問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
五票集まった物から短編やります
突如、コッペリアは謎の頭痛に襲われて頭を押さえた。
「___っ!?」
「コッペリアちゃん!!流れ弾が!!」
コッペリアが顔を上げた時にはもう遅かった。
鎌鼬の様な風によって彼女の乗っていた火龍の首が斬り落とされた。
刃物同士がぶつかる音が響いている蛍と三頭龍が刃を、爪を、龍影を激しくぶつけ合わせているのだ。
その余波でさえ、斬撃波として周囲に撒き散らされている。
「いいわァ!!やっぱりこの血の騒ぐ感覚はァ!!戦いってのはこうでなくっちゃ!!」
蛍の笑う様な声が戦場に響いている。
顔を返り血に濡らしながら、その血を舐めとり笑いをあげる。
だが、コッペリアにそれを気にする余裕は無い。
頭を押さえながら火龍の死骸と共に落下していく。
(今………誰かの意思が、誰かの歪んだ思惑が、私の中に入ってきたような………?)
凄まじい量の情報と、己ではない誰かの記憶がコッペリアの魂に介入してくる。
突然の事に動揺した彼女は火龍の手綱を握ったまま戦列を離れていく。
「此処はあいつらに任せておけばいいからコッペリアちゃんはそのまま離脱してくれ!!」
「………了解、しました」
頭痛を堪えながら声を絞り出すのだった。
◆◆◆◆◆
一方、城塞内。
十六夜と球磨川は各々やることを果たす為に既に姿を消していた。
残るは狐川と悟達だけだった。
狐川は頭を押さえて悶え苦しんでいた。
「あ……がァ!?」
「どうなってんだ、こりゃ?」
狐川の様子が把握出来ない悟は困惑した様子で見ているしか無かった。
その背中でクスクス笑う紅葉は何かに気付いてはいるがあえて言わなかった。
狐川は息を乱しながら何とか声を絞り出す。
「不完全とはいえ、ガ……ぶっつけ本番で化け物の力を、ゴブッ……ハァ、“再現”した代償よ。……ハァ“これ”の意思が私を乗っ取る為に暴れてるわけよ。ハァ、ガグ………今は押さえてるけどその内暴走するかもね」
「なんだ………そんな事か」
事情を半分程度把握した悟は解決法を即座に思い付く。
今はサトリの方が濃い。
だからこそ、出来る方法を。
というのも先程有り余った力を引き出すついでに感覚を掴んだ力ではあるが。
悟は狐川に近付き、しゃがむと額と額をくっつける。
「ヒャア!?」
「こんくらいで騒ぐなよ。お前らしくない」
頬を紅く染めて悲鳴をあげた狐川に悟が適当な事を言う。
精神状態が不安定な為に普段は出ない反応が出たのだ。
そんな事に気付かずに悟はサトリの力を高める。
「“精神同調”」
呟いた直後に悟の髪が白く光る。
ついでに適当に結んでた紐が切れる。
サトリの読心を極限まで高め、自らの精神を相手の精神に潜り込ませているのだ。
◆◆◆◆◆
悟が目を覚ますと、そこは城塞内では暗闇の中であった。
「一応……成功か?」
成功したのならば悟がいる場所は狐川の精神世界のはずだ。
だが、周囲を見回しても真っ暗闇であり、何も見当たらない。
「参ったな。初めてだから感覚掴めて無いんだろうが………姿が見えねぇ事には対処が出来ねぇぞ」
[ならば、儂が案内しよう]
背後から老人の声が聞こえて振り向く。
そこいたのは白髪で初老の印象を与えてくる狐面の老人だった。
「何者だ?」
[儂か?狐じゃよ]
「あぁ、憑いてる奴か」
その一言で納得する。
憑いてる狐ならば狐川の精神世界にいてもおかしくない。
「案内頼めるか?」
[元よりそう声をかけたじゃろ?“あれ”は儂にはどうにも出来んからの。憑き物がどうにか出来る範囲じゃないんじゃよ]
狐面の老人は周囲に狐火を浮かばせながらついてくる様に促すのだった。
◆◆◆◆◆
狐川の意識を精神世界の奥へと移っていた。
その目の前には影の様に黒々しい物が立ち塞がっていた。
「げっげっげっげっ!!儂から解放されたというのに儂をまた呼び覚ますとは物好きな。儂に体を預ける気になったか?」
「なわけがないでしょう。速く消えてくれないかしら?」
「そうはいかんのう。こんなチャンスを儂が逃すわけがないだろう?」
そう言うと黒い霧の様な物を放ってくる。
黒い霧は狐川を包み込む様に向かってくる。
「ちょ、何よこれ!?は!?いや、ちょヤメッ!?」
振り払おうとした右手が黒い霧に飲まれる。
そのまま内部まで侵食され、作り変えられ、染められていく。
右手だけに止まらず、右足にまで伸びて、右半身を包み、顔の右半分まで侵食を進めようとしている。
「げっげっげっげっ!!」
「ったく、急いで来てみたら………何をしてんだ、この野郎がッ!!」
背後から影が半分に斬り裂かれる。
そのまま飛び越え、振り向き様に横一閃浴びせる。
「………………っ!?」
声にならない悲鳴を上げて霧散したと思われた。
が、そう簡単には行かなかった。
粒子化してなおも狐川に向かっていったのだ。
「狐さん、出番だぞ」
[あいよ]
狐火を全身に纏った流星の様な物が現れたと思うと狐川の周囲の粒子を完全に祓った。
そのまま狐川へと向かっていき、胸から内側へと入り、同化する。
それによって狐川を包み込んでいた闇が剥がれ落ちて消えた。
同時に狐川の瞳が狐目になり、狐耳と尻尾も生える。
そのまま狐火の火の粉が巫女服となって狐川に纏われる。
「どうやら天狐に助けられた様ね」
「おい、俺は無視か」
「というか、何で同化する必要あるの?」
[しょうがないじゃろ。嬢ちゃん自体に侵食してたのを振り払うにはこうするしか無かったんじゃから]
「そもそもあんたがさっさと来てれば侵食される事も無かったんじゃない?」
[無理じゃよ。儂はあくまで憑き物じゃからな。嬢ちゃんの精神世界じゃ粒子を振り払うので精一杯じゃよ。大元をどうにか出来たのはそこの少年のおかげじゃよ]
「ふん」
「というか、そろそろ俺に触れてくれねぇ!?存在を無視されると意外と傷付くんだけど!?」
耐え切れずに叫ぶ悟。
幾ら紅葉に言葉責めされていようと、こういう所は弱いままなのだった。
「まぁいいけど。これで解決したのか?」
「チッ……してないわよ。欠片を黙らせただけど大元は奥で眠って復活を待ってるわよ」
「舌打ちが聞こえたのは置いといて…………そりゃ面倒な。一々こうするのも手間掛かるしな………」
「そこまで面倒見て貰う気は無いわよ。それと………」
「それと?」
「…………ッ!!一応、礼は言っておくわ。ありがと、助かったわ」
顔を反らし、滅茶苦茶嫌そうな顔でお礼を言われた。
とはいえ、頬がうっすら紅くなってはいるのだが、気付く悟ではない。
「こういうのは主様のがいいんだけどね」
「おい、本音が漏れてるぞ」
「それが?」
何かおかしい?とばかりに首を傾げてくる。
悟はガックリしながらこれはこれでこいつらしいか、としておく。
余計な一言があったとはいえ、珍しく礼を言ってきたので気分はそう悪くは無い。
そんな事を考えてる内に一つ思い付く。
「そうだ。珍しく礼を言ってきた事だし、一つサービスだ」
「?」
疑わし気な目で見てくる狐川を無視して悟は指の先を噛み切る。
そして、何かを呟きながら指を狐川へと伸ばし、狐川の唇に塗り付けた。
直後、頬が殴り飛ばされる音が響いた。
「何すんだよ!?」
「そそそそそそ、それは此方の台詞よ!!女の唇にいきなり血を塗り付けるとか何考えてるわけ!?」
「保険だ、保険。また暴走しかけた時用のな。妖術はそこまで得意じゃねぇが成功はしたから気にすんな」
「気にするわよ!?わざわざこういう方法でやらないでくれ……あれ?」
唇に付いた血を拭おうとして違和感に気付く。
普通はまだ残ってるはずの血が既に蒸発していたのだ。
怪訝に思いつつも妖術とやらで片付ける。
そんな時だった。
「「っ!?」」
何かが脈打つ感覚を二人同時に感じた。
双方驚いた様な顔をして互いを見る。
「これもあんた?」
「違う」
「じゃあ、何なのよ」
「俺に聞くな」
釈然としないが原因も正体も分からないのでは仕方がない。
やる事は終えたのだ。
「じゃ、精神同調は解除するからな」
その一言と共に世界は崩れた。
◆◆◆◆◆
二人が精神世界にいた時間は体感的には十数分だった。
しかし、実際は十数秒程であり、ほとんど額を付けた直後に戻ってきた様な物であった。
悟が瞳を開けると、目の前の狐川の姿は何時も通りの物に戻っていた。
「一応“精神同調”も使い道はあるか」
呟きながら額を離す。
その時、額と額の間に光の線の様な物が出ていたのだが気付いたのは紅葉だけだった。
その線はすぐに消え、紅葉もクスクス笑うだけで言う気が無いので二人は気付かない。
「痛ッ!?」
狐川も意識を取り戻すが直後に顔を歪めて倒れる。
さりげなく頭を床にぶつけない様にする悟だが、狐川はそれ所では無かった。
「無茶した代償ね。体がボロボロ過ぎて動かせやしない」
「自覚あるなら無茶は控えろよ」
「クスクス。悟が言えた事じゃ無いでしょ?」
「うるせぇ」
茶々を入れる紅葉に文句を言う。
そこでアルマが近付いてくる。
「マスター。此処はまだ危険です」
「分かってるわよ。でも、体が動かない事には仕方ないでしょ」
「ったく、しょうがねぇな」
「ちょ、どこ触ってんのよ!?」
文句を言うが抵抗出来ない事をいい事に悟は狐川を担ぎ上げ、アルマの背に乗せる。
アルマは微調整をする様に動いてから悟に頭を下げる。
「今度こそ任せたぞ」
「えぇ、分かっています」
言うとアルマは狐川を乗せて駆けて行った。
とはいえ、城塞から出る事は無いだろうが。
姿を消すのを見ると悟は座り込んで、凍結させて無理矢理骨を接合させた手足を見る。
明らかにその周辺が変色し、痛みを放っていた。
「こりゃさっさと対処しないと不味いな」
「クスクス。でも、手元に火が無いわよ?」
「あら?困ってる、悟?」
聞き覚えの無い女の声に悟は慌て警戒をしながら振り向く。
そこに立っていたのは外見的には十代後半の少女だった。
問題はその服装だ。
「陰陽師が何で此処にいやがる」
少女は陰陽師の式服の下を白いミニスカにして黒タイツを履いていた。
肩まで伸びる綺麗な黒髪を揺らし、笑顔を浮かべている。
その笑顔が不気味ではあった。
精神世界でした!!
不用意に英雄の力に手を出した代償って感じでした。
それでは、質問等があれば聞いてください。
感想待ってます。
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