問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
『行くよ、殿下君』
「お前が仕切るな!!」
轟炎と吹雪が立ち上るが、殿下がそれを殴り払う。
そうして出来た隙間に球磨川が螺子を放つ。
「この程度ォ!!」
だが、それもマクスウェルに当たる前に轟炎に阻まれる。
さすがに一瞬で溶け消える事は無い。
そこを利用する。
視覚的に螺子に気を取られてる内に殿下がマクスウェルに近付き、溶け掛けている螺子に蹴りを入れて押し込む。
あと一歩の所で当たりそうになるが、ギリギリ空間跳躍で避けられる。
その先でアウラと黒龍の攻撃が襲うが軌道を変えられる。
しかし、一瞬でも隙が出来れば充分である。
『“大嘘憑き”!!君の操作した熱量を無かった事にした』
球磨川が呟くと同時にマクスウェルの周囲に渦巻く轟炎と吹雪が消え去る。
そこへ殿下が飛び込み、蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。
ヒビの広がる様な音と共に手応えを感じるが、再生能力のあるマクスウェル相手ではそんな物はあてにはならない。
アウラが気圧を安定させる中でリン達は一度距離を取って、建物の影に隠れる。
『いやいや、チートなストーカー程面倒な物は無いね。ちょっと同情するよ』
「…………あぅ」
実際の所は現在の状況は安心院の仕込みで、ウィラがこんな事に巻き込まれてるのも安心院のせいに近いのだが、球磨川はそれを大体察していながらも白々しく言う。
涙目になりながら厄日だと心底感じていた。
(もう…………お家に帰りたい…………)
「来た!!」
半泣きになるウィラをリンは叫びながら後ろに下げる。
其処に大吹雪と共にマクスウェルが突っ込んで来る。
逃げ遅れた球磨川が巻き込まれるが。
『寒いじゃないか』
即座に吹雪を無かった事にして、マクスウェルを張り付けにする。
が、そんな拘束は即座に空間跳躍で抜け出される。
「こんな程度で私の愛を………」
「うるせぇ!!」
とはいえ、今のマクスウェルは半分壊れている様な物なので割りと動きは単調である。
ある程度パターンも読めてきて、転移した直後に顔面に殿下の蹴りがめり込み吹っ飛んでいく。
それでもすぐに復帰してくるので厄介極まりない。
殿下と球磨川は構えながら周囲を警戒する。
その後ろで待機しているリンやジンは苦笑いである。
「いや~ウィラさん愛され過ぎだね。元から壊れ掛けてたのに更に崩壊を進めるなんて」
「元から正気なんて無かったとも思えるけどね」
「見方によっちゃそれほど熱烈に愛してたとも考えられるけど」
「ぜ、全然嬉しくない!!」
それもそうだろう、とその場の全員が同意する。
もはや“ウロボロス”がどうのこうのとかも頭に無い様で完全にウィラにしか目が向いてない。
逆に言えばウィラが此処にいれば何処かに消える事も無いだろうとして少しの間は殿下と球磨川に相手を任せておく。
「それにしても、ジン君はよく何考えてるか分からないあの二人を信じられるね」
「…………いや、僕としても信用は出来ないんだけどね」
「そうなの?」
「球磨川さんや安心院さんは元々そういう面があるみたいだからね。“裏切り”とかそういう枠に収まってる感じじゃないんだよね」
「まぁ、それは私も少しは思うけど」
「だから、“今”は大丈夫だと思うよ」
「“今”、ね。ようは“敵”でも、“味方”でもないんだよね。どちらにせよ、危険で面倒なのは代わりないけど」
そんな事を話していると殿下と球磨川が纏めて吹き飛ばされてきた。
しかし、傷らしき傷は見当たらない。
即座に無かった事にでもしているのだろう。
「えーと、殿下。大丈夫ですか?」
「一応、な。あいつ……どんどん滅茶苦茶になっていってるぞ」
『これじゃ、対処が追い付かないね』
二人が吹っ飛ばされてきた先には恐ろしい光景が見えた。
マクスウェルを中心に轟炎と吹雪が入れ替わりに何重もの防壁を作り、防壁の間では温度差により小規模な爆発が起こっている。
更にはその周囲では複数の人形が踊る様にしている。
「あちらからは攻撃し放題」
『此方は何重もの人形や防壁を突破する必要があるって感じだね』
「さぁぁぁぁぁぁ!!さぁぁ、我が!!我が!!我が!!花嫁をォォ渡して貰おうかァ!!」
狂った様にそんな言葉を繰り返すマクスウェル。
本格的に狂い始めてるようだ。
その様子に一同は冷や汗を流す。
「おいおい、どうすんだ?あの変態、本格的に狂い始めてるぞ」
[速めに決着を付けた方がよく見えるが?]
「そうだね。でも、それも問題があるんだよね」
チラリ、とリンは殿下を見る。
それで殿下も大体察する。
「疑似創星図か。確かにどう当てる、という問題があるな」
『それはこの状況だとかなりの問題だね』
距離を取りながら話していると、マクスウェルは痺れを切らした様に轟炎と吹雪を大きくする。
手を大きく掲げて何かをしようとする。
「渡さないというのなら、ダメ押しだ。___“Summon maxwell myths. 3S, nano machine unit”___!!」
その召喚式を聞いて一同は一斉に顔をひきつらせる。
その召喚式は予め安心院から警告されていた物だ。
安心院が警告するレベルとなると、かなりの物と推測出来る。
距離を取ってる間に空間を破って二体の天使もどきが現れる。
天使もどきは槍と剣を構えて向かってくる。
『こりゃ流石にマズイかな………』
「安心院の奴、ふざけんなよ!!絶対正体分かって押し付けやがったな!?」
『それが安心院さんだよ。それよりも来るよ』
「お前らは剣を持った方を任せた!!距離を取って正体を探れ!!」
『僕はどうすればいいのかな?』
「勝手にしろ!!」
『じゃあ、そうさせて貰うよ』
戦いの場は未開の樹海へと移る。
焦りと混乱の中で戦いは激化していく。
そんな時でも球磨川は、これも安心院さんの想定内だろうと思うのだった。
◆◆◆◆◆
「お前なぁ………“獅子王”持ち出すのはこれで何度目じゃ?」
「親父が保管場所変えないからだろ?」
「だからと言って持ってく奴があるか。そして、何でお前は寝てるんじゃ、皐!!」
「いや、ぬらりひょんのじーさんの説教長いし」
吸血鬼の城の一室で悟と皐はぬらりひょんに説教されていた。
皐は頭に包帯を巻いた状態で
悟は片腕片足を骨折し、全身に包帯を巻かれて松葉杖を付いてはいるがお構い無しである。
とはいえ、現在進行形で治療中の十六夜に比べればかなりマシなのだが。
説教される原因は“獅子王”を持ち出した事である。
…………実際の所は持ち出す度に毎度やってるお決まりではある。
更に言えばぬらりひょんも経験を積ませる為に持ち出させてる面もあるのだが、それでは他の者に示しが付かないので説教しているのである。
が、そういう事情を知らない悟と皐にとってはかなり面倒な物である。
そして、今回は少々事情が違った。
本来ならば帰って来た所で説教なのだが、今回は現地にぬらりひょん本人が赴いた。
それには理由がある。
ただの“階層支配者”の会議に送り出したつもりでは勿論なかった。
“ウロボロス”と戦うなら好きにやらせるつもりではあった。
だが、“絶対悪”を相手にするというならば話は別だった。
今の若頭組では“絶対悪”を相手にすれば確実に死ぬ。
更に“獅子王”はコミュニティとしても失うわけにはいかない。
というわけでぬらりひょん直々に若頭組の救出と“獅子王”の回収も兼ねてやって来たのだ。
勿論ぬらりひょんが行くのに反対の声もあったが、「馬鹿息子共を説教してくる」の一点張りで押し切り来るのだった。
「ったく、ちょっと過保護じゃねぇのか?」
「過保護な物か。“絶対悪”を相手にしたらお前がいようと若達は死んでいた」
「ま、それもそうだが」
「…………とはいえ、隠居のお前が若に協力してるのも意外だったがな」
「俺には見えるのさ。悟の奴が将来デケェ事を起こすってな」
「お前がそう言うのならそうだろうな。ならば、それこそ若の命を此処で散らすわけにもいかんだろう」
隣の部屋では土丸が牛鬼、輪入道と酒を飲んでいた。
盃に酒を注ぎながら久しぶりに色々と話しているのだった。
「しかし、オメェらはここからはどうするつもりだ?当初の目的は果たしただろ?」
「それは総大将次第ではあるな」
「それに今の我らは傭兵。ならば、奴らが協力を申し出る可能性はそれなりにある」
「なるようになる感じか。とはいえ、大将の性格からして雇われなくてもやる事は変わらなさそうだがな」
三人は頷きながらも酒を煽るのだった。
マクスウェルとの戦いは第二ラウンドに突入という感じです。
半暴走に近く、ありったけの力を暴走気味に振るっています。
妖怪達は“ついでに”同行した部分が大きく、まだ雇われてはいません。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。