問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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規格外の中の例外

 

「流石閣下って所だが………何だ、あいつら?つーか、あの爺が何で出てくるかな。あの爺がいたら“盤面”の調整が面倒になるんだがな」

 

幻想と呼ばれた男は笑いながらも、ぬらりひょん、忍、蛍を見ている。

本来なら三頭龍の所業に笑い転げている所だが、彼らの存在がそうはさせなかった。

彼らがどういう存在か、までは把握してないが有像無像とは違うくらいは分かる。

 

「しかし、最強の魔王である閣下に正面から向かっていくか。これはこれで“盤面”は面白くなりそうだが、俺好みではねぇな。“あの女”の好みには合いそうだが」

 

状況を見定める様にする遊興屋。

その後ろではリンが怪訝な顔をしている。

遊興屋はそれに気付き、振り返らずに言う。

 

「どうした、彩里鈴?何か聞きたそうだな。今なら答えてやらない事も無いぞ?」

 

「………では、幾つか」

 

息を整えながら慎重に答える。

ゲームの事や殿下の事も気になるが、まずは此方だ。

リン達が把握してない事が多すぎる。

 

「先生が言う“盤面”とはどういう意味ですか?それに“あの女”とは誰の事を?」

 

「何だ、そんな事か。簡単な事だろう。“盤面”は、“盤面”。“見たまんま”の事だと思っておけばいい」

 

かなり曖昧な風に答える。

それはある程度分かるが、聞きたい答えではなかった。

“それ”がどの程度の範囲を言っているかを聞きたかったがそこまで都合良くはいかないだろう。

 

「“あの女”に関しちゃ、お前も知ってるはずだ。というか、この会話も聞いてるはずだろ?」

 

後半はリンに対しての言葉ではなかった。

此処にはいない誰かに向けての物だ。

だが、そんな言葉にも答えが返ってきた。

 

「当然だろ?僕は何時でもあらゆる場所にいるんだからさ」

 

何の前触れも無く、その女は、安心院なじみは現れた。

空間跳躍でも、気配操作でも、高速移動でもない。

まるで、元々そこにいたかの様に自然に現れた。

その姿にリンは顔をひきつらせる。

彼女はマクスウェルの“代わり”だ。

つまり、マクスウェルが持っていた権限をリン達に向ける事も出来るのだ。

だが、そんなリンを無視して安心院は遊興屋の方を見る。

 

「やっぱりいやがったか。まぁそこはいいんだがよ。理性吹っ飛んでるとはいえ、マクスウェルを乱入させるとか話が違うぞ?」

 

「それは仕方ないよ。球磨川君にも出来る範囲というのがあるしね。僕も万能じゃないんだ。止められない物は止められないよ」

 

「よく言うぜ。“盤面”が傾いても構わないってか?」

 

「君は僕が派手に動けない理由を知ってるだろ?それにこの状態で傾くような“盤面”でもないしね」

 

「いざとなればお前の事だし、強引に手を加えるだろうからな。あのマクスウェルにも何か仕込んでるだろ?」

 

「人聞きが悪いな。それだとまるで僕が彼の復活に手を加えたみたいじゃないか」

 

「“違う”のか?あまり詮索する気は無いがな」

 

「“違う”よ。互いに詮索しない方が身の為だろ?僕達の“目的”は別だけど、動くには都合が良くしといた方がいいんじゃないかい?」

 

互いに白々しく、肝心な所を掴ませない様に話していく。

それを聞いているリンは内容を分析しながらも居心地悪そうにしていた。

この二人は基本的に規格外というより枠外の存在だ。

枠の外から干渉してくる。

故に対処が難しい。

 

「ところで、君はどちらが勝つと思う?」

 

「お前が“それ”を聞くか?」

 

「別にいいだろ?減るものじゃあるまいし」

 

「減りはするな。まぁあえて言うなら閣下だな。あいつらがどんな存在だろうが、閣下が幾ら身体能力を劣化させていてもな」

 

「まぁ普通はそう考えるよね。彼の“疑似創星図”からしてね。敵対者の宇宙観の反面を模倣して己に取り込み、限定的に行使する。確かに恐ろしいよね。でも、それはまともな状態だったらだ」

 

「奴らはとても例外の一種には見えないが?」

 

例外の一種とは人類の事だ。

年代記をアジ=ダカーハ本体と共有しあう人類だけは“アヴェスター”の影響を掻い潜れる。

殿下の素体が人類基盤なのもそういう事だ。

だが、忍もぬらりひょんも青行燈も人類基盤には見えない。

 

「まぁ見てれば分かるよ。忍ちゃん達がどういう立場なのかはね」

 

それだけ言うと安心院は立ち去ろうとする。

しかし、リンは一旦引き留めた。

 

「何か用かな、リンちゃん?」

 

「一つ聞きたい事があります。貴女の“目的”とは何ですか?どうやら“ウロボロス”の目的とは違うようですが」

 

「簡単な事さ。“引っ掻き回す”それ自体が“目的”さ」

 

答えになってるのかなってないのか判別が難しい答えを返す。

安心院は笑いながらも、それを最後に姿を消すのだった。

その後、遊興屋はジンとぺストに対して勧誘を仕掛けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

[“アヴェスター”起動。相剋して廻れ、“疑似創星図”……………!!]

 

開幕早々にアジ=ダカーハは、“疑似創星図”を発動させた。

だが、それ故に違和感を覚える。

そう、明らかに上乗せされる霊格が少なかった。

 

[どういうことだ?]

 

ぬらりひょんの分はしっかり上乗せされているはずだ。

それでも今の目の前のぬらりひょんの霊格よりは小さく見える。

何よりも三頭龍からしては微々たる物だが、火龍達の霊格が上乗せされていない。

 

「簡単じゃよ。こいつらはワシに背負われている。霊格としては一つに纏められた様な物じゃな。そうして纏められた内で“それ”の対象とされるのはワシだけになる。加えて“百鬼夜行”で重ねられた分は換算されぬ様じゃなッ!!」

 

あっさりと種明かししてくる。

した所でどうにも出来ないと分かっているのだ。

だが、怪訝な所はそれだけではない。

青行燈の分として上乗せされる霊格もかなり小さかった。

まるで一つの物語しか認識してない様に。

これは本人すら自覚してない故に誰も説明出来る者はいない。

百物語全ての霊格を取り込んでいる青行燈。

しかし、物語として活発化するのは使用されてる間だけだ。

他の物語は仮死状態みたいな物だ。

故に対象にはならない。

だから、青行燈個人としての分しか上乗せされていない。

そして、忍に関しては上乗せすらされていない。

これもまた本人すら自覚してない故に誰も分からない。

とある世界で世界を滅ぼしかけ、それを喰らった忍。

“終末論”と“それを討ち倒す者”、両方の性質を意図せず合わせ持つ故に霊格は神霊に近い物となりかけ、かなり肥大化している。

だが、体自体は不完全故にその全ての力を使えるわけではない。

そして、それこそが“アヴェスター”の対象にならない鍵だ。

元人間な上に今は人間もどきの吸血鬼という立場。

吸血鬼性を上げてるとはいえ、人間要素が大きいのだ。

そういう偶然が重なり、霊格が肥大しながらも人類基盤の物とされ例外の範囲にいるのだ。

 

[まぁこれくらいはいい。纏めて叩き潰せば良いだけだ]

 

「やれる物ならやって見るんじゃなッ!!」

 

忍が高速飛行しながら突進する。

放たれる龍影は“心渡”で弾く。

火球は指輪の力で弾かれる。

だが、そんなくらいで攻略出来る三頭龍ではない。

突進をヒラリと避ける尾を叩き付ける。

 

[潰れろ]

 

骨が砕け、肉が抉れ、潰れる音が響き、鮮血が舞う。

だが、傷は即座に再生される。

そちらの方もかなりの強化を受けているのだった。

 

 

規格外の化け物達の戦いは、死んだくらいでは終わらない。

骨折れ、肉散り、血が舞おうと戦いは激しくなっていく。





道化二人の会話とvs三頭龍を少しでした!!
安心院さんと遊興屋は別に協力関係というわけでもないです。
互いに利用し合ってるに近いです。

規格外三人はアヴェスターを気にすることなく戦いを続行です。
裏技に近い抜け道を無自覚に持ってる故に規格外だったりします。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

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