問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
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緋御 悟の人間関係[5] 前編
鎌音との関係
悟は風呂場で体を洗っていた。
その様子を天井裏から覗く者がいた。
その者が指を振るうと風の刃が悟へと向かっていく。
その無色無臭無音の刃は正確に悟を斬り裂く…………はずだった。
「!?」
悟は前触れもなく頭を下げ、風の刃を回避したのだ。
風の刃はそのまま風呂場の壁を斬り裂くだけだった。
襲撃者が唖然とする中で髪を数本散らしながら悟は跳んだ。
「人様が気持ちよく体を洗ってる時に襲撃するんじゃねぇよ!!」
襲撃者が気付いた時には遅く、悟は天井裏に手を伸ばし、襲撃者の腕を掴んで引きずり降ろす。
その過程で天井を多少壊したがそこは気にしない。
「カハッ!?」
引きずり降ろした襲撃者を床に叩き付け、左手を踏み付け、右手を掴み、剃刀を首につき付ける。
そこでようやく相手の姿を確認し、溜め息を吐く。
「此処に堂々と忍び込んで俺を襲撃するなんてどんな奴かと思ったら女かよ」
襲撃者は忍装束を身に付け、マスクで口元を隠し、前髪で目を隠しているとはいえ明らかに女だった。
胸の膨らみや体臭からそういうのは分かる。
逆に悟は腰にタオルを巻き付けてるとはいえほぼ全裸なので襲撃者は目をそらしている。
「さて、こうしてるのもなんだし尋問と行こうか。俺を襲撃した目的は何だ?」
「拒否」
「拒否権あると思ってるのか?まぁいいや。今日はサトリの血が強いんでね………読ませてもらうぜ」
先程の攻撃を回避出来たのもサトリの力で襲撃を読めたからである。
とはいえ、悟は混血で純血よりも力は弱いので漠然としか読めないのだが。
「何はともあれ…………まずは顔を見せて貰おうか」
「ッ!?」
剃刀を使い器用にマスクを切っていく。
襲撃者は指を何とか動かして風の刃を放つがサイズが小さいので首を軽く動かすだけで避けられる。
マスクを外すと目を隠している髪を適当なヘアピンで固定してどける。
悟は普段は後ろで軽く縛る程度だが、ヘアピンもたまに使うのだ。
そうする事で襲撃者の顔がよく見えた。
その顔は羞恥心によってか真っ赤になっていた。
「へぇ……意外に可愛いじゃん。鎌音だったか?俺はあんまり無理矢理読むのは好きじゃなくてな。自分で言ってくれると助かるんだが」
「ッッッッッ!?」
鎌音は可愛いと言われた事と何故か名前がバレている事で二重に動揺する。
その動揺こそが悟に心を読まれる原因ではある。
心が揺らげば守りも弱くなる。
それによって混血の力でも詳細を読めるのだ。
なので、悟も動揺を誘う為に色々やろうと企んでいたのだが顔を見ただけで結構な動揺をして自ら驚いていた。
「(こういう系の攻めには弱いというか耐性が無いのかならちょっと強めに攻めれば大体読めそうだな)」
そう結論付けると悟は口角を悪戯をする時の様に上げる。
踏んでいた左腕を右腕と纏める様にして左手で纏めて掴む。
そのまま引っ張って上半身だけを起こさせる。
「ヒャッ!?」
鎌音が小さく悲鳴を上げるが気にはしない。
そして、右手で顎を持って固定する。
「なぁ………ほぼ全裸の男を襲撃したって事はこうなる事も覚悟してたんだよな?」
そう言って悟は鎌音に顔を近付けて行く。
視界の中の顔は真っ赤どころではなく沸騰してる様になっている。
目は完全に泳いでいる。
「ッッッッッッッッッッッッ!!」
唇と唇が触れ合う直前に鎌音は声にならない悲鳴を上げ、暴れて悟の腹を蹴り飛ばして脱出すると一目散に逃げ出すのだった。
風呂場ゆえにそこまで広く無いので悟は壁に衝突し、追うに追えなかった。
とはいう、目的自体は果たしているので追う必要は無いのだが。
「…………ああ言うのを純情って言うのかね?まぁ何はともあれ大体読めたがこりゃ面倒そうだな」
頭を掻きながら立ち上がり、風呂場を出ようとするが体を洗ってる途中だったのを思いだし、散らかった物を片付け、改めて洗い始めるのだった。
壁が斬り裂かれてるのはあまりきにしないのだった。
直後に鎌音の悲鳴を聞いて駆け付けた濡鴉が悟の体を見て、悲鳴を上げてぶん殴るのだがそれまた別の話。
◆◆◆◆◆
「それで襲撃した奴は何処所属か分かってるのか?」
「あぁ何処所属で誰に依頼されてどういう事情があるかまで全部読んであるよ」
風呂を出た後、悟はぬらりひょんと二人で話していた。
本来なら本拠に侵入され若頭を襲撃されたのだから幹部が集まってもおかしく無いのだが、ぬらりひょんの指示でそこまで大事にはなってない。
「若頭として何をするかは分かってるんじゃろうな?」
「分かってるよ。“百鬼夜行”の身内に手を出す輩は徹底的に一人残らず叩き潰す、だろ?」
「それさえ分かってればいい。何なら手を貸してやるぞ?」
「必要ねぇよ。つーか、親父達は明らかに侵入されたの気付いてたよな」
「当たり前じゃろうが」
「相変わらず人が悪いな」
「人に言えた事か?」
コミュニティ“百鬼夜行”本拠は基本的にセキュリティという物は無い。
入るのも出るのも簡単ではある。
しかし、問題はそこではない。
本拠にはサトリが常駐してる上に大妖怪レベルの幹部達が彷徨いている。
彼らにとって侵入者など入った瞬間から気付いているに近い。
それでも彼らが手を出さないのには特に理由は無い。
余計な事をしない限りは無害なので放っておくだけである。
むしろ何をするかどうか楽しみにして遊んでいるに近い。
だが、一度何かすれば侵入者だけでなく侵入者が所属しているコミュニティすら潰すのだから質が悪い。
そして、悟も気付いていながら攻撃されるまで警告しなかったので同類に近い。
「まぁ何はともあれケジメの付け方は俺に決めさせて貰うけどな。襲撃されたのは俺だしいいだろ?」
「別に構わんが皆殺しにしない理由は何じゃ?」
「コミュニティの奴らは皆殺しにするさ。くだらねぇ理由で襲撃してきやがったしな。だが、鎌音は別だ。あいつは…………泣いていた」
「お前が泣かしたんじゃなくてか?」
突然襖が開かれ、皐が口を出してきた。
悟は若干イラッとしながら皐を睨む。
「人がせっかく格好つけてる所を台無しにするなよ…………」
「どうせ、ぬらりひょんのじーさんしか見てねぇんだからいいだろ?」
「というか、何の用だよ。お前が用も無く来るわけがねぇだろ?」
「お前の壊した壁の修理を誰がやってると思ってんだ?」
「俺が壊したわけじゃねぇし、どうせお前は暇だろ?」
皐は面倒くさがりではあるものの、そういう方面のスキルは一応持っていた。
多少雑ではあるのだが。
「何はともあれ俺はぬらりひょんのじーさんに資材の場所を聞きに来ただけだよ」
「何じゃ、そんな事か。そういうのは儂じゃなくて牛鬼にでも聞くんじゃな」
「牛鬼のおっさんが見付からねぇんから来たんだが」
「牛鬼さんなら修業とか言ってたぞ」
「……………面倒くせぇな」
諦めたのか皐は渋々部屋を出ていくのだった。
どうもどうやら本当に資材の場所を聞き来ただけのようだった。
「邪魔が入ったがまぁ鎌音をどうするかくらいは俺の判断でいいよな」
「その女は泣いていたんじゃろ?その涙を拭うのが男じゃからな。好きにしろ」
ぬらりひょんは煙管を吹かしながら言うのだった。
その答えを聞いた悟は部屋を出ていくのだった。
◆◆◆◆◆
「お前の処遇が決まるまでそこで反省するんだな。失敗したからにはそれ相応の覚悟をしておけ」
「御意………」
その返事を聞くと男は部下に見張りを命じ、階段を上がって行くのだった。
その部屋は牢だった。
罪人を閉じ込める物では無い。
男の意に添わない人物を監禁する為の物だった。
その牢の一室には鎌音が繋がれていた。
両手は鎖に繋がれ、吊り上げられていて膝立ちになっていた。
足にも鎖が巻かれ、その鎖の先には重りがあった。
身体中に痛々しい傷跡があった。
服はボロボロになり、血が滲んでいた。
返事をした後に顔にも拘束具を付けられ口は開けず、周囲も見えなかった。
暗闇の中でただ風の音だけが響いていた。
時折腕の鎖が引っ張られ、体が上げられる。
それにより、足に巻き付いた鎖が足を絞め上げる。
重りが動かず、体だけが引っ張られた故に締め上げられてるのだ。
同時に両手首も同様に負担が掛かる。
それらはとてつもない激痛だった。
それが続く時間は男の気紛れだった。
これは監禁者を壊す為だけの仕掛けだ。
それ以外に意味は無かった。
そんな中でも鎌音は悲鳴を上げなかった。
そうなる様に“教育”されてきたのだから。
鎌音編前編でした!!
風呂場で襲われたのは丸腰で万が一、一撃で仕留められなくても優位に立つ為です。
結果的には回避された上に居場所もバレていたので意味は無くなりましたが。
それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。
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