問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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束の間の休息

樹海での戦いからまだそう時間の経っていない頃、安心院は黒ウサギと狐川を空中城塞まで運ぶと再び姿を消そうとしていた。

しかし、そこで人の気配に気付き振り向く。

 

「十六夜くん、何か用かな?怪我も酷い様だしまだ寝ていた方がいいんじゃないか?」

 

「白々しい事を言ってんな。質問が二つ程ある」

 

「何だい?僕に答えられることなら答えてあげるよ?」

 

微笑みを浮かべながら顔を十六夜に向ける安心院。

十六夜は言葉の意味を正しく理解している。

安心院は「答えられることなら答える」と言っている。

しかし、安心院の力があれば“答えられない”事など無いに等しいだろう。

それは、つまり答える気が無い物には答えないという事である。

溜め息を吐きながらも問う。

 

「まず、球磨川はどうした?次にお前の“目的”はなんだ?」

 

「球磨川君ならまだ戦ってるよ。僕の我が儘に付き合わせる形で、だけどね」

 

誰と、までは言わない。

言っても言わなくても特に意味は無いからだ。

無事ならそれでいい。

 

「それと、“目的”ね。……………強いて言うなら、“盤面”を動かす事かな?」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「さてね?そこは自分で考えてみな」

 

それだけ言うと安心院は霞の様に姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

数時間後。

目覚めた黒ウサギと十六夜は再会していた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある病室。

 

「何で、何で目覚めて最初に見る顔が主様じゃなくてあんたなのよッ!!」

 

「……………黒ウサギちゃんと十六夜の奴でベッド埋まったから、この部屋のベッドに寝かされただけだ」

 

狐川が目覚めるなりに叫び、悟が騒がしいのを迷惑する様に言う。

二人のベッドは向かい合う様な形で設置されていた。

狐川は苛立たしく悟を睨むが、悟はヘラヘラと球磨川とはまた違った笑みを浮かべるだけだった。

とはいえ、悟の隣にいる蛍は不機嫌そうにしているが。

 

「ねぇ、悟。この女は“何”?」

 

「ただの腐れ縁的な知り合いだ。騒がしいが気にすんな」

 

「そうね、そうよね。悟は“私の物”だしね。それに悟だし、女友達くらいいるわね」

 

「友達ですら無いわよ」

 

何かモヤッとした物を感じながらも狐川が突っ込みを入れる。

蛍が抱き付いては来るが悟は特に抵抗はしない。

悟も狐川も骨折れ、傷付いた状態ではあるが、何時もの様に口喧嘩を繰り広げるのだった。

そして、二人のベッドの間にある椅子の上で寝ていた皐が騒がしさに目を覚ます。

 

「騒がしいな、本当に。お前らさ~怪我人なんだからよ、痴話喧嘩も程々にしろよ?」

 

「痴話喧嘩じゃないわよッ!!」

 

「お前は何を言ってんだ、皐」

 

全力で否定する狐川と面倒そうに否定する悟。

蛍がギラリと目を光らせた気がするが、気のせいだろう。

それこそ、錯覚だろう。

皐は眠たそうに欠伸をしながらも首を傾げるのだった。

そこに二人組のナースが入ってくる。

 

「「若~包帯換えに来ましたよ♪」」

 

吹雪と粉雪が声を揃えて言う。

相も変わらず息はピッタリである。

 

「(そもそも手伝いするだけならナース服になる必要無いよな………)」

 

皐は目を細めながら内心呟く。

そこらへんはこの双子雪女の性格もあるのだろう。

更に続く様に女性が入ってくる。

 

「マスター、お粥持って来ましたよ」

 

「何でお粥なのよ!!病人じゃないでしょ!?」

 

「……薬草なども入ってますし、傷の治りも速まりますよ」

 

聡明さと物静かな雰囲気を持つ巨乳で胸元開いた縦縞トップスセーターで亜麻色長髪の女性であった。

会話からしておそらくアルマティアだろう。

患者が増えた故では無いだろうが割りと人数が増えてきたので皐は立ち上がる。

 

「ん?皐、どっか行くのか?」

 

「散歩」

 

寝るにしても騒がし過ぎる。

だから、適当に静かな場所を探して皐は部屋を出るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

また別の病室。

そこでは上半身に包帯巻いた男がベッドに腰をかけ、首を鳴らしていた。

 

「がしゃ、調子はどう?」

 

「河澄か。動くのには支障は無いが、やっぱり違和感はあるな。こりゃ、戦闘に参加するのは無理そうだ」

 

「まぁ……若頭もあの怪我じゃ参加出来そうに無いし、私達は待機組かもね」

 

そこはがしゃの病室であった。

今は河澄が、がしゃの様子を見ている。

夏歩は別の手伝い、鎌音に関しては姿を消した。

鎌音が姿を消す事は珍しくない。

 

「とはいえ、“環境”が整っているのに再生が遅いという事は割りと重傷だったみたいね」

 

「人化してると分かりにくいがな。俺は骨自身……本質は別ではあるが芯に直接ダメージを受けた気分だ」

 

「まっ、その分カルシウム接種すれば回復速まるから治療する方からすれば楽だけどね」

 

「それで補えない部分もあるがな。それは“環境”故にどうにかなってはいるが“声”は増す一方だ」

 

「それは“本質”とは言っても難儀な物よね」

 

「でも、“馴れた”物でもある。“呑まれ”はしないさ」

 

がしゃは握った拳を見詰めながら呟く。

河澄もヤレヤレと言った感じで息を吐く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

会議室。

そこに集められたレティシアや白雪姫を含めた面々に対し、必要な犠牲として選んだ物と告げた。

そして、その上でぬらりひょんが前に出てくるのだった。

 

「彼が今回の作戦の要です」

 

ラプ子がそう告げると一同は驚いた様に声を上げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「僕に出来る事はあるのかな?」

 

宛がわれた部屋で暦は一人呟く。

正確には一人では無いのだが、忍は休んでいるので一人と変わりはない。

 

「十六夜も、球磨川も、黒ウサギも、皆戦っている中で僕は何も出来ずに見ているだけだった………」

 

「そうですよ。それは反省するべき事です」

 

独り言に突っ込みが入った。

入る筈が無いのに入った。

周囲を見ても人などいない。

だが、その声には聞き覚えがあった。

きっと幻聴なのだろう。

だけど、この声は幻聴であって幻聴ではない。

 

「本当に愚かですねぇ………阿良々木先輩はそんな事では戦場ヶ原先輩達に会わす顔が無いんじゃないですか?」

 

「そうかもしれないね」

 

「そうですよ。とはいえ、まだ事件そのものは終わってないんです。今まで出来なかったのならこれからやればいいでしょう」

 

「出来るのかな?」

 

「私は知りませんよ。それは貴方次第ですよ、阿良々木先輩」

 

嘲笑うかの様に聞こえる幻聴。

明らかに“彼女”の声ではあるのだが、それが“彼女”自身なのか、暦自身の自問自答なのかははっきりしない。

だが、どちらもきっと同じだろう。

多少の差異はあって変わりはない。

“彼女”は暦自身なのだから。

 

「全く……こんな“幻聴”を聞くなんて僕とした事が情けないな」

 

本当にそうですよ、とまでは流石に聞こえなかった。

本当に幻聴だったのか、それからは“彼女”の声は聞こえる事は無かったのだった。

とはいえ、“役目”を考えればまた聞こえてきても、“姿を現しても”おかしくはないのだが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム”と“ウロボロス”、そして三頭龍との戦いは、最終局面を迎えようとしていた。

 

 





エピローグでした!!
そして、十巻終了!!
次回からは十一巻!!
決着近しです!!

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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