問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

128 / 188
救援到着

 

「は?」

 

暦が間抜けに声を上げる。

何かが投擲されたかと思うと、暴れ回っていた双頭龍達の姿が消えた。

まるで“なかったこと”になった様に。

 

「ぬぅ!?」

 

そして、マクスウェルにも何かが突き刺さり、姿を消した。

完全なる不意討ちにより、避ける暇すら無かったのだろう。

どうなっている?と暦が首を傾げている間に忍何かを見付ける。

 

「お前様、あれを見ろ」

 

「輝く羽根と羊皮紙?」

 

輝く羽根と共に天空から舞い落ちる数多の羊皮紙。

羽根と同じく燦然と光り輝く羊皮紙は、星々の放つ光よりも尚力強く、夜の帳を引き裂いて舞い落ちる。

 

[いいえ、それだけではありません!!あれを見て下さいッ!!]

 

アルマが信じられない物を見る様に叫ぶ。

暦と忍も天を仰いで驚愕して声を失う。

避難民すらそうだ。

天に現れたそれは異質で巨大だった。

 

「ラピュタかの!!」

 

「違がう!!そうじゃないだろ!!というか、何であれが此処にあるんだよッ!?」

 

忍に突っ込みつつ、暦は呟く。

そう、彼らはそれを知っていた。

彼らの見上げる巨大な影の正体を知っていた。

“アンダーウッド”の上空で滞空したまま放置されていた吸血鬼たちの空中城塞______“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”の舞台が今、彼らの遥か頭上で浮遊していた。

そして、“サラマンドラ”の者と避難民達はそこに掲げられる旗印を見て次々と声を上げる。

“龍角を持つ鷲獅子”、

金翅の神鳥、

相克する蛇、

向かい合う双女神、

何れも超弩級のコミュニティだ。

その中で彼らの視線を釘付けにしたのは最も高い位置に掲げられし、黄金の稲穂と地平線に昇る太陽、その中心に立つ女神______否、女王の旗。

“クイーン・ハロウィン”の御旗である。

マンドラの前には山高帽に燕尾服、粗野で野卑な笑いを上げる死神が現れていた。

ようやく箱庭に帰ってきた死神は、マンドラに指示を出しつつ呟いた。

 

「人がせっかく“ついでに”運んでやったのに何処に行きやがった、あの爺さん」

 

言葉だけを残し、死神の姿は消える。

そして、暦達の前にはサラが現れていた。

 

「よかった、無事だったか!!」

 

「僕達はな。でも、十六夜の奴がまだ……」

 

「心配しなくてもいい。そちらにも救援は向かっている。我々が用意できる、最強の戦力が」

 

サラの手にある羊皮紙の輝きが増していく。

不敵に笑い、その手の羊皮紙が高々と掲げられる。

瞬間、視界に映る全ての景観が崩壊し、世界が一変した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

悟はかなりボロボロになっていた。

理由は簡単だ。

“ウロボロス”との戦いから間に休憩が多少挟まれたとはいえ、“百鬼夜行”を発動し続けていたのだ。

負担はかなり溜まっている。

更に“犬神”や蛍に妖力をもっていかれているのだ。

これで消耗しない方がおかしい。

 

「(球磨川が入れば多少はマシになったんだろうが、無いものねだりは隙を招く)」

 

周囲を警戒しながら小声で呟く。

隣の茨も表に出していないが体力はそれなりに消耗しているだろう。

土丸はまだまだ余裕という感じだ。

これは経験と実力の差だろう。

敵は空間跳躍を使う。

何処に現れるかは予想もつかない。

悟の頬から垂れた汗が落ちる。

直後に悟の目の前に天使が現れ、剣が横薙ぎに振られる。

咄嗟に受け止めようとするが、そんな最悪のタイミングで体の限界を向かえる。

 

「ガッ……ゴハッ!?」

 

まず、天使の剣を受け止めようとして刀を持っていた右腕が折れる。

更に踏ん張りを利かせようとしていた左足がその衝撃で折れる。

元々ヒビが入っていたとはいえ、かなり最悪のタイミングである。

踏ん張りが利かずに吹き飛ばされる。

地面に衝突しようが勢いは止まらない。

地面を何度も跳ね、止まる事なく転げ回り、ようやく止まった時には全身血塗れだった。

全身がかなり痛む。

おそらく吹っ飛ばされた事により骨に更なるダメージが入ったのだろう。

体は一応は動く。

しかし、所詮は一応の範囲だ。

目の前に転移してきた天使が振り降ろす剣を止める事も出来なければ、避ける事も出来ない。

 

「クソッタレが……」

 

悟は苦笑いしながら呟く。

振り降ろされる剣はやけにゆっくりに見えた。

皐や土丸、女性陣達が何かを叫んでいるが聞き取れない。

何人か行動を起こそうとしているが距離的に間に合わない。

紅葉はいつの間にか消えていた。

巻き添えを食らう気は無いのだろう。

そういう所は冷めているのだった。

天使の剣が正に悟の皮膚に触れようとした時だった。

 

 

「邪魔じゃ、ガラクタがァ!!」

 

 

突如として悟の背後から何者かが現れ、天使を蹴り飛ばした。

気配など無かった。

姿も認識出来なかった。

本当に消えてたかの様にいきなり現れた。

蹴り飛ばされた天使はかなりの勢いで吹き飛んでいった。

その光景にその場の誰もが唖然としていた。

突如現れたその男は悟の目の前に着地する。

その後ろ姿だけで正体は分かった。

男は悟が吹っ飛ばされる過程で地面に落ちた“獅子王”を拾い、鞘に納める。

その後ろ姿に悟が何か言おうとする。

 

「親「何をやっとんじゃ、馬鹿息子がァ!!」

 

悟が口を開くより前に男が振り向き様に悟を蹴り飛ばした。

それにより、唖然としていた一同も我に帰って現実を認識する。

だが、言葉は出なかった。

ただ一人を除き。

 

「ぬらりひょんの爺さん、何で此処にいるんだ?」

 

皐が面倒そうに言う。

そう、現れた男は傭兵コミュニティ“百鬼夜行”を統べる妖怪、ぬらりひょんだった。

 

「何でワシが此処にいるかじゃと?聞くまでも無かろうが……馬鹿息子二人の“説教”に決まっておろうがッ!!」

 

「………俺もかよ」

 

「当然じゃ」

 

ぬらりひょんと皐がそんな問答をしていると、その近くに何かが墜落する。

土煙の中には稲妻が混じっている。

 

「ったく、“雷獣”の怪だけで終わるとかつまらないわね」

 

天使の残骸を投げ捨てながら蛍が土煙の中から出てくる。

それが意味するのはただ一つ。

蛍が天使を一人で倒したという事だった。

そこでぬらりひょんは蛍を認識し、蛍もぬらりひょんを認識する。

互いに睨み合う形となる。

 

「ちょっと……何で此処にいるのよ、ぬらりひょん」

 

「馬鹿息子が本拠で大人しく酒飲ませておけばいいものを………」

 

そこへ残っていた天使が現れる。

だが、タイミングが悪かった。

何故なら蛍もぬらりひょんも機嫌が悪かったからだ。

 

「邪魔じゃ!!」「邪魔よ!!」

 

鞘に収まった刀と扇子を思いっきり叩き付けられる。

同時に妖術による呪いが叩き込まれ、その身を崩壊させていく。

ぬらりひょんも、蛍も妖術は多少使えるのだ。

天使を一体軽く倒しておきながら二人は気にもとめない。

 

「と、そうじゃ。青行燈など今はどうでもいい!!馬鹿息子への説教が先じゃ!!」

 

「あぁん!?数百年閉じ込めておいてどうでもいいとはどういうことだァ!?」

 

殺気を放つ蛍を無視してぬらりひょんは悟に視線を向ける。

仰向けに倒れる悟の傍には二人の男が立っていた。

 

「いや、総大将………若は既に気絶していますよ」

 

「おぉ!!牛鬼に、輪入道じゃねぇか!!久しぶりだなァ!!」

 

「お前は相変わらずの様だな、土蜘蛛」

 

懐かしそうに声を上げる土丸に対し、輪入道と呼ばれた男は同じ様に笑いながら言う。

対して牛鬼と呼ばれた男は小さく笑うだけだった。

ぬらりひょんは、倒れている悟に触れ気絶している事を確め、溜め息を吐く。

そして、その場を驚愕で動けずにいた若頭派の面々の方を向く。

 

「まぁよい。説教は後じゃ。お前ら、一旦拠点まで引くぞ!!」

 

「拠点って何処だよ」

 

「あれじゃ」

 

「…………こりゃ笑えねぇな」

 

皐はぬらりひょんが指差した先に空中城塞を見付け、苦笑いをするのだった。

どうもどうやら“仕事”も絡んでるようだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

同時刻、異変が起こり、それは十六夜とアジ=ダカーハも包み込んでいた。

ロンドンの街が現れ、援軍として

“パンプキン・ザ・クラウン”ジャック、

“覆海大聖”蛟魔王、

レティシア=ドルトレイク、

女王騎士・フェイスレス、

“混天大聖”鵬魔王、

が現れていた。

そして、開幕の宣言がされる。





援軍到着でした!!
ぬらりひょん参戦です!!
牛鬼と輪入道は人化を使った状態です。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。