問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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前半と後半の温度差注意(笑)


旋風→ロマンの求道者

「僕がやろう」

 

読み終わると安心院が前に出た。

 

『心配する必要はないだろうけど大丈夫なのかい?』

 

「何を他人事みたいに言っているんだい?君も参加だよ?」

 

『なんでかな?』

 

「言っただろう?僕は君から離れられないんだ。僕が参加するからには君も参加することになるんだよ」

 

『え、嫌だよ?』

 

「答えは聞いてないよ」

 

そのやり取りを見て呆れたように苦笑いを漏らす十六夜。

 

「OK、先手は譲ってやる。失敗はするなよ」

 

「誰に言ってるのかな?」

 

答えた後、グリフォンの方に球磨川を引き摺りながら駆け寄る。

だがグリフォンは大きく翼を広げてその場から離れた。

戦いの際、白夜叉を巻き込まないようにする為だろう。

威嚇するように翼を広げ、巨大な瞳をギラつかせるグリフォンを、安心院は面白そうに観察しながら近寄る。

 

「初めまして、僕は安心院なじみ。親しみをこめて安心院さんと呼んでくれ」

 

<!?>

 

ビクンッ!!とグリフォンの肢体が跳ねた。

その瞳から警戒心が薄れ、僅かに戸惑いの色が浮かぶ。

安心院は動物と心が通じるスキル【動物交感(アニマルウィスパー)】でグリフォンと言葉を交わしている。

 

「ほう……あの娘、グリフォンと言葉を交わすか」

 

白夜叉は感心したように扇を広げた。

しかし安心院なじみにとってこれくらいはどうということではない。

現在は千個程しか使えないがかつては一京のスキルを扱っていたのだから。

二種の王であるグリフォンの背に跨る方法は二つある。

一つは力比べや知恵比べで勝利すること。

屈服させることで背に跨る方法だ。

二つ目は、その心を認められる事。

王であり誇りの高い彼らに認められて跨る方法である。

 

「僕を背に乗せ、誇りを賭けて勝負をしないかい?」

 

<……何………!?>

 

グリフォンの声と瞳に闘志が宿る。

気高い彼らにとって[誇りを賭けろ]とは、最も効果的な挑発だ。

 

「君が飛んできたあの山脈。あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定める。君は強靭な翼と四肢で空を賭け、湖畔までに僕を振るい落とせれば勝ち。僕が背に乗っていられたら僕の勝ち。どうかな?」

 

確かに、その条件ならば力と勇気の双方を試す事が出来る。

安心院としてはもっと楽な方法もあるがむしろ難易度の高い方法を好んで選ぶ。

グリフォンは如何わしげに大きく鼻を鳴らして尊大に問い返す。

 

<お前は私に“誇りを賭けろ”と持ちかけた。娘一人を振るい落とせないならば、私の名誉は失墜するだろう。__だがな娘。お前は何を賭す?>

 

「僕と球磨川君の命を賭けよう」

 

即答だった。

いきなりの発言に球磨川が文句を言おうとするが黙らせられる。

 

「僕は命、君は誇りを賭ける。転落して生きていても、僕達は君の晩御飯になるぜ。」

 

<ふむ……>

 

安心院の提案に慌てる黒ウサギ。

それを十六夜達は厳しい声で制す。

 

「下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

 

「ああ。無粋な事はやめとけ」

 

「そうじゃ。邪魔することではないの」

 

「そんな問題では……

 

「大丈夫だよ。だから少し黙っていてくれないかな?」

 

グリフォンはしばし考える仕草を見せた後、頭を下げて背に乗るように促した。

 

<乗るがいい、若き勇者よ。鷲獅子の疾走に耐えられるか、その身で試してみよ>

 

安心院は球磨川を引き摺りながら手綱を握って背に乗る。

グリフォンは前傾姿勢を取るや否や、大地を踏みぬくようにして薄明の空に飛び出した。

グリフォンの翼は大きく広げたままで固定されている。

驚くことにグリフォンは翼を推進力にして飛んでいるのではないのだ。

それを観察しながら安心院は感嘆の声を漏らす。

 

「へぇ……君は空を踏みしめて走っているんだね」

 

鷲の持つ鋭い鉤爪が、風をからめ取るように。

獅子の持つ強靭な四肢が、大気を震わせるように。

鷲獅子の巨体を支えるのは翼ではない。

旋風を操るギフトで空を疾走しているのだ。

 

<娘よ。もうすぐ山脈に差しかかるが……本当に良いのか?この速度で山脈に向かえば>

 

「体感気温マイナス数十度ってところかな?大丈夫だよ。君こそ本気を出さないと僕が勝つぜ?」

 

<……よかろう。後悔するなよ娘!!>

 

次の刹那、大気が揺らいだ。

今度は翼を用いて旋風を操る。

下を見れば羽ばたく衝撃で崩れる氷河が見えた。

人間の体など一瞬でひしゃげてしまいそうな衝撃の中、安心院は楽しそうにグリフォンの背で手綱を握りながら立っていた。

……一方、球磨川は安心院のもう片方の手の中でひしゃげていた。

コレだけの圧力、冷気に耐えている彼女の耐久力は少女を逸脱している。

 

(なるほど……相応の奇跡を身に宿しているという事か……!!)

 

グリフォンは苦笑を洩らす。

彼は知らなかった。

安心院なじみが人外であることを、一京のスキルを所持していたことを。

グリフォンは必死に振り落とそうと旋回を繰り返す。

しかし安心院は平気な顔で立っている。

勢いもそのままに、湖畔の中心まで疾走したグリフォン。

安心院は勝利が決定した瞬間__安心院はその背から飛び降りた。

 

<何!?>

「安心院さん!?」

 

助けに行こうとした黒ウサギの手を、十六夜が掴んだ。

 

「は、離し__」

 

「待て!!まだ終わってない!!」

 

焦る黒ウサギを止める十六夜。

ふらっと、安心院の体が翻る。

彼女は湖畔に触れることなく飛翔した。

 

「……なっ」

 

忍以外の全員が絶句した。

無理もない。

安心院が風を纏って浮いているのだ。

しかし球磨川に意識があればいつものことと言っていただろう。

これまでの対戦相手の技を使用するスキル【人生経験段(エキサイティングメモリー)】でグリフォンのギフトを習得し、風を司るスキル【風の吹くまま(ウインドウショッキング)】と組み合わせ強化する。

安心院が強く力をこめると旋風が吹き荒れる。

黒ウサギのスカートもめくれかけるがやはり中身は見えない。

 

「どこまで鉄壁なんだよ!!」

 

「当然だ。私が与えたギフトだからの」

 

暦の叫びに白夜叉が返す。

安心院は地面に降りると球磨川を放り投げる。

 

『酷いな、安心院さん』

 

「君はこれくらい平気だろ?」

 

言い合う球磨川と安心院に白夜叉はパチパチと拍手を送り、グリフォンは感嘆の眼差しで見つめる。

 

<見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証しとして使って欲しい>

 

「大事にするぜ」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの」

 

『そういえば白夜叉さん』

 

「何じゃ?」

 

『黒ウサギちゃんに鉄壁スカートをはかせたのは君かな?』

 

「そこの小僧に言った通りそうじゃ」

 

『そうですか。なら僕達から言いたいことがあるな』

 

『せっかくの女子のパンツを見れなくするってどういうことだい?』

 

「それは俺も聞きてぇな」

 

十六夜も話に加わる。

白夜叉は落胆のような表情になる。

 

「おんしは何も分かってないの。所詮その程度か?」

 

『言ってくれるね』

「そうだな」

「ならお前には、スカートの中身を見えなくすることに芸術的な理由があると?」

 

無論、と白夜叉は首肯。

まるで決闘を受けるかのような気迫で白夜叉は凄む。

 

「考えてみよ。おんしら人類の最も大きな動力源はなんだ?エロか?成程、それもある。だが時にそれを上回るのが想像力!!未知への期待!!知らぬことから知ることの渇望!!小僧達よ、さぞかし数々の芸術品を見てきたことだろう!!その中にも、未知という名の神秘があったはず!!例えばそう!!モナリザの美女に宿る神秘性ツ!!ミロのヴィーナスの腕に宿る神秘性ツ!!そして乙女のスカートに宿る神秘性ツ!!それらの神秘に宿る圧倒的な探求心は、同時に至る事のできない苦渋!!その苦渋はやがて己の裡においてより昇華されるツ!!何物にも勝る芸術とは即ち__己が宇宙の中にあるツ!!」

 

ズドオオオオオオオオオオン!!

という効果音が似合いそうな雰囲気で、十六夜は硬直した。

 

「なツ……己が宇宙の中に、だと………!?」

 

自分の知らない新境地に衝撃を受ける十六夜。

一方で、その様子を冷たい視線で見る安心院、忍、黒ウサギ、グリフォン。

だが白夜叉は一向に構わない。

冷たい視線など、芸術を追い求める彼女には針ほどの痛みもない。

白夜叉は握り拳を作って、己の説法をこう絞めた。

 

「そうだツ!!真の芸術は内的宇宙に存在するツ!!乙女のスカートの中身も同じなのだ!!見えてしまえば只々下品な下着達も__見えなければ芸術だツ!!」

 

ズドオオオオオオオオオオン!!

という効果音が似合う顔で白夜叉はいい切った。

しかし十六夜以外の二人は反論する。

 

「下着が下品?下着だって立派な芸術品だ!!」

 

羽川の黒下着を実際に見た暦が叫ぶ。

 

『そうだね。それに見えていていいものもあるよ』

 

『例えば手ブラジーンズ。上半身が裸になることで否応なく露になる女体とぶ厚くて頑強なジーンズのミスマッチ。ガーリーとボーイッシュの融合にこそ、その真髄がある。強制的に恥じらいのポーズを取らせる手ブラは同時に見ようによっては自ら乳房を揉んでいるがごときエロティックさも演出する!!』

 

その言葉に衝撃を受ける白夜叉。

その後、四人は延々と語り合った。

其処には恥も外聞もない。

只々、ロマンの求道者が胸を張り語り合っていた。




もはやいつも通りな遅い展開です。
後半はほとんどノリと勢いです。
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