問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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緋御 悟の人間関係[5] 後編

 

「それにしても窮鼠殿、何故いきなり“百鬼夜行”の若頭をあの娘に襲わせたのですか?」

 

「あぁ……そろそろあの小娘も使い物にならなくなりそうなんでな」

 

窮鼠という男が率いるコミュニティの本拠の一室で男達は酒を飲みながら話していた。

窮鼠は悪意のこもった笑みを浮かべながら語っていく。

 

「小娘には“両親”を人質に取って働かせ、仕事にちょうどいいように“教育”もしてきた。だが、あの歳になったらさすがに気付いちまうだろうからな」

 

「と、言いますと?」

 

「あの小娘の両親なんて存在しねぇんだよ。奴を拐う時についでに殺してたからな」

 

「それは酷い話ですなぁ」

 

男達の下卑た笑いが響く。

男達は人身売買を主な商売としているので気にする事など無いのだ。

 

「ですが、窮鼠殿。それならば殺すなり、売るなりしてしまえば良かったのでは?」

 

「俺もそう思ったんだがよぉ………それだけじゃつまらねぇだろ?だから、小娘に“百鬼夜行”に喧嘩を売らせてその上で売り飛ばす事にしたんだ」

 

「なるほど!!それならば潰されるのは買い取ったコミュニティになりますな」

 

「あの小娘はほとんど口が利けねぇ様に“教育”してあるから俺達の事がバレる事もねぇって事だ」

 

「それにしてもあの小娘を使い潰すのは惜しいですなぁ」

 

「ん~それもそうだな。ならば、こういうのはどうだろう?此処に集まってる諸君であの小娘を喰ってから売り飛ばすというのは」

 

「おぉ!!窮鼠殿は話が分かる!!」

 

下卑た話に下卑な笑いそれらによって酒は減っていく。

誰も少女を救おうなどとは思わない。

 

 

____はずだった。

 

 

「クズどもが下衆な話をしてるねぇ…………その話、俺も混ぜて貰おうか」

 

「「何奴じゃ!?」」

 

突如聞こえてきた若い声に男達が一斉に身構える。

障子の向こう側に人影のみが映る。

その障子が蹴り破られ、編み笠を被った和服の男が入ってくる。

 

「俺達の本拠に堂々と侵入してくるとは度胸がいいねぇ…………だが、死にな!!」

 

窮鼠が叫ぶと同時に酒を飲んでいた男二人の姿が変わる。

鼠の獣人へと姿を変え、編み笠の男へと跳び掛かろうとした。

が、編み笠の男は不敵に笑う。

 

「死ぬのはテメェらだ。まさか、まだ主導権はお前らにあると思ってるんじゃねぇよな?」

 

編み笠の男が呟くと同時に跳び掛かろうとした男二人の首から血が溢れ、倒れる。

窮鼠には見えていた。

黒い影が天井裏から飛び出し、二人の首を斬り裂いた事を。

それが次に自分に狙いを定めてるという事も。

 

「なァめるなよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

「フギャ!?」

 

窮鼠は叫びながら自分の首を狙ってくる爪を腕を掴んで止める。

そのまま力一杯投げ放つ。

 

「猫ごときが!!窮鼠に勝てると思ってんじゃねぇよ!!貴様ら………何者だァ!?」

 

「おいおい、襲撃させた奴の顔くらい知っとけよ」

 

投げ付けられた猫を気にもせずに編み笠の男は編み笠を外し、窮鼠へと投げ付ける。

窮鼠は投げ付けられた編み笠を爪で引き裂くが、その前に現れた顔に驚愕する。

 

「な、ななな何でお前が此処に!?」

 

「こりゃ傑作だな。それの答えはテメェらが話してたじゃねぇか。“百鬼夜行”は手を出した奴らを一人残らずコミュニティごと叩き潰す。“百鬼夜行”の若頭、緋御 悟がテメェらに直接落とし前を付けに来てやったのさ」

 

言い放ち、悟は素顔を晒す。

一方、投げられた猫こと夏歩は一反木綿姿で何処からともなく飛んできた皐に拾われていた。

 

「大丈夫か?」

 

「皐、ありがとね」

 

ニッ、と皐に笑みを浮かべる夏歩。

皐は頬を掻きながら人型へと姿を変える。

姿を変えるどさくさに紛れ、ボウガンの矢を窮鼠に向けて放つ。

 

「うぉ!?」

 

窮鼠はギリギリの所で夏歩に首を切られた死体を盾にして矢を防いだ。

忌々しそうに三人を睨み付けるが悟達は涼しそうに立っている。

 

「クソが………やっぱさっさと手放すべきだったか、あの疫病神が!!」

 

「疫病神ね………案外的を得ているかもな」

 

「何の事を言っている。いや、そんな事はどうでもいい。お前は襲撃の報復に来たんだろ?なら、俺を狙うのはお門違いじゃねぇか?」

 

「聞いてなかったか?コミュニティごと皆殺しって言っただろ?」

 

「お、俺はお前の襲撃には関与していない!!全てはあの小娘が独断でやった事だ!!だから、俺達は関係無い!!」

 

白々しく言い放つ。

悟は呆れた様に息を吐く。

 

「クズだな。まぁどんな事情があろうが…………皆殺しには変わりねぇよ」

 

「………………なら、しょうがねぇ!!お前ら!!この侵入者どもを殺してしまえ!!」

 

窮鼠が叫ぶと同時に左右と窮鼠の背後の襖が開き、大量の鼠の妖怪達が現れる。

各々武器を持ち、一斉に悟達へと襲い掛かる。

だが、彼らは気付かなかった。

同時に天井裏から何かが降ってきた事を。

それと同時に風の流れが変わった事を。

窮鼠だけがそれを気付き、慌ててしゃがむ。

窮鼠だけはその風の変化が何の前触れか気付いていた。

 

 

「裂け」

 

 

そんな一言の呟きと共に風の刃が鼠達を斬り裂き、真っ二つにした。

途端に部屋は真っ赤に染まる。

鼠の血が溢れ、肉があちこちに飛び散ったのだ。

そんな中で窮鼠はとある一点を憎々しく睨んでいた。

悟達の前に降り立ち、鼠達を真っ二つにした風の刃を放った者を。

鎌鼬の鎌音を睨み付けていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時は少々遡る。

悟が窮鼠の前に現れる前だ。

地下牢で縛られていた鎌音は誰かが階段を降りてくる音を聞いていた。

どうせ見張りの交代だろう、と思いたいして気にしていなかった。

が、それは間違いだとすぐ気付く。

 

「何者だ、貴様!?何処か

 

「うっせぇ」

 

そんなやり取りの後に刀を振るう音と血が溢れる音と肉が散る音を聞いた。

目を塞がれていてもそれは判別出来る。

何が何だか分からない内に事は進んでいく。

 

「想像以上に酷いな、こりゃ」

 

そんな声と共に腕の拘束が外れた。

正確には鎖を切られただけで枷自体は残ってるのだが。

その後に金属と金属がこすれる音と錠が外れる音が聞こえて足が自由になる。

次に手の枷を外され、最後に顔を枷を外された。

一体誰がこんな事をと思い相手の顔を見た瞬間、鎌音は全力で顔を反らした。

 

「何故」

 

「何で俺が此処にいるかって?そりゃお前に会いたかったからだよ」

 

「ッ!?」

 

思わず吹き出す。

先日悟とのキス未遂の事を鮮明に思い出し、顔が真っ赤になる。

 

「………」

 

「ん?そういう事が聞きたいわけじゃないって?悪い悪い」

 

「!?」

 

今度は普通に驚く。

が、直ぐ様悟の母親を思い出して納得する。

サトリの血が流れているのだから心を読む事も出来るのだろう。

 

「まぁ単純に言えばお前を救いに来ただけだよ。突拍子も無く聞こえるだろうが嘘偽りは無いぜ」

 

「…………否定する」

 

「何がだよ。……悪い。クズ鼠のせいで口を上手く利けなくされてるんだったな」

 

「ッ!?」

 

「何処まで知ってるって?全部だが」

 

「本当?」

 

「襲撃しに来た時にバッチリ全部読ませて貰ったよ。お前の事情も全部。窮鼠は親猫の代わりに子猫を育てるというが、子猫を喰うとも言う。まぁお前の場合は育てられた上で利用されてたんだろうが」

 

「やめて」

 

「なら、一つだけ聞かせろ。お前、本当は親殺されてるの知ってるだろ?」

 

「…………………ひ、否定する」

 

「無理すんな。辛いなら泣いていいんだし、怒りに身を任したいなら好きにすればいい」

 

相変わらず顔を背けたままの鎌音の頭に手を乗せる。

優しく包む様に。

 

「だから、あのクズ鼠どもに従う必要は無い。お前は自由になればいい。両親だってそう望んでると思うぜ?お前が自由を望むなら俺はお前を手伝う」

 

「違う」

 

「お前だけを救うなんて事はしねぇよ。お前を縛り付ける全てを剥がすくらいはしてやる。そうだな、お前のお陰で無事でいられる商品候補共も助けるさ」

 

「どうやって?」

 

「まずは窮鼠のコミュニティを完膚まで叩き潰す。いや、滅ぼす」

 

「何故」

 

「何でそこまでするかって?強がって泣くのを、孤独を耐える女がいたら助けるのが男って奴だろ?」

 

多少例外はあれどそれは悟の中では決めてる事だ。

何よりそんな女を放置するのは後味が悪い。

鎌音は確かに孤独だった。

両親の事を、守れる人々の事を思えば何とか耐えれていた。

だが、それも限界が近かった。

両親がどうなってるかは想像が付いてきていた。

商品候補の人々も完全に救えているわけでは無い。

何より自分が孤独を耐える為に、窮鼠の“教育”を耐える為の支えに勝手にしているだけだ。

だから、それから解放される希望が見えた今鎌音の瞳から流れるは涙だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

鎌音が泣き止んだのを見計らい悟は動き始め様とした。

そこで一つ問題が起きた。

 

「え?顔を隠す物が欲しい?それが無いとまともに行動出来ない?」

 

静かに頷く鎌音に対して悟は困った顔をする。

何か拘りがあるのかどうか知らないが困る問題だった。

いっそ此処で終わるまで待たせようかと思ったが本人としてはケジメを自分で付けたいらしい。

悟は少し考えて自分が首に巻いてる物を思い出す。

 

「ほら、これならどうだ?」

 

悟は首に巻いてたマフラーを外して鎌音に渡す。

悟に合わせて少し大きめなので鎌音ならば顔の下半分隠すには充分である。

 

「よし、それで解決したな。そんじゃそろそろ動き始めるとしようぜ」

 

言って悟は階段を登り始めた。

故に気付かなかった。

鎌音が渡されたマフラーを首に巻き、少々顔を紅めてマフラーの端を握っていた事に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時は戻り、本拠の一室。

窮鼠と鎌音はちょうど向かい合う形になっていた。

 

「飼い犬に手を噛まれるとは正にこの事だな。まぁいい。この際に言って置こう。お前の両親を殺したのも死体を貪ったのも俺だ。旨かったぞ、お前の両親は」

 

直後に鎌音の腕が振るわれ、窮鼠の左肩から右腰まで斬り裂かれる。

だが、真っ二つにはなっていない。

長年“教育”した事もあってタイミングを読めるのだ。

 

「やめとけ、鎌音。こいつはお前が手を汚す価値も無い」

 

「でも」

 

「ケジメは今の一撃で充分だ」

 

悟は落ち着かせる様に鎌音の頭に手を乗せてから窮鼠の方を向く。

窮鼠は仕切りに外の様子を気にしている。

 

「まだだ!!まだ、俺には部下が残って……」

 

「うるせぇよ」

 

瞬きの一瞬の間に窮鼠の背後に回っていた悟は窮鼠の襟を掴み中庭へと投げ付ける。

投げられた窮鼠は障子を破り、庭に転がされる。

 

「ヒ、ヒィィィィィィィィ!?」

 

直後に悲鳴を上げる窮鼠。

そこにあったの死体の山だった。

窮鼠のコミュニティのほぼ全員が死体へと変わっていた。

その死体の山の上には一人の男がいた。

 

「つまらねぇ……雑魚だけだったじゃねぇか」

 

茨は退屈そうに死体の山の天辺に座っているのだった。

死体の山の前で膝立ちで呆然とする窮鼠。

その後ろに悟が立つ。

 

「何か言い残す事はあるか」

 

「あんな小娘の為に俺の人生が潰されるとは理不尽な物だ。お前ら全員呪ってやるよ」

 

「そうかよ。テメェ如きの呪いなんざ幾らでも受けてきたさ。死んでも覚えておけ、これが“百鬼夜行”に手を出した者の末路だ」

 

それだけ言って窮鼠の首を斬り落とすのだった。

が、それだけでは終わらない。

悟は懐から巻物を取り出して切断面に押し付ける。

 

「まぁテメェ如きを“物語”にするのもあれだが今は数が必要だからな」

 

巻物を残っていた血を吸い付くし、“窮鼠”の物語をその身に刻むのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「で、結局鎌音はどうしたんだ?」

 

「自由にしていいって言ったんだがな。何故か俺についてくって事になった。で、今も天井裏とかで護衛に近い事をしてる」

 

「…………また面倒なのが増えたってわけか」

 

 

 

(鎌音との関係 同志)

(関係開始)




鎌音編終了でした!!
予想以上に長くなった結果多少グダったけど気にしない!!

鎌音は“教育”の結果、極端に口数が少なくなってます。
だから、悟の場合はサトリとしての力を使って会話をする事もあります。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。
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