問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「チッ、何処か別の所に気が向いてると思ったらこういう事か。ナメられた物じゃな」
“契約書類”を放り捨てながら憎々し気に呟く。
これが降ってきた時点で戦闘行動は中断された。
ぬらりひょんは、つまらなさそうに座り込むと煙管を吹かせる。
目の前の三頭龍を睨むが対して気にした様子ではない。
[貴様は後だ。そこで大人しく待っていろ]
それだけ言うと三頭龍は何処かへと飛びたった。
おそらく恩恵を受け取りにいったのだろう。
そのぬらりひょんの背後に四人の男が立つ。
土丸、輪入道、牛鬼、茨だ。
「……………総大将、ここからはどうします?双頭龍狩りを続けますか?」
「いや、待機していろ。“あれ”がただ恩恵を受け取るだけで済ますとは思えんからのぅ」
「御意」
そういうと一同は頭上を見上げるのだった。
◆◆◆◆◆
上空では暦達が冷や汗をかいていた。
目の前には三頭龍がいて、その手には黄金の杖がある。
そして、サラに対し、ゲームの回答を言い切った。
その上で恩恵を受け取る前にジャックに対して解の一つを示すと言った。
三つ首と六つの眼でジャックを見据えた魔王は____
[ジャックよ。貴様は____貴様は、“切り裂きジャック”ではない!!]
____英国が生んだ怪物に対し、その真実を叩き付ける。
ジャックのナイフが砕け、全身の傷から血が溢れる。
不死性が失われ、傷が開いたのだ。
「ジャック!!」
「………ヤホホ。よもや、これほどとは………………!!」
暦の叫びに対して何とか空笑いを浮かべるが、それも限界だ。
ジャックは崩れ落ち、血の海の中で動かなくなった。
まだ息はしている。
だが、時間の問題だろう。
そして、誰も気が付かない。
三頭龍の視線がサラに移った事で気付かない。
ジャックの傍に“蒼い人影”が近付いた事に。
「………血は中々に美味しいし、物語も美味だけど…………さすがにこれを“喰う”のはダメでしょうね。まぁ“本命”も目の前にある事だし、我慢するとしますか」
“蒼い人影”は嗜虐的な笑みを浮かべると姿を消す。
そして、三頭龍は嗜虐の笑みで報酬を要求する。
[火龍の英傑よ。私が望む物は………貴様の霊格の全てを頂こう!!]
途端、サラの龍角が砕けた。
先程の様に繊細な音で砕けたのではない。
夜に響く雷鳴の様に、火山が噴火するように、サラの龍角は根元から折れて消滅し、アジ=ダカーハの手元に現れる。
意識を失い倒れるサラの体は、いつの間にか登って来ていたぬらりひょんが支える。
「全く、こんな嬢ちゃん相手に酷いのぅ」
適当に呟きながらサラを担いで火龍の背を飛び移っていく。
そのまま暦にサラを渡す。
「吸血鬼のガキ、お前は中々やりそうじゃ。この嬢ちゃんを頼むぞ」
「え!?ちょっ、えぇ!?」
言うだけ言って押し付けてぬらりひょんは火龍の背を跳び移って行ってしまう。
サラを支えながら影から覗いてる金髪幼女の方を見る。
「忍」
「分かっておる。儂の出番じゃろ?」
そう言うと、忍は暦の背に登り、首筋に噛み付き、吸血を始める。
その姿はどんどん大きくなっていく。
一方の三頭龍は手元に現れた龍角を握っていた。
霊格を奪っただけで終わるはずがないのだ。
その二本を地上に向かって投げ付ける。
[褒美だ。我が分身よ、龍角を得て力を得るがいい!!]
煉瓦を敷き詰めた石畳が、ドクンと鼓動を打つ。
二本の龍角を得た煉瓦の双頭龍は大嵐の化身となって咆哮を上げる。
だが、ぬらりひょんは対して気にした様子も無く地上に向かって呼び掛ける。
「お前ら!!“それ”を片付けておけ!!ワシはこっちをやるからのぅ!!それと、仮面の嬢ちゃん!!南瓜の奴は任せた!!」
「御意!!」
「フェイスレスです」
牛鬼が即答し、双頭龍の前に立って刀を構える。
フェイスレスは、ジャックを抱えながら距離を取る。
フェイスレスは、“百鬼夜行”の実力は知っている。
何よりあの双頭龍は、フェイスレスとかなり相性が悪かった故に任されて退く。
「茨、参考にするというなら見ているといい。これが妖力を乗せた剣というものだ」
双頭龍は周囲の気圧を操り、プラズマが可視化される程に圧縮された壁を生み出す。
そんな物は関係無く、牛鬼は左手で刀の側面を撫でた上で掲げる。
[GEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaa!!]
「黙れ」
牛鬼が殺気を乗せて一言呟く。
それだけで咆哮が止まり、周囲が静かになる。
殺気に圧された事により、風の壁が一瞬薄まる。
その瞬間を狙い、刀を振り降ろす。
瞬間、大気が斬り裂かれた。
比喩無く本当の意味で斬り裂かれた。
[GEY!?]
「道は作ったぞ」
茨はその光景に呑まれていた。
圧倒的な力を前に動きを止めて観察していた。
妖力の流れ、力の乗せ方、それらを全てを瞬時に纏めていくのだった。
その間に、土丸と輪入道が牛鬼の開いた穴に飛び込む。
[GEEEYAAAAaaaaa!!]
双頭龍もただ見ているだけではない。
圧縮された大気を解放し、二人に攻撃を仕掛ける。
対して輪入道は人化を解く。
巨大な車輪の中心に顔という異形の姿になる。
「ぬぅぅぅぅ!!」
そのまま高速回転し、正面から迎え撃つ。
すると、輪入道が触れた箇所から気圧の壁が引き千切られた様に霧散した。
好きは出来た。
土丸は懐に飛び込んで拳を双頭龍に叩き付ける。
ビキリ、という煉瓦にヒビが入る様な音と共に双頭龍が吹き飛んでいく。
「ん?」
だが、土丸の拳からは血が溢れていた。
おそらく殴った時に砕けたのだろう。
そこは腐っても双頭龍というべきか。
元より神霊級の力を持つ物に神格級の力を加えたのだ。
一筋縄では行かないようだ。
◆◆◆◆◆
一方、ぬらりひょんとアジ=ダカーハは睨み合っていた。
“サラマンドラ”からも、“龍角を持つ鷲獅子”からも先程までの覇気は感じられない。
せっかく発動したギフト“百鬼夜行”も何時解けてもおかしくない状態だ。
だが、それでもぬらりひょんはのらりくらりと三頭龍の前に立つ。
「さて、続きを始めるか」
[その状態で何処まで持つかな?]
「この程度、気にする物でも無かろう」
三頭龍が言うのは先程までの戦いで付いた傷の事ではない。
それはぬらりひょんも理解している。
もっと内面の事なのだ。
笑い飛ばすぬらりひょんの口からは血が垂れている。
内臓辺りが悲鳴を上げているのだろう。
それだけではない。
身体の至る所が悲鳴を上げてもおかしくない状態だ。
三頭龍が何かしたというわけでもない。
これは全てぬらりひょんの“霊格”から来る物だ。
[まぁいい。貴様を潰せば、“希望”は完全に崩れるだろう]
「ワシを倒せる前提かぁ?ナメんじゃねぇよ!!」
互いに睨み合い、戦いが再開されようとした時だ。
それらは突如飛び込んできた。
最初は翼を生やした金髪の吸血鬼だった。
「儂も加わらせて貰おうかの!!」
両手に“心渡”を持ち、深紅の衣を身に纏い、現れる。
三頭龍は割り込んで来た事が気に入らなかったのか、無言で龍影を放つ。
しかし、それらは全て“心渡”に弾かれる。
[割り込んでくるだけはあるようだな]
「私を忘れるんじゃないわよ!!」
叫びと共に蒼い光の球体が飛び込んでくる。
三者の中心で止まり、弾ける。
中からは扇子を構えた蛍が現れる。
「私は語られる者なり、僕は語る者なり、我は騙る者なり!!俺を恐れろ、拙者を怖れろ、此方を畏れろ!!主から授かりし名は青鳴 蛍!!百の物語を語り末に現れし青行燈なり!!見て聞いて記憶に刻みやがれ!!」
「いきなりな上に長いんじゃよ」
唐突な名乗りにぬらりひょんが呟く。
蛍は睨みを利かせる。
「あんたに言われたか無いのよ、爺」
「まずキャラを安定させい」
「無茶言わないでよ。私の性質知ってるんでしょ?」
二人の口論は無視し、三頭龍は龍影を放つ。
とはいえ、油断していたわけではないので避けるなり、弾くなりする。
それで気を取り直して三頭龍と向き合う。
「さて、邪魔は入ったが続きを始めようかのぅ!!」
[やっとか。だが、いいだろう。纏めて相手にしてやろう]
「あんまりナメてるようじゃと、首を斬り落とすぜ?」
飛び掛かる様に三頭龍に向かっていくぬらりひょん。
「悪いが倒させて貰おうかの!!」
「“絶対悪”の三頭龍、貴方は一体どんな味がするのかしら?」
ぬらりひょんに続く様に忍と蛍も飛び掛かる。
百鬼を統べる者、ぬらりひょん
百の物語を内包する者、青行燈
“終末論”の吸血鬼、元キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
“絶対悪”を背負う者、アジ=ダカーハ
規格外たる四者の戦いが始まる。
第二ラウンド開戦でした!!
忍が終末論なのは傾物語の“あれ”の影響です。
それ以外の要素も加わりカオスな霊格にはなっています。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。