問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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力の行く末

____忍野忍の戦いは一方的というレベルではなかった。

もはや虐殺に等しいレベルだった。

三体の双頭龍が現れた直後に一匹は真っ二つにされて息絶えた。

残りの二匹を殺すのもそう時間は掛からなかった。

吐いてくる火炎弾は全て無効化され、一瞬で距離を縮められると瞬きする間に刺身へと変貌していた。

更に斬り刻んだ双頭龍の残骸を足場に跳躍し、最後の一体に蹴りを入れる。

骨の砕ける様な音と共に吹っ飛ぶが、着弾点に忍が回り込んでいた。

そして、再び蹴りを入れられ勢いは相殺される。

骨はほぼ砕け、まともに動けない状態となる。

その状態で忍は双頭龍に牙を立てて血を吸った。

血だけではない。

霊格そのものが喰われていた。

干からびた双頭龍は灰となって消えた。

その光景に避難民も、火龍隊も、マンドラもただただ唖然としていた。

 

「お前様、終わったぞ」

 

「忍………お前どれだけ強くなってんだ!?」

 

暦は思わず叫んだ。

だが、当の忍は逆にキョトンとした顔になり、首を傾げる。

 

「何を言っとるんじゃ、お前様。儂を誰だと思ってるのじゃ。あれくらい当然!!」

 

どうもどうやら忍はあれくらい出来て当然と言う認識らしい。

が、そんな都合のいい力でも無かった。

いきなりポンッ♪と言う感じに忍が煙に包まれる。

そして、煙から出てきた忍は幼女の姿に戻っていた。

 

「忍………何で姿を幼女に変えた?」

 

「………どうやら“暴れ”過ぎた様じゃな。血を吸う前の人間もどきの吸血鬼状態になった様じゃ」

 

どうやら自分の体の状況は把握しているらしく軽く言ってくる。

だが、状況はそう軽く言える物では無かった。

大戦力の忍が弱体化したのだ。

それに忍の吸血鬼性が下がったという事は暦の吸血鬼性も下がったのだろう。

それでは一般人よりは強いが、とても戦いに参加出来る状態ではない。

 

「どうすんだよ、これ!?すぐに吸血鬼性を上げれるか?」

 

「血を吸えばどうにかなるじゃろうな」

 

「それなら今すぐに………」

 

さっさと戦力を整える為に血を吸わせる準備をする。

だが、そこにこの状況では一番会いたくない男が現れる。

 

「これはこれはこれはこれはァ!!ちょぉぉぉぉどいい時に来れた様だなァ!!」

 

「その声、マクスウェル!?」

 

黒ウサギが驚いた様な声を上げて声のした方を見る。

驚くのも当然だろう。

マクスウェルの生首が転がっていた話は既に広まっている。

完全に死んだと思われた者が現れれば当然驚く。

視線が声をした方に集中する。

 

「何だ……その姿………死んだんじゃなかったのか!?」

 

誰かが声を上げる。

それも仕方ない事だろう。

声はマクスウェルであったが、姿が違った。

以前の姿から大きく変わり、天使の様な姿になっていた。

だが、そこから感じる狂気は危険な臭いがあった。

まるで壊れてるかの様な。

 

「すまない、ウィラ。姿が変わっていて驚いただろう。それに死んだと勘違いして悲しんでいただろう」

 

「キモイ!!」

 

「だが、私は君への愛さえあれば何度だって甦る!!それに愛の前では姿など小さなことだ!!」

 

ウィラが叫ぶが、マクスウェルは気にしない。

鼻歌を歌うかの様にマクスウェルは歪んだ愛を語る。

 

「さて、もう私は待てはしない。今すぐ来て貰おう……いや、来ざるを得ない状態にしてあげよう!!」

 

は?と呟く前にマクスウェルは指を鳴らした。

すると彼方に火柱が立ち上がる。

それが何処か暦と忍にはピンと来なかった。

しかし、ウィラ達は即座に理解する。

 

「まさか………“境界門”を!?」

 

「ご名答ゥ!!隣の“境界門”まではどれだけあったかなァ?」

 

高笑いを上げるマクスウェル。

本来ならどんな魔王だろうが破壊しない“境界門”。

しかし、マクスウェルは空間跳躍が可能な故にそんな常識は通用しない。

 

「さぁ、ウィラ!!君が私の花嫁となれば他の者は助けよう!!どうする?避難民達の命は君が握ってると言っていい!!」

 

白々しく言ってくる。

だが、最悪の一手には違いない。

誘いに乗らないと避難民達は終わる。

忍に血を吸わせる間も無い。

そんな事をすればマクスウェルは直ぐ様に交渉決裂と判断するだろう。

 

(せめて…………安心院さんがいればここまで追い詰められてないんだけどな。ここから………どうする。この状況で僕に出来る事はなんだ!?羽川の様に、忍野の様に考えろ!!)

 

暦はこの最悪な状況を打開する為に必死に思考を巡らす。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「お前ら、無事か!?」

 

煙の中で起き上がりながら叫ぶ。

どうやら蛍が咄嗟に守ってくれたらしく傷は無い。

隣で転がってる皐もついでに守られたのだろう。

だが、他はその範囲外だ。

球磨川は放っておいても大丈夫なので気にしてはいないが。

 

「若頭………此方は…カハッ……大丈夫ですよ……」

 

がしゃの苦し気な声が帰ってくる。

声がした方を見ると、がしゃが妖怪態となり、他のメンバーを守る様にしていた。

がしゃどくろ、としての姿が薄れ、人間態に戻る。

その背は焼け焦げた様になっていた。

 

「馬鹿野郎が………」

 

苦々しく呟く。

同士が傷付き倒れる姿はあまり見たくないのだ。

そういう役目は自分が背負うと決めている部分もあるからこそ、そう思う。

だが、がしゃが守らなければ他のメンバーも同じ様に転がっていただろう。

 

「……チッ。伏目と夏歩はがしゃの手当てを頼む!!濡鴉、河澄、吹雪、粉雪はその警護を!!風間と鎌音は俺らのサポートを!!茨は俺と敵を叩くぞ!!」

 

「うるせぇ……言われなくても敵は斬る」

 

悟が指示を出し終えると同時に煙が吹き飛ぶ。

その先には二体の鎧の天使がいた。

正体は分からないが襲撃者はあれらで間違いないだろう。

天使は各々剣と槍を構える。

悟と茨は警戒し、構える。

 

「ハァァァ!!」

 

「ヌゥゥゥゥン!!」

 

直後に左右から天使へと攻撃が加えられる。

左の天使には土丸の拳が、右の天使には雷を纏った蛍の蹴りが深く打ち込まれる。

天使にはヒビが入り砕ける。

その足元の残骸を見て、土丸と蛍は呟く。

 

「意外に脆いのね」

「意外に脆いもんだな」

 

だが、天使はそれで終わりではなかった。

粉々になった天使は霧が収束した様に修復された。

そして、空間跳躍をして土丸と蛍の背後へと回る。

 

「へぇ、空間跳躍か。おもしれえじゃねぇか!!」

 

「それがどうかした?」

 

天使が攻撃を仕掛ける前に二人は口角を歪める。

そして、振り向き様に攻撃をぶち込む。

 

「再生するというならしなくなるまで徹底的に殺り合ってやるよ!!」

 

「アハハハツ!!いいわ、来なさい!!トカゲよりは上質そうだしねぇ!!」

 

土丸は拳を構え、蛍は巻物を構えて嬉々として天使へと向かっていく。

悟達は加勢しようと刀を構えて動く。

 

『いや~凄いね。あの天使達とも普通に戦うとか』

 

そんな悟の隣に球磨川が立つ。

特に驚きはしない。

だが、何か違和感がある。

 

『さて、加勢するんだろ?僕も手伝うよ』

 

そう言って球磨川も螺子を構えて天使へと向かっていく。

茨は既に土丸の方へと加勢している。

だが、違和感は更に大きくなる。

 

「(悟……あれは)」

「(分かっている)」

 

耳元で囁く紅葉に小声で返す。

違和感は確信に変わった。

だが、確かめる方法は一つしかない。

けれどもやるしかない。

それにどうせ間違いだとしても問題は無い。

行動に移すべく悟は刀を構えて静かに歩き始める。

そこで皐がようやく起き上がる。

 

「悟……お前、何しようとしてんだ?」

 

思わず皐が呟く。

その声に球磨川が振り向きそうになる。

だが、その前に決める。

 

『え?』

 

球磨川が振り向く前にそれは深々と突き刺さった。

球磨川の表情は驚愕と言った感じになっていた。

悟の刀は球磨川を背中側から深々と貫いていたのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、十六夜は欲しかった答えを見つけていた。

 

 

「お前が……“お前が魔王か”、アジ=ダカーハ___!!」

 

 

策はない。

しかし恐れもない。

あるのははち切れんばかりの胸の高鳴りだけ。

神々の箱庭を徒手空拳で駆け抜けた少年は、己の全身全霊を握りしめ、最後の巨峰へと走り出した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「全く……“皆”、無茶するねぇ」

 

全てを眺める人外は静かにそう呟くのだった。





八巻終了でした!!

忍はかなりの力を持った代わりに吸血鬼性が下がるのが速くなっています。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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