問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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五票集まった番号から短編やります


“決着”の形

ラプ子を通して全軍に十六夜の言葉が伝えられる。

だが、ぬらりひょんはそれを無視してアジ=ダカーハの正面に立っていた。

ラプ子が散々文句を言って来るが無視する。

最後にやらなければならない事があるのだ。

それは個人的な拘りであり、タイミング的にはここしか無かった。

 

[ぬらりひょん………貴様が一人で来るタイミングには思えないが?]

 

「いいんじゃよ。これは個人的なけじめじゃ。これが最後だろう?なら、決着をつけとこうじゃねぇか」

 

煙管を吹かし、不敵に笑いながら言う。

三頭龍も答える様に向き合う。

 

[いいだろうッ!!箱庭の命運を決める前に貴様との“決着”をつけようではないかッ!!]

 

「いいねぇ!!それでこそやりがいがあるッ!!ワシも鵺殺しの技を持ってお前を破ってみせようかのうッ!!」

 

互いに構える。

二人の間に入り込める者はいなかった。

殺気が溢れる。

純粋な、ぬらりひょんとしての妖力が場を包む。

三頭龍も正面から迎え撃つ。

ぬらりひょんが一歩踏み出す。

それだけで空気が切り替わる。

歪む。

景色が、空間が、時空が、世界が歪む。

 

[(これは………奴御得意の認識操作か?いや、これは……もしや………)]

 

「たとえ、お前じゃろうと見抜けんよ。それがこの“技”じゃ」

 

全てが歪む中で三頭龍は尚も真っ正面から打ち砕く為に向かっていく。

龍影の刃を、爪を、牙を振るう。

ぬらりひょんも刀を、獅子王を振るう。

その全てを持って振るう。

それらが衝突しようとした正にその時だった。

全てが途切れた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

[ヌゥ!?]

 

その瞬間は誰にも認識出来なかった。

何が起きたかアジ=ダカーハすら把握出来ていなかった。

振るった刃がぬりひょんに届く直前、

ぬらりひょんの刃が三頭龍に届く直前、

途切れたのだ。

空間の連続性も、時間の連続性も関係無かった。

正面にいたはずのぬらりひょんは何故か三頭龍の背後にいる。

そして、刀を振り降ろした様な体勢であった。

変化はそれだけでは無い。

三頭龍は片腕の感覚を失っていた。

それもそのはずである。

三頭龍の片腕は宙を舞っているのだから。

それを認識すると同時に全てが動き出す。

時間が止まっていたわけではない。

まるで結果だけが残った様にあの瞬間から今へと飛んだのだ。

 

「どうじゃ。これが鵺殺しの技じゃ。使ったのはお前で三人目じゃよ。そして、傷を付けたのはお前が初めてじゃよ」

 

言った直後にぬらりひょんの肩から血が溢れる。

認識出来てない間に三頭龍が抉ったのだ。

同時に三頭龍の片腕も地に落ち、地を揺らす。

 

[貴様との決着はこういう形になったか]

 

受けた傷は片腕だけでは無かった。

龍影にはヒビが入り、一つの首は頬を斬り裂かれていた。

 

[実に貴様らしい技だった。貴様の野望にも納得が行くくらいのな]

 

三頭龍は何が起きたかは予測を付けていた。

ぬらりひょんという妖怪に時間操作の力は無い。

ならばどうしたか。

それは単純ではあるが規模が違う。

ぬらりひょんの能力の延長線上、その力を突き詰めた結果である。

だが、あえて言いはしない。

二人が背を向けたままでいると空から二つの咆哮が響く。

 

 

[GYEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!]

 

 

三頭龍はそれらを見上げながら体を確かめる。

片腕を失ったのは痛いが許容範囲内ではある。

確かめた上で振り向かずにぬらりひょんに向けて語りかける。

ぬらりひょんも振り向かずに聞く。

 

[即興の百鬼でこれなのだ。貴様の正規の百鬼とも戦っては見たかったな]

 

「同感じゃ。だが、あの技は純粋なワシの力じゃよ。その身にしっかり刻み付けておくんじゃな」

 

それが最後の会話だった。

互いに振り向かなかった。

ぬらりひょんはその場に留まり、三頭龍は二匹の龍へと向かって行った。

三頭龍が見逃したわけではない。

彼らの決着は既に着いていたからだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

此処まで三頭龍を追い込んだ者は両手の指で数える程もいなかった。

ぬらりひょんとは何度も出会ったがぶつかる事などほとんど無かった。

 

[短くも、鮮烈な戦いだった]

 

この魔王の心臓に彼らの牙は届くのか。

“絶対悪”を掲げて戦い続けた永劫の時は、意味ある物だったのか。

今、その答えが出る。

 

 

[来るがいい、英傑たち。そして踏み越えよ____我が屍の上こそ正義であるッ!!]

 

 

敵を待つ事はしない。

眼前に障害がある。

ならば砕くッ!!

敵よりも速くッ!!

終末論の吸血鬼、百物語の語り部、百鬼を統べる者、それらは行動不能になった。

ならば、月龍と太陽龍は彼らに残された切り札だろう。

だからこそ、正面から砕く。

翼が無かろうと関係無い。

三頭龍はヒビの入った片翼を広げて跳躍する。

三頭龍は何時だってそうして戦ってきた。

己こそ真の英傑だと名乗りを上げる者たちに、我こそは彼らが最期に行き着く巨峰であると固持し続けた。

中には決して勝てぬと知りながら、愛した者たちの為に戦った者たちもいた。

その具直さ、その輝きを知っていたからこそ____彼の宗主は、人間の為に涙した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おいおい、そんなに睨まないでくれよ。君達の決着に僕は介入しないよ」

 

何処かで戦場を眺める人外は一人呟く。

その呟きはきっと三頭龍にも届いているのだろう。

人外たる彼女はそんな事を言いながら決着の瞬間を待っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「チッ………ワシも老いたのう」

 

多量の血を吐きながら呟く。

全身から傷が開いたかの様に血を溢れさせていた。

それは三頭龍から受けた傷が原因ではない。

あの技を使った代償だ。

あれを使うと膨大な霊格による体の自壊が一気に進むのだ。

それに加えて妖力がすっからかんに近かった。

流血を抑えるだけの妖力も無くなっているのだ。

それ程のリスク抱えていても三頭龍との決着はつけたかったのだ。

 

「まぁ……あとは奴らに任せておけば大丈夫じゃろ」

 

言いながら杖代わりにしていた獅子王を鞘に納める。

“百鬼夜行”が解除される。

だが、最後の攻防は“百鬼夜行”の対象外の連中がやるので問題は無い。

ぬらりひょんの姿が三十代から老人に戻る。

息を整えると煙管を吹かせながら戦場を眺めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

黄金の巨龍が三頭龍を拘束する。

その隙を突く様に黒ウサギは槍を全霊を込めて放つ。

 

 

「穿て____“疑似神格・梵釈槍”_____!!」

 

 

槍は一直線に心臓を目指し、瞬きもせぬ間に到達するだろう。

逃れられぬ敗北。

僅かに抱く達観。

だがそれら全てを、三頭龍は、最強の魔王は、王威一つではね除けた。

 

 

[魔王を_____“絶対悪”を甘く見るでないわッ!!]

 

 

星に匹敵する質量と封印を引き千切る。

その上で星辰体化の恩恵を引きずり出して回避する。

二度の進化を魂の強さだけで成し遂げた。

こんな事を予想出来るものがいたとするのなら。

 

 

「_____ああ。お前なら、避けると思っていたよ」

 

 

それは人外でもなければ、物語に飢える者でも、百鬼の主でもない。

魔王という存在に羨望し、彼の王威を信じていた者以外にはあり得ない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彼は決着の場に居合わせていなかった。

球磨川禊は決着の時、森の中で転がっていた。

 

『また勝てなかった…………というか、逃げられちゃったね』

 

起き上がりながら溜め息を吐くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「まぁこんな物かな。予定通りではあるけど………十六夜くんがちょっと予想外かな。これが盤面にどれだけ影響するかは分からないけど手を加えずに見守るべきかな?」

 

 

三頭龍は炎上して灰となった。

槍に心臓を貫かれた三頭龍は十六夜に最後の加護を授けたつもりで消えていった。

大歓声の中で十六夜は悔し涙を流す。

その涙のわけを知る者は背を貸していた蛟劉と全てを眺めていた人外だけだった。

逆廻十六夜が経験した、完全なる敗北を。





十一巻終了!!
ぬらりひょんの技についてはまだ明かされないってことで。

裏で動いてる人達も表で動いてる人達も思惑あっての事です。
ぬらりひょんの“野望”と今回の事件は割りと関係あったりします。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
アンケートに答えてくれると嬉しいです。

新刊出るまではカンピ進めつつ、短編やる感じです。
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