問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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変態の襲来

ハデスの兜で身を隠しながらぬらりひょん達と三頭龍の戦いを眺めるルイオスが呟く。

 

「…………僕必要か?」

 

「念の為に貴方は待機していてください」

 

「巻き込まれたらどうするんだよ!!」

 

「その時は、その時です。やらないなら恩恵は無しとジャックさんやフェイスレスさんから伝言を伝えられてますが」

 

「だ~もう!!やりゃいいんだろ、やりゃ!!」

 

この仕事の報酬である恩恵をチラつかされて地団駄を踏みながらも渋々仕事を続けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三頭龍とぬらりひょんはまだ向き合ったままだった。

三頭龍はぬらりひょんの“姿”を観察する様に眺めている。

 

「なんじゃ?ワシがそんなに気になるか?」

 

[いや、“納得”しただけだ。貴様が老いていた理由をな]

 

「そりゃ気付くわな。この姿を見せればのぅ~」

 

楽しそうに笑うぬらりひょん。

三十代の姿のぬらりひょんは、まさに遊び人と言った風貌である。

和服で煙管を吹かせながら特に警戒の様子は見せない。

余裕があるわけではない。

それがぬらりひょんの戦闘スタイルだ。

変化は外見だけではないのだ。

故に三頭龍も“納得”した。

 

[その姿になった途端に貴様の霊格が膨れ上がった。今までの姿は何のつもりだ?]

 

「単純な理由じゃよ。元々のワシの肉体は“頑丈”じゃないんじゃよ。だから力を抑える必要があるんじゃよ。まぁあの姿でも“戦い”は充分楽しめるんじゃがな」

 

遠回しの言い回しで周囲の者達は首を傾げる。

だが、三頭龍は納得する。

 

[ならば、ここからが本番という事でよいのだな?]

 

「当然じゃ。ここからがワシの本領発揮じゃ!!」

 

叫びながら刀を構える。

三頭龍も龍影を構える。

互いにタイミングを計る。

下手に動けば敵の優位になる。

周囲もその空気に呑まれる。

 

「そうじゃ。よく見ておけ。ワシから目を離すなよ。ワシはここにいるんじゃからのぅ………」

 

その呟きが切っ掛けだった。

無数の龍影がぬらりひょんに放たれる。

同時にぬらりひょんも動く。

龍影の隙間をすり抜け、直撃コースをそらし、崩れる瓦礫の上を走っていく。

ぬらりひょんと三頭龍は再び衝突する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ったく、親父は相変わらず楽しんでるな」

 

伏目に協力して貰って悟も戦場を眺めていた。

近くには吹雪と粉雪と蛍がいる。

遠くから見れば濃淡があるものの青に包まれている。

 

「にしても、ぬらりひょんの割りには悠長ね。あいつならもう少し積極的に動くかと思ったけど」

 

「相手が相手だし、正規の百鬼を使ってるわけじゃねぇんだ、攻めあぐねる事もあるだろ」

 

「違う。そういう意味じゃない」

 

「“力”の方か?」

 

「そうよ。本来ならもっと段階重ねてるはずなのよ………」

 

「お前、嫌ってる割りには詳しいよな」

 

「何時かやり返す為にも研究はするわよ」

 

蛍は伏目には頼らず自力で見ている。

青行燈なのだ、千里眼くらいは持ち合わせてる。

とはいえ、悟にくっついてるのであまり関係無かったりするのだが。

一応治療も兼ねてたりするが、戦闘特化な上に基本的にそういう物を必要しない為に効果は微々たる物だ。

 

「蛍、お前はそろそろ外周でたいきしていた方がいいと思うぞ?」

 

「何でよ~?悟は私に傍にいて欲しくないの?」

 

「そういう場合じゃないだろ?そろそろ“時期”だ。何か戦況が変わりかねない“何か”が起こると俺の“サトリ”の部分が騒いでいる」

 

「ふーん………まぁいいわ!!悟の頼みでもあるしね♪行ってくるわ!!」

 

そう言うと蛍の姿は霞の様に消え去る。

ここらへん何でもありである。

それを確認すると、今度は雪女二人の方を向く。

 

「で、お前らは何時まで此処にいる気なんだよ?手伝いしてるんじゃなかったのか?」

 

少々体を震わせながら言う。

普段なら気にならないが、怪我してる状況で長時間近くにはいられるとさすがに冷える。

すると、吹雪と粉雪は身を重ねながらぐったりとした様子で言う。

 

「いや~若、これも仕方が無いんですよ」

「私達、さすがにそろそろ限界近いですし、若の近くにはいた方がいいんですよ」

 

「…………厨房言ってこい!!」

 

ようは妖力が不足しているという事である。

二人は雪女故に熱に弱い。

普段は妖力でどうにかしているが、さすがにこの環境で長時間は厳しいようだった。

妖力は休めば回復するが急激な消費分は補い切れない。

なので、特殊な方法に頼るわけになるのだがそれは妖怪によって違う。

蛍の場合は直接喰らうがあれは特例に近かったりする。

普通の妖怪の場合は融通はそう効かない。

簡単な物もあるにはあるが、その場合は補充量が少ないのだ。

雪女にとっての簡単な方法が体を冷やす事である。

 

「いやいや、こんな事態の時にウチらが厨房の氷を独占出来るわけがないでしょう。使った分簡単に補充出来る河澄さんとは違うんですよ」

「それに冷やすだけじゃ足りませんよ」

 

「なら、もうそこらへんの奴らを凍死でもさせてこい」

 

やけくそ気味に言う悟。

雪女の伝承は様々あり、人を凍死させるのもある。

その伝承になぞって人を凍死させれば凍死体からそれなりの量の妖力を補充出来る。

 

「客人扱いのウチらが出来るわけないでしょう」

「というか、それをやったらどれだけ立場悪くなるか分かってるんですか?」

 

「だからって、俺の所に来るなよ………」

 

「いや~まぁ………何と言うか」

「結局これが一番楽ですし」

 

「…………お前らにとっての俺ってなんだよ?」

 

「そりゃ(色んな意味で)大切な若ですよ?」

「聞くまでもないでしょう?」

 

言いながら頬を紅めて近づいてくる二人。

言葉に何か別の意味合いが含んでた気がするが、それに気付く悟ではない。

近付く理由は簡単である。

悟の妖力を分けて貰う為である。

悟は扱い切れない部分もあるが、かなり膨大な量の妖力を内包してたりする。

つまり、妖怪的にスタミナがかなりあるという事だ。

実際は現時点では使い切る前に体力的な限界の方が先に来るので宝の持ち腐れだったりもする。

だが、蛍が近くにいる場合は頻繁に喰われる為に必要だったりする。

とはいえ、有り余ってる分を他の妖怪に分けるくらいは普通に出来るのだ。

本人的には燃料タンクみたいな扱いで微妙な気持ちではあるが。

半分諦め気味ではあるが。

 

「そういや、紅葉の奴は何時まで消えてるつもりだ?」

 

「呼んだ?」

 

その瞬間、伏目を含めてその場の全員が固まる。

悟の背にいきなり紅葉が現れたのだ。

タイミング的に驚くのは仕方ない。

その様子を紅葉はクスクス笑う。

 

「私は少し散歩と食事をしてきただけよ」

 

「………“食事”ってまた趣味悪い“あれ”か?」

 

紅葉の“食事”は二つの意味を持つ。

一つは普通の食事、もう一つは他人の運を喰うのだ。

とはいえ、悟に憑いてる身なので、そう派手に喰えないが。

フラリフラリと歩き回り、他人の溜め息を喰う。

それだけである。

入る妖力は微々たる物だが、補充しておくに越した事は無い。

 

「“死神”としての力も使ったしね」

 

「お前のいない間に不運が襲って来なくてよかったよ」

 

「あら?それは残念」

 

「やっぱりそれも目的だったか」

 

呆れた様な顔をするが、割りと何時もの事である。

座敷童子にしては、性格が悪いのだ。

当の本人はクスクス笑うだけである。

そんなやり取りをしていると、伏目が何かに気付く。

 

「若様、変化がありました」

 

「親父が何かしたか?」

 

「そちらもありますが……違います。この城塞の上の空間に“異常”が起きています」

 

「な!?」

 

予想外の事に声を上げる悟。

城塞が衝撃に揺れるのは直後の事だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「アルマ、何か回復系の術無いの?」

 

「私にそういうのを求めないでください。狐の神通力を修得してないマスターの自業自得です」

 

舌打ちする狐川。

車椅子を押しているアルマに愚痴をもらすが大抵スルーされる。

決戦だというのに力になれないのが、歯痒かった。

 

(神通力を今から修得するのは無理。というか、する気もない)

 

心の中ではっきりと断言してしまう。

内側で“天狐”が悲しそうな吐息を漏らした気がするが今はスルー。

 

(残るは“不知火”の体質か……)

 

これはこれで悩ましい物だ。

それにすぐに調整出来る物でもない。

そんな事を考えていると、城塞が衝撃に揺れた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞・断崖絶壁。

十六夜と話していたクロアだが、異変を感じる。

戦場の、ではない。

 

「…………あの女、話が違うじゃねぇか。木っ端悪魔の足止めくらいちゃんとやれよ」

 

チッ、と舌打ちして影を揺らす。

直後、空中城塞の上空にヒビが入った。

空間に入った亀裂は甲高い音を鳴らして響き渡り、待機していた主力陣の視線を集める。

山高帽を押さえて睨むクロアは、その場にいる主力陣全員に叫んだ。

 

「全員、臨戦態勢を取れ!!奴が___マクスウェルが来るぞ!!」

 

直後に空間が破裂した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

皐と夏歩は手伝いを切り上げて城塞の上層に登っていた。

本来、足場は無いのだが身軽な彼らには関係無い。

 

「やっぱり此処にいたのか。風間、鎌音」

 

「……………」

 

鎌音は無言で頷く。

風間はほぼ無反応だった。

二人とも風の関係する妖怪なので、風を感じやすい所にいるのだった。

皐も人気の無い場所として此処に来たのだったが先客がいた感じだ。

とはいえ、ある程度は予測していたが。

この二人は基本的に無口なのでいてもいなくてもそう変わらない。

夏歩は皐について来た感じだ。

だが、そんな休憩はすぐに終わる。

 

「なんだありゃ?」

 

戦場よりも空を見上げていた為に皐は一早く気が付いた。

上空の空間のヒビに。

そして、気付いた時には既に遅い。

空間が破裂し、粒子が舞い落ちる。

現れる蒼と紅、そして純白の装飾で身を固めた人影。

それが何者であるかは一目瞭然だ。

 

「マクスウェル!?にゃんで此処に!?」

 

「理由に関しては簡単だろ」

 

ウィラが此処にいる。

それだけで理由としては十分だ。

だが、それどころでは無くなる。

マクスウェルは出現と共に弓形に身体を反らし___

 

「____GEEEYAAAAAAAaaaaaaaaa!!」

 

牙を剥き、言語野を失ったかのような奇声を上げ、城塞の中へと落下していく。

問題はそれが皐達の近くだという事だ。

幸い気付かれてはいない。

だから、慌てて落下地点から離れる。

身軽故にその行動は迅速だった。

冷や汗を流しながら落下地点を眺めていると別の物を発見する。

 

「“契約書類”!?ゲームに巻き込まれたかにゃ!?」

 

「いいや、違う。もっと面倒な方だ」

 

見れば分かった。

あの“契約書類”は魔王の物ではない。

刻まれた旗印は“龍角を持つ鷲獅子”。

記された内容は、誰もを戦慄させる物だった。

 

{ギフトゲーム“GREEK MYTHS of GRIFFIN”

 

上記のゲームがクリアされたことをお知らせします。

勝者:アジ=ダカーハ。

達成条件:宝の奪取。

主催者側の責任者・サラ=ドルトレイクは速やかに恩恵の授与に移行してください}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その者は天使の残骸の中に倒れていた。

静かに立ち上がり、城塞の方を見る。

 

『全く、僕を無視するなんて酷いじゃないか』





マクズウェル襲来でした!!
時系列的には各々の視点によって始まりは違いますが終わりは同じ感じです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
誤字は教えてくれたら嬉しいです。
感想待ってます。

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