問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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約一年振りですが再開します


暴虐の三頭龍
動き出す者達


 

「さて、“これ”はどうするかな」

 

安心院なじみは何処かも知れぬ場所でマクスウェルから奪った全てを眺めていた。

 

「正直言って“これ”持っていても僕には必要無い上に余計な面倒が生まれる可能性あるんだよね」

 

マクスウェルを殺したのは自分では無いとした方が色々都合はいい。

とはいえ、おいそれと他人に渡すわけにはいかない。

少し考えて、思い付く。

 

「……そうだ。“あれ”を使えばもうちょっと遊べそうだね」

 

安心院は悪戯な笑みを浮かべながら思い付いた事を実行するタイミングを計るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

瓦礫の山河。

住民達は避難する為に外門を目指していた。

三頭龍の竜巻のせいで戦場はひっくり返された。

暦、忍、ぺストは殿を買って出たのだがいまだに襲撃者は現れない。

 

「暇じゃの」

 

色んな意味で避難民に興味が無い忍が呟く。

そんな時に暦が何かを発見する。

 

「アルマが帰ってきたみたいだぞ」

 

稲光を放つ山羊が疾走してくる。

その背には意識を失っている黒ウサギを抱えた狐川が乗っている。

 

[皆さん、無事な様で何よりです]

 

アルマが呟くと、狐川がアルマの上から飛び降りる。

すると、たまたまぺストと目が合う。

 

「あんたも無事だったようね、斑チビ」

 

「えぇ、そちらもね。狐おばさん」

 

互いに睨み合いはするが、それ以上言い合う気力は無いようだ。

そこへ、更に一組合流する。

 

『やぁ、皆無事なみたいだね。安心したよ』

 

「俺らが無事な時点で予想はついてたけどな」

 

皐の上に乗った球磨川が現れたのだ。

悟達とは一時的に別行動を取っている。

情報交換の為にこの場に現れた様な物である。

 

『そういえば、十六夜君とジン君は?まさか………』

 

「ジンは知らないけど、主様なら残ったわよ」

 

球磨川の問いに狐川が答える。

あの光景が思い浮かんだのか苦々しい顔ではあるが言うには言う。

重い沈黙の中で、気を失っていた黒ウサギが目を覚ます。

 

「っ………みな、さん……………?………十六夜、さんは?ご一緒ではないのですか?」

 

呆けながらも周囲を見渡し、震える声で問う。

狐川が面倒そうに告げる。

 

「主様は一人残ったわよ。私達が来た時には既に重傷で、逃げられないと判断したんでしょうね。魔王に一騎討ちを挑んだのよ」

 

纏めて言う。

後の反応が分かる故に纏める。

予想通り、黒ウサギは髪を戦慄させて掴み掛かる。

 

「な、何て事を…………!!貴女は知らなくてもアルマさんは知っていたはずです!!あの魔王が何者k

 

「うるさいのよ」

 

狐川は黒ウサギの口を掴んで言葉を中断させる。

そのまま苛立たしげに言う。

 

「分かっているのよ……そのくらいは。でも、あれだけの覚悟を見せられたら仕方無いでしょうが」

 

悔しそうに憤り言う。

別に黒ウサギに対して苛立っているわけではない。

むしろ自分に対してだ。

何も出来なかった自分に対して苛立っているのだ。

 

“黒ウサギを連れて逃げろ____”

 

ハッと手を離す。

狐川の態度で大体察して、黒ウサギの脳裏にあの光景が蘇る。

その場にいた黒ウサギも十六夜の声は聞こえていた。

そして、彼の最後の言葉も鮮明に覚えていた。

 

“ごめん。約束は守れそうに____”

 

「あ、…………あぁ………………!!」

 

うめく様な声を漏らし、黒ウサギは膝を折って項垂れた。

彼女もわかっていないわけではない。

しかし最後に見た光景を、誰かに否定して欲しかったのだ。

あの光景が最期ではないのだと。

十六夜ならこの窮地でさえも脱すると、誰かに肯定して欲しかった。

 

[黒ウサギ殿。貴女の憤りも理解出来ます。ですがご理解いただきたい。あの場で魔王を足止めできたのは彼しかいなかった。十六夜殿が命を賭けたからこそ、これだけ多くの者達が避難に徹する事が出来たのです]

 

語調を緩めて、アルマティアは黒ウサギの頬を舐める。

彼女とて十六夜を置いてきたのは本意ではない。

だが、あの叫びが己の身命を賭しものではあると理解していた。

 

「十六夜の奴は死んだのか?」

 

[死亡を確認したわけではありません。あるいは逃げ切れた可能性も無いわけではありませんが………あの重傷では、難しいかと]

 

『せめて、僕が近くにいればどうにか出来たかもしれないけど、今言っても仕方無いね』

 

直球に聞く皐に対して、アルマティアは直接的な言葉を避けて答えた。

そこから一同はアルマティアから三頭龍についての話を聞くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、悟達は離れた所で待機していた。

竜巻をやり過ごした後に球磨川の“大嘘憑き”で体力と傷を回復させていた。

その後、情報交換に行った二人を待ってるという感じである。

 

「にしても、遅いな」

 

「あんたがせっかちなのよ」

 

悟の片腕に抱かれる紅葉がキツく言ってくる。

先程からこんな調子である。

紅葉が悟をわざわざいじって楽しんでいる。

 

「何か嫌な気配が近付いてる気はするんだがな」

 

今はサトリの力が濃い時期なので気配を探知するのは得意である。

とはいえ、もっと得意な奴もいる。

ここは適材適所に行く。

 

「伏目、何か“視”えてるか?」

 

「三頭龍の血から化け物が産まれて此方に数匹向かってきていますね」

 

悟の背後に立っている伏目が報告する。

彼女は百目なのでそのくらいは見通せる。

 

「分身体か…………まぁ本体前の肩慣らしにはちょうどいいか」

 

悟はニッと笑いながら立ち上がり、仲間達を見る。

各々体を休めるなり、武器の手入れなりをしていた。

 

「球磨川と皐が戻り次第、アジ=ダカーハの分身体と戦う。それまでに準備を整えておけ!!」

 

オオッ!!と数人返事を返す。

だが、数人は無視するなり、ノリが弱いなりだった。

 

「人望無いんじゃない?」

 

「………うるせぇ………ノリが悪い奴らなだけだ」

 

軽く落ち込みながら紅葉に言い返す骸であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大体の話を聞き終わると球磨川と皐は何処かへと去っていった。

残ったメンバーで状況の確認をしていたが想像以上に惨状で苦笑いを浮かべていた。

暦、忍、狐川、ぺスト、アルマ達と球磨川、悟、皐達不確定要素を除けば主力はほぼ壊滅していた。

 

「これはマズイな。僕達だけじゃ打つ手が無いぞ」

 

暦が本気でヤバいと言う感じに呟く。

今までは十六夜か安心院さんが中心であった。

それらが抜けた事により打開策すら浮かばない。

暦が頭を抱えていると、

 

ズガシュ!!

 

何かが頭にぶつかる音が二つ聞こえた。

そして、暦が頭を抱える程度に痛くなる。

物理的に。

足元には十字形のハンマー。

暦が何かを言おうとする前に忍が立ち上がる。

その表情には怒りがこもっていた。

 

「悪魔娘、出てこい!!いるのは分かっているんじゃ、出てこい!!」

 

怒鳴り声が響く。

どうやら不意討ちのハンマーがイライラを頂点に達させた様だ。

あぅ、と悲鳴にも似た様な声を上げて、虚空からウィラが降ってくる。

忍が余程怖いのか、涙目で半月の背後に隠れる。

半月は頭を掻きながら苦笑いになる。

 

「あー、まぁいいか」

 

呟きながらも狐川はウィラの頭を撫でる。

叫んだ事によってすっきりしたのか、忍は特にウィラに言う事は無かった。

それを察してウィラは涙を拭いて謝罪する。

 

「本当に、ごめんなさい……………龍が来た時、真っ先に逃げたから………みんなと合流するのが後ろめたかった」

 

「だからと言って鈍器をぶつけなくてもな……」

 

暦の呟きに肩を落とすウィラ。

アルマティアはカツカツと蹄を鳴らし、一同に呼び掛けた。

 

[兎にも角にも、頭首と参謀が不在の非常事態です。私とマスターはコミュニティの代表として“サラマンドラ”に現状の報告を行い、そのまま前衛に回ります。異論はありますか?]

 

「私達が代表でいいわけ?」

 

[この状況では貴女が最適でしょう]

 

「じゃあ、僕と忍はこのままか?」

 

[えぇ、此処は貴方達に任せます。マスター、乗ってください]

 

「分かったわよ」

 

面倒そうに頭を掻くが狐川は割りと軽くアルマの背に乗る。

アルマティアはそのまま斜面を走り、中衛を守る“サラマンドラ”のコミュニティを目指す。





各々動き初めでした!!
安心院さんについては色々と思惑はあります。


それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。
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