転生少女の希望譚   作:修羅

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続きました。



転生少女の成長譚 その1 ~みすぼらしいポケモン~

どうも、椿改めてユキノです。え、誰に話してるんだ私。

まずご報告。

 

祝、転生しました。

 

それに気づいたのは二回目の目覚め。

私を抱いている母の姿。そしてこちらを見て優しそうに微笑んでいる父の姿。さらにこの小さな体、つまり赤子の体を体感して確信しました。

あ、私転生してる。

それで嬉しくて大泣きしたのはいい思い出。

そんな私は今、母に抱かれて子守唄みたいなのを聴かされている。

とても綺麗な声だ。澄んだ声で、他の赤ちゃんだったら一瞬で眠りにつくであろう。

そんな私も凄く眠いが、新たな世界をこの目で見たいがために凄く耐えている。うん、眠たい。

 

「あら、眠たくないのかしら?」

 

母が不思議そうにこちらを見てくる。いいえ、凄く眠いです。

すると父が閃いたというふうに人差し指を立てた。

 

「もしかして、何か見たいんじゃないか?」

 

「え?何を?」

 

「ポケモンとか!」

 

父よ、そのポケモンというのは何ですか。

疑問に思っていると、父は懐からボールを取り出した。赤色と白色のボールを。

母が「ちょっと」と止めているような気がするが、父はその前に。

 

「出てこい、エンペルト!」

 

と、高らかにその名を呼んだ。

その瞬間。

 

ボールは開き、そこから眩い光を放って、大きなものが出てくる。

……ペンギンのような、頭に王冠みたいなものをつけている……生き物が、こちらを見た。

……え、何、それ。

大きいのにあんな小さいボールに入っていたの?え?

父はその生き物の肩?を抱き。

 

「エンペルト、この子がユキノだぞー!挨拶しとけよー!」

 

と、嬉しそうに言った。

その生き物はペタペタと私に近寄り、鳴き声らしいものを上げた。

たぶん、挨拶だ。

だけど、私は。

 

 

 

その生き物が、怖かった。

 

 

「……あああああああああああああああああああああ!!」

 

 

その生き物が挨拶した数秒後。

 

 

私は大泣きした。

 

 

 

 

 

 

それがポケモンとの初コンタクトだった。

大泣きし疲れた私は、目が覚めた途端父の土下座を目にし、そして母の顔が船若になってまた泣きそうだったが、なんとか耐えた。

赤ん坊って、こんな気持ちだったんだな。怖かったらすぐ泣いちゃうのも、不安になって泣いちゃうのも納得だ。

ポケモンは大きくなったらまた見せることになったが、果たして大きくなった私があの生き物……いや、ポケモンに怖くならないのか、心配である。

 

 

 

長く時が進んで、私は二歳となった。

自分で歩くことはまだ出来ないが、ハイハイやらカタコトくらいなら出来るようになった。まだうまく喋れなく、心の中ではこうやって普通に喋っていることに日々違和感を感じる。

そして昨日、私は小さなポケモンと出会った。

いや、出会ったではなく、『遭遇した』と言った方がいい。

水辺で家族で散歩していた時、湖の中にあるものがいることに私は気づいた。他のポケモンもいるのだが、私はそのポケモンが気になってしまった。

「あー」とそのポケモンを見ようと体を動かす。母も「どうしたの?」と言いながら、湖に体を向けてくれた。

そしてその動き、大きさにポケモンかと疑った母が、すぐ様私をそれから隠すようにしたのだ。そうだ、私はポケモンは怖かったのだ。

しかし天然の父が「小さい子ならいけるんじゃないか?」と言い出し、母に怒られている隙に、私はそのポケモンを覗き見た。

そのポケモンは顔を出していた。

そして私は、目を疑った。

 

 

そのポケモンは魚のようで、とてもみすぼらしく、はっきり言って地味という言葉がお似合いのポケモンだった。

全身に傷を負い、そして生気があるかもわからないほどに、そのポケモンは貧相で、弱っていた。

まるで私に助けを求むかのように、小さく鳴く。

これは、マズイと思った。

「あー!」と私が母を叩く。母はどうしたの?と聞き、振り返り、そのポケモンを見て絶句した。

 

「このポケモンは……ヒンバスか?」

 

父もそのポケモンを見て驚いている声だった。

どうやらこのポケモンはヒンバスというらしい。しかし、何故驚いているのだろう。

父がヒンバスに近づいて零す。

 

「おかしいな。ヒンバスの生息地はここら辺ではないはず……」

 

なるほど、だから驚いていたのか。

しかし父がヒンバスを撫でた時、父は非常時に気づいた。

 

「このヒンバス、弱ってる」

 

「嘘?」

 

「早くポケモンセンターに連れてかなきゃ!」

 

「だから鳴き声が浅かったのね……!ポケモンセンターに連れていきましょう!」

 

父がヒンバスを抱き上げ、母はもう一度私を抱き直し、父の後を追っていった。

 

 

ヒンバスは、目を閉じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しばらく安静にしていれば、大丈夫ですよ」

 

女の人……恐らく看護婦さんらしき人が、ピンクのポケモンを引き連れて私達に言った。

どうやら私はポケモンセンターという所にいるらしい。いや、説明しなくてもわかるか。

私は母の腕から、周りを見渡す。

周りにはポケモンに毛繕いをしている人や、休憩している人達も居る。どうやら、ここがポケモンと人にとっての憩いの建物……ということでいいのだろう。

父が看護婦さんの話を聞いてホッと胸をなで下ろし、母はよかったと呟きながら、私をギュッと抱いた。

そうか、無事だったんだ。よかった。

出来れば一目見て無事を再確認したかったけど、あの時ポケモンを見て大泣きしたせいか、母は私が大きくなるまでポケモンを極力見せないようにしてくれている。今回もそうだったが、結果的に良くなったのでよしとしよう。

しかしそれがあるがために、恐らく私がヒンバスを見る事は叶わないと思う。ここは子供らしく母に抱かれ、そのまま眠った方がいいだろう。

……でも、ヒンバス見たかったなぁ。

 

「ユキノー。ヒンバス、無事だったぞー」

 

父が私の頭を撫でる。

父はポケモンが大好きで、昔旅をしていたらしく、ポケモンの知識もある。

しかしちょっと天然なのが難点。心当たりはあの大型ポケモンである。

そして、子供に凄い甘い。

でも私は、生物を大事にしている父が大好きだ。

どんなに気味な生き物でも、父は変わらず接し、どんなに気持ち悪いと罵られても、父はそれを無視して自分の道を貫いている。ーーー母も、それに惚れたのかもしれない。

父は私の頭をなで続け、こう言った。

 

「ヒンバスのこと、気になるか?」

 

もちろん気になっている。

母は父の言葉に驚いていたが、父は「大丈夫」と母に言った。

父は私を抱き上げ、また聞いた。

 

「凄い気になっていただろ?ヒンバスが大丈夫だって安心したいだろ?だから、ヒンバスの所に行くか?」

 

「あー」

 

「そうかそうか。行きたいか!なら行こうか!」

 

「ちょっとあなた!」

 

父はこういう時はわかってくれる。

しかし、私を心配する母が抗議した。

それを父は大丈夫と宥める。

 

「あの時のユキノは、たぶんエンペルトが大きいから怖く感じたと思うんだ。でもヒンバスや小さいポケモンを見ても、そんなに怯えていなかっただろう?」

 

「それはそうだけど……」

 

「大丈夫だ。俺を信じてくれ。な、ユキノ?」

 

……まぁ、その説は一理あるが……。

確かに小さいものには恐怖はないが、それでポケモンは嫌いじゃないというわけでは……いや、可愛いんだが……微妙なんだが……。

でも会いたいっちゃ会いたい。というのが本音。

とりあえず意思表示で父の頬を叩いた。父はそれを何と捉えたのかは知らないが、「そうかそうか、わかった」と、真っ直ぐに診察室の方へと歩いていった。どうやら私の意思は伝わっているらしい。

 

 

 

ポケモンにとっては病室と言っていいのかわからないが、ガラス張りの向こうに、ヒンバスが何かのカプセルに入れられていた。

あれがポケモンの治療か。やはり機械ではないと完璧には治せないんだな。

ヒンバスの表情はさっきよりも和らいでいる。具合も良くなっているし、看護婦さんの言葉は嘘ではない事はわかった。

 

「中に入る事は?」

 

「ごめんなさい。今は出来ないんですが、後日改めて来てくれれば、大丈夫です」

 

「ヒンバスはいつくらいで治るの?」

 

「酷く衰弱していて、怪我も酷かったので、早くても一週間は必要となります。でも一週間で治るかはどうかはわかりませんが……」

 

「なら、明後日にまた行こうか」

 

「ええ、そうしましょう」

 

……そんなにも酷かったのか。もし私が気づかなかったら、このヒンバスはどうなっていたのだろう。

その先を想像するだけで、ゾッとした。

今も苦しんでいるヒンバス。例え治療したとしても、その苦しみは残っている。

ーーー助かるよね?

その不安が大きくなっていく。

あのまま死んだりしないよね?

誰にも何も見られずに、息絶えることはないよね?

治療したんだから、大丈夫だよね?

まだ子供の私に、この不安は大きすぎた。

すぐに涙が溜まり、ポタポタと滴が落ちていく。大泣きしなかったことが、奇跡と思えるくらいだ。

 

「大丈夫。ヒンバスは助かるよ」

 

父が頭を撫で、母が背中を優しく叩いてくれる。

でも私は泣き止めない。

だってヒンバスは、治療しても苦しみからは逃れていないはずだ。今も戦っているんだ。

その苦しみは、私もわかる。

だから、受け取ってしまう。

助かるよね?ヒンバスは、いなくならないよね?

でもそれは、まだ子供の私には伝えられない。

 

「ぅ……あー……」

 

まだカタコトくらいしか喋れない私を、今日初めて強く憎んだ。

 

 




ユキノちゃんはまだ赤子の心同然だったので、いきなり自分の体より大きなものを目の前に出されたらそりゃ泣きます。……個人差があるかもしれないですけど。
成長したらたぶん克服すると思います。

短編で終わらせようとしましたが、続いてしまった。何故だ( 'ω')
本当は長くしようとしたけどダメだった。ごめんなさい。
これだけの文字数でもいいのなら、どうぞ気楽に観覧してってください。……本編シリアス気味だけど。
父ちゃんは天然さんで子供が大好き。娘のユキノちゃんすごく大好き。つまり親ばか。
母ちゃんはお嬢さまのような素敵な方。でもちょっと抜けてる。娘のユキノちゃん大好き。親ばか仕方ないね!
と、序盤はこの親子で進んでいきます。


ユキノちゃんはこの頃は小さいポケモンなら大丈夫です。でも大きいポケモンだとあの時突然出たエンペルトを思い出して泣いちゃう可能性があります。制御は出来ません。
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