、Aさんは待って……Kさんを試せばいいんだよ」
「た、試す……?」
「Aさんのことが嫌いじゃないなら、誕生日にKさんから何らかのアプローチがあるはずだよ。もし、なかったら……その時はその時だよ。Kさんは、その程度の男だったってこと」
おっと、ここでキーくんに向かって鋭い言葉の槍が座席を貫く。
あー、でもキーくんのことだからこの話を理解してるのか怪しいと言うか、理解してない可能性が大。
一応、様子を見る限りはダメージは入ってるみたいだけど。
「もしかしたら、別れ際にプロポーズ……なんてね」
「ぷぷぷぷぷ、プロポーズ……!?」
公共の場所にも関わらず大声を出すアリア。
「それから別れ際に……最後の夜を一緒に過ごさないか? 的な展開で、ベッドに一緒にインしてだね」
「それ以上いけない!」
「しばらく離れて会えないから、温もりが欲しいんだ」
何でそこイケボで言うの?
って言うか、お姉ちゃんの話の展開が何かのドラマみたいだよ。
「あ、う……」
ぷしゅうう、とアリアから煙が出た。
完全にオーバーフローですね。
そんなアリアの様子を見て、お姉ちゃんはクスクスと笑っている。
やっぱり途中から遊んでたよ、この人。
そんな時だった。
グッ――
電車が前に引っ張られる感覚。
少しだけ座席に押し付けられる。
窓を見れば名古屋駅のホームと看板が通り過ぎるのが見えた。
おかしい……確か名古屋駅は止まるはずなのに。
周りの乗客も違和感を覚えているし、名古屋駅で停まらなかったことに不満顔が出ている。
『――お客様に、お知らせいたします』
車内放送が流れてきた。
『当列車は名古屋に停車する予定でしたが、不慮の事故により停車いたしません』
この時点で一気にきな臭くなってきたな。
事故なら普通は停車するはずだ。
なのに、逆にコイツは加速してる。
『名古屋でお降りのご予定でしたお客様は、申し訳ありませんが、事故が解決次第……最寄駅からの臨時列車で名古屋までお送り致します。大変申し訳ありませんが、事故の詳細は調査中となっております』
この放送もおかしい。
調査中だとしても事故の詳細まで不明なんてことはないはずだ。
つまり、これは――
あたしがある考えに行き着く瞬間にマナーモードの携帯が震える。
メールだ、しかもお姉ちゃんから。
『曹操 これで分かるよね? 見たらこのメール消しといて♪』
お姉ちゃんを見ればあとはよろしく、とばかりに手を軽く振ってる。
曹操……ツァオ・ツァオのことだ。
やっぱり新幹線は既にジャックされていたんだ!
あたしはすぐに立ち上がり、不知火、アリア、キンジに見えるように手招きする。
表情を見て、ただ事じゃないのは分かってくれたのかすぐにあたしの席に集まってくる。
「一体どうしたんだ?」
開口一番にキンジが聞いてくる。
「よく聞け、既におかしな事態になってるのは分かってると思うがこの新幹線……ジャックされた」
『――!?』
全員が目を見開く。
「どう言うことよ?!」
客に聞こえないように配慮しながらもアリアが怒鳴ってくる。
「言葉のとおりだ。おそらくこれは、
「それが仕掛けられて――」
「こらぁ! 車掌出せ車掌! 俺ぁ名古屋で降りなきゃなんねえんだ! 俺が誰だか知ってんのか! 名古屋に戻せ!」
アリアがあたしに聞こうとしてる途中で怒鳴り声。
見れば、サングラスを掛けた柄の悪い男が暴れてる。
あれ――タレントの
こう言う状況じゃなかったら一応、サインは貰ったんだけどな。
今の状況じゃ、厄介者以外の何者でもない。
「どうやら、客の沈静化が先ね」
と言ったところでアリアが気付く。
「霧、どうしたのよ。さっきから動かずに」
お姉ちゃんがいる席に近付いて行くけど、多分……お姉ちゃんは動かないんじゃない。
動けない可能性が高い。
「どうやらこの座席、特殊みたいでね。ここに座っとかないと大変なんだよ」
お姉ちゃんは何でもないみたいに言ってるけど、そう言うって事はやっぱりあの座席は感圧スイッチだ。
「やられた……霧はもう動けない」
「そう言うこと、ね」
あたしが霧が動けない事を言うと、アリアは察したのかそれ以上は言ってこない。
段々と客はパニック状態になって来てる。
すぐにお互いにやるべき事を認識して、まずは武偵として客の沈静化に臨む。
無言で頷いたあたし達はそれぞれ、客に落ち着くように呼び掛ける。
「武偵です、落ち着いて下さい」「それぞれの席に戻って下さい」
そんな時だった。
『 乗客の皆さまに お伝えしやがります 』
今度の車内放送は、人工音声――ボーカロイドだ。
『 この電車 どこにも停まりやがりません 東京まで ノンストップで参ります アハハハ アハハハハはハハハハ 』
その不気味な放送に客のパニックは広がっていく。
『 3分おきに10キロずつ 加速しやがらないと ドカーン! 爆弾が大爆発! しやがります アハハハ アハハハハハハハハハ! 』
さらに不安になる放送に悲鳴があがる。
あいつら、ビジネスのためにここまでするかッ。
電光掲示板を見れば、
――【只今の時速 140キロ】――
そう流れるのが見えた。
さっきの加速の具合からして着実に数字は増えていくだろう。
「理子、あんたこの爆弾の基本構造は知ってるんじゃないの?」
「ああ、知ってる。けど……こう言うジャックする乗り物の爆弾は解除不能な位置に設置するのが定石だ。探しては見るけど車体の下、外部の可能性が高い」
そこまで言ったところで今度はキンジが近付いて来る。
「なら、せめて霧を動けるようには出来ないか? さっき武藤達に聞いたがタイムリミットは19時22分だ」
今の時刻は18時2分……残り80分。
その間に霧、もといお姉ちゃんを動かせるようにするよりかは――
「私をどうにかする前に爆弾か、犯人をどうにかした方が手っ取り早いと思うよ」
だろうね。
お姉ちゃんはこう言う時でも、動じないな~。
「あたしも霧の案に賛成よ」
「なら、話は早い。最初に言っておく……基本的に
あたしはそこでひと呼吸置いて確実に言える事を伝える。
「敵は既に乗ってる」
キンジとアリアが顔を見合わせたところで、新幹線の運転席の方から音が聞こえる。
この移動する爆弾を巡る開戦の合図が――
Fate×緋弾(白雪&玉藻)
玉藻「よいですか、マスター。良妻はまずは胃袋を掴み、それから寝床で躰を掴むのです!」
白雪「そうなのですか!?」
玉藻「もちろんですとも! マスターも苗字に伽の字が入ってるのであれば夜伽の1つや2つ――」
金時「てめえ、フォックス! それ以上、そのレディに妙な事を吹き込むんじゃねえ!」
玉藻「ああッ!? タマモ自慢の毛並みが!!」
って言う一場面が浮かんだ。
それよりも、最新刊で遠山探偵事務所が設立されるらしいですが……
と言うかネモと言う少女……一体、何者なんだ。
本物のネモはインド人の地方大公の息子。
しかしネモを名乗る少女は19世紀後半のフランス海軍の軍服を着てる上に、挿絵を見る限りはアジア系な感じはしない。
海底二万里の作者、ヴェルヌがフランス人である事が関係しているのか……
正体はもちろん謎。
でも、髪の色合い的に璃々色金か瑠々色金を保有してるのは確実。
そんな力使ってますしね。
人間の感情を好まない璃々色金の可能性が高いと思われる。
瑠々色金はキンジに説得された感じがあるし、人間の可能性を信じてみたい的な思いを持っても不思議じゃない気がする。
それで璃々色金と瑠々色金は対立。
ネモ達に力を貸してる理由は不明。
モリアーティ教授が璃々色金を説得した可能性もある訳ですが……
案外、こうして設定を予想してみると言うのも面白いですね。