体力測定は順調に進んでいきやっと克也は他の人たちに追いついてきた。
50メートルを測るのが長引いていて助かったぜ。しっかしなんで学年全体で体力測定なんてするんだろうな、回転悪い気がするんだが…。
「んー、それにしてもあんまいい記録出せてるやつはいない感じだな。こんな時翔とだったら―」
考えようとして首を振る。
今翔と何かをするのは無理だ、と本人は無自覚のうちに拗ねている。
克也はクラスメイトを見つけると一緒に走らないかと提案する。
「よ、一緒に走らないか?えっと…」
やべ、名前覚えるの忘れてた。こういうの印象悪く思われるんだよなぁ…。
困ったと言わんばかりの沈黙に焦るが相手の言葉に安堵する。
「うん、いいよ。人がいなくて困ってたし、それに克也って足速いし!あ、僕の名前は高橋啓太だよ」
まああれだけ鬼ごっことかしてたらそう思われるか。
良い風に思われていて顔がほころぶ克也だった。
(一般的に考えたら俺らのやってることは迷惑行為になるはずだが…それでもこんな風に話してくれるというのはやはり翔の影響か)
「そっか。よろしくな啓太」
ある程度の考えをまとめ、克也は笑うのであった。
一方翔は桐生谷に捕まりガラスを割ったことを保護者に連絡していた。
翔の親は諸事情により不在だったため伝言を残し体力テストを再び始める。
「なあ星宮。宮本がなんで止めに入ったか何となく理解してるんだろ」
いつもと違う声音の桐生谷に驚き翔は反応が一瞬遅れてしまう。
「…え?先生いきなりどうしたんですか!?僕は人の考えは全く理解できないタイプですよ?」
桐生谷先生の言っていることが理解できない表情の翔。
翔は前を向き顔を隠した。今の翔の顔は驚愕。
やっぱりこの先生はすごいや、克也だって気付かなかったのにあっさり気付くなんて!もしかして演技とか下手だったのかな?
翔の考えを知らない桐生谷先生はその仕草を見ながらため息を吐くといつもの声音に戻って翔に報告する。
「…そうか、ならいい。それよりもさっさとテストを終わらせないと他の生徒にまで迷惑がかかるぞ」
いきなり言われた言葉に翔は思わず目を見開く。
翔は自分が遅くても迷惑になるのは先生だけだと思っていたのだ。
「ど、どうしてそれを先に言ってくれなかったんですか!」
こうしちゃいられない!早く終わらせないと!
翔はいつになく素早く行動に移る。
それを見た桐生谷先生はとても深いため息を吐いた。
「先生!星宮投げます!」
「おう…頑張れ」
先生元気ないけどどうしたのかな…?でも今はそんなことよりも体力テストを終わらせなくっちゃね。
考えを放棄し翔は円の中に入った。今度はハンドボールをがっしりと掴む。
円ギリギリまで勢いをつけハンドボールを投げる。
最初からそうだが今回投げた球も綺麗に山を描きながら飛んでいく。
その様子を克也はもちろん他の生徒も見ていた。
ボールが落ち、桐生谷先生は記録を聞きに行く。
「49メートルだ。宮本のほうがやや上だが二人とも優秀な成績だ」
「先生、克也が見てない今のうちに次のテストやっちゃいましょう!」
何もなかったことにし、次の場所へと向かおうとする翔だったが、その様子をニヤニヤと笑う克也が目の前に現れる。
翔は苦い顔をしながら克也を見る。
「な、なんだよ克也。まだ勝負は決まってないよ」
「いや…俺が言いたいのはそういうことじゃねえ」
ほえ?と素っ頓狂な声をあげマジマジと見つめる。
その顔は先ほどまでとは全く違い、いつもより幾分柔らかく見えた。
「残りのやつは一緒にやろうぜ!」
そうだ、いつだって俺は翔と一緒にいたじゃねえか。今さら翔のせいで目立ったとして昔と変わらないじゃないか。
翔はやや戸惑っていたがお構いなしに肩へと腕を回す。
桐生谷先生はそんな二人を微笑ましく思いながら次の場所へと移った。
だが、翔たちは気付いていなかった。その様子をある窓から覗く人がいることに。
「ふ~ん、あれが噂の二人組かい。我が校の評判を落とさないでくれると嬉しいんだけどねぇ…特にあの星宮って生徒…」
二人を眺め終えると椅子に座る。
資料を見た後少し目を伏せ何かを考える。
「まあ、もし我が校に悪い影響を与えるようなら―」
少し間を空け双眸を光らせ、声音が一層鋭くなる。
「退学させればいいだけの話か」
冷徹な内容だがこのことを知るものは誰もいなかった
翔たちの知らないところで退学の危機が―!?
いやまあこんなこと毎回してたら退学は知りませんが停学は喰らいますよね普通(笑)
今回も読んでくださったことありがとうございます。もう少し文章力や想像力をどうにかしたいなと悩まされている男爵芋です。
まだ体力テストのお話は続きますがよろしくお願いします。