注※ 殆ど原作沿い………
「ねぇ 夏山くん!」
「ん?」
それは休み時間の時だった。
宮崎が 丁度 ホムラと幽奈が話をしている所に入ってきた。
「今、幽奈さんとお話してるんでしょ?」
「ああ、そうだよ。コガラシが遅いな、って話。アイツ色々と器用だから、生徒会の手伝いとかも直ぐ熟してきそうなんだけど……って」
「『はい。その通りです。なのに……なんだかいつもよりコガラシさんちょっと遅いなーって、宮崎さんも思いませんか?』」
ホムラは当たり前だけど普通に返事を、幽奈はいつも携帯しているメモ帳にさらさらさら~と手早く筆談をした。
「確かにね。でも忙しそうにしてたし…… 仕方がないんじゃないかな?」
「『そうですか……』」
「まぁ 物量的に無理だって言うならヘルプが入るだろうし、休み時間はまだあるし、大丈夫だろ」
やや心配気味の幽奈。ホムラに関しては 全くそう言った気はいが見えない。それ程までにコガラシの事を信頼している、と言う事がよく判る様子だった。
「あ、それより宮崎さん。何か用事があったんじゃないのか?」
「うん……。 あのね、あたしはもう幽奈さんの事判ってるし、お話もしてる。ここにいるってもう疑ってなんかいないんだけど…… やっぱり 普通の人には何もいない方向に1人で話してる姿しか見えないから、目立っちゃってるよ? って教えたくて」
「っ………」
ホムラは宮崎に指摘されて直ぐに周囲を見た。
ひそひそ話をしているグループが1つあったが、もうそれは仕方ないと腹を括るしかないだろう。
「ま、まぁ それは オレの注意不足、って事で戒めておこうとは思うけど……もう良いって最近は思ったりもしてるんだよな」
「え?」
「だって、宮崎さんは判ってくれてるんだろう? ……オレにはそれだけでも充分だよ」
「っ///」
微笑みを向けるホムラ。その素顔を間近で見た宮崎は思わず頬を赤くさせた。
「ああ、オレだけじゃないな。コガラシもきっと同じだろうし。……と言うか、元々はコガラシが原因って言えばそうだな。……後で文句言ってやろうか」
「はうっ…… わ、わたしも同じです…… すみません~ ホムラさん……」
「いやいや。幽奈は良いって。次、気を付ければそれでさ」
しょぼん、としている幽奈の頭を撫でる姿は、まるでパントマイム。それも本格的なものに(周囲は)見える。でも、その仕草、そして 幽奈と言う幽霊がいる事をもう判っている宮崎は 自分自身で想像をしていた。触らせてもらった事もあって、スタイルが良くて長い髪、凄く整った顔立ちである事も想像がついていて…… 2人のやり取りを頑張って頭の中に思い描く。
そして 何処となく、ホムラがお兄さんの様にも思えてきていた。
「あ、そうだ! 夏山くん!」
「ん?」
この時、宮崎はある事を思いついた。
宮崎には想像力を働かせるのには限界があるし、幽奈の姿を見てみたい、と言う想いが強くある。
「ちょっと写真を皆で撮ってみても良いかな? もしかしたら、幽奈さんが写るかもしれないでしょ? 心霊写真みたいにさ! あ、もちろん冬空くんが戻ってきた後でも良いよ! 皆で写真撮ってみようよ」
それを訊いて、大体の想いはホムラには判ったのだが……、幽奈の経緯を考えたら 正直自分が判断できる領分ではない、と思って 幽奈の方を見た。
幽奈も 少し表情を沈めていた。
「『あの…… すみません。わたし、写真を撮られるの凄く苦手で……』」
幽奈の返事を見た宮崎は 少しだけ表情が曇った。
「そっか…… 残念だね。あたし 幽奈さんの素顔見てみたいんだけどなぁ……」
「『うぅ…… わ、わたしも宮崎さんと実際にお話をしたいって思ってます。その、筆談を提案してくれたホムラさんには、申し訳ないのですが。ホムラさん……何とかならないでしょうか?』」
「うーん……」
宮崎と幽奈は筆談する事で意思疎通は出来ているのだが、やはり しっかりと面を向って話をしたい、と言う気持ちが出てもおかしくはないだろう。
でも、それをするためには 障害がある。とても大きな障害が。
幽霊を見る為には 当然ながら 霊感が必要になってくる。これは生まれ持っての体質、資質が影響してくるもので、一般人は通常持ち得ないものだ。(……逆に持ってれば災難、と思うレベルだが)
「うーん……、宮崎さんには霊感が無い様に視えるし、なら普通に鍛えないといけないかな。……でも、会得するには最低10年は修行しないといけないって言うのが一般的かな? 霊山に籠って」
「う…… じゅ、10ねん……」
「いや、まだあるぞ?」
そこで戻ってきたのはコガラシ。
「『コガラシさん。お疲れ様です!』」
「おう。って幽奈。オレには聞こえてるし、見えてるから 筆談しなくても良いんだぞ?」
「あ、癖で……」
幽奈はやっぱりコガラシがお気に入りに見える。笑顔は笑顔なんだけど、その質が一段階増した様に見えるから。
「それで冬空くん! 何か良い方法が他にもあるの??」
10年修行を訊いて、険しい表情をしてた宮崎だったが、コガラシの登場と言葉で淡い期待が再び出てきた様子だ。……だが、直ぐにそれも沈むが。
「臨死体験だ。幽体離脱状態になれば、幽霊と似たようなもんだから、幽奈の事も見える!」
「アホか」
反射的にコガラシにツッコミを入れたホムラ。
「そこまで 賭けれる訳ないだろうが。選択肢としては最初からアウトにしてたんだよ。オレらと同じ様な目に宮崎さんにも合わせる気か?」
「え、えと…… わ、わたしも それは嫌、かなぁ…… そこまで人生賭けるのはちょっと……(で、でも 2人はそれ程過酷な事をしてたんだ……)」
「『お2人は そこまでしてたんですかっ!?』」
ホムラのツッコミに それもそうか、と言う普通の返事をしているコガラシを見て、やっぱり色々と大変な人生を歩んできたんだなぁ…… と改めて実感する宮崎と幽奈だった。
「ほら、皆。そろそろ授業始まるぞ?」
「あ、うん」
「席に戻るか」
休み時間も終わり、と言う訳で 其々の席に。幽奈は コガラシの元へと戻っていった。
そして、その日の放課後。
幽奈と宮崎に連れられて屋上へとやってきた2人。
「見てください! コガラシさん! ホムラさん! ん~~~ えいっ!」
幽奈は集中して念じてみれば…… あら不思議。まるで忍者の様な煙が発生したと思えば、浴衣姿だった幽奈が衣替え。この学校の制服姿に変わっていた。
「どうですか?」
「おう。ばっちりじゃねーか」
「成る程。さっき 宮崎さんに何か頼んでたみたいだけど、制服を見せてもらってたのか」
「う、うん……」
宮崎は何だか顔を赤くさせている。
「ん? どうかした?」
「や、な、ナンデモナイヨ??」
「はぅ…… そ、そーですー……」
「………」
何だか顔を赤くさせてるのが増えている。宮崎だけでなく幽奈も、そしてコガラシもだ。
「……その反応だけで十分だ。分かった。もう何も言わないし、訊かないよ」
「っ~~……(ゆ、ゆらぎ荘じゃ 日常的になっちゃってるー、って幽奈さんが言ってたの本当だったんだ……)」
ホムラやコガラシ達を含めた『とらぶる!』 はそれなりに聞いていて、判っていたんだが やっぱり 男の子は皆狼だって、えっちだって、だから 気を付けないと! とこの後幽奈にもう一度言い聞かせよう、と心に決めた宮崎だった。
でも、勿論 2人の事は信頼しているのは間違いないが。
「こほんっ!『これも宮崎さんのおかげですー! ありがとうございました』」
「ううん。これくらいならどうって事無いよ」
嬉しさのあまり、幽奈は飛んで宮崎の方へと向かうが…… 判ってほしいのは 制服はスカートだと言う事。それもここのスカートは膝上10cmとそれなりに際どいと言える。
そんな衣装で空に浮かんだらどうなるか、一目瞭然だ。
「幽奈。その格好であんま浮くな」
「………気を付けてくれよ、幽奈」
直視する訳にもいかないから、そっぽ向きながら幽奈に注意する2人だった。
「あ、そうだ。幽奈さんはどうして写真苦手なのかな?」
「!!」
宮崎の質問を受けて、今まで直ぐに返事を返そうとペンを走らせていたのだが、それがピタリと止まった。それは判ったから宮崎は慌てて言いなおす。
「あ……ごめん。やっぱり記念写真を撮りたいな、って思っちゃって……」
幽奈は、宮崎の事はもうよく判ってる。純粋に自分と一緒に写りたいって思ってくれてる事には凄く嬉しいし、感謝しているのだ。だからこそ、正直に話そうと決意をした。
「『……大した事じゃないんです。写真にはわたしの姿がハッキリと写らなくて。その……皆さんを怖がらせてしまう事が多かったので……』」
思い返すのはこれまでの観光客がゆらぎ荘の傍で写真撮影をしていたころの事だ。
幽霊の噂が流れる以前までは その見事な外観から、記念撮影をする人も多く、それに興味を持った幽奈がちゃっかり入ろうとして ピースサインをしたのだが…… 実際に 写ったのはそれはそれはおぞましい白い物体だった。輪郭は定かではなく、THE・心霊写真と言った感じだ。それを見て怖がってしまってお祓いを~と騒ぎ 逃げ帰ってしまった事が多々あり、そこから苦手になってしまったのだ。
「なるほどな……」
コガラシは知らなかったから、この時に納得した。
幽奈の容姿が見えてる自分からすれば、中々判らない事だから。
「……そう言う事なら大丈夫だよ! 今更怖がったりしないって! だから、撮ろう!」
「で、でも……」
「オレも大丈夫だって思うぞ? 幽奈。……宮崎さんとはもう『友達』だろう? ……ほら」
悩んでる幽奈の背中をそっと押してあげるホムラ。
「ものは試しだ。ひょっとしたら、前よりよく撮れてるかもしれねーだろ?」
コガラシも賛同した。
「ほらほら、幽奈さん。ここに入って! 夏山くん! 誘導お願い」
「OK。幽奈、頑張れ」
「あ、あうっ は、はい」
宮崎と幽奈のツーショット写真完成。
案の定と言うか、安定と言うか…… 勿論 結果は THE・心霊写真だ。
宮崎さんの顔の横に大きく白い影が写っている。ここでおどろおどろしいBGMでも流せば、テレビの特番でも使ってくれそうなレベルのものだ。
「……………」
「は~~…… こう写るのか」
「ありきたり、とは言えるが まだ良いと思うよ。幽霊の中じゃ 身体の一部しか写らないってのもいるしさ。全体が見えてる分……。な、なかなか上手いフォローが出来なくてすまん。幽奈」
「『い、いえ良いんですぅ……。で、でも やっぱり怖い……ですよね……!』」
ホムラやコガラシは兎も角、宮崎は一般人だから仕様がない。ちょっと震えてる様にも見えるし。
だが、宮崎は頷いたりはしなかった。
「だ、大丈夫! たしかにこのままじゃちょっとコワイかもだけど、ほら、これをこーやって、こーやって……」
慣れた手つきですっすっす~ と操作する宮崎。『よしっ』と言って完成した画像をこちらに見せてくれた。
「ほら!これならカワいくない?」
画像加工アプリを使ったのだろう。恐ろしく見えていた幽奈の姿が可愛らしいリボンやキラキラと輝く瞳、付けマツゲ、ちょっとした編集で見事におしゃれに仕上がっていた。
それを見た幽奈は、ぴたりと固まっていた。
「幽奈?」
「大丈夫か?」
「あ、あれ……? ダメ、だったかな?」
思っていた反応と違ってちょっと不安だった。
だけど、直ぐに幽奈は動いた。ゆっくりと宮崎の手を取り、その掌にそっと指を這わす。
『ありがと』
とゆっくり4文字。それだけで充分伝わった。
笑顔になった
「よしっ! 皆で写真撮ろうよ! それで この写真、皆に送るよ!」
そう提案してくれたのはとても嬉しい。
だけど、そう簡単にはいかなかったりもする。
何故なら――
「ええっ!? み、みんな スマホ持ってないの!?」
「……オレらが持ってる訳ねぇだろ」
「『ゆ、幽霊ですしー……』」
「……まだ安定した収入じゃないし、スマホ代もバカにならなくて……。スマホ代払う前に借金払わないと、だしなぁ」
と言う訳だった。
どこか哀愁を漂わせている3人だった。