問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
五票集まった番号から短編やります
アジ=ダカーハの所有するもう一つの切り札、“覇者の光輪”。
終末論の引き金を引く力を召喚し、炎熱として扱う恩恵である。
ぬらりひょんにそれを止めるだけの火力は無い。
終末論としての性質を得た忍も火力は足りない上に別の問題が発生している。
十六夜は此処で動くわけにはいかない。
安心院も、球磨川もこの場にいない。
三頭龍の切り札に対して彼らの選べる選択肢は少ない。
ならばどうするか?
それを判断するのは彼らであった。
◆◆◆◆◆
「何だよ、あれ!?」
火龍の上で暦が声を上げる。
肩の上でラプ子が説明すると顔が青くなる。
「どうするんだよ!?あんなのが放たれたら…………」
「城塞は落ちるじゃろうな」
「忍!!」
忍は息を吐きながら火龍の上に降り立った。
直後にその姿は幼女へと変わる。
「どうやら力を使い過ぎた様じゃな。お前様とのリンクは切れてないが再びあの力を引き出すには休息が必要じゃ」
そう言うと、忍は暦の影の中に消えてった。
それは対抗出来そうな戦力が減った事を示す。
「忍がこの状態だと……」
「不味いですよねぇ。でも、安心していいと思いますよ?」
「何でだい?」
もはや、扇の出現に疑問を持たずに聞き返す。
扇はクスクス笑いながら答える。
「あれは“彼女”が相手するようですし、たぶん大丈夫でしょう。それでも不安な阿良々木先輩の為に城塞周囲に結界を張っておきましたし。あれに耐えれるレベルでは無いですが」
サラリと答え、霞の様に消えるのだった。
正直不安ではあるが、今は信じるしか無かった。
◆◆◆◆◆
「ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」
蛍は叫びを上げながら空中城塞と三頭龍の間に割り込む。
その目は血走っていた。
その心中には単純な怒りが渦巻いていた。
「空中城塞を落とす!?させるわけがないでしょぉぉぉぉがァ!!そんな事をされたら悟が死ぬでしょうがァ!!」
単純明快。
その怒りは空中城塞が落とされる事によって悟が死ぬかもしれないという事だけが原因だった。
他の物など元より眼中に無い。
だが、悟が死ぬのだけは許容出来ない。
叫びながら懐から黒い巻物を取り出す。
これは取り込んでいない物だ。
[ならば、貴様が受けて見るがいいッ!!我が必殺の“覇者の光輪”をッ!!]
天を穿つように吐き出される終末の気焔。
それに対して蛍は黒い巻物を投げ付けるだけだった。
そして、呟く。
「開け、そして崩壊しろ。あんたは餌だ。全てを呑み込む物を呼び出す為のね。その為の“破綻した物語”だ」
黒い巻物が開かれる。
そこに書かれた文字が巻物から離れて塊となって形を作っていく。
巻物にされてた魂が元の姿になろうとしているのだ。
そこでビキリと言うヒビの入る様な音が響いた。
“物語”からではない。
“世界”からだ。
“世界”が拒絶したのだ。
“破綻した物語”を。
蛍は物語を書き変える事が出来る。
だが、それにも限界はある。
当然だ。
しかし、もしもその限界を越えて書き換えを行ったらどうなるか。
答えは単純だ。
物語は矛盾し、破綻する。
その状態ではもはや物語として意味をなさない。
そんな物を解放すれば、ただでは済まない。
けれども、蛍はそれすらも利用する。
“破綻した物語”が解放された時に現れる物がある。
“物”称してもいいかも分からない存在が。
間違った物を正す存在。
存在しないもの、非存在。
理不尽で不条理。
“世界”のルール。
あえて呼ぶのならば、【くらやみ】。
[何ッ!?貴様!!“それ”を利用するだとッ!?非常識にも程があるぞッ!!]
蛍と三頭龍の間に現れた。
正確に言うなら“破綻した物語”を呑み込む為に現れた“それ”を見て三頭龍すら声を漏らす。
それ程までに非常識。
【くらやみ】を利用しよう等と誰も思うはずが無いのだ。
“それ”はそんなに甘い存在ではないのだから。
そして、【くらやみ】にとって彼らの事など関係は無い。
ただ、間違いを正す為に“破綻した物語”を消滅させていく。
同時に自身へと向かってくる“覇者の光輪”すらも消していく。
だが、それも長く続かない。
【くらやみ】が現れるのは“破綻した物語”が存在している間。
抵抗をしない物語を喰らうのにそう時間は掛からない。
だから、“覇者の光輪”を呑み切るのは無理だ。
だが、蛍にとっては時間が稼げれば充分だった。
その手に何処か他の物と雰囲気の違う巻物を出現させる。
そして、開く。
「“偽典・三種の神器の怪”発動」
巻物が激しく煙を放つ。
煙は蛍の体を包み込んで形を変えていく。
右手には剣が、左手の甲に鏡が、首から下げられる形で勾玉が現れる。
しかし、それらは半透明で霞の様に揺らぐ。
顕現が完全では無いのだ。
「チッ!!妖力不足かッ!!全く本当に厄介な体質よね!!」
膨大な力を使うが回復していく妖力は並程度。
そんな不釣り合いな体質が連戦で影響を出した。
そうこうしている内に【くらやみ】が消え掛けてる。
そんな時に蛍の背後に少年が現れる。
何者かは関係無い。
蛍は喰らおうと牙を剥こうとした時に少年は、殿下は溜め息を吐きながら言ってくる。
「そんなに睨むなよ。手伝ってやるだけだ。本当はこんな手出しはしたくねぇんだが、“あの女”に借りを作れるのは悪く無い」
「はぁ?」
「いいからお前は三頭龍の方を向いてろ」
殿下の言う通りに三頭龍の方を睨む。
すると、殿下は蛍の肩を掴み、全身から太陽光を放って告げる。
「_____“アヴァターラ”起動。十天廻りて輝け、“疑似創星図”……………!!」
蛍の体に何かが流れ込んでくる。
が、そんな事はどうでもいい。
力さえあれば良かった。
顕現させるだけの力が。
全身を駆け巡る力を妖力に変換し、剣を、鏡を、勾玉を顕現させる。
蛍の所持する神仏級の中でも特に異質で強大な物語がその身を現す。
「見なさいッ!!これが人々の思いが造り上げた歪んだ神器よ!!」
オリジナルでも、レプリカでも無い。
それでも並ぶ程度の霊格を持ち、それらには無い物を発揮する偽典。
【くらやみ】が消えて“覇者の光輪”が勢いを取り戻す。
それを蛍は正面から迎え撃つ。
「“偽典・八咫鏡”!!“虚偽設定・万物反射”!!」
左手を突き出すと正面に巨大な鏡が現れる。
鏡は“覇者の光輪”を受け止め、反射し、ぶつけ合わせ、相殺していく。
本来ならば“八咫鏡”にこんな機能は無い。
だが、蛍の“偽典”ならばそれが出来る。
人々の勝手な想像が収束し、形作り、オリジナルと変わらぬ霊格を持つまで膨張した“偽典”ならば。
とはいえ、“覇者の光輪”はその程度では防ぎ切れない。
徐々にだが鏡にヒビが入っていく。
そんな物は分かっている。
だからこそ、剣を掲げている。
「“天叢雲剣”!!“拡大解釈・絶炎万斬”」
剣を思いっきり振り降ろす。
それだけで全ての焔が真っ二つになる。
それがたとえ終焉の気焔だろうが、だ。
天叢雲剣には燃える叢を斬り裂いた逸話がある。
それが拡大解釈された結果がこれだ。
あらゆる焔を確実に斬り裂く。
だが、そんな物がホイホイ出せるわけも無く剣も鏡も“覇者の光輪”が散ると同時に砕け散った。
勾玉も霞の様に消えた維持するだけの力が消えたのだろう。
いつの間にか殿下も消えていた。
思いっきり笑い飛ばしてやろうかと考えるが、その前に身の毛も凍る敵意が向けられる。
それに対して蛍はニィィと口を歪ませる事で答える。
[………まさか、本当に防ぐとはな]
「当たり前でしょうが。私の切り札その二、その三を使ったんだから当然の結果よ」
地獄の底から響いてくるような声に態度を変えずに答える。
余裕が消えてるが、関係無い。
それは蛍も同じである。
妖力はほとんど使い切った。
このままではただ殺されるだけである。
それでも態度は変えない。
怖れはしない。
畏れさせるのは此方なのだから。
誇りを傷付けたのだろうが、そんな事は知った事では無い。
どうなろうが我が道を進むだけだ。
「(それに悟は守れたのだから後はどうでもいいのよ)」
目の前では三頭龍が残った片翼を大きく広げている。
だが、表情は笑みを浮かべたままだ。
見ようによっては死を覚悟した様にも見えるだろう。
しかし、そんな気などは一切無い。
最後の最後まで足掻くそれだけだ。
「カハッ、カハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
狂った様な笑いを上げる蛍へと容赦無く無数の刃が放たれる。
引き続き蛍メインな感じでした!!
“偽典”に関しては性質として収まる範囲なら割りと何でもありではあります。
とはいえ、消費が大き過ぎて使った後はしばらく無防備ですが。
それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
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