問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
道化の如し
幻想と呼ばれた男は霞の如く消えた。
アジ=ダカーハがとある女の事を浮かべていた。
そこに無粋な者が現れる。
足音の聞こえる方へと翼を向ける。
グシャリ、と肉が潰れる音と手応えを感じる。
だが、それでは終わらない。
「おいおい、酷いじゃないか。僕は君と話に来たんだぜ?」
[相変わらず白々しい。貴様と話す様な事など何も無い]
何事も無かったかの様に歩いてくる女、安心院なじみを睨み付ける。
安心院は涼しそうに笑うだけだった。
この女の相手をするのは“あの男”以上に面倒なのだ。
[貴様ならばこんな所に来る必要が無いだろう?]
「君相手にそれは失礼だろ?」
[そもそも、貴様が本体かすら分からんがな。無限の可能性を抱える貴様ならそれくらいわけないだろう]
「僕はそんなに大層な存在じゃないよ。それに本体だろうが、分身だろうが、全部平等に等しい」
相も変わらず白々しい。
“一桁ナンバーに属していない一桁ナンバー”、この人外はそういう存在だ。
特定のナンバーを持ちはしない。
だが、明らかに格が違う。
そういう者なのだ。
何時しか箱庭から姿を消したが、どうせ飽きたのだろうと言われていた。
それも数千年も前の話だ。
記録すら消していった故に覚えているのは箱庭でもそういない。
戻って来たとして気付かれる事などない。
[まぁそんな事はどうでもいい。何の用だ?用も無く来るわけも無いだろう?それとも、貴様も“あの男”の様に下らん話でもしに来たか?]
「なんだい、先客がいたんだ。なら、君の最後の戦いになることや同類の事は聞いてるようだね」
[そのくらい貴様なら即座に把握出来る範囲だろう]
「スキルにばっか頼っちゃいけないだろ?」
[何にせよ、用が無いなら去れ。それとも貴様も私と戦うか?]
「まさか、それこそ意味が無い。そうだね………ならば、この話はどうだい?君のある意味で同類、“終末論”同士がぶつかるというのは」
[“終末論”がこの場にいると?]
「そうだよ。まだ目覚めかけだけどね。それでも楽しい戦いを提供してくれると思うよ」
誰にとってとは言わない。
聞くだけ無駄だろう。
この人外はそういう物だ。
あくまでマイペースに安心院は立ち去ろうとする。
アジ=ダカーハも止めはしない。
する意味も、必要も無い。
元より互いに“視点”が違うのだから。
◆◆◆◆◆
作戦会議室。
東の“階層支配者”である“覆海大聖”蛟劉、
南の“階層支配者”であるサラ=ドルトレイク、
北の“階層支配者”であるコマンダーラプ子III、
“混天大聖”鵬魔王、女王騎士フェイスレス、クロア=バロン、そして逆廻十六夜が円卓を囲んでいた。
「なんで………なんで、あの人はこうも堂々とサボれるんですか!!」
今から作戦会議ではあるのだが、メンバーが足りなかった。
この戦いの為に雇った“百鬼夜行”の総大将、ぬらりひょんが現れないのだった。
ラプ子の叫びが会議室に響くが、事情を知らない十六夜以外は仕方ないと言った感じに苦笑いをしている。
「落ち着きたまえ、ラプ子。彼がこうなのは何時もの事だろう」
「それでもですよッ!!何でこうあの人は毎度毎度平気でサボるんですかッ!!雇われてるんだからそこらへんはしっかりしてくださいよッ!!」
何やら色々と苦労されてきたかの様な叫びが響く。
あのラプ子が此処まで叫ぶからには余程の事なのだろう。
十六夜はラプ子を無視して薬湯をすすりながら問う。
「そもそも、そのぬらりひょんってどんな奴なんだ?悟の父親ってくらいしか知らないんだが」
「化け物さ」
「狸爺ね」
「百鬼の主、かな」
「敵には回したくない類いの人物ですね」
「掴み所が無い上に何を考えてるか分からない正にぬらりくらりと言った爺さんやな」
口々に一言ずつ言っていく。
はっきり言って具体的分かる事は無かった。
とはいえ、噂と同じ様な事は分かった。
「実際に見て判断するしかないタイプか」
「まぁそうだな。とはいえ、強いカリスマを持ってる事は確かかな。あの曲者揃いの百鬼を率いれるのは彼しかいないだろう」
それは余程だな、と思っているとラプ子が再び爆発する。
「そもそも、先程も顔見せ程度のつもりだったのにッ!!誰が演説をしろと言ったんですかッ!!」
◇◇◆◇◇◇
集められた者達の前に出たぬらりひょんはただ言った。
「お前ら、誇りだの恨みだの矜持だの色々あるんじゃろうが………今回は儂に全て預けろ」
会場がざわめく。
いきなり言われればそうなるだろう。
ラプ子も止めようとするが口を掴まれて封じられる。
「お前らの全て、儂が背負ってやるッ!!儂に全てを預けて戦えッ!!信用出来ないだの信頼が無いだのどうでもいいッ!!結果は全て儂が出してやるッ!!」
反論しようとする者もいた。
しかし、それらは言う前に気圧される。
一瞬、ほんの一瞬だけぬらりひょんの姿が老人から三十代へと変わった。
その眼光には全てを黙らせるだけの力があった。
◇◇◆◇◇
「おかげで作戦が成立しない可能性まで出てきたじゃないですかッ!!あの人はどうやって彼らから信頼を得るつもりなんですかッ!?」
ハァーハァーと息を荒げるラプ子。
とはいえ、吐き出すだけ吐き出して落ち着いては来たようだ。
一回仕切り直す為にクロアは松葉杖で床を叩く。
「何はともあれ、今いるメンバーで始めるとしよう。全ての破片は揃ったのだ。最終考察を始めよう」
静かにそう告げるのだった。
◆◆◆◆◆
某所。
男と女はそこで向き合っていた。
「ちょっと取引しようか」
「何で俺なんかに接触してくるかね」
「君はこれから“彼ら”の所に行くつもりだろう?“死神”には僕が話を付けておいたから、君もちょっと参加してくれないかな?」
「何に、だ?」
「駒を動かすのに」
女は不敵に笑う。
男も実体を感じさせないながらも笑う。
互いに“ジョーカー”、道化の如く場を引っ掻き回す者だ。
そんな二人が出会えば、起こるのは混乱だけだろう。
だが、互いに“目的”はあるし、“計画”はある。
故に“交渉”。
互いに利を出す為に盤面を転がす。
十一巻開幕でした!!
まだまだ決戦開始前ですが!!
ぬらりひょんは割りと存在は知られてます。
いい意味でも、悪い意味でも。
そして、割りと古参です。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。