問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
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追悼式の夜に
アジ=ダカーハとの戦いから数日経ち、追悼式が行われた。
その夜、ノーネームが泊まる宿では宴会が行われていた。
だが、皐は屋根の上に寝転がり、静かに夜空を眺めていた。
◆◆◆◆◆
「どうやったらこんな有様になるんや…………」
蛟劉は宿の入口で唖然としていた。
その目の前の大広間はまさしく死屍累々と言える様な光景だった。
どいつもこいつも顔を赤くして床に転がっていた。
とはいえ、それでも半数は残っていたが。
蛟劉が視線を横に向けると十六夜が悟と酒を飲んでいた。
「「大体
蛟劉の視線に気付いた二人は口を揃えて言う。
その周囲には球磨川や暦の他にも蛍や粉雪、吹雪達も転がっていた。
蛟劉が言われて耳を傾けると確かにぬらりひょん達の笑い声が響いていた。
どうもどうやら最初は普通に宴会していたようだが、そこにぬらりひょん達が宴会に釣られて乱入してきたようだ。
そこから酒盛りが加速し、この有様になったようだ。
「にしても、青行燈も酔い潰れるんやな」
「こいつはかなり酒弱いぞ。それこそ酒瓶を口に突っ込めば即座にぶっ倒れるくらいには」
そのくせ酒自体は好きなのが面倒だけどな、と付け加える。
蛟劉はそこらへんに転がる未開封の酒瓶を手に取ると茶席に座る。
「まぁええわ。僕も飲むとしようか」
「いいねぇ。
「俺も一杯貰うか」
三人は蛟劉が持ってきた酒を盃に注ぎ、軽く舐める程度に舌を濡らす。
そして、同時に目を見開く。
「おいおい、これは極上じゃねぇか!!」
「というか、美味過ぎじゃね?どこのコミュニティの差し入れだ?」
「無銘やね。銘柄も旗印も無いで」
首を傾げながらも一気に盃を呷る。
口内一杯に酒を含むと、芳醇で純米酒のような薫りが胸を支配した。
今まで飲んだ事の無いような味を感じながら悟は首を傾げる。
「コレクションに加えたいところだが………どっかで似た匂いを嗅いだことがあるような………」
「お前、酒集めてるのか?」
「親父が蔵に溜め込んでるのをたまにちょろまかすんだが良い酒が多くてな。何時の間にかコレクションになってる」
何はともあれ何処から持ってきたか二人が探ろうとした時だった。
鵬魔王が同じ酒瓶を持って近寄ってきた。
「次兄、来ていたのですか」
「そういう迦陵ちゃんも来てたんやな」
迦陵ちゃんと呼ばないでくださいと一言釘を刺してから同席する。
十六夜は酒を注いで貰いながら名乗る。
どうもどうやら以前名乗った時は覚える気は無かったようだが、今は覚えてもいいと思っているらしい。
悟に関しては何故か忌々しそうに睨まれる。
「俺が何かしたか?」
「いえ、貴方には何もありませんがその顔を見るとあちらで騒いでいる男を思い出してしまうからね」
悟はその言葉だけで納得する。
ぬらりひょんは七天と奇妙な縁がある。
なので、深くは知らないがこのくらいは納得できる。
そうして、三人が迦陵に酒のことを尋ねようとした時だった。
「ハハハハハハハッ!!相変わらず凄いな、ぬらりひょん!!」
「お前が言うと嫌味にしか聞こえんがのう、酒天!!いや、"通風大聖"獼猴王とでも読んどこうかのう?」
「やめてくれ、堅苦しい」
二人の男の笑い声が聞こえると共に蛟劉が酒を吹く。
そのまま立ち上がり、蛟劉は笑い声が聞こえた方に向かっていく。
それに合わせて悟も後に続く。
獣の様に荒れた髪に自由奔放に伸び生やした無精髭。
右肩には旗印と思われる"通風"と"酒天"の文字が刻まれている。
「相変わらずお前さんの酒は美味いのう」
「当たり前だ。今年は会心の出来だからな!!」
その姿に蛟劉は飛び上がって驚く。
悟は懐かしそうに声を上げる。
「大兄!!獼猴の大兄か!!」
「酒天のおっさんも来てたのか」
「おお、蛟劉にぬらりひょんとこの小僧か!!」
大手を振るう獼猴に近付く蛟劉。
蛟劉にとって義兄弟に会うのは何より嬉しいことである。
「知り合いなのか?」
「一応な。酒典さんに会いに来ている時に何度か会ったくらいだ」
「"酒天"と"酒典"で別なのか?」
「そこらへんは俺もよく知らねぇんだよな~」
「そこらへんは本人に聞くか。おい、俺達も混ぜてくれよ」
「構わんぞ!!小僧の名は?」
「"ノーネーム"の逆廻十六夜だ。よろしく"通風大聖"獼猴王のおっさん」
そうして席に十六夜と悟も加わる。
ぬらりひょんと悟が視線をぶつけ合うが親子特有のやり取りなので他は気にしない。
全員に酒が渡ったので十六夜は酒天童子に尋ねる。
「あんたとは別に"酒典"童子がいるみたいだがどういう関係なんだ?」
「ん?あぁ、あいつの事か。あいつとは腹違いの兄弟みたいなもんだ。それでいて双子に近いけどな」
「どういう事だ?」
「酒呑童子には幾つか出生の違いがあるだろう?それが原因で俺達は霊格としてほぼ同じでありながら別の存在になったのさ。そして、俺は七天にあいつは百鬼夜行に身を置いたわけだ」
「ふーん、まぁ一応納得は出来たかな」
分裂の経緯を詳しく知りたくはあったが今はもっと聞きたい事ガあった。
だが、その前に酒天童子はぬらりひょんと悟の方を向く。
「そういや、ぬらりひょんとその子供。お前達のところに酒典の奴が気にかけてる茨とか言う小僧がいたはずだが今はいないのか?」
「儂は知らん。知りたきゃこっちに聞くんじゃな」
「あいつなら外で鍛錬でもしてるんじゃね?こういうとこに参加する性格でも無いし」
「ふむ………………そうか。少し見ておきたかったがそれなら仕方ない。さて、おぬしは他にも聞きたそうだったが何を聞きたい?」
そう言って再び十六夜に視点を向ける。
十六夜は酒で口を湿らせながら言う。
「聞きたい事と言うか、極東の妖怪が七大妖王に与している事が驚きだな」
「七天と言われておるが、在籍している中で中華系の化生は三天だけだからの。他はワシみたいに極東からの押し掛け兄弟やインドの家出姫など、シルクロードから渡ってきた連中も合わせてしっちゃかめっちゃかよ!!」
ガッハッハ!!と豪快に笑う酒天童子。
しかし、それが事実ならば、七大妖王とは正に世界中から集った妖王が作り上げた大連盟という事になる。
これが真実なら七天の引き起こした戦争は文字通り箱庭を二分する大戦争だったのだろう。
それ程の武勇伝ならば、是非とも聞いてみたいと十六夜は思う。
その前に酒天童子が
彼らの周囲にはまだ生き残っている面々が集まっていた。
彼らの武勇伝を聞けるチャンスなど滅多に無いがゆえの喰い付きである。
乾杯の声が挙げられ、語りが始まる。
◆◆◆◆◆
下で宴会が行われる中で皐は屋根の上で皐はチビチビと酒を飲む。
周囲を見ると色々と見えている。
◇◇◆◇◇
茨はただ剣を振るう。
手に血が滲もうと、関節が悲鳴を上げようと関係無く振るう。
あの戦場にて茨はほとんど何も出来なかった。
牛鬼達の戦いを眺めるくらいしか出来なかった。
ゆえに剣を振るう。
「これじゃ足りない………力が足りない。まだ俺は足りない。あいつを、あいつらを斬るには足りない!!」
息を切らし、それでも振るう。
先を、己の先を睨み付けながら。
◇◇◆◇◇
狐川は己の手に力を集中させる。
背後にアルマを控えさせながら言彦の制御を試みているのだ。
天狐の力を混ぜ合わせながら浸透させていく。
その中で唐突に十六夜とのやり取りと悟とのやり取りが浮かんできた。
途端に狐川の顔が真っ赤に染まる。
「………どうかしましたか、マスター?」
「な、なんでもないわよ!?」
額に手を当てるアルマに慌てて否定する狐川。
そんなやり取りをしているので力は霧散して最初からやり直しになるのだった。
◇◇◆◇◇
そんな光景を眺めながら皐は息を吐く。
「本当に俺はどうしたいんだろうな…………」
ここから見える面々も悟も先を見ている。
球磨川も何を企んでいるかは分からないが何かしらの考えはある。
そんな中で皐は流されるだけであった。
それを多少嫌悪しながらも皐には何も先は見えなかった。
「本当に面倒だな…………」
「こんなところで何してるの?」
頭を抱えようとした時に音も無く夏歩が現れた。
微妙に頬を赤らめながら皐の隣に座る。
その表情には一切曇りは無かった。
皐の心情にも気付いてるわけでは無いようだ。
それでも、皐はその姿に多少癒されるのだった。
口元を微かに緩ませながら皐は答える。
「月が綺麗だから眺めてただけだ」
「そ、そう………ってにゃにするの、皐!?」
「ハハハ、いや、何となくやりたくなっただけさ」
夏歩の頭をわしゃわしゃ撫でながら皐は笑うのだった。
夏歩も声を上げはするが特段嫌がりはせず、むしろ嬉しそうにされるがままになるのだった。
◆◆◆◆◆
他の面々が全滅した中でも十六夜、ぬらりひょん、酒天童子は酒を飲み語り合っていた。
「しかし、よく飲む小僧だのう」
「金糸雀とは違うんだよ。俺としてはぬらりひょんが此処まで酒強いのが意外だぜ」
「ふん。儂はこの酒くらいじゃ
何か引っ掛かりを感じたがそこは置いておき十六夜は気になってた事を問う。
「あんたは七天戦争に参加しなかったのか?」
それが一番気になっていた酒天どうとぬらりひょんの会話からして仲はそれなりのはずだ。
敵対していたらこうはなるまい。
だが、味方をしていたらこの場にぬらりひょんがいるのが少々疑問だ。
「悟空の奴とは酒飲み仲間であり、喧嘩仲間じゃったが別に手を貸す程の仲でも無かったんでな。何より儂には儂の野望があるんでな」
「そんな生優しい関係でも無かったけどな」
聞くとぬらりひょんは悟空と殺し合いとも言える大喧嘩に引き分けた後に腐れ縁的な付き合いをしていたらしい。
時に争い、時に語らう仲ではあった。
しかし、互いに警戒し踏み込ませない立場でもあった。
ゆえに七天戦争でも加勢はしなかった。
あくまで中立を貫き、手は出さなかった。
酒天童子達も加勢しなかった事には文句は無く。
むしろ、加勢していたら内部で疑惑が上り分裂しかねなかったゆえに助かってもいた。
だから、今も付き合いは続いているのだった。
「なるほどね。あんたも線引きはしっかりしてるタイプか」
「線引きというならこいつのがよっぽどじゃがな」
ぬらりひょんは言いながら悟に視線を向ける。
十六夜もそれには薄々感付いてはいた。
そこから三人は酒を消費しながら語らい合うのだった。
任侠の大物二人ゆえに十六夜もついつい口を滑らせていくのだった。
久々の投稿でした!!
元になっているのは公式ページの小説です
第一部完への繋ぎみたいな物です
それでは、質問があれば聞いてください
感想待っています!!