問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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“変質”

 

「お前様、ちょっとそいつらを連れて下がっておれ」

 

「え?」

 

唐突に言い放ち、暦が反応する前に忍は跳んだ。

直後に大量の火炎弾が忍に襲い掛かる。

しかし、火避けの指輪によって全てかき消される。

 

「ふん!!」

 

そして、暦達が瞬きをする間に双頭龍一匹を心渡で真っ二つにしていた。

心渡で斬られた双頭龍はそれだけで絶命していた。

更に左右から襲ってきた双頭龍を軽く蹴り飛ばす。

その光景に一同はただただ唖然としていた。

 

「元から凄いと思っていましたが…………忍さんってあそこまで桁違いでしたっけ?」

 

「さぁ……僕にもよく分からないけど…………」

 

暦も顔をひきつらせながら見ている。

そして、あれが全力で無い事も分かっていた。

吸血鬼性を上げている忍はまだまだあんな程度ではない。

そんな事を思いながらウィラの方を向く。

 

「ウィラちゃん、悪いけど黒ウサギ達を頼めるか?」

 

「え?」

 

「僕は一応忍の近くにいないといけないし、避難民をほっとくわけにもいかないだろ?」

 

「…………」

 

ウィラは了解した様に空間跳躍で“サラマンドラ”の本隊へと向かった。

ぺストは無言で避難民の周囲に黒い風を放出し、守り固めた。

一方、忍の前には白磁の双頭龍と溶岩で身体を構成した赤黒い真紅の双頭龍がいた。

溶岩の双頭龍に触れた箇所は焼けただれていたが、既に再生し終わっていた。

 

「儂に殺られる覚悟は出来てるじゃろ?さっさと、終わらせるとしようかの!!」

 

忍が強い殺気を放つ。

それだけで双頭龍達は後ずさる。

そんな双頭龍達に向けて忍は跳び掛かるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

深い森の中で殿下達は話していた。

目を覚ましたジンと“ある話”をしようとしていた所で、唐突に何かが乱入してくる。

 

「やぁ。こんな所にいたのかい、君達は」

 

安心院なじみの出現に一同は大変面倒そうな顔をする。

それもそうだろう。

目的も一切分からない上に何をしでかしてもおかしくない不確定要素が現れたのだから。

しかも、“ウロボロス”の上にすら繋がりも持っている。

この上なく面倒な人物なのだ。

死亡したマクスウェルの代わりとは言っているが、かなり信用にならない。

 

「何しに来たんですか、安心院さん?」

 

「おいおい、リンちゃん。その言い方は酷くないかい?“今”の僕は君達の味方だぜ?」

 

かなり白々しい答えが返ってくる。

自覚があるのか、無いのか、安心院は面白そうにニヤニヤしているだけである。

次に何を言ってくるか一切予想出来ない。

 

「でも、そうだね。僕は僕でやる事はあるし、君達は君達で“ 話したい”事もあるだろうしね。君達の無事も確認出来た事だし、僕は少し消えさせて貰うよ」

 

「え?」

 

完全に予想外の言葉に虚をつかれる。

が、よくよく今の言葉を考えると、

【密談するなら姿を消してる間にしな】

と、言っているに近い。

様はリン達の思惑など見抜いてる可能性もあるのだ。

そんな事を考えている間に安心院は既に姿を消しているのだった。

 

「相変わらず、よく分からない人だね」

 

「ジン君。それで済ませるのもどうかと思うよ?」

 

ジンの呟きに思わず突っ込むリンであった。

何はともあれ周囲を警戒しながらもリン達は話を再開するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どうやら皆頑張っているようだね。十六夜君は中々危ない様だけど…………此処で僕が手を出すのは無粋かな。あまり、目立ちたくは無いからね」

 

何処とも知れない場所に安心院なじみはいた。

千里眼のスキル【目の届く場所(エリアフリー)】と地獄耳のスキル【話は聞かせてもらった(リッスンバイチャンス)】の合わせ技であらゆる場所を見たり聞いたりしていた。

{上層の様子も見れてるけど、此処では割愛だ。何でだって?そこにまで介入したら僕がつまらないからだよ}

 

「地の文に干渉するスキル【神の視点(ゴッドアイ)】。何の事だって?別に君は気にしなくていい」

 

何はともあれ忍達、球磨川達、そして十六夜の戦いもしっかりと見ている。

だが、介入したりはしない。

彼女にも立場という物があるのだ。

そんな物は後でどうとでも出来るがそれでは面白く無いという考えである。

逆に立場としてはリン達の事を報告するのが普通ではあるが、あえて放置する。

放置した方が面白くなりそうだからだ。

 

「僕が報告するまでも無さそうな気がするしね。さて、そろそろ面倒な物の処理を始めるとしようか」

 

言いながら安心院は額に手を当てる。

そして、“中”から何か取り出してから呟く。

 

「“Summon maxwell myths. 3S, nano machine unit”」

 

安心院が召喚式を呟いた直後、彼女の目の前で熱波と寒波が吹き荒れた。

秒間に幾百千と入れ替わって放たれる暖寒の波は物理界の法則を超越して大気にプラズマを奔らせる。

境界の狭間が打ち砕け、空間がガラス細工の様に弾け飛ぶ。

炎熱と極寒の風を纏って天使の様な物が三体現れる。

安心院はそれらを見比べる。

 

「そうだね、君達は適当に暴れてきていいよ」

 

左右の二体にそう言うと、天使達は空間跳躍ですぐ様姿を消した。

そして、残った一体を正面から見る。

 

「君はちょうど良さそうな素体だね♪」

 

言った直後に安心院の腕が天使の胸を貫く。

記憶のスキル【記憶操失(メモリーノート)】

パラメーター操作のスキル【自由自罪(フリークライミング)】

人格を作るスキル【美調生(チューニングキャラクター)】

思想感染のスキル【影の影響力(シャドウインフルエンス)】

などを使う事によって“変質”させていく。

具体的にはマクスウェルから奪った記憶や霊格などを譲渡する。

とはいえ、記憶に関しては複製の劣化物を、だが。

理由としては多少壊れていた方が都合がいいからだ。

その他にも色々と都合の良い様に改造する。

“変質”を終えると、安心院は天使の胸から腕を抜く。

 

「さぁ、君も自由にしな。多少僕の都合で動いて貰うけど、ウィラちゃんくらいなら好きにしていいぜ」

 

というのは勿論方便だ。

そう言った方が乗せやすいからそう言っただけである。

現に“変質”した天使は安心院など眼中に無い。

 

[ウィラ………ウィラが私を待っている。ウィラが、ウィラが、ウィラがぁぁ!!行かなくては、行かなくては、行かなくてはぁ!!]

 

まるで壊れた様に声を荒らげて、姿を消す。

{実際壊れた様に“調節”したんだけどね}

空間跳躍で何処かへと飛んだのだろう。

 

「さて、やる事やったし、僕はもう少し此処で傍観に徹するかな。“彼ら”が来るのは次巻だろうし」

 

そう言って、また各戦場を眺め始める。

霊格は天使に譲渡したが彼女が“それら”を使えなくなったわけではない。

一度手にした力を複製するくらい彼女なら簡単なのだ。

 

“悪平等”安心院なじみ、人外である彼女は性格が悪そうな笑みで各戦場を眺めるのだった。





暗躍する安心院さんでした。
天使をどう“変質”したかは言動から分かると思います。
使ったスキルを見れば仕掛けも分かるかも?

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
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