注※ ほぼ原作沿いですm(__)m
狭霧の許可を得たとはいえ 『頑張る』と言ったとはいえ そう簡単にいく訳はなかった。
『ホムラは女に対する認識をしっかり持つ事だ。そもそもだな、お前に女体など100年早い!』
そして 過去の記憶が頭の中に何故か今蘇っていた。
もう大分前になる、と思える過去の記憶が。
『100年早いとか、何とかはどうでも良いよ……。それに女体って妙な言い方するな』
『喧しい! ……だが、前の反応は良かったぞ。初心そのものだ』
『そんなもん褒められたって嬉しくない! それに何で服が脱げるんだよ! あの場面で!』
『追剥の霊が悪さをしていた様だ。剥ぐ力がまさに神域に達してるようだったな』
それは、悪霊の除霊の件。言わば修行の一環だ。
ホムラの腕なら何ら問題なく処理できる案件であり、修行にならないとまで思われていたが、ところがどっこいだった。
『何で霊の性質を秘密にしてたんだよ!!』
『さあ。訊かなかっただろ? 確か』
『内容を詳しくって言ったぞ!』
覚えてません、とでも言いたそうにする師匠に詰め寄るが、あっさりと躱されてしまうのは通常だ。
『……でもまぁ、ありゃ正直剥ぐってレベルじゃないだろ。上手く服だけ消したのか? って思った。まぁ 服はアイツが持ってったから、アイツ自身が脱がしたのは間違いないと思うんだが、……うん、オレ達2人とも全く見えなかった。神域って言われても否定は出来ないな』
コガラシも勿論傍にいた。
2人で行った修行だったから。
『コガラシは……、まぁ ホムラに比べたら慣れた様だが……。うーむ どうしたものか』
『オレだって慣れてねぇ! 慣れる事もねぇよ!』
『裸見ても気絶しなかったじゃないか』
『……ホムラは極度のシャイだから。仕様がないだろ』
『うるさいな! ……でも、しょうがないのは違いない。……あんなの無理だ』
その時のホムラは修行の時の事を思い出した様で、顔を思いっきり紅潮させていて コガラシもホムラ程ではないが何処となく顔を赤らめて、頬をぽりぽりと掻いていた。
そんな中、2人の師匠だけは何処か満足そうだった。それは まるで――。
「ホムラ」
「………」
「こら! ホムラ! 無視するな!」
「っ、あ、ああ」
過去の記憶に囚われていた? ホムラだったが 狭霧の言葉でこの場に戻ってきた様子。
今は公園内を散策中だ。
「はぁ。何を考え込んでいたのは知らんが、集中は切らせるなよ」
「……すまん。大丈夫だ狭霧。……だが」
ホムラは軽く謝った後に周囲を注意深く見渡した。
ホムラにの霊視はかなり優秀だ、途絶えた霊子線さえもその残滓を見逃さない。
幾度となく仕事を共にしてきた狭霧もそれは重々承知であり、集中力さえ切らせなかければ完璧である事も知っている。……ただ、今回の相手が相手だからやはり心配になってしまうのだ。
切らせる原因は、悪霊にあるのだが 間接的には狭霧自身でもあるから複雑だったりする。
それは兎も角、鋭い目を持っているのだが 暫く索敵をしていても、見つからないのが現状だ。
「現れないみたいだな……。それに コガラシの方も」
視線を鋭くさせて、注視する先にはコガラシの姿もはっきりと見えた。つかず離れずを保っているコガラシもまだ発見に至っていない様なのは見て明らかだった。
「むぅ……。少し思うのだが」
狭霧は神妙な表情をさせながらホムラに言った。
「黒い霧が現れないのは、もしや私が女子らしくないからではないだろうか……」
「……は?」
「いや、私は普段はこの様な恰好はせんだろ。……だが、今回は内容が内容だから 私なりに女子らしくと頑張ってみたのだが……、やはり戦闘用に鍛えられた体に似合うはずも無くてな……。……ムラも、だし」
最後の方は声が小さくなっていく狭霧。そして、言い終えると同時に自分自身の容姿を見下ろした。
それは厳選に次ぐ厳選。何度も何度も選んでは止めて、選んでは止めてを繰り返し、あわや定時に間に合わなくなる寸前までかかって選んだ洋服だった。
それなのに妖怪は一向に現れる気配がなく ホムラもコガラシも感知できない。
つまり、自分自身に問題があるのでは? と狭霧は感じてしまっていたのだ。
「……もしもそうだったとすれば、作戦は失敗だ。何か打開策は……」
「狭霧。1ついいか?」
「む……? 何か打開策があるのか?」
狭霧は、ホムラの方を見て首を傾げた。
この時それとなく、本当にそれとなくホムラに対する不満が残る狭霧。会話の中でもそれとなく匂わせたりもしている(小さな声で)。でも、懸命に自身の感情を抑える。ホムラも頑張ると言った以上、促した自分が駄目であれば話にならないと思っていたからだ。
そんな狭霧だったが……ホムラの一言で表情が一変してしまう。
「何で狭霧は女子らしくない、と言ったんだ?」
「………っ。い、いや見てわかるだろ!? 私は、所詮は戦闘用に鍛えられた体で……」
それは自分で言ってて悲しくなってしまう内容だった。
でも、ホムラは続けた。
「どう見たって狭霧は女子。女の子だろ? 普段の逆だと言われるかもしれないが、狭霧は誅魔である前に この世に生を受けた女の子だ。そこから頑張って今の狭霧がある。だから、それは無いとオレは思うぞ? オレの意見を言わせてもらえればな」
ホムラはそういうと少しだけ自嘲気味に言う。
「……まぁ、人に色々とある様に(自分自身の事)妖怪だって色々いる。……妙な好みがある妖怪だったら仕方がない事だがな。そもそも服を好む様な妖怪だし(……追剥をする様な霊はいたけど)」
「っ、だ、だが ホムラはこの格好を見ても……その、普段と変わらない様子だったし……、その……。普段の私は……」
ホムラやコガラシの事を攻撃している姿を思い浮かべる狭霧。
非があるとはいえ 正直客観的に見ても、女の子の様には見えないから。
ホムラはあっけらかんとさせながらつづけた。
「狭霧は狭霧だろ? どんな格好をしていても。今回は妖怪絡みだったし、明らかに動きにくい恰好だったら、苦言をいうかもしれないけどな……。それに 普段だったらイメチェンをしたのか? と言うと思う」
「……私は、私」
狭霧は、ホムラの言葉を訊いて 表情を少し赤らめながら考え込んだ。
どんな格好をしようとも 自分は自分だと言ってくれた事。
確かに容姿について色々と言ってくれる事を期待した事だってあった。(勿論好意的な意見を)
甲斐性が無い様な気もするのだが、自分自身の事をちゃんと見てくれている。それだけで、報われた気がした。
「だから、狭霧のせいじゃない。……ん、確か件の霧ってやつが襲うのは…… カップルなんだろう?」
「っ……そ、そうだ。だから ホムラに頼んで……その……」
「ん。……少しでも 離れてたらカップルとみなさないんじゃないか? 世の恋人たちは、手を繋いだり、腕を組んだりして歩いてるし」
「え、えと つまり……?」
慌てる狭霧をよそにホムラは続けた。
「手を繋ぐか、若しくは腕を組むかして、見せた方が良いかもしれない、と思うんだ。……正直、安直だと思うし、打開策になれるかどうかは判らないが」
腕を組んで深く考え込むホムラ。
因みに、この手の話には、別段動揺を見せたりはしないのはホムラである。簡単に言えば、《えっちな状況》《えっちなとらぶる》《ラッキースケベ》等に耐性が無いのだ。(正直あるのもどうかと思うが……)
だから、ちょっとしたスキンシップ等では問題ない様子。夜々や幽奈が抱き着いてきた時は、少々驚きを見せたり、胸が当たってる事に関しては恥ずかしい様子を見せたりはするのだが、風呂場での遭遇、目の前に裸体と言った超過激? な場面に比べたら全く問題ないのである。
「……だが、これは狭霧の了承が必要だな。確証が無いし不確定要素が多いから まだ無理強いをする様な事は言わないよ。……まぁ あまり言うのも良くないが 危険度を考えると本当の意味で急を要する相手……と言う訳でもなさそうだからな」
服を好んで食すのは今回の相手。
それが
それが服ではなく――万が一にも
間違いなく迅速に早急に処理をしなければならないだろう。
誅魔忍として、そう常に意識している狭霧。
ホムラが言う様に自分が嫌だからと、好き嫌いで判断し、可能性がある方法を試さない様な事をする筈もない。
それに、そもそも根本的な誤解がある。ホムラが言う様に無理強いだとは思わないし、思う訳もない。狭霧にとって ホムラが演技だと、役割をと意識しているとしても……。
「……止めなければならない。確かに ホムラの言う様に 今回の相手は危険性を考えれば低いかもしれない。……それでも、おびき寄せる可能性があると言うのに感情などで試さないなどと馬鹿げている。 誅魔の為にも試す価値は、大いにある」
「そうか。判った」
狭霧の言葉にホムラの即答。
それは まるで狭霧がそういう事が判っているかの様だった。
「狭霧ならそう言うと思った。……すまないな、試す様な言い方をして。可能性が1%でもあるのなら、試さない訳ないだろ?」
「……………」
にっ と笑うホムラを見て 何処となくイラっとした狭霧だったが、とりあえず これからの事を考えたら そんな気持ちも吹っ飛んでしまう。
「じゃあ、試してみるか。狭霧」
「わ、わかった……」
折角赤くなった顔も元に戻す事が出来たというのに、また赤く、熱くなるのが自分でもよく判った。今が夜であり ホムラ自身が自分の顔を正面から見てない事が何よりだった。
ゆっくりとホムラの腕に手を伸ばす。
もう少しで届く、もうちょっとで届く――後1㎝。
とゆっくりゆっくりと傍へと、もう後ほんの少しの所で。
「どうした?」
と、ホムラが振り向きそうになったから、咄嗟に。
「は、はぁっ!!」
「ぐええっ!!」
思いっきり引き寄せつつ、その腕を力強く抱いた。
力強く、と言うよりは……。
「い、いたた……。乱暴すぎるぞ、狭霧……」
「ふ、ふんっ! さっさと仕事を済まさないといけないからだ!」
と、いつも通りな展開を繰り広げていると、それを待っていたと言わんばかりに、黒い霧が頭上から現れた。
「「出た」」
切り替えの速さも一流な2人は直ぐに視線を鋭くさせた。
服に霧が触れた瞬間に、まるで灰になっていく様にボロ衣にされていく。
「早速か。……思ったよりも融解が早い」
身体に纏わりつく様に現れた霧は四方八方から降り注いできて、正確な位置を全く掴ませなかった。
「霊視の結果、霧が本体そのものではない。これを発生させる本体がいるんだ! そいつを探し出すぞ!」
「ああ。任せろ」
狭霧は素早く動いて霧を振り払おうとするが、纏わりつく霧を防ぎきる事は出来ない。
黒い霧は狭霧の服を瞬く間に食い荒らしていく。
「(くっ、衣服の融解が想像以上に早過ぎる……! それに 霧が広範囲過ぎる……ッ!)」
広がり続けている霧は、その本体が何処にいるのかさえも覆い隠している。中心部にいると思われるが、一体どこが中心なのかもわからない。
軈て霧は狭霧の下着にまでも達し、融解させていく。
焦りが狭霧の脳裏にかすめたその時だ。
「コガラシ! 範囲が広い。オレは南側、北側はお前に任せるから頼むぞ!」
『おお。任せとけ!』
霧で完全に見えなくなっているが、ホムラがそう言うと コガラシもはっきりと答えた。
『少しばかり本気で行くから、気を付けろよ!』
「馬鹿言え。とりこぼしたりしたら罰ゲームだぞ」
そんな、能天気なやり取りをしているのを訊いて、狭霧は呆気に取られてしまうが、広がり続けていた霧が、突然現れた荒れ狂う暴風に吹き飛ばされた。
「なっ……!」
「向こう側じゃない、と言う事は……」
ホムラは 軸足に力を入れた。身体の軸を鋭く、素早く回転させて遠心力を生んだ。地面がドリルで抉られたかと思えば、その勢いを殺すことなく 蹴りを放つ。
先程は吹き飛ばされた霧だったが、次は斬り割かれた。上下にばっさりと斬れた霧は、瞬く間に消失した。
「(一体、どうやって……!? ホムラは兎も角……いや、違う。これまででも こんなのは見た事が……)」
ホムラとはそれなりに仕事を一緒にしてきたが、それでもこれ程までの威力は今までに見た事が無かった。
実体の無い霧を、こうも簡単に吹き飛ばし、消し去る圧倒的な力。デタラメな力を目の当たりにして一瞬混乱してしまうのだが、霧が晴れた先に蜘蛛の様な形をしている何かが姿を現したのを見た。
「コガラシ! こっち側にいた! 後はオレ達に任せろ! 狭霧!」
ホムラの声、そして 目の前にはっきりと姿を現した妖怪を目の当たりにして、狭霧は切り替えた。
2本の苦無を手に構える。
「雨野流誅魔忍術奥義―――! 暴雨!」
宙を駆け抜け、螺旋状の軌道を描きながら、妖怪に接近 そのまま苦無で刻み続けた。宛ら暴風雨の様な勢いと手数で攻めたて、そのまま切り飛ばした。
「よし…… っっ!」
だが、最後の足掻き、或いはそう言う仕様だったのだろうか、致命傷を受けた蜘蛛の妖怪は、身体を光らせたかと思った次の瞬間、ボウンッ! と自爆をしたのだ。
「狭霧っ!」
受け身を取る事は、狭霧であれば出来るだろうと思えるが、もしも無防備に地面に叩きつけられでもすれば、下手をすれば大怪我するかもしれない。
だから、ホムラは宙を舞う狭霧をジャンプして受け止めた。
「狭霧、だいじょう…………」
「う、む…… ちっ まさか あの後に 自爆をしてくるとは…… くそっ 油断だ」
狭霧は、自身の詰めの甘さに悔いている様子。そして自分自身の現状を全く把握してない。暫く反省の言葉を口にし続けた所で漸く 自分がホムラに抱き抱えられている事に気付いた。所謂お姫様抱っこ状態である事を。
「っっ、ほ、ホムラっ! も、もう良い! 良いから降ろせ! 私は大丈夫だ!」
強く抱かかえられている事に体温を上昇、表情を紅潮させながらもそういうのだが、ホムラは何も言い返す事は無かった。ただただ、ホムラは眼をぎゅっ と力強く瞑らせていた。瞼が痙攣する程力を入れていて、その表情は狭霧以上に顔を赤くさせていた。
「ど、どうし………っっ!!!」
ここで漸く自分自身の現状も知る事になった。
上半身は完全に裸になっており、その狭霧の豊満な胸が露わになっている。ホムラが受け止めたから、必然的に胸の側面を握る形になっており、更に下半身の下着も殆ど融解させられ、一番大変ば秘部は 辛うじて残されたスパッツの残骸が僅かに隠してくれるだけになっていた。
「さ、さぎ、さぎっっ あ、あぅ……う……」
穏当に真っ赤にさせるシャイボーイ。
こんなに震えている癖に、先ほどは人外とも呼べる力を出していた。あまりのギャップに思わず言葉を失ってしまうが、それでもこの格好でいつまでもいる訳にはいかないから。
「っっ!」
狭霧は素早く動いて公衆トイレに駆け込んだ。
今回の事件性を考えて、着替えは勿論準備をしていた。
そして、ほんの数秒後の事。
「おーい、ホムラ。もう狭霧はいないぞ? 大丈夫か?」
「こ、コガラシか?? わ、判った……」
ゆっくりと目を開けてみると、上半身の服が殆ど破れてしまっているコガラシが前に立っていた。
それを確認して、周囲に狭霧がいないのを確認すると、胸に手を当てながらほっと撫で下ろしていた。
「よく気絶しなかったな……? 成長したな、うんうん」
「う、うるさいな! 今回は……さ、狭霧も覚悟してたんだ! それに、相手も自爆したとはいっても まだ判らないし!」
と、コガラシとホムラのやり取り。
もしも、完全に解決していたとしたら……、ホムラはまた意識を手放してしまったかもしれない、と言う事。
「ふん!! こ、今回は許すと言ったのは私だ!」
せっせと服を整えながら現れたのは狭霧。
「そ、それに、お前達も早く着替えろ!」
ばっ と投げ渡すのは2人の学生服。
それを受け取るといそいそとホムラとコガラシは着替えるのだった。
全てが上手くいった。
事件も無事に解決し、ホムラは気絶無し 狭霧の折檻もなし。大団円だと言えるのだが。
「……なんでオレが攻撃を受けてんだっけか?」
コガラシの頭に生えているのは苦無。普通は衝撃映像だが、いつも通りの光景なので、軽くスルー。
「う、うるさい! 私はホムラには許すと言ったが、冬空コガラシには言った覚えはない!」
「む、無茶苦茶言うな! 突然(半裸状態で)飛び出してきた狭霧にビックリしただけだろ!」
コガラシだけは、どうやら理不尽な仕置きをされてしまったらしい。
そんなやり取りに、既視感をやっぱり覚えつつも、色んな意味で緊張感から解放されたホムラが一言。
「……うん。仕方ないか」
勿論、それに同意する訳もなく。
「「仕方なく無い!」」
と、夜の公園に大きな大きな声が響いて今回の事件の幕引きとなるのだった。