そして始まった一時限目。
克也は教科書の表紙をブックカバーにし漫画を読んでいた。
翔はクラスを眺めていた。
いろんな人がいていろんな考えがある、それが教室だよね。だから全部は無理だとしてもそれなりに協調していかないとだめなんだよね。全員が自己主張激しいとクラスとし全く機能しないし僕らもそれなりに自嘲しないといけない。
だが、考えているだけで実際に行動はしていなかった。現に今ノートに学校内の大まかな地図を描いている。
「えー、では教科書6ページを…星宮読んでくれ」
突然の名指しに翔は反応が遅れる。
訳が分からず首を傾げていると視線が集まった。
あぁ、指名されたのね…ってえええぇぇぇぇぇ!?
翔が慌てて教科書を取ろうとしたとき克也が教科書(の表紙がカバーになっている漫画)を貸してくれた。
「サンキュー克也、助かったよ」
「いい…からさっさと読め…」
克也は顔を隠しながら机に伏せてしまった。
最初の授業から怒られてたら大変だもんね、後で飲み物でも奢ってあげよっと。
「はい!えっと六ページはっと…。月夜を駆け、僕と彼女は世界の闇から逃げてしまった。深い後悔と憎悪を感じるがあんなものを見れただけでも十分だったと思っている…」
読んでいて視線が集まっていることに気付き周りを見る。
克也を除くクラス全員がこっちを見ていた。
それに少し騒がしい気がする…。先生も先生でブツブツ言っているし…。
何がそんなにおかしいのだろうか。僕はただ教科書を読んでいるだけなのに。
少し考えていたが気にするのをやめ教科書に目を通し再び音読をする。
「だけど、そんな闇から逃げられるわけもなく無情にもすぐそこまで来ていた。僕らはもうダメだと諦め互いの思いを口にする。―僕は君のことがずっと好きだった、この世界よりも君のことが好きだ。僕は彼女を優しく抱きしめた。彼女は涙を流しながら応える。―嬉しい…、私も同じ気持ちだったの…。でも、少し遅かったみたいね…。来世でも貴方と出会いたいわ、そして貴方と一緒に過ごしたいの。彼女の言葉を聞きとうとう僕も涙を流してしまった。闇はすぐそこまで迫っていたが、彼らはそんなこと気にしなかった。甘い口づけを交わし二人は世界に溶けていったのであった」
翔は読み終えた後感激のあまり一息吐いた。
クラスの皆もそれを聞いて黙ってしまった。
そんな沈黙の中一人、克也だけ我慢の限界を迎え爆笑していた。
「く…ははははは!やっぱ翔は面白れぇ!ひーひー、腹が痛いわ」
苦しそうに腹を抑えながらそんなことを言う。
「え?一体何のこと?」
「星宮…お前の教科書はどういう内容になっているんだ?」
「えぇ!?どういう内容ってみんなと一緒じゃないんですか!?」
翔の素っ頓狂な声に克也はまた笑っている。気が付くとクラスの生徒ほとんどが笑っていた。
そんな中一瞬だけ姫松さんと目が合った。
姫松さんは僕の視線に気付くと黒板のほうを向いてしまった。
「ありゃ…?何かまずいことしちゃったかな…?」
小さな声で自問自答する翔。
そんなことなど露知らず武田先生が近づき翔の教科書を取り上げる。
そして教科書の表紙が取り付けられている漫画を読みわなわなと震えていた。
「星宮ぁ!授業が終わったら職員室に来るように!」
「…え?えええぇぇぇぇぇ!?」
翔の悲鳴が廊下にも響き渡った。