翔は少し遅れてクラス決めのボードのところまで着いた。
「そこまで運動差はないのに遅かったじゃないか、何かあったのか?」
「ううん何でもないよ、ただちょっと考え事をしててさ」
その言葉を聞き克也と翔は無言となった。
え、なにこの空気!?僕何かまずいこと言っちゃったのかな!?
顔や仕草には一切出さないが、心の中で叫んでいた。
考えるんだ、克也がどうして無言になったのか。さっきの話の続きでも考えていたのかな?いや、それにしては黙り方が急だったような…。
翔はチラっと克也の様子を窺う。
「……」
克也はあまりに驚いて言葉が出なかったのだ。
ちょっと待ておかしいどういうことだ、あいつが考え事だと?今まで悩み事はなんですかと聞いたら悩みがないことが悩みみたいなやつだったのに考え事だと…!?
克也の頬から一筋の汗が垂れる。
冷静に考えろ、何も悩み事って決まったわけじゃない。さっきの話でどうすれば退学しないで済むかを考えていたんだろうそうに決まっている。
だが、そんな克也の考えは一瞬にして砕かれる。
「はぁ…高校生活…楽しみたいなぁ…」
「…は?」
待て待て待て待て、普通に楽しみたいだけだったのか!?なんだそりゃ、こっちは何事かと大慌てしたってのによ。
克也はため息を零した。
「は?ってなにさ!高校くらいはちゃんと過ごしたいって考えてたのにさ!」
「いや…、その、すまん。俺はもっと重大なことを考えているもんだとばかり思っていたからよ」
「む、それは心外だよ!確かに今までこんなこと考えたことなかったけどさ、気持ちを改めるって言ったよね」
「ま、そうか。学校の決まりを守りながら楽しめばいいもんな」
克也の言葉に翔は雷を打たれたような感覚に陥った。
ふ、やっぱり克也は頭がいい。
「その考えはなかったよ!」
僕は爽やかな笑顔を浮かべながら親友を眺めた。
克也はその言葉と笑顔を見て心の底からバカだと思った。
しかし、それも束の間のこと。心地よい風が吹いてふと空を見る。
翔もつられて空を眺める。
「ま、深く考えなくていいだろ。俺らはいつも通り俺らのやり方で楽しく過ごせばいいさ」
「うん、そうだね。今まで通り楽しめばいいよね」
「いや…それだと退学しちまうからな…授業はちゃんと出ないとダメだ。今まで見たいに屋上や友達と授業をサボってるとアウトだ」
ははは、それはなんて難しいことなんだろうか。でも、克也と一緒だしこれからできるであろう友達と一緒なら平気なんじゃないかなって思うんだ。でもこんなこと克也には言えないね、絶対バカにされるもん。
「これから三年間またよろしくね克也!」
克也は一瞬だけ目を丸くしたがすぐに笑みを浮かべて拳を出した。
「あぁ、よろしくな!」
拳をコツンとぶつけ二人で笑い合った。
少しすると遠くから声が聞こえてくる。
「おいお前ら!もう始業式が始まるぞ!初日から遅刻とはいい度胸じゃないか」
ゴゴゴゴゴと凄まじい音を出しながら先生と思われる人が近づいてくる。
はい?遅刻?
僕と克也は目をパチクリしながら校舎にある時計を見る。
時刻は八時三十七分、ホームルームが始まるのが八時三十分だからえぇっとつまり…。
「まずいよ克也!遅刻だよ!」
急いで克也がいたほうを見るとすでに姿がなかった。
慌てて校舎のほうへ見返すと克也が走っていた。
「あんのクソ野郎ぉぉぉ!」
たまには暴言吐いてもいいよね?今回くらい許してくれるよね?
翔はそう思いながら全力疾走した。
初日から僕と克也は遅刻をしたのであった。