問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「____っ、ごめん………!!」
ドスッ、と生々しい音を立てて。
ジンの脇腹を、リンのナイフが抉った。
刺された後に耳元で呟かれた謝罪に、ジンの瞳が大きく揺れる。
「リ…………リン、どうして、」
「……別に僕を気にせず“話”を続けてもよかったのに」
白々しい事を言いながら、螺旋階段を降りてくる声の主。
それは安心院なじみだった。
その姿を確認したジンは驚愕する。
そしてリンも言葉からして全部見られていたと確信する。
崩れ落ちるジンと血塗れのリンは各々苦い表情をする。
安心院が今どちらに属しているかは二人は把握していないが、リンとしてはジンを刺して誤魔化しを入れるしかなかった。
「マクスウェルさんはどうしました?」
「さあ?僕は知らないよ。忍ちゃんから逃げた所までは見たんだけどね」
一体どこに消えたのだろうね?と、白々しく付け加えて言う。
「でも“大丈夫”だよ。彼に何かあったら僕が彼の代わりに“役割”を果たすから。上にもそう話が付いてるからね」
その言葉からリンは安心院がどういう立場か察する。
マクスウェルがどうなったかは知らないが、安心院が代わりに“役割”が付くとなると厄介だ。
安心院はマクスウェルと違って何を考えているか探りにくい上にどう行動するか分かった物ではないからだ。
「ところでリンちゃん。星海龍王の遺産は手に入れられたかい?」
「それは今からだよ」
ジンは安心院が裏切ったという事実に驚きながら、自分の致命的なミスに気が付いた。
(しまった………殿下の部下は、全て私兵団だったわけじゃない。上からの目付役が紛れ込んでいたんだ……!!)
それがマクスウェルの魔王で、現在は安心院なじみ なのだろう。
ほぼ無敵のギフトを持つリンだが、安心院なら始末は簡単だろう。
リンのギフトを破るスキルくらい幾つもある。
監視の報告も様々な方法で自由自在である。
これはマクスウェルより明らかに厄介だ。
しかし安心院がその役目をまともにする気があればだが。
今になって気が付いたジンは二重の意味で悔しそうに手を握りしめて蹲る。
(焦り過ぎた………この機会を逃せば、リンと交渉する場がなくなる。それを意識しすぎたんだ……!!)
少し考えれば監視役がいる可能性にぐらい気が付けたはずだ。
そして安心院の裏切りの前兆にも気が付けたはずだ。
なのに結果としてリンと殿下の立場まで危ぶまれる最悪の事態になった。
これではもうリンはジンを生かしておくことも出来ないかもしれない。
安心院の気紛れ次第ではどうにかなるかもしれないが、最悪二人の命までも危ないからだ。
「さて、リンちゃん。ジン君はどうするつもりだい?」
「縛り上げて連れて行きます。ジン君の能力はとても稀有ですから」
へぇ、と安心院は表情を変えずに言う。
その瞳はこの場を明らかに楽しんでいる。
リンやジンがどう出るかを楽しんでいるのだ。
「まっ、君達も点数稼ぎで大変だろうからね」
安心院はそう言ってジンに近付くと、物質具現化のスキル【控え目に描いた勿論(ドローイングオフコース)】で作った鎖でジンを縛る。
(今回は運が悪かったね、ジン君。手荒になるけど我慢してね?)
「え?」
耳元でリンに聞こえないようにそう言うと安心院は、火を司るスキル【間違いなく放火(エキシビジョンマッチ)】で傷口を焼き塞いだ。
「ァッ、グッ………!!」
「悲鳴を上げないのは、さすがジン君だね」
リンは眉一つ動かすことなくそれを見届ける。
下手に彼女が口を出せば、それが付け入る隙になるからだ。
「ま、好きにしてもらっていいけどさ。そろそろ退却の準備をするように、皆の下にパシられてくれないかな」
「何でかな?」
興味深そうな瞳でリンを見る。
ここでどう出るか、楽しみなのだ。
リンは臆さず告げる。
この場をやり過ごすには、それしかないと内心で苦虫を噛み潰しながら。
「今から星海龍王の遺産を奪い、例の魔王の封印を解きます。___全員に伝えてください。今すぐ、“北側から脱出しろと”」
そう告げるとリンは星海龍王の龍角をローブから取り出した。
ボロボロの生地に包まれていた二本の龍角は封印の座を前にして鈍い光を発している。
しかし光を発しているのは、龍角だけではなかった。
「___嘘」
ジンは傷の痛みも忘れてその光を凝視する。
安心院はその様子を見て、少し表情を変えたが、すぐに元の表情に戻す。
今は“その時”ではないのだ。
「これが人類史上、最も多くの魔王を倒したコミュニティの旗かい?」
「興味があるんですか?貴女のような存在が、」
「そりゃね。“面白そうな事”には興味があるよ」
安心院は含みを持たせ言う。
リンには意図は分からなかった。
旗を台座に掲げ、星海龍王の龍角を差し込む。
「これで準備は完了だね。後は龍角に炎を打ち込めば、地脈と活火山が刺激されて“疑似創星図”と“赤道の十二辰”の封印が解けるわけだね」
「“龍”の太陽主権……フフ。これで殿下も完成に近付くわけだね」
台座の前に安心院が進み出る。
龍角に両手を置いた安心院は、太陽を司るスキル【指害線(サンスロッシング)】で灼熱を放ち、
「さて、地獄の窯を開くとしようか………」
◆◆◆◆◆
十六夜と殿下の戦いは、大地の地殻から立ち昇る、二人以上の脅威によって妨害された。
そしてゲームは中断され、十六夜は仲間たちの下に走った。
安心院さんが本格的に動き出しました。
立ち位置としてはマクスウェルの立ち位置に成り変わったかんじです。
リンとジンはマクズウェルがどうなったかは把握してません。
地下にいたので。
とりあえず八月全投稿達成!!
最後はギリギリでしたけど!!
それでは質問、感想待っています。