問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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休息の終わり

皐は城塞の外周部を歩いていた。

特に何も考えてはいない。

本当に散歩しているだけだった。

 

「……………本当に何してるんだろうな、俺」

 

小さく呟く。

やる事は無い。

それはいい。

むしろ、そうであった方が皐の望む所だろう。

だが、それでも、引っ掛かる物はある。

 

「ん~?おぉ!!皐じゃにゃい!!」

 

「………夏歩か」

 

背後から明るい声が聞こえてくる。

猫叉の夏歩だろう。

猫耳少女は色々と荷物を抱えていた。

おそらくは手伝いで荷物運びでもしていたのだろう。

 

「それで、皐は此処でにゃにをしてたわけかにゃ?」

 

「特に何もだな。それより、お前は何してるんだ?」

 

「あっ!!そうにゃそうにゃ、ゆっくり話してる場合じゃにゃいんだった!!」

 

仕事を思い出したのか、慌て始める。

ここらへんは可愛いらしい。

皐は多少微笑む。

そして、夏歩の横に立つと荷物を持った。

 

「持つよ。どうせ近くだろ?」

 

「助かるにゃ、皐!!」

 

笑顔になり、嬉しそうに尻尾が揺れている。

こういう無意識な部分は普通なら反則級である。

とはいえ、皐は荷物を持ちながら遠くを眺めていた。

 

「…………本当に俺は何をしてるんだろうな」

 

ボソリ、と呟く。

先程暗さが増してるのは気のせいではないだろう。

しかし、小声故に夏歩には聞こえてない。

二人は並んで荷物を運ぶのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

暦はベッドに腰をかけていた。

その膝の上では忍がドーナッツを頬張っている。

 

「お前様も戦場に出る気かの?」

 

「出ないわけにはいかないだろ?僕はほとんど怪我してるわけじゃないんだからさ」

 

「儂に任せればいいと思うんじゃけどな」

 

「それだけじゃ……ダメなんだと思う」

 

何はともあれ出る事は決めている。

それに忍も暦が近くにいた方が力を出しやすいし、血も吸いやすいだろう。

 

「まぁ……儂としてはお前様さえ無事ならばそれでいいんじゃが」

 

「お前は今回の戦いをどう思う?」

 

「分からん。儂は直接見たわけじゃないからの」

 

それもそうだろう。

やった事はほぼ雑魚を蹴散らしたくらいである。

忍の感覚で、ではあるが。

二人が話していると外から騒がしそうな声が聞こえてくる。

忍を肩車しながら病室の扉を開けると、そこには十六夜、クロア、ジャック、リリがいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

個室。

そこで牛鬼、輪入道、土丸がいまだに酒を飲んでいた。

茨はそれを呆れた顔で見ていた。

茨は酒盛りには参加していない。

酒には強いが酔うと面倒なのだ。

 

「そういや、輪入道はともかく割り参謀寄りのオメェさんが来るのは珍しくねぇか?」

 

「総大将が“絶対悪”と戦うというのだ。参加する以外の選択肢はあるまい」

 

答えながら牛鬼は雰囲気を変え、獰猛な笑みを浮かべる。

寡黙で固い参謀的な面が強くはあるが、此方の方が本性には近い。

“百鬼夜行”の初期メンバーは大体そんな感じである。

元々ぬらりひょんが自ら気に入った者達を集めたのが初期の“百鬼夜行”だ。

当然、人の下につくはずもないタイプもいたがそれらは腕っぷしを見せ付けて同士にした物だ。

サトリとぬらりひょんがくっつき大人しくなったと言えど元々血の気が多い集団ではある。

 

「それでこそ牛鬼だ。土蜘蛛、お前の方こそ、若とつるんで腑抜けたんじゃねぇか?」

 

「カハハハハハッ!!まさか、俺の性格は知ってるだろ?」

 

「そうだな、お前は戦う中で燃え上がるタイプだ」

 

輪入道の言葉を、土丸は笑い飛ばし、牛鬼が静かに呟く。

とはいえ、輪入道も本気で言ったわけではない。

半分茶かすつもりで言った様な物だ。

 

「(……酒くせぇな)」

 

茨が心の中で呟く。

仕方なくはある。

それに多少慣れた物ではある。

“百鬼夜行”の幹部は戦前も戦後もこんな感じではある。

しかし、実力は確かである。

茨では到底敵わない。

だが、それは認めている。

故に越えるべき壁なのだ。

 

「そうだ、茨」

 

「……何だ?」

 

「これを持っておけ」

 

そう言われ、刀が投げ渡される。

牛鬼はもしもの為に予備の武装も持ち歩いている。

その内の一つだろう。

鞘から抜いて刃を見る。

そこそこな代物ではあるが、ほぼ普通の刀だ。

 

「何で、これを?」

 

「お前の刀はかなり痛んでいる。それでは“絶対悪”との戦いの中で折れるだろう」

 

「気付いてたのか」

 

「私の目を誤魔化せるとでも思ったか?」

 

牛鬼は武器を見る目は中々ある。

とはいえ、見分けるというより状態の判断に優れる感じではあるが。

そして、牛鬼の言う通り茨の刀はボロボロだった。

連戦故にだろう。

元々刀にそこまで思い入れがあるわけでは無いから変える事に抵抗は無いが見透かされるのは気に入らない。

 

「(………とはいえ、学べる事でもある)」

 

牛鬼は人間態である内は刀をよく使う。

故に見て学べる事はかなりある。

だから、今回の戦いも同行するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞・最上階テラス。

夜明け前の風が吹き抜け、城の上に掲げられた旗印を揺らす。

あと一時間もすれば地平線から太陽が昇り、夜の終わりを告げるだろう。

参戦を表明したコミュニティの旗が掲げられて揺らめいている。

とはいえ、一つ足りないが。

 

「……………」

 

黒ウサギは最上階のテラスに一人佇み、旗印を見上げていた。

柄にもなく少し寂しげな表情を浮かべる彼女は、柄にもなく溜め息を吐いて柵にもたれ掛かっている。

 

「………これから命がけの大決戦だっていうのに、鼓舞出来る旗が無い。締まらない話なのです。皆さんは、本当にそれでよろしいのですか?」

 

黒ウサギは視線をテラスの入り口に向ける。

が、予想外の光景が広がっていた。

 

「主様……いや、十六夜さん!!ようやく会えま…グェ!?何すんのよ、アルマッ!!」

 

「両足骨折している自覚を持ってくださいッ!!それに他の傷も激しく動くと開きますよ!!」

 

「それくらいはいいのよッ!!私と主様の再開を邪魔しないでよ!!」

 

十六夜に飛び付こうとして、アルマに首根っこを掴まれて止められた狐川が文句を言う。

だが、この場合はアルマの方が正しい。

狐川は本来ならまだ安静にしていた方がいいくらいだ。

それを無理言って車椅子をアルマに押させて此処に来たのだから当然と言えば当然である。

その様子に呆れた様に、だが何処か楽しそうに息を吐く十六夜。

 

「ったく、これを見ると何か安心するな」

 

「球磨川が欠けてるのが残念だけどな」

 

「まぁあいつらは仕方ねぇだろ。何か企んではいるようだしな」

 

「敵じゃないだけいいと思うよ、僕は」

 

暦と十六夜が話す中でも狐川とアルマの口論は続いている。

そして、そんな彼らを見て項垂れる黒ウサギ。

出鼻を挫かれた気分なのだろう。

故に閑話休題。

ここから本題である。

 

「俺たちは所詮“名無し”のコミュニティ。大舞台で命を賭けたとしても、後世に名を残す事は難しいだろうな」

 

「……参戦表明出来ないのは口惜しくありますけどね」

 

「僕としては名前を売るとかどうでもいいんだけどね」

 

戦いは名誉の為だけに行われる物ではないという事だ。

為すべきを為し、討つべきを討つために行われる戦いもあるのだ。

とはいえ、“それ”に手を加え狂わせる存在もいるが。

 

「世界の敵…………か。何とも大層な敵だが、まあやることは今までと一緒だろ。魔王を倒す為に旗揚げし直したのが今の“ノーネーム”だ」

 

「僕達も連盟旗さえ作れていれば別だったんだけどな」

 

「それは仕方ない事ではありますしね~。あの魔王様がもう少し遅ければ違っていたでしょうけど」

 

全くだ、と同時に頷く一同。

普段なら黒ウサギが突っ込む所ではあるが、今の黒ウサギは色々と思いふけっていた。

黒ウサギがそんなこんなを思ってる内に暦の手から十六夜の手に猫耳ヘッドホンが渡り、装着されていた。

 

「主様~♪似合ってますよ!!いい!!超いいですよ♪」

 

狐川の息がハァハァ荒げる。

アルマは顔に手を当て、溜め息を吐く。

当然の行動ではある。

 

「怪我人があんまり興奮すんなよ」

 

呆れた様に呟く十六夜。

こんな馬鹿な付き合いを何時までも続けられたらいいと、以前までの自分から考えられない弛んだ思いがあった。

 

願えるのなら…………この戦いの後も、この日々が続けばいいと。





休息は終わり、開戦へと向かっていく。
というわけで次回から開戦です!!

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

オリキャラの説明が必要でしたら言ってください。
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