ゆらぎ荘の蹴る人と殴る人   作:フリードg

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※注

 遅くなってすみません。
 そして、オリ分不足気味です。


第16話 幽奈を証明しよう!

 

 今回発動した幽奈の必殺技(ポルターガイスト)は、思いのほか効果範囲が広かった。

 

 

 今まで大体は、主にコガラシ1人を吹き飛ばす程度、もしくは巻き添えでホムラも一緒に吹き飛ばす程度だったのだが、今回は訳が違った。何せ クラス内にいたメンバー全員+机、椅子全てを宙に浮かしてしまっていたのだから。

 

 勿論、これには訳がある。幽奈は恥ずかしい思いをすれば、必殺ゲージが溜まる。つまり相応の出来事(・・・)があれば、比例して技の威力も向上していくのだ。

 

 コガラシが余計な一言を言ってしまった為、幽奈は公衆の面前で、素っ裸になってしまった。

 

 このクラスでは、コガラシとホムラにしか幽奈の事を見れないから大丈夫……な、訳はない。当然だろう。だから幽奈はいつも通りに、いや いつも以上にパニックになってしまって、皆を浮かせてしまったのだ。

 

「幽奈っ!! お、落ち着け」

「駄目だ幽奈! 怪我人が出る!! 止めるんだっ!」

 

 とりあえず、直ぐに説得をしようとするコガラシとホムラ。

 身体の鍛え方が一般人とは違う2人なら兎も角、普通の生徒がぶっ飛ばされてしまえば、幽奈の仲間入りをさせてしまう可能性だって0ではないのだから。……それに、1年の教室は3階だから、外に放り出されてしまえば更に危険だ。

 

「はっ……!」

 

 幽奈も一応正気を取り戻せた様だ。

 

 その証拠に、宙に浮かされていた面々が、一気に落ちていったから。

 折り重なる様に、落ちてしまっていて怪我人が出たんじゃ?? と思えた光景だが、案外そうでもなかった。

 

「な、なんなんだ? 今の……」

「手品っ? 全員浮いた??」

「び、びっくりしたーー!」

 

 机やら椅子やらに下敷きになったというのに、ケロっと出てきたから。……皆、結構丈夫な様だ。ただ、教室は荒れ放題。そんな時に本当に狙ってきたかの様に、教師が入ってきた。

 

「コラぁ! 騒がしいぞ、お前ら!!」

 

 がらっ! と教室の扉を開けられて、荒れ放題な惨状を見られてしまった。

 まぁ、普通こんなに荒れるなんて、有り得ないと思うんだけど、頭の固そうな教師は(教頭かな?)。

 

「入学早々たるんどる!!」

 

 と、大激怒。遊んで暴れたんだ、と決めつけた様だ。

 遊んだだけで、教室の椅子机が全部倒れたり、その中に生徒が埋もれてしまったり……、有り得ないだろ? と思うんだけど、そのあたりは通じないらしい。誰しもが受けたくない授業の1つ。《説教》の時間がスタートしてしまった。

 

 そして、長い長い時間がたち……。

 

「……というわけで、浮かれるのも判るが、各々高校生である自覚をもって学校生活を送るように! 良いな!?それじゃ、順番に自己紹介をしてくれ。出席番号1番、相川!」

「あ、はいっ……!!」

 

 漸く、説教の時間は終了して、自己紹介の時間へと変わった。

 

「ぅぅ……、やっと終わった」

「入学して、速攻で説教タイムとか……有り得ねぇだろ……」

「それも二時間も……」

「誰だよ あんな手品やったやつは……」

「それに、宮崎のスカートめくったやつまでいるしよぉ……」

 

 周囲の声が鮮明にコガラシの耳に届く。

 その言葉の刃は、容赦なくコガラシの身体に突き刺さっていき、狭霧のくない地獄に匹敵する程、突き刺さってしまっていた。これから始まるは、

 

 真の青春。……ぁぁ、青春。

 

 だけど、待ち受けるは暗黒の闇。……昔を思い出す、暗黒。コガラシは 完全に落ち込んでしまっていた様だ。

 

「だから自業自得だ。……って、これ、一体何回言わせるんだ?」

「うぅ……、す、すみません…… コガラシさぁん……」

 

 自己紹介を終えたホムラは ガラにもなく、ガチで落ち込んでしまってるコガラシを見て、ため息。幽奈は、事の発端が自分のせいだという事もあって、必死に謝っていた。

 

「……ま、遅かれ早かれ、だろ? 対処できる様になったと言え、体質そのものが変わった訳じゃないんだから」

 

 ホムラの次の言葉を聞いて、コガラシの身体が僅かに揺れた。そして、ゆっくりと突っ伏していた上半身を起こした。

 

「まぁ……、確かにな。それにケジメだってつけとかねーといけねぇし……」

「当然だ。……それに、こういう場合、下手に隠すよりは開き直った方が良いだろう」

「そうだな。……聞いた皆のリアクションは大体予想がつくし、耐えられない事は無いだろーし」

 

 と、言う訳で、入学早々に覚悟を決めた様子。

 『白い目で見られる』と自分でも判っているが、それでも 先程起きた現象の原因が自分自身にある以上、誤魔化したりするよりは良いだろう、との判断だった。

 そして、『次、冬空!』と、ご指名有。コガラシの自己紹介の出番がやってきて、意を決した。

 

「冬空コガラシです! オレもこっちには引っ越してきたばっかなんで、色々教えてもらえると嬉しいっす。……ああ、それと、オレは《霊能力者》なんで」

「!?」

 

 コガラシのセリフが、場を一気に凍り付かせた。

 ずっと続いていた陰口自体もなくなる程に。

 

「さっき、色んなものが浮き上がったのは、オレとオレが連れてきた幽霊が引き起こしてしまったポルターガイスト現象です。お騒がせしてすみませんでした」

 

 コガラシが頭を下げた所で、ホムラもゆっくりと立ち上がった。

 

「……さっきも言ったけど、オレもコガラシの連れだ。もう1人の方もな。その2人(・・)共 知らない間柄でもないんだ。……対応が遅れたし、止めれたのに、あの騒ぎだ。もう一回謝っておくよ」

 

 よく昔に『連帯責任!』と言われ続けた事があった。

 そういうのもあって、基本的に自業自得なのは置いといたとしても、幽奈が絡んでいる以上は無関係ではないから、ホムラも頭を下げていた。

 

「あ、ホム……夏山もオレと同じ霊能力者やってて、同業者っつーか、仕事仲間っつーか……」

「…………」

 

 ご丁寧にコガラシは、ホムラの事も紹介してくれた。……正直な所、別に自分の事まで言わなくても良いだろ、オレは子供じゃないんだから。 と思ったホムラだったが、後々の事を考えたら早期に言っておいた方が良いだろう、とも判断した。まだ未知数ではあるものの、この地域周辺では霊象の類が多いから、早めに、と言うのも悪くは無いだろう、とも思えたから。……だが、そーは言っても、『自分達、霊能力者だ』~と言っても、到底信じてもらえるはずがない、普通。今までの経験上。

 

「わ、わたしこそ、申し訳ありませんでした!!」

 

 幽奈も慌てて頭を下げるのだが……、あいにく、彼女の姿を見る事が出来る者はここにはいない為、意味は無かった。それでも、2人にだけ言わせる訳にはいかないのだろう。

 

 そして、その後は……当然の事ながら、静まり返った教室が一転。爆笑の渦に変わった。

 

 恥ずかしい事極まれり、だと言えるのだが、険悪なムードが吹き飛んだのは数少ない僥倖だと言えるだろう。でもやっぱり、少々恥ずかしいのは仕方がない。

 

「スカートめくりの次は、中二病かよ!?」

「超痛い奴なんだなー!!」

「連れって事は、アイツも一緒って事か!?」

「高校にもなったってのに、あちゃーーっ」

 

 爆笑に次ぐ爆笑の渦。

 だが、別に初めてと言う訳でもない。……悪霊に取り憑かれて、色々とあったから。本当に色々とあって、その時の痴態に比べたら、全然問題にならない。人体模型の霊の時には、殆どハダカ一貫で走らされたりもしていたから。

 

「まぁ……、こーなるわな」

「あ、あのっ、みなさん、ウソなんかじゃ……、あ、あうっ、あぅぅっ……!」

 

 幽奈が必死に弁解をするが、それでも見えている者達もいないから、意味がない。

 

「はぁ、幽奈。落ち着け。別に初めてってわけじゃないし、大丈夫だ」

 

 軽く幽奈の頭を撫でるホムラ。

 傍から見たら、パントマイムの様な仕草。何もない空間に手を当てがって、撫でているのだから。

 

「信じられないなら、それでいいさ。でも、やっぱり謝っとかないといけないからな。オレらが霊能力者って言うのは、ガチだから、そう言った類で悩んでるやつがいたら、相談に乗るぞ。んじゃ、そういう事で一年間よろしく!」

 

 淀みなく、そう答えるコガラシの姿を見て、本当に初めてじゃない、と言う事は幽奈にも伝わった。それでも、申し訳ない気持ちでいっぱいだったけれど。

 

「はぅぅ……、ホムラさんもごめんなさいぃ……」

「大丈夫って幽奈。泣かないでいい。……だけど次からは、気をつけような? 幽奈。学校では特に」

 

 しょんぼりとしてる幽奈を見ると、やっぱり何処か放っておけない妹を持った気分になるというものだった。

 

 そして、幽奈を慰めていたその姿を、じっと見ている者がいた。

 いや、ホムラだけではなく、霊能力者だと言い、そして 本気で相談にのる、とまで言っていたコガラシの事も。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン………♪

 

 

 

 

 学校の初日が終了。本日は、入学式と軽めの挨拶、説明のみだったから、通常よりもかなり早めの終了となった。全員が帰宅の準備をはじめ、其々教室から出て行っていた。

 

「じゃーなー、冬空! それに、夏山も!」

「おー、お前ら、お化けに気ぃ付けて帰れよー!」

「あ、後スカートめくるなよーー? もう、俺らの歳じゃ、犯罪者になっちまうぜー?」

 

 勿論、からかうのも忘れずに。

 

「しねーよ!!」

「はぁ……、とーぶんは続くな、この調子じゃ。でもまぁ、以前に比べたら全然マシ。って思う事にするか。そう考えれば気が楽だ」

 

 一応、コガラシもホムラも、その人柄は知ってもらえた様子だ。

 最初こそは、険悪なムードで、様々な視線を向けられてはいたが、悪い人間じゃない、と言う事は判ってもらえた。……それでも、色々と痛い意味で知られてしまったから、今後の対応もそれなりに疲れてしまいそうだ。

 

「ぅぅ、やっぱり、私のせいで、お二人がぁ……」

「いいって、いいって。ほんと、幽奈。オレだってもともと秘密、ってわけじゃなかったんだしさ。今更、霊能力者~なんて」

「……だよな。羞恥心なんて、大分昔に捨てた様なもんだろ? コガラシは」

「す、捨てた訳じゃねーぞ! 確かに露出狂の霊に憑かれた時あった………、それでもっ!! オレは捨てた覚えはないっ!!」

「こ、コガラシさんが、ろ、ろしゅつっ……!! は、はぅぅ///」

 

コガラシのその姿を想像してしまったのか、幽奈は頬を赤く染め、両手で抑えていた。

 それを見たホムラは直ぐに言う。

 

「幽奈ぁー、 今日はもう止めてくれ。二度目はもっと長くなりそうだ」

「あ、はいっ。大丈夫ですぅ……///」

 

 自分事ではないからか、幽奈は暴走する事なく沈黙する事が出来ていた。

 こうやって、必殺技をコントロールする事が出来れば、良いんだが……無理だろう。

 

「(うぅ~、でも わたしのせいでコガラシさんとホムラさんの評判が……、このまま 甘んじてて良い訳ないですっ、どうにかしないと……)」

 

 ホムラとコガラシには許してもらえたのだが、それでも迷惑を、多大なる迷惑をかけた事実は変わらない。だからこそ、心に強く、強く思う事にした。……空回りする可能性が、正直あるかと思われるけれど、それでも。

 

 と、そんな時だった。

 

「あの、夏山くん」

「ん? ああ、宮崎さん」

 

 丁度後ろから話しかけられた。

 振り向いてみると、渦中の人物の1人、とも言える宮崎千紗希。

 

「ちょっと、お話があるんだけど……良いかな?」

「構わないよ。……あー、でもその前にもう一回、謝っとくよ。コガラシの事」

「っ、そ、その事は良いの。夏山くんは 何もしてないんだし。……冬空くんのあれは最低だったけど」

「う……」

 

 当然、この場にはまだコガラシはいる訳で。2人の話は聞いていた。

 

「い、言い訳にしか聞こえねーだろうけど……、あれは、ほんと……」

 

 言葉をうまく言い表す事が出来ないコガラシ。

 幽奈も、どうしていいかわからず、あたふたとしていた。

 

「(んー……、宮崎さんが幽奈の事が見えるのが、一番早いんだけど……、宮崎さんは霊感の類は無い様だから、無理だし……。……ん? ああ、なんだ)」

 

 ホムラは、何か思いついた様で、手をぽんっ、と叩いた。

 

「なぁ、宮崎さん」

「えっと、うん?」

「一応、証明……、ん、手品って言われるかもだから、証明になるかどうかは正直微妙だけど、ちょっと 見てもらえないかな?」

「???」

 

 宮崎は、ホムラが何を言っているのか、理解してなかった様で、首を傾げる。

 そんな宮崎を見て軽く笑うと。

 

「幽奈」 

「あ、はい。ホムラさん」

 

 幽奈を呼んだ。当然、この時点では 宮崎には見えないから、何の証明にもならない……が、此処からが本領発揮。

 何処からか、取り出したのは、野球ボール。手に取って、幽奈を見て ぱちんっ、とウインク。

 

「キャッチボール、してくれないか?」

「え……? ……ああっ! 成る程っ! 流石ホムラさんです!」

「ほれ、コガラシもだ。一緒にするぞ」

「ああ、りょーかいだ」

「え? ええ??」

 

 宮崎の混乱を他所に、話が纏まった、と言うか ホムラの意図を理解して、ホムラと幽奈、そして コガラシの3人でキャッチボールをする事に。

 ホムラからコガラシは……、当然普通なのだが、幽奈にパスするのは他人から見れば、異常な光景だ。何もない空間に……、ボールが浮いているのだから。

 

「え、……ええっ!?」

 

 目の当たりにした宮崎は、驚きを隠せなかった。

 ボールが、ふよふよふよ~~、と浮いているのだから。

 

「糸か何かで、吊るしてる……って、思うかな、これじゃ」

 

 ホムラ、コガラシ、幽奈と1、2周した所で。

 

「幽奈。移動、してくれないか? 宮崎さんの隣辺りに」

「あ、はいっ、判りました!」

 

 ボールをもって、ふよふよ~~、と移動を開始。

 ……浮いたボールが迫ってくるのは、宮崎の視点である。正直、恐ろしいとも言える光景だが。

 

「安心して宮崎さん。……少々トラブルメーカーな所はあるが、幽奈は良い娘だ。それに、コガラシもな」

「は、はう……、う、うん」

「そーです! さ、先ほどはご迷惑をかけてしまいましたが……」

「うぅむ。良い子、扱いは 正直嫌だな。ガキ扱いされてる気がするし」

「細かい事気にするな」

 

 色々と笑いあった後、宮崎の隣に幽奈が到着した。

 

「宮崎さん。ボールに触ってみてくれて良いよ。これが本当の、『種も仕掛けもありません』と言うヤツかな。幽霊……、幽奈はここに、本当にいるんだ」

「……わ、ほんとだ……。ここ、何もない…… ボールが浮いてる……。ゆう、な……さん?」

「はいー。湯ノ花 幽奈と申します」

 

 何度も瞬きをして、驚きを隠せれない様子だ。幽奈も挨拶をしたのだが……、聞こえないのが残念だ。

 

「こ、これなら 皆にも証明できるんじゃ……?」

「いや……、さすがに大勢の前でしたら、それこそただのマジックショーになるだけだよ。マンツーマンだから、信じてもらえやすいだろう? ……1人1人に説明して回るのは、正直面倒だ」

「……確かに。皆は 完全に手品、って思ってるし」

 

 う~ん、と唸ってる2人。幽奈もつられて唸っていて、宮崎も難しそうだという事が判って、複雑な表情をしていた。

 

「あ、それはそうと、何か用事があったんだっけ? 宮崎さん」

「っ、そ、そうだった! その…… 夏山くん。私、私ね……」

 

 宮崎は、思い出し、目を瞑った。

 ここに来た理由を、思い出したのだ。

 

「私、あなたしかいないって、思ったのっ……!!」

「え?」

 

「「は……?」」

 

 ホムラの目をじっと見つめる宮崎。状況を理解しきれてないホムラ。そして コガラシも同様。

 

「(ななな、なんでしょう? この雰囲気は……っ!? こ、告白でしょうかっ!? と、言うより 私やコガラシさんもいるんですけどーーーっっ!!)」

 

 突然の事に、テンパってしまってる幽奈。

 

「(うぅーむ、……ここに狭霧がいなくて良かったなぁ。 もしいたら、苦無が飛び火してきそうだ)」

 

 別に、そこまで珍しくも無い光景だったから、普段通りに戻ったコガラシ。

 

 色々なカオスが訪れましたが……、今後一体どーなるのっ!?

 

 

 

 

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