自己紹介を終え一時間目の授業が始まるまでの間の時間、クラスメイトはいろんな人と話していた。
克也たちは話しかけに行かずとも人が寄ってきた。
さっきから視線が釘付けだが今日の始業式までの一連の騒動のせいだろうな。
「あの短期間でこれだけ噂になるとは正直予想外だった」
額に手を当てながらうなだれる。
だがこういうのも悪くないか、スタートが少し遅れたとしても追いつけばいいんだから。こういうところはあいつに似たんだろうな。
克也は軽く息を吐き、気持ちを改め先生が来るのを待った。
一方翔はそんなことおかまいなしにただ外を眺めていた。
空が綺麗だ、とか今通った人は何を考えているのだろうとか。そんな暇つぶしのために外を眺めているわけではなかった。
「……」
高校生になって何か変われそうだとは思ってるけど…何が変わるのかな…。今までの交友関係とは違う交友関係ができる、とかなのかな?
少し首を傾け若干変わった風景を眺める。
こうやって少し行動を起こすだけで景色が変わるんだけど、人も小さく変われたりするのかな?ううん、こんな小さい変化じゃないもっと大きな変化が起こせるんじゃないのかな。難しくてよく分からないけど、こうやって考える時間が作れただけ進歩したよね?
唸りながら悩む。
中学まで自分に何かを求めようとしたことがなく、どうすればいいのか全く分からない。
そんな翔を見て克也は席を立つ。
翔の目の前に立っても考え事に集中しているのか気付いている様子はない。
小さくため息をこぼすと
「なんか小難しいこと考えていそうな顔だがお前には似合わん、いつも通り面白おかしくやってろ。俺はイキイキしているお前を見るのが好きなんだ、他の奴らにもそれを見せてやれよ」
克也の声がしてハッと顔を向ける。
いきなり目の前にいて驚いたりしたが、それよりも克也の言葉を頭の中で反復させる。
結果、考えるのがバカらしくなった。
克也の表情は笑っていていつもと同じで無理に変える必要はないんじゃないかな?と思っていた。少しずつゆっくり変えていけばいいのかな?なら今のままでいいのかな?
自分の頭の中で様々な意見が出てくる。
しかし結局考えは纏まらず放棄した。
「うん、そうだね!やっぱ難しいのは苦手だよ」
その言葉を聞き克也は笑いながら自分の席へ戻っていく。
結局翔は翔のままだった。朝のことといい不安だったが吹っ切れたようで良かった。
いつものあいつに戻って良かった、あんまし心配かけさせんなよな。
克也は小さく微笑みながら席に座った。