問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
『雷光?』
マクスウェルに背を向けながら球磨川が呟く。
少し離れた場所では天上へ向けて雷光が輝き夜空を照らしている。
雷光は更に激しくなり、樹海を燃え上がらせる。
その雷光には思い辺りがあった。
『まさか……ゲブッ!?』
「GAAAAAGEEYAAAAAAA!!」
呟く前に激昂したマクスウェルが球磨川の頭を掴んで地面に叩き付けた。
その腕には螺子は刺さっていなかった。
「コシャコシャ小癪な真似をoooしてててくれたtた物だなぁ!!だだだだがぁ!!その程度でわわわ我が愛をぉぉぉ止めれるわけがないだだろう!!」
壊れた様に、言葉にノイズを混ざらせながら叫んでいる。
球磨川は怪訝に思い周囲を見る。
普通なら動けるはずがないのだ。
そこで灰の様な物の中に倒れる螺子を見付ける。
それで理解する。
ようはマクスウェルは“却本作り”の効果が全身に回る前に両腕を切断して抜け出したのだ。
今のマクスウェルならば、切断する事も再生する事も容易いのだろう。
状況を把握し、球磨川は立ち上がろうとするが、その前にマクスウェルが指を鳴らす。
『ぐぇ!?』
小規模な爆発が連続して起こり、球磨川の体を毬の様に吹き飛ばしていく。
だが、マクスウェルは怒りが収まらないと言った感じに顔をかきむしっていた。
「ききき貴様はぁ!!rr楽には殺さん!!なぶり続けて殺し続けてやろう!!」
が、球磨川はそんな言葉を一切聞かない。
体の傷を即座に“なかったこと”にして立ち上がる。
埃を払いながら溜め息を吐く。
『どうもどうやら僕は簡単には勝てないらしいね』
「GEEEEYAAAAAAAaaaaaa!!」
『まぁそれでも戦うさ。ぼくはまだ“満足”してないからね』
両手に螺子を構え、マクスウェルを迎え討つ。
螺子と炎と冷気を撒き散らしながら、二人の戦いは雷光など気にせずに続き、広がっていく。
◆◆◆◆◆
散るならばせめて、仲間の為に。
この命よ、今こそ燃え上がれ…………!!
◆◆◆◆◆
「(全く……若いのはいいが体は大切に使って欲しい物じゃ。憑いてる体に死なれちゃ困るからの~)」
“天狐”はそんな事を思いながら狐川の体の主導権を一時的に乗っ取る形で意識を表に出していた。
その状態でダメージなどを確認する。
「(まずは内臓と血管じゃな)」
神通力で内臓に刺さっている骨を排除する。
そして、強引に止血をして血管の傷を塞ぐ。
骨も強引に形を整える。
折れた事には変わらないが多少はマシだろう。
神経系統などに問題が無い事を確認し、起き上がる。
「(体は動かせる程度にはなったかのう。とりあえず動ければどうにかなるじゃろう)」
とはいえ、動く度に激痛は走る。
それくらいは無視する。
押さえ込む。
その上で周囲を見渡す。
そこで見付ける。
双頭龍と戦う黒ウサギの姿を。
その姿は何時もとは違った。
ウサ耳が復活し、神代の縫術で編まれた衣を身に纏い、天地神明に雷鳴を轟かせる。
「(神格を宿らせたか。とはいえ、あれじゃ長持ちはするまい)」
額の紋様を見て分析した上で言う。
帝釈天の神格を得ている様だが、“月の兎”の伝承からしてそういう物である。
そんなこんな分析している内に灼熱の双頭龍が真っ二つにされる。
燃え落ち、炭となる。
それほどまでに凄まじいという事だろう。
「(何時まで持つか………あと少しと言った所かの?)」
純白の双頭龍の片首を斬り飛ばし、血から生まれし化け物は一瞬で焼き払われる。
金剛杵を幾つも召喚して放っていく。
黒ウサギと純白の双頭龍は樹海を駆け抜けて、付かず離れずの攻防を繰り返す。
それを追い掛ける為に立ち上がろうとするが、そこで何かに掴まれる。
否、それは錯覚であって、錯覚ではなかった。
“天狐”を掴んだのは狐川だったのだ。
◆◆◆◆◆
「召喚、“疑似神格・梵釈槍”____!!」
神鳴が響き、顕現する必勝の槍。
黒ウサギの纏う衣は既に全身に火が点いている。
この一投を外せばもう後がない。
大地を、天を、星を穿つ裂帛の気迫を込めて黒ウサギは吼えた。
「貫けええええええええ____!!」
太陽の光輪が切っ先に宿らせた神槍はかつてない霊格を放出し_______第六宇宙速度という尋常外の速度を叩きだして双頭龍と鋼の天使を纏めて撃ち抜く。
百の稲妻は千に成り、万に成り、億兆もの束となって二体の化生を焼き尽くす。
貫いた対象が消滅するまで無限にエネルギーを放出し続ける槍は最後に日輪を夜空に輝かせて破裂させる。
◆◆◆◆◆
球磨川とマクスウェルはその光景を見れなかった。
正確に言えば距離が離れ過ぎていて状況を把握出来ていなかった。
だが、焦土と化した樹海から大体は察していた。
『………黒ウサギちゃんも無茶をしているみたいだね』
「GEEEEYAAAAAAAaaaaaaaaa!!」
呟きながらも戦闘は続く。
もはや壊れる二、三歩手前なマクスウェルは止まる事などありはしないのだった。
◆◆◆◆◆
そして、黒ウサギは恩恵の対価として身を焼かれていた。
煉獄が黒ウサギを手招く。
黒ウサギに後悔は無い。
奇跡を掴め、仲間を守れたのだ。
それだけでも身に余る恩恵なのだ。
だが、それで納得しない者もいる。
「何を勝手に逝こうとしてるのよ、馬鹿ウサギ!!自己犠牲にしても度が過ぎてるのよッ!!」
“天狐”がギリギリ動けるまで回復させた体を無理矢理酷使して何とか追い付いた狐川が手を伸ばす。
煉獄に焼かれ様がお構い無しに黒ウサギを掴み取る。
焼かれる痛みなどはどうでもいい。
そんな物は後でどうとでもなる。
だが、黒ウサギを失う事は納得出来ない。
六道の地獄から吹き荒れる業火は津波の様に押し寄せて二人を包み込む。
このまま地獄の窯が開けば二人纏めて呑み込まれる。
それはダメだ。
ただでさえボロボロの十六夜に更なる負担を掛ける事になる。
だからこそ、死ぬわけにはいかないし、黒ウサギを死なすわけにもいかない。
諦める気などサラサラ無かった。
故に睨む。
この場にはいない“何か”を睨む。
「帝釈天ッ!!あんたが善神だと言うのならッ!!悪を討つ神と言うのならッ!!その教義に邁進した、あんたの眷属くらい救いなさいよッ!!そのくらいの余裕も無いわけ!?それでよく善神名乗れるわね!!」
黒ウサギはその生涯で、ただの一度も正道を違えることは無かった。
その人生が悲劇で終わる事を、そんな事をただ見ているだけの神など狐川は認めない。
「代価がいるなら私が代わりに払う!!煉獄で身を焼かれ様が覚悟はある!!身を全て天に捧げようが構わない!!だから、救いなさいよ!!善神なんだからそんくらいはしなさいよ!!」
天罰など知った事ではない。
救えるというのならどうなろうが構わない。
その言葉に偽りはない。
許すわけがない。
こんな事を許容する神を許せるわけがない。
業火はまるで巨大な顎の様に二つに分かれて二人を覆う。
全身に炎が奔り、煉獄に呑み込まれかけたその瞬間。
雷鳴と共に天の声を聞いた。
「…………遅いのよ」
願いを聞き届けたかのように、天空に轟く雷鳴。
雷光の中に狐川は神の姿を見る。
雷光の中に佇む神の姿は獣の様でもあり、人の様にも見えた。
その姿に文句でも言うかの様に睨み付ける。
やがて業火は消え、静寂が訪れる。
直後に全身から血が溢れる。
傷が開いたのだろう。
吐血しながら狐川は気を失い、荒野に倒れ伏すのだった。
球磨川さんvsマクスウェルはまだまだ続く!!
相性的に決着はつきにくいです!!
それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。