問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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“影”

 

目の前で十六夜とマクスウェルの戦いが始まる。

だが、ボロボロの悟の目には入っていなかった。

同じくアルマに運ばれようとしている狐川の目にも。

彼らの前には彼らしか認識出来ない“影”が現れていた。

“影”は人のシルエットの様な姿になり、口と思える所が彼らを嘲笑うかの様に開かれている。

そして、彼らだけが聞いていた。

“影”の声を。

 

[情けないよね、そんな姿。結局役に立てなかったね、“私”。所詮はそれが限界なのよ、影武者のね]

 

「うるさいわね…………そんな立場は捨てたし、実力も理解してるのよ」

 

『マスター?』

 

“影”の声が聞こえないアルマには狐川がうめいてる様にしか見えず、首を傾げる。

だが、そんな事は気にせず狐川は話し続ける。

 

[なら、どうする?今はこれが限界。諦める?無茶して足掻く?どの道、“私”じゃ役に立てないかもよ?]

 

「それがどうしたって話よ。無ければ強引にだって引き出してやるわよ」

 

[たとえ何になっても?]

 

「えぇそうよ。不知火の力を使うのは受け入れた。なら、それを利用するだけよ!!」

 

[何が貴女にそこまで力を求めさせるのかしら?その場の勢い?仲間の為?恩返し?]

 

そこで少し言葉を止める狐川。

よく見ると“影”の形が変わってるが気にはしない。

それが何だろうと、ただ答えを返すだけだ。

 

「そんな物は決まってるじゃないッ!!仲間の為はもちろん、主様……十六夜さんの役に立つ為なら………………それに、あの馬鹿に助けられっ放しなのが気に入らないのよ!!」

 

[“げっげっげっ!!”]

 

“影“は笑いながらも続きを待つ。

結論を待つ。

その姿は巨体に鬼の様な強さを生やした様になっていた。

 

「その為なら何だってなってやるわよッ!!たとえ………たとえ“英雄”の力だって利用してやるわよッ!!だからお前の、“私の影”たるあんたの力を寄越しないさいよッ!!」

 

[“げっげっげっ!!新しいッ!!”儂を飲み込むつもりか!!新しいッ!!いいだろうならば試して見るがいいッ!!儂に飲まれず利用出来るかをなッ!!]

 

「主様以下の残りカスが何を言ってんだか」

 

言いながら“影”へと手を伸ばし、その核たる心臓を掴んで握り潰す。

ガラスが砕ける様な音と共に“影”は消える。

“影”の正体は把握している。

これは狐川の“影”だ。

かつて、十六夜によって殺された“英雄”の残りカスが狐川の“影”として現れただけだ。

どうやって表に出たかは知らない。

そんな物は関係無い。

重要なのは覚悟を決める事だけだ。

感覚は残っている。

だからこそ、“再現”出来る。

“それ”さえ出来ればいいのだ。

アルマの上で静かに息を整えながらかつての“感覚”を思い出していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

悟は目の前に現れた“影”を躊躇なく斬っていた。

条件反射だった。

だが、真っ二つになった“影”はすぐに接合した。

 

「何なんだ、これ?」

 

[問題はそこじゃないだろ?その無様な姿、それで百鬼の主が務まると思ってるのか?父親との力の差なんて理解してるんだろ?追い抜けると思ってんのか?あれはまだ進化し続けるぞ?それに混血が純血に勝てると思ってんのか?無駄なんだよ、全てがな。無駄で無駄で仕方ねぇ。向いてねぇんだよ、お前は]

 

「なるほどな、そういう事か」

 

勝手に納得する悟。

“影”の言葉なんて気にしてもいないかの様に苦笑する。

“影”は“影”で悟関係無しに話を進める。

 

[目を反らさずに現実を見ろよ。お前じゃ、幹部にすら勝てないだろ?名を継がせるには力不足もいいところだろ。諦めたらどうだ?他の道なんて幾らでもあるだろ?お前なら別の道も進めるだろ?必死になって名を継ぐ必要がドゴバァ!?]

 

“影”の言葉が途切れる。

悟が面倒になって”影”の口を斬り落としたのだ。

すぐに再生するだろうが少しは静かになる。

 

「ったく、うるさいんだよ。それくらい分かってるんだよ。その程度の自問自答くらいは何時もしてるんだよ。これなら紅葉の毒舌の方がまだいい」

 

「へぇ?じゃあ、もっと私に罵倒されたいの?確かにあの程度じゃどうでもいい範囲でしょうけど」

 

「お前…………認識出来てんのかよ?」

 

「そりゃそうよ。私は悟に憑いてるんだから」

 

「そういう物か?」

 

紅葉の謎理論に首を傾げながら“影”の方へと視線を戻す。

正体は分かっている。

これは自分自身だ。

 

「自覚はしてんだよ。実力は足りねぇ。純血には埋められねぇ差がある。なら、追い付くまで強くなり続ければいいし、埋められねぇなら他の部分で上回ればいい。俺は幾らだって必死になるし、絶対に諦めねぇ。だから、消えてろ」

 

その言葉だけで“影”にヒビが入る。

元より受け入れているのだから脆い物なのだ。

そして、目を向ける場所は他にある。

 

「現実から目を反らすな、それだけは参考にさせてもらうけどな」

 

「クスクス、現実逃避なんて何時もの事じゃない」

 

「いや、無意識に目を背けてる場所が一つある。扱い切れてねぇ、膨大な妖力だ。自分の力を扱い切れて無い奴が“百鬼の器”として完全に機能出来るわけがねぇ。まぁ今までは問題無かったけどな」

 

普段はそんなに気にしない物である。

蛍に食わせてるし、必要とあれば他の妖怪にも分けている。

犬神を使う時にも食わせてはいる。

だからこそ、気にして無かった。

使い道があるという言い訳で目を背けてきた。

だからこそ、目を向けるのだ。

 

「この有り余ってる妖力さえ利用出来ればいい。何か方法はねぇのか」

 

サトリとしての力で周囲の力の流れを読み取りながら思考を進める。

辺り一体の温度が急激に下がっているがそれは関係無い。

知識を漁る、感覚を漁る。

そして、利用出来る物に思い当たる。

 

「あぁそうだ。“裏”だ。他の妖怪の妖力を纏うが如く俺自身の力を使えばいいんだ」

 

が、それは簡単ではない。

自分と他人では感覚が違う。

だが、それを強引に繋げる。

ぶっつけ本番。

失敗すれば妖力を暴走させかねない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

城塞の中は冷え込んでいた。

マクスウェルが周囲の熱を奪い、体内に溜め込み始めたのだ。

自爆を狙っているのだ。

その上で残像が残るレベルで転移を繰り返す。

十六夜が賭けに出ようとした時、二つの影が飛び出て来た。

 

「“妖力解放……憑型”」

 

有り余ってる体内の妖力に感覚を集中させる。

“裏・百鬼夜行”で他の妖怪の力を借り受ける要領で奥に眠る物まで表に出す。

表に出た物は犬神の様に纏う形に整える。

一点に集中させずに広げて循環させ、安定させる。

羽織に薄紫に光る紋様が浮かび上がる。

まるで妖力の塊の様に見えていた。

安定はしていた。

しかし、バランスが崩れれば爆発を起こし兼ねない程度には揺らいでいた。

 

「(成功か。とはいえ、体力の方がヤバイな。一撃で仕留めねぇとマズイ)」

 

無計画に飛び出して来たわけではない。

妖力の解放と平行してサトリの力を全開にしていた。

サトリは慣れてるので何とか強引ではあるが、平行して作業出来た。

暴走しているマクスウェルの思考を何とか感知し、力の流れも読み取る。

膨大な情報量で脳が焼き切れる様な錯覚を覚えるが抑え込む。

今はただ、目の前に刀を振り降ろす。

紋様が刀へと伸びていく。

当たる瞬間だけに妖力を集中させるのだ。

 

「“性質変換・英雄”」

 

狐川がボソリと呟くとその体に変化が起きる。

足の骨が動ける程度に接合される。

右目が黒く染まり、紅い光を放ったと思うと、額右側から黒い角が生えてくる。

そして、右手が黒く染まって鋭く尖る。

それで変化は終わった。

そこが限界だった。

幾らかつて体が“英雄”になっていて、その感覚が残っていようと今はこの段階が限界。

これ以上は体が耐え切れない。

精神が持ち堪えれない。

それほどまでに“あれ”は強大だ。

あんな“不完全”な、戻る余地が残ってる程度の再現度で無ければ逆廻十六夜を更に追い詰めていた程度には。

だが、今はこれで充分。

放てるのは一撃が限界だろう。

マクスウェルはどれだけ転移を繰り返そうと、“英雄”の感覚の前では無駄だ。

そのまま目の前へと右手を、英雄の手刀を振り降ろす。

 

 

「とりあえず色々やってくれた分返させて貰うぜッ!!」

「とりあえず色々やってくれた分返させて貰うわよッ!!」

 

 

振り下ろされると同時にマクスウェルの体が現れる。

あとは下まで振り抜くだけだった。

悟の膨大な妖力が乗せられた刀はマクスウェルの右肩から左腰まで斬り裂いた所で妖力に耐えれず砕けた。

狐川の手刀はまるで刃物様に容易く、豆腐を潰す様に容易く、マクスウェルの左肩から右腰まで斬り裂いた。

 

「Ga…………GAAaaaaaaaaa!?」

 

Xを描くかの様に四等分されたマクスウェルが奇声を上げる。

血が溢れる。

だが、再生はしない。

かろうじて再現出来ていた“英雄”の“破壊”が邪魔をしているのだ。

それでも、マクスウェルが転移しようとした時に天井の穴から何かが降ってきた。

 

 

『やぁ、やっと追い付いたよ』

 

 

ドスリと大きな音が響く。

降ってきた男は球磨川禊。

降ってきたまま“却本作り”をマクスウェルの首から突き刺し、磔にしたのだ。

マクスウェルから力が抜けていく。

 

『今だよ、十六夜くん』

 

「あぁよくやってくれた、お前ら!!そして……消し飛べ、“マクスウェルの魔王”____!!」

 

磔にされたマクスウェルに極光の柱が放たれる。

輝く極光が周囲を満たし、マクスウェルは____マクスウェルの思念と霊格を宿した人形は溶ける様に光の柱の中へと姿を消した。

それが“人外”の思惑とは気付かずに。

 

「それで今回は勝ちなのか?」

 

『嫌だなぁ。聞かないでくれよ。本来なら僕が足止めしないといけないのが、こんな所まで逃がしちゃったんだ。これはどう見ても………僕の負けだよ』

 

十六夜の言葉に困った様な笑みを浮かべながら球磨川は答えるのだった。





マクスウェル(もどき)死亡でした!!
あの人的には誰かが消してくれたら都合がいい程度でした。

前半部分は自問自答に近い物がありました。
向き合ってどうするか、と言う感じです。
この二人に影が来たのは心残りという名の影が暦の知り合いの中では大きかったからです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
アンケートに答えてくれると嬉しいです。
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