問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
変態の催促
『おいおい、悟君。これはどういうつもりだい?』
球磨川の胸からは刀の切っ先が飛び出していた。
刀を指差し、何事もなかった様にヘラヘラ笑いながら問う。
対して悟の顔は笑ってない。
「何時までも下手な芝居してんなよ。お前、“何者”だ?」
『へぇ?君は僕が“偽者”とでも言いたいのかい?』
「いいや、確信してるぜ。お前は偽者だってな」
『証拠は?』
「今はサトリが濃い時期なんでな。気配で分かる」
『そういう君が“偽者”の可能性も充分あるよね?』
「ねぇよ」
「だって、私がいるからね」
悟の背に張り付く紅葉がクスクス笑いながら言う。
その瞳からは真意が読めない。
『どういう意味かな?』
「紅葉は俺にしか張り付かないからな」
「それじゃ説明不足でしょ?そんな事だからダメなのよ」
「うるせぇ!!」
紅葉はクスクス笑いながら毒を吐く。
悟の叫びを無視して話を続ける。
「私が“憑いてる”のは悟よ。“憑いてる”からには何時何処にいようと悟のいる所には現れられる。つまり、私には悟の判別は簡単って事よ」
『………そうかい』
紅葉の言葉を聞き、小さく頷く“球磨川”。
その姿はノイズの様に歪んでいく。
「いやいや、まさか認識をいじる【身気楼(ミラージュブナイル)】に違和感を感じるとは思わなかったよ。そこはさすが妖怪ってところかな」
ノイズが大きくなっきた所で刺さっていた刀からスルリと抜け出す。
血なんて一切流れていなかった。
傷口すら見当たらない。
とはいえ、そのくらいは予想範囲内である。
ノイズが収まり出てきたのが、安心院なじみという方がよっぽど驚きである。
「此処でまさかのあんたかよ」
「いや~こんなに速く気付くとは思ってなかったよ(笑)」
「白々しく言ってくれるな。それで球磨川の奴を何処に消した、安心院なじみ?」
「僕のことは親しみを込めて、安心院さんと呼びなさい。別に“僕の都合”でちょっと行って貰う所が出来ただけだよ」
「そうかよ。なら、あんたは何しに来た?」
「僕は球磨川くんの代わりでもしようかと思ったんだけど…………早速バレちゃったからね。姿は消させて貰うよ」
嘘つけ、と小さく呟く。
本当に気付かせる気が無いならもっと別の方法を使う筈である。
遊ばれてるのを確信するのだった。
「(というか、遊ぶ事が目的じゃねぇだろうな?)」
「後ろ危ないけど」
「悟、後ろだ!!」
考え事をしていると紅葉と皐の声が聞こえ、咄嗟に刀を回し斬りの要領で振るう。
刃と刃が衝突する音が聞こえる。
どうもどうやら土丸が相手にしていた天使の片方が悟の背後へと回っていた様だ。
互いに弾き飛ぶ。
が、天使には空間跳躍がある。
悟が体勢を直す前に斬り掛かる。
ほぼ強引に刀でそれを受け止める。
「ガッ……クッ………重ッ!!」
ピシリと嫌な音が聞こえる。
左腕辺りの骨にヒビが入ったのだろう。
歯を食い縛り何とか耐える。
足もかなり痛んでくる。
だが、悟は一人ではない。
悟に剣を打ち込み動きを止めている天使の背後から土丸が殴り掛かる。
だが、それは空振りに終わる。
一瞬前に気付かれ転移されたのだ。
「“鬼道・丑斬剛閃”」
茨の近くに現れた天使。
茨に対して剣を振り降ろすが、逆に剣を砕かれていた。
一瞬だけ鬼の姿となり、その怪力に妖力を上乗せして振るったのだ。
が、剣もすぐに再生を始める。
だが、そこが隙になる。
今度こそ土丸の拳が深く打ち込まれ、鎧にヒビが大きく入り、吹っ飛んでいく。
「そこで寝ててもいいんだぞ?」
「誰が寝るかよ……」
茨が悟に向けて挑発する様に言い、悟もわざわざそれに乗るかの様に立ち上がる。
互いにこいつにだけは負けたくないという思いはあるのだ。
その背後で土丸が笑いを上げる。
「若いってのはいいねぇ!!さぁ、そろそろ起き上がるぜ。とことんやってやろうぞ!!」
二人は無言で刀を構える。
天使が起き上がると同時に三人は天使へと向かっていくのだった。
「ったく、よく元気に動けるなあいつら」
皐が愚痴を言うかの様に呟く。
額から流れる血を拭いはするが、立ち上がろうとはしない。
「球磨川の奴もどっかに消えたし、俺はどうするかな……」
空を見上げながら呆然と呟く。
◆◆◆◆◆
「それとも、君は“人質”があった方がいいかなウィラ?」
「ぁ……くぅ……」
マクスウェルの右手には黒ウサギの首が握られている。
力を入れられてるのか、黒ウサギは苦し気な声を上げている。
“境界門”を破壊した上で何故か黒ウサギを此処に持ってきたのだ。
その行動には困惑するだけだった。
脅迫するというなら、いきなりこうも重ねる事はないだろう。
それに先程から言動に狂いが多少ある。
まさかと思うが今のマクスウェルは壊れているのかもしれないと、暦達は思っていた。
「どうだい、我が花嫁よ。答えを出す気にはなったかい?決断の時は今だァ!!それとも何かな?まだ足りないかな?」
情緒の安定がかなり欠けていた。
とはいえ、これ以上刺激してはならないのは分かっている。
どうするか迷い、ウィラが何かを言おうとした時に“それ”はマクスウェルに向かって放たれる。
「黒ウサギを離しなさいよ、そのクズがァ!!」
狐川が叫びを上げながら突進してくる。
否、狐火と稲妻を全身に纏い、アルマを踏み台にしてマクスウェルに向けて蹴りを放っていた。
マクスウェルはそちらに軽く目を向けると、左腕を構えるだけだった。
左腕と蹴りが衝突し、周囲に衝撃波が放たれる。
その反動でメイド服がボロボロになるが特に気にはしない。
マクスウェルの鎧の様な左腕もヒビが入るが、すぐに再生を始める。
「その程度で我が恋を抑えられるとでも思ったかァ?」
「やってみなくちゃ分からないでしようが!!」
マクスウェルの左腕を踏み台にして、後方に跳ねる狐川。
着地点にはちょうどよくアルマがいる。
[マスター!!少しは状況を見るという事をしてください!!]
「うっさい!!今はこのクズを殺れればいどうでもいいのよ!!」
アルマに足を付け、稲妻を再度身に纏うと同時に足場とする。
高速で移動していたアルマを足場として更に勢いを付けて再度蹴りを放つ。
アルマは手があれば頭を抱えたいという思いだった。
今度こそは胴へと直撃する。
しかし、マクスウェルは涼しい顔をしている。
「ハァ!!」
「…………足りんぞォ!!全然足りんぞォ!!その程度では我が恋路を止めれる物かァ!!」
「アルマァァァァ!!」
[分かっています!!]
狐川が叫ぶと同時にアルマは狐川を回収する。
同時に黒ウサギを傷付けずにマクスウェルの体を抉っていく。
だが、すぐに再生される。
再生すると同時に双頭龍をかなりの数召喚してきた。
が、狐川はそんな物が目に入るほど冷静ではなかった。
「邪魔ァ!!」
[マスター!!あまり無茶をしないでください!!]
アルマの意見など無視して、マクスウェルへと突進を仕掛けさせる。
召喚されたばかりの双頭龍を貫き一直線に向かっていく。
「鬱陶しいな……これではウィラと話す事すら出来ないではないか」
そこでマクスウェルは左手の黒ウサギに目を向ける。
そして、醜悪な笑みを浮かべる。
天使もどきの体とはいえその身はマクスウェルの醜悪さをよく表す。
「そうだ!!君には“これ”を返しておこう!!」
そう言うと同時に狐川に向けて黒ウサギを投げ付ける。
さすがに狐川を勢いを収め、黒ウサギを受け止める。
そして、それが隙となる。
いつの間にかマクスウェルに近付かれ、パチンという軽快な音共にアルマから力が抜けた。
落下し、転げ回りようやく何が起こったか理解する。
[貴様!!マスターと黒ウサギ殿を何処に消した!!]
「さぁねぇ?咄嗟だったから分からないね」
どうでもよさそうに答える。
視線はもはやウィラだけに向いている。
「クソッ!!」
「おおっと!!動くなよ?ウィラ以外が少しでも動けば、どうなるかは分かるな?」
“心渡”を構え、悪足掻きでも何かしようとした暦だったがその言葉で動きを止めざるえない。
(何でだ……何でこういう時に何も力になれないんだよ、僕は!!)
自分を責め、歯ぎしりするしかない。
マクスウェルは恍惚とした表情で高笑いを上げている。
助けも何もない。
打つ手など全く無かった。
◆◆◆◆◆
「これにて“煌焔の都”を巡る戦いは閉幕。大地は蹂躪され、同胞の誇りは踏みにじられる…………おいおい、君達が望んだ結末はこんな物なのかい?違うだろ?」
その人外は誰とも言えない“物”に対し、ただ語りかける。
◆◆◆◆◆
____“諦めるなんて君らしくないじゃないか、阿良々木君”
そんな声が暦の耳に届いた様な気がするのだった。
十巻開始でした!!
刺されたのは安心院さんでした!!
悟も正体までは気付いてませんでしたが。
暦たちは追い詰められました。
吸血鬼性上げなければただ身体能力高いだけですからね。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。