問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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動く者と動かす者

______時は少し遡る。

マクスウェルは謎の攻撃を受けた直後にあの場に転移する前の場所にいた。

何かが自分に刺さった様な気もしていた。

だが、その様な跡は残っていない。

まるで状況が分からず困惑する。

しかし、今の壊れたマクスウェルはそんな事も数十秒でどうでもよくなる。

さっさとウィラの元へと戻ろうと考えるがそこで話し声を聞く。

 

『全く、安心院さんも人使いが荒いよね』

 

「荒いってレベルじゃないだろ。何で俺達まで“こいつ”を相手にしなくちゃいけないんだよ」

 

『でも、君達も“これ”を相手にしとかないと後々面倒だろ?一応死亡したという事にはなってるけど』

 

「そもそもお前が信用出来ないけどな。後ろから刺したりしねぇだろうな?」

 

『おいおい酷いじゃないか。元々は敵だったとはいえ、今は利害が一致してるんだよ?協力するに決まってるだろ?』

 

「大体“これ”自体があの女の狙いで、“こいつ”が甦ったのも、俺達が“こいつ”を相手にするのも、“こいつ”が“境界門”を破壊するのもあの女の計画通りだったりしないだろうな?」

 

『確かに彼女にはそれが可能ではあるだろうけど、考えるだけ無駄な事だよ』

 

「お前もよくあんな女に協力出来るな。状況から見て“ウロボロス”に寝返ってる様なもんだぞ?」

 

『安心院さんが所属に縛られると思うかい?それに僕はどんな立場だろうと安心院さんの味方だよ。どうもどうやら彼女は僕なんかの事を弟の様に思ってくれてるみたいだし、我が儘を聞くのはそれで十分さ』

 

「どうだか」

 

それすらも信用ならない、と言った様に殿下は呟く。

そもそも殿下は安心院も球磨川も信用出来なかった。

何を考えてるか分からない上に一々言葉が白々しいのだ。

 

「何だ、貴様ら?私はウィラを手に入れるのに忙しいんだ。貴様らの相手をする暇はないッ!!」

 

鬱陶しそうにマクスウェルは言う。

球磨川や殿下達の方など見もしない。

今すぐにでも空間跳躍したい所ではあるが、先程の事もあって警戒している。

そこでリンが前に出てくる。

 

「えーと、ですねぇ。なんていうのかな。ウィラさんなら既に私達が連れて来てますよ?」

 

「何ィ!!」

 

ギラリ、と目を輝かせてリン達の方へと首を向けるマクスウェル。

天使もどきの体になってる故に首は明らかに不自然な角度に曲がっている。

その姿を不気味に感じ、過去をひきつらせながらリンは殿下と球磨川の後ろへ行き、ジンとぺストの方へと振り返る。

 

「さて、予定が狂った所じゃなく、明らかにあの人の手の平の上だろうけど、避難民はしばらく無事だし、これで停戦条約締結ってことでいいのかな、ジン君。あとぺストちゃんも」

 

「まだだよ。安心院さんに誘導された結果とはいえ、まだ肝心の契約が果たされてない。」

 

「そうね。あの女が何を企んでるかは知らないけどウィラを拘束する手伝いまでしたんだもの。一番大きな報酬をもらわないと割りには合わないわ」

 

ぺストは両腕を鎖で繋がれたウィラの横に立ち、悪意も無いままにべも無く答える。

ドサクサに紛れて近付いてきたぺストに突然鎖を巻き付けられ、こんなところに連れてこられたのだ。

ウィラも混乱して当然だろう。

 

「寄越せェ!!」

 

そんな彼女達の会話を無視してマクスウェルは飛び掛かり、手を伸ばす。

しかし、その手は殿下に受け止められ、直後に球磨川が螺子を放つ。

マクスウェルはそれを空間跳躍で避け、距離を取る。

リンはそれを無視してジン達に頷き返す。

 

「私達も今のところは彼女の手の平の上で動くしかないようですし、約束は守りましょう。______みんな、準備はいいですか?」

 

そう言って視線を移す。

視線の先には漆黒の西洋龍に、ローブを深く被った魔法使い風の女性がいた。

マクスウェルは苛立った様に言う。

 

「…………何のつもりだ?」

 

「そんなの決まってるじゃないですか♪どうやら霊格はそのままという“都合のいい”状態な様ですし」

 

誰に取って都合がいいのかは別として言う。

リンは笑みを浮かべたままナイフを引き抜き、マクスウェルに宣告する。

 

「“マクスウェル・パラドックス”。貴方の席はもう埋まっていますし、堂々と貴方の首を挿げ替えさせてもらいます。二一一〇年に現れる“歴史の転換期”______“第三永久機関”の霊格をね」

 

「…………何のつもりだ?」

 

そっくりそのまは聞き返してくる。

どうやらそこらへんは完全に壊れている様だ。

リンに代わって殿下と球磨川が言う。

 

「そんな事も理解出来ないのか?」

 

『なら、簡単に言おうじゃないか』

 

「お前を」『君を』

「『倒すって事だよッ!!』」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______北側・未開の樹海。

蛟劉達の“主催者権限”により新たなるゲームが開催されていた頃。

狐川は黒ウサギを担いで歩いていた。

しかし、それも限界が近かった。

 

「……ッ!!やっぱ足の骨にヒビ入ってる様ね」

 

どうもどうやらマクスウェルに対する蹴りは、かなりの足に負担を掛けていたらしい。

彼女のかなりボロボロであった。

原因の半分ほどは樹海の木々の上に跳ばされた故に落下の時に引っ掻けたからではあるが。

ヘッドドレスは何処かに消え、髪はボサボサ、体中に傷や血の跡が残り、メイド服も所々破れている。

スカート部分は縦に切れ目が入り、スリットの様になっている。

靴やニーソは焼け落ちた様で素足で歩いた分、足は血塗れだ。

ギフトカードから適当に布を取り出して黒ウサギを寝かせる。

そして、既にボロボロなエプロンを破ると包帯代わりに足に巻き付ける。

多少包帯はあったのだが、黒ウサギに使ってしまった。

そこらへんから燃やせそうな物を拾い集め、狐火で燃やして焚き火をする。

 

「とりあえずこの足じゃ黒ウサギが目覚めるまで移動は無理そうね」

 

気絶している黒ウサギを見ながら呟く。

体力的には余裕はあるが、人を担いで動くにはヒビの入った足では負担が大き過ぎる。

星空を見上げ静かに十六夜の事を考える。

 

「(そこまで遠くに跳ばされては無いようだけど、すぐに戻れる状況ではないのよね…………主様が無事だといいけど)」

 

弱気にはならない。

今の黒ウサギの前で弱気になるわけにはいかないのだ。

そのくらいは分かってる。

そんな事を考えていると黒ウサギが目を覚ます。

 

「狐川さん……此処は?」

 

「目覚めた様ね。分からないけど、そこまで遠くでは無さそうよ」

 

少なくとも戦場の血の臭いを嗅げる程度には。

しかし、それは口には出さない。

とりあえず目覚めた事に安堵し、携帯食でもたかろうとする。

狐川のギフトカードにはそういう類いのは入っていなかったのだ。

一先ず夜に動くのは危険である。

今夜は此処で体を休める事にして、二人は身支度を進めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何処とも知れない場所。

北側かもしれないし、東側、南側、はなまた西側かもしれない。

あるいは何処でもないかもしれない。

少なくとも安心院なじみにそんな概念は通用しない。

彼女は何時でも何処にでも存在するのだから。

彼女は立体映像の様な物を眺めていた。

そこに映るのは戦場だ。

 

「どうやら球磨川君達は上手い事やってくれてる様だね。十六夜君はどうやら助けられた様だし、この盤面がどう動くかは中々楽しそうだね」

 

まるでスポーツの試合を眺めるかの様に呟く。

彼女の手に掛かれば盤面など好きに動かせる。

しかし、そんな面白味が無い事を彼女はやるはずがない。

 

「“主催者権限”による三つのゲーム。さてさて、“彼”は一体どう対処するか。これも見物ではあるね」

 

彼女は盤面を眺めながらも、その外にも目を向ける。

外の動きは様々な物である。

慌ただしく動く物も入れば、閉じ籠るのもいる。

そして、彼女の様に戦場を覗く物もいる。

 

「全く“彼”と違って君達は眺めるだけだよね。つまらない事この上ないよ。君達もその立場にいるならもっと面白く盤面を動かせれるだろうに」

 

「この戦場の?違うだろ?」

 

「何だい、分からないのかい?そんなものは“箱庭”全体の事に決まってるだろ?」

 

「全く君達は何時まで傍観者を気取っているのやら」

 

安心院はその場にいない誰かと話す様に呟く。

その様子は酷くつまらなそうだ。

そこで盤面の動きを感じる。

 

「へぇ、彼らは引いた様だね。まぁジャック君があんな風になったら当然だよね」

 

彼女はそこから動かずに、しかし徐々にだが、盤面に手を加えていくのだった。

ただでさえ不安定な盤面を更に読めない方向へと。




殿下達&球磨川さんvsマクズウェル開戦でした!!
両方とも安心院さんに動かされる形でマクズウェルと戦う羽目になっています。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
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