問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
球磨川、悟、皐は樹海そのものと戦っていた。
どうやら土地神と化した双頭龍が山岳そのものを取り込んでいっている。
『うわー・・・こりゃ凄まじいね』
球磨川が思わず突っ込む。
敵の規模が大きすぎると改めて感じていた。
というより本体が樹海に紛れて姿を見せないのが厄介極まりない。
皐の上に乗りながら、面倒そうに溜め息を吐くのだった。
「まぁ………こういう時の紅葉なんだが」
背中に張り付く紅葉をチラリと見ながら呟く。
紅葉は不気味な微笑みを浮かべるだけだった。
「私は何時でもいいわよ………“条件”満たせばすぐに使える様にはしてはいるから。無い頭を使う事ね」
「無い頭ってなんだ、無い頭って。俺にもそれなりの知識はあるっての」
「かなり偏ってるけどな」
「うるせぇ、皐」
背中と足元から散々言われる悟。
そんな中で球磨川が何かを見付ける。
それをよく見ると何かが近付いてる気配がする。
『悟君、来たよ』
「分かってるよ!!“呪爪”!!」
何処からか双頭龍が火炎弾を放ってきたのだ。
悟が黒い煙を纏わせた刀を振るうと、見えない犬の爪が火炎弾を離れた位置で斬り裂く。
爆炎を避けながら皐は放たれた方へと飛んでいく。
「…………相変わらず人使いが荒いよな~」
「しょうがねぇだろ。敵の本質を“視る”には近付かねぇといけねぇんだから。それに飛行戦力はお前くらいだ」
『それに僕の“これ”が直撃防いでるわけだし』
球磨川が舌の“戯”の字を見せながら言う。
球磨川の戯言使いによって、双頭龍の感覚を狂わせ、火炎弾の狙いを誤らせているのだ。
とはいえ、それでも誤差の範囲だが。
「それに………余波が痛いんだよ」
「出来るだけ遠くで斬ってんだから文句を言うなよ。結構体力使うんだぜ?」
「それでもだっての……本当に何でこんな事になってんのかね~」
『少なくとも僕は悪くない。“ウロボロス”のせいにでもしとけばいいんじゃない?』
そんな事を言ってると周囲の木々が枝を伸ばして球磨川達へと襲い掛かる。
だが、それらは全て球磨川の放つ螺子が突き刺さると同時に動きを止める。
『“大嘘憑き”!!木々の支配を無かった事にした!!』
しかし、それも焼け石に水である。
所詮は支配を消しただけである。
なので支配し直せばすぐに元通りだ。
とはいえ、やらないよりはマシではある。
「おっ、“思念”を感じ始めたな。いいね、いいね。このままお前の全てを読み取ってやるよ」
本体に近付いて来た事により、悟の読心の効果範囲に双頭龍が入る。
“呪爪”で火炎弾を斬り裂きながらも着々と読み取っていく。
『さすがに本体に近付くと攻撃が激しくなるね』
「おい、速くしてくれねぇか?避けるのにも限界あるぞ?」
そんな事を言いながらも球磨川も皐も割りと余裕である。
ただ、悟を急かしているだけである。
紅葉はただ面白そうにその光景を眺めている。
「お前ら、俺を焦らせて楽しんでるだけだろ!!だが、相手はトカゲだ。読み取るのなんて楽なんだよ!!」
「それで終わったの?」
「…………あと、20秒待ってくれ」
紅葉が茶々を入れた事でいまいち格好付かないのだった。
皐は20秒ちょうどにその場から距離を置くのだった。
そこら辺は信用故にだった。
双頭龍がありったけの枝を放ってくるが球磨川が放った一本の螺子が刺さるなり大人しくなる。
『“却本作り”!!……まぁ本体に刺したわけじゃないからそこまで効かないだろうけど』
一部白くなった木々を見ながら呟くのだった。
“条件”は整った。
あとは放つだけである。
◆◆◆◆◆
「ぬぅぅぅぅぅん!!」
土丸は突進してきた双頭龍を正面から受け止め、その剛腕で完全に勢いを殺し、地面に叩き付ける。
そのまま妖力を拳に集中させて真下の双頭龍に向けて放つ。
「GEYa!?」
何かが破裂する様な音が響くと共に地面に大きなヒビが波紋の様に広がる。
拳の衝撃は内部で破裂し、皮膚などに傷は付けていない。
骨は砕け、内臓はズタボロだろうが、血を流させ無い事で敵は増やさない様にする。
「GEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!」
「おう、まだやるか。いいねぇ、そうこなくっちゃな…………」
何とか起き上がり、翼を広げて雄叫びを上げる双頭龍。
対して土丸はまだまだ余裕と言った感じである。
「だがよぉ………いい加減お前さんじゃ飽きるな」
両腕から糸を出しながら呟く。
双頭龍は土丸を睨み、再び突進を仕掛けようとする。
火炎弾は通用しないと本能で察した。
ならば、肉弾戦しかないのだ。
「だから、もう大人しくしてな」
瞬間、恐ろしい程の殺気が放たれる。
それは目の前の双頭龍以外も一瞬怯むレベルだった。
双頭龍の動きが止まった一瞬、土丸は糸を振るう。
その動きを止めた一瞬が命取りだった。
既に蜘蛛糸は避けられる範囲ではなく、絡み付くだけだった。
絡み付いた蜘蛛糸は双頭龍を縛り上げ、拘束する。
「終わりだ」
呟いた直後に少量の妖力が蜘蛛糸に伝わる。
その妖力によって“何か”が起こる。
突如として双頭龍が苦しみ始め、数瞬して動きを止めた。
その体は完全に活動を停止していた。
「姿を変えるまでも無かったな。でもまぁ………“準備運動”にはなったか」
そんな事を言いながら双頭龍へと背を向ける。
首を鳴らしながら腕を回して体の調子を確かめる。
大妖怪“土蜘蛛”、彼は見た目に反し、妖術もかなり使えるのだ。
かつて、ぬらりひょんと共に暴れたその力は衰えてはいなかった。
◆◆◆◆◆
「相変わらず凄いな、土丸さんは」
「ふん……何時かは越える壁だ」
目の前の双頭龍が土丸の殺気で動きを止めたのを見て、がしゃが思わず呟く。
その隣で茨はつまらなそうに言う。
何気無い一言の様で茨が言うにはかなり珍しい台詞だった。
強さを求める茨ではあるが、彼が明確に自分より上と認める事は少ない。
そんな茨が越える壁というのだからかなりの物である。
「G、GEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaa!!」
「何処へ行く!?」
そんな風に話していると、双頭龍が雄叫びを上げながら何処かへと走っていこうとする。
もがれた翼は再生し掛けているが、まだ飛べる程ではない。
とはいえ、双頭龍は走る速度もかなりの物である。
「逃げんな」
だが、正面へと立ち塞がった茨が右前足を斬り付ける事でバランスを崩させて、横転させる。
勢いが殺されて双頭龍は転がり回る。
傷口から撒き散らされる血は次々と化け物を生み出す。
「ちょ、何してんのよ!!」
「ウチらの仕事を増やさないでくれる~?」
吹雪と粉雪が生まれた化け物を一瞬で処理しつつ、茨に文句を言う。
茨は面倒そうな目を向けつつ、溜め息を吐く。
「なら、一撃で仕留めるから隙を作れ」
刀を鞘に納めながら言う。
他の面々も一応了承したらしく行動を始める。
「相手の身は白磁の岩石です。心配はいらないと思いますが火力が足りないと弾かれますよ」
「承知している」
「剛打!!剛打!!剛打!!」
伏目に言われ、鎌音は皮膚の隙間の脆い部分を突く様に風の刃を放っていく。
風間は先程まではいかないが強烈な風の打撃を双頭龍の横腹に叩き込んでいく。
双頭龍は踏ん張る様にするがジリジリと耐えられなくなる。
「ぬおりゃぁ!!」
その時、がしゃが思いっきり地面を叩く。
直後に双頭龍の足元が崩れ落ちる。
崩れ落ちた地面は何故か湿っていた。
「水にはこういう使い方もあるのよ~」
河澄が水を操り、地面を脆くしていたのだ。
そこで風間が上から叩き付けて落とす様にする。
崩れ落ちた所には水が溜まっており、双頭龍の足が一本入った瞬間にそれは凍結する。
「ここは私達の仕事よ」
「足一本もーらった♪」
吹雪が水面ごと双頭龍の足を凍結させる。
その直後に粉雪が凍結の仕方を調整し、双頭龍が飛び退く前に足を切断する。
切断面も凍結してるが故に化け物も生まれない。
飛び退くがバランスを崩す双頭龍。
転がったその先でチリンと言う鈴の音を聞く。
反射的に火炎弾を放つ。
「ニャハ、無駄無駄。そんなのじゃ当たらニャイよ♪」
鈴の音を鳴らしながら、夏歩がヒラリヒラリと火炎弾を回避する。
そして、ポイントへと誘導する。
「GEEEEYAAAAAAAAaaaaaa!!」
雄叫びを上げて痺れを切らし欠ける双頭龍。
そこでいきなり視界が真っ暗になる。
濡鴉が視界を封じたのだ。
「ほら。場は整えましたよ、茨」
「分かっている」
無愛想に答える茨。
その身は高めた妖力に包まれていた。
それを感じた双頭龍は見えないながらも、茨に向かって突進していく。
茨は腰の刀へと手を当てる。
「“鬼道・子斬閃月”」
擦れ違い様の一瞬で高めた妖力を全て開放した。
一瞬だけ茨の姿は妖怪の姿になっていた。
一瞬で全てを放つ事で威力を高めたのだ。
目にも見えぬ速さで振るわれた刀は既に鞘に納まっている。
双頭龍はちょうど真っ二つに斬り裂かれていた。
口を開いたまま、斬られた事にすら気付かぬまま、その体は左右にズレていく。
茨はそれを見もしないで背を向けて歩いていた。
茨が十二歩歩いた直後に真っ赤な花が咲いた。
真っ二つになっていた双頭龍が粉々に破裂したのだ。
だが、それらの破片は化け物を生み出さない。
生み出せない程のダメージを霊格にあの一瞬で受けたのだった。
「………ふぅ」
茨が一筋の汗を流しながら、小さく息を吐くのをがしゃだけは気付くのだった。
今回は球磨川サイドでした!!
本体に近付いた目的は次回。
茨は土丸や蛍を除くと若頭派では上位の強さです。
悟と互角くらいではあります。
悟達とは蛍や土丸は世代が違います。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。