問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
蛍は双頭龍と向き合うと展開していた巻物を閉じる。
そして、一つの巻物を新たに出す。
「………どうやらあんた程度じゃもう満足出来そうにないの…………だから、これでオシマイ。“大口”の怪」
蛍が巻物を広げると双頭龍は警戒する様に身を構える。
だが、そんな物は無意味であった。
蛍の口がニィィィィと歪むと、大きな鮮血が舞うのだった。
◆◆◆◆◆
「紅葉、何時でもやれるよな?」
「そりゃそうでしょ。私はあんたが“条件”さえ整えりゃ何時でも使えるんだから」
「それは暗に条件満たすのが遅いと言ってるのか?」
「さぁね?」
『それより悟君、そろそろ“却本作り”の効果が解けそうだよ』
「俺は疲れてきた」
「分かってるし、皐は黙ってろ」
球磨川には了解した様に返し、皐には面倒そうに返す。
その間に紅葉は背中から片腕に抱かれる形に移動していた。
紅葉はケホケホ、と咳を挟んでから悟を見る。
「それじゃあ悟答えなさい。“あれはなぁに?”」
「奴はアジ=ダカーハの血から生まれし分身体だ。体は朽木、性質は土地神だ」
何も全てを口頭で話す必要は無い。
ある程度の情報を言えば、あとは紅葉が勝手に脳内を覗き込む。
そして、勝手に“条件”を満たす。
対象の存在に関する情報を集める事、それが“条件”だ。
それを満たせば座敷童子、紅葉の能力が発動する。
しばらく悟を見詰めていた紅葉が口を小さく開く。
「“条件”は満たされたわね。それじゃあイタダキマス。そして、ゴシュウショウサマ」
「う……くっ」
紅葉が呟いた直後に悟が小さくうめく。
すると、悟の頭から何か文字列の様な物が出てくる。
更には何か輝く欠片の様な物も取り出される。
それらは小さく開いていた紅葉の口へと入っていく。
すると、紅葉の両目が真っ黒に染まる。
元々黒かった目が更にだ。
まるで闇そのものになった様だった。
その状態で紅葉は樹海の方へと視線を向け、クスクスと笑う。
「GA…………GEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaa!?」
直後に樹海が小さく脈打つ。
そして、双頭龍の苦し気な雄叫びが響く。
そこで皐は何かを感じとる。
「球磨川、繋がり弱まったぞ」
『分かったよ。“大嘘憑き”!!双頭龍と土地の繋がりをなかったことにした!!』
球磨川が叫ぶと、引き剥がされる様に双頭龍が樹海の真ん中から飛び出る。
その姿はもがき苦しむ様だった。
まるで体の中心に刻まれた呪印から呪いが広がる様に呪祖が身体中に広まっていた。
「GEY…………!?」
断末魔を上げた直後に双頭龍の姿は灰となって消え去るのだった。
これこそが座敷童子、紅葉の能力、条件殺害、別名“呪殺”だ。
座敷童子は何も幸運を寄せるだけではない。
時には不幸を寄せる事もあれば死を寄せる事もある。
死神とさえ呼ばれる事もある。
紅葉は座敷童子の中でも死神の面がかなり大きく出ていた。
まさしく不吉の象徴と言える存在だった。
対象の知識を得た状態で“代価”を払えば、対象の命を奪う。
それが能力である。
『意外と呆気なかったね』
「終わってみればそんなもんだ」
『そうかな。ところで………』
球磨川は視線を悟へと向ける。
その視線の先では座り込み、かなり暗くなってる悟がいた。
『これはどういう状況かな?敵は倒せたんだよね?』
「まぁ……これは何時も通りだからほっとけばいい」
皐が適当に答える。
という事はかなり見慣れた光景なのだろう。
が、皐はあえて落ち込んでいる核心を突く。
「毎度毎度落ち込んでんなよ。“天運”消費するのは仕方ないことだろ?」
皐的には正直自らの背の上で暗くなられても鬱陶しいだけなのだ。
だが、皐の言葉が更に傷を抉ったらしく悟は更に落ち込む。
「分かってる、分かってるんだよ。それでも達成感と後悔が入り乱れてるんだよ………」
そう、悟としてはただ暗くなってるだけではないのだ。
自身が望んだ結果故に葛藤しているのだ。
支払う代価、“天運”も自身が望んで差し出している物だ。
代価の天運、座敷童子は幸運を寄せる特性があるので別にそこまで痛い代価ではないと思えるかもしれない。
しかし、そうではないのだ。
座敷童子の寄せる“幸運”と“天運”は別物なのだ。
座敷童子はただその場の“運”を寄せる。
だが、“天運”はその者の一生分の“運”の総量みたいな物なのである。
つまり、座敷童子の力を使う度に自身の“運”を消費する事になるのだ。
座敷童子が出ていった家は不幸になるという話がある。
しかし、それはこの場合においては違う。
座敷童子が去ったから不幸になったのではない。
座敷童子の力に頼り過ぎ、“天運”を喰い尽くされたが故に不幸になったのだ。
座敷童子は喰い尽くした家からは直ぐ様に去る。
餌が消えたのだ、当然である。
故に悟は頭を抱えて葛藤しているわけである。
幸い悟の“天運”の総量は膨大である為にそうそう尽きる事はない。
それでも達成感と後悔が心中で渦巻くのだった。
更に“天運”を消費した直後は不運に襲われやすいので、座敷童子を連れていた方がいいのだが、それはそれで問題があった。
「フフッ、ねぇねぇ“天運”をたたが分身体に消費してどんな感じ?もしかしたら無駄使いだったかもしれないわよ?貴重な“天運”を無駄使いとか残念にも程があるわね?」
クスクス笑いながら悟の耳元で毒を吐く紅葉の姿がそこにあった。
悟は割りとこういうのに弱かったりするのでどんどん暗くなっていく。
「………だーもう、うるせぇ!!後悔が大きくなるだろうが!!いいんだよ、目的は果たせたしいいんだよ!!」
涙目になりながらも無理矢理ポジティブになって立ち上がる。
紅葉はその様子をクスクス笑いながら面白そうに眺めている。
皐はただただその様子に呆れているのだった。
『本当に面白いね、君達は』
その様子を見ながら球磨川は小さく呟くのだった。
皐は他の若頭派と合流する為に高度を下げていくのだった。
◆◆◆◆◆
「あー、悟♪そっちも終わった~?」
下に降りた球磨川達がまず見たのはまるで閉じた口の様な岩の上に座る蛍だった。
その口の様な岩は血にまみれていた。
まるで本当に動いて何かを食ったかの様だった。
というよりも明らかに地を操り、喰らう様に双頭龍を噛み砕いた跡だった。
加えて蛍の口元をよく見ると血が付いていた。
が、すぐに舌になめ取られた。
「相変わらず雑食だな。普段は飲んだっくれのくせに」
『というか、僕らが割りと苦労した敵を無傷で二体も倒した事になるよね』
皐が呆れた様に、球磨川が驚いた様に呟くが蛍の耳には届いていない。
むしろ悟“しか”見ていない。
球磨川と皐を無視し、蛍は悟に引っ付く。
甘える様に上目使いで悟を見る。
「ねぇねぇ、私……少し疲れたんだけど………」
「分かってるよ。好きに喰らえ。これも“約束”の内だしな」
「悟、大好き♪」
満面の笑みを浮かべ、頬を少し紅くしながら蛍は悟の唇を奪う。
悟も少しは頬を紅くしていたが、妖力を吸われているのでだんだん顔色は悪くなる。
少しして蛍は満足して唇を離す。
が、悟の背に張り付く紅葉を見て顔色をガラリと変える。
「ちょっと味にあんたのが混じってるけど、また使ったの?“私の”悟を餌場にしないでくれるかしら?」
「そっちこそ、無闇矢鱈に吸わないでくれる?此方も“契約”はしてるし、面白い結末を見る前に喰われも困るんだけど」
「それはこっちの台詞かしら?私が喰らい尽くすよりあんたが“天運”吸い尽くすのが速いんじゃない?」
「見境無しに喰らうあんたには言われなくないわね」
グッタリした悟を間に紅葉と蛍は言い合いを始める。
クスクス笑う紅葉とウフフと笑う蛍であるが、目は笑ってなく間にはかなり入りにくい。
それを皐は何時もの事の様に欠伸をしながら眺めていた。
球磨川は気の毒に思いながらも苦笑いをするだけだった。
そんな事をしている内に他のメンバーも合流を始めていた。
「ガハハハッ!!おめぇさん達は派手にやった様だな」
林の奥から土丸が豪快な笑いを上げながら出てきた。
その姿は無傷そのものだった。
「土丸のおっさんも割りと余裕だったんだな」
「当たりめぇよ!!おめぇさん達の親父さんと一緒に暴れてた時にはあの程度はよく相手にしてたからな!!」
ここで言う親父とはぬらりひょんの事である。
そんなこんなで若頭派は大体合流するのだった。
そして、次の戦いに備えて短い休憩を取る事になるのだった。
球磨川は山脈を見ながら呟く。
『十六夜君はまだ頑張ってるようだし、僕も頑張らないとね。それに安心院さんが何かするとしたらここら辺だしね』
「呼んだかい?」
一人言に答えが返ってきたのに驚きつつ、振り返る。
直後に体を休めていた若頭派は爆発に巻き込まれるのだった。
また一つの戦場で戦いが終了!!
と、思いきやまた一波乱!!
あの人は座敷童子以上に神出鬼没です。
座敷童子に関してはかなり独自解釈入ってます。
まぁ妖怪達な全員そんな感じですが。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。