問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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代償と負担

風浪の鉱山。

その居住区の露店街。

山脈の谷間に作られた露店街は蛇のように細長い道にずらりと店が並んでいる。

 

「思ったより賑わっていますね」

 

「新しく開いたばっかなのに出店も結構出てるわね」

 

「YES!!風浪の鉱山の初ゲームは大盛況なのです!!」

 

狐川とアルマ、アーシャ、黒ウサギの四人は、アーシャの買い物に付き合う為に露店街へと足を運んでいた。

アルマは人化しており、服装は白のセーターに黒いロングスカートだ。

眼鏡を掛けて髪はストレートである。

凛々しい雰囲気を纏わせながら狐川の背後を歩いていく。

 

「この通りマスターは奔放で勢いのままに生きてるような方ですから、仕える私は理知的で落ち着いた雰囲気を纏う付き人であるべきでしょう?」

 

「皮肉を言ってんじゃないわよ。それに何処が理知的で落ち着いてるのよ」

 

「あら?私としてはそのつもりなのですがねぇ?」

 

二人の様子を見ている黒ウサギは主従というより姉妹を見ている気分だった。

狐川はアルマを睨みながらもある一点が視界に入る。

アルマの胸元は服の上からでも分かる程に、否、セーターだからこそ如実にその大きさを現していた。

狐川としては胸は対して気にしていなかったが、さすがにその大きさは不快に思うのだった。

狐川の胸は平坦では無いが大きいとも言えない。

まさに並と言った物である。

ゆえに比べられるようなことは多少はイラッとするのだ。

現在はメイド服では無く、私服である。

買い物に付き合うということで変えたのだ。

少し大きめな白のTシャツの下に黒のインナー系キャミソールを着ていて、ぶかぶかに近いTシャツ首元から紐部分が覗いている。

その上に赤系のパーカーを着て下には黒のミニスカートと黒タイツを身に着けている。

そして、狐面を側頭部に付けている。

この服装の狐川とアルマが並ぶと身長差もあってまさに姉妹のようだった。

 

「お二人とも口論はそのくらいにしてください」

 

黒ウサギが間に入って睨み合う二人を仲裁する。

気を紛らわせる為にそこらへんの出店の商品を遠目に眺める。

装飾品も数多くあった。

狐川は多少目が利き、無銘の逸品っぽい物を幾つか見かけたが本質的にはあまり興味が無いので手は出しはしない。

そういう物は自然と持つべき者の元へと渡るものである。

 

「この茶器なんていいんじゃねぇか?」

 

「それは確かにいいけど、あんたには似合わないわよ」

 

「どういう意味だ」

 

「器にあって無いという意味よ」

 

何やら聞き覚えのある自然にイラついてくる声が聞こえたがあえてスルーした。

せっかく女子で遊びに来ているのだから余計な奴に絡む必要は無いのだ。

 

「ゲームやってたから昼まだだけど、食べるわよね?」

 

「そうですね」

 

「あんたは動いてすらいないじゃない」

 

ジト目で睨む狐川もお構いなしにアルマも買い食いする気満々なのであった。

 

「黒ウサギも御煎餅しか食べて無いので大歓迎です!!」

 

「審判業そっちのけだったけどな」

 

グサリグサリとアーシャの言葉が、言の刃が黒ウサギを刺し貫く。

狐川とグリフィスの戦いを放置して差し入れの御煎餅を齧っていたのだから、これぐらいは当然の報いだろう。

アーシャはやれやれと呆れてから、一つの衣服屋を選んだ。

 

「私はちょっと買う物があるから、買い食いするならそのへんで待ってろよ」

 

「わかったわ~」

 

「分かりました」

 

「YES!!ではお待ちしている間にオススメの店を探しておくのです!!」

 

ウサッ!!とウサ耳アピールをしながらアーシャと別れる。

三人は離れすぎないで出店を物色し始めた。

鉱山の近隣とはいえ近くには森や河もあるので食料は割と豊富であった。

チキンを骨ごと喰らい、魚を骨など無いような感じで狐川は次々と喰らっていく。

黒ウサギとアルマは山頂から流れてきた河川で取れた金目禿の姿焼きを食べつつ、アーシャを待っていた。

 

「狐川さん、少々食べ過ぎでは?」

 

「大丈夫よ、最近腹が異様に空いてるから」

 

「太りますよ」

 

「姿焼きをもくもくと喰い続けてるあんたに言われたか無いわよ」

 

「異様に腹が空く事に心当たりはありますか?」

 

「あるにはあるわね。というか、大体アルマのせいでしょ」

 

「私もあるでしょうが四割程度ですよ」

 

「ほぼ半分じゃん」

 

それはスルーしつつアルマはもきゅもきゅと金目禿の姿焼きを食べていく。

アルマティアは仮にも星獣である。

ゆえにその維持にはそれなりにエネルギーが必要である。

普段は力を使わない分軽めであるがそれでも影響はある。

それが異様な空腹に繋がっているのだ。

アルマ自身がそこそこ食べるのも負担を分配しているのに近い。

だが、異様な空腹はそれだけでは片付かない。

 

「残りの二割は天狐の活性化でしょう」

 

「それじゃあ、残り四割は何なのよ?」

 

「それは貴女が一番知っているはずですよ」

 

そう言われて狐川は一つの要因に思い当たる。

 

「なるほど、アレのせいか。アレを引っ張り出したせいで負担が増えたわけね。私の奥底に眠っていた怪物を、”英雄”(獅子目言彦)を利用しようとすればそりゃ負担は増えるわけね」

 

「どちらかといえば不知火としての本質が目覚めたというべきでしょうけどね」

 

「それはそれで嫌だけどね」

 

アルマの言葉に苦笑しながら狐川は食事を続ける。

黒ウサギもそれで納得して別の話題を出す。

 

「アーシャさんのご相談とは何なんでしょう?やはりコミュニティの事でしょうか?」

 

「だとは思うけど。ジャックいなくなった分は大きいでしょうし」

 

「あれからウィラ殿も気落ちしていますしね。今後の方針も定まらず不安な部分もあると思いますよ」

 

真面目な事を言いながらもアルマは金目禿の姿焼きをもきゅもきゅしている。

もう五匹目である。

黒ウサギは一匹で満足しているので串を手の上で回しながら持論を広げる。

 

「コミュニティの主力というのは戦闘力に限ったものではありません。執務、外交、工房整備etc.…………様々な分野でその才を発揮するのが組織の主力と成り得るのです」

 

「そういう意味ではジャック殿はまさにオールマイティな人材であったはずですね。参加者(プレイヤー)主催者(ホスト)も出来て内外全般を取り仕切られていたそうですし」

 

二人の話を聞きつつ狐川も飲み込んでいく。

狐川は基本的にそこらへんに限って言えば人任せな面もあるので多少理解に間を置く。

とはいえ、ジャックがどれほど大きな存在かは理解していた。

箱庭は広いがジャック程の人徳を持っていた幽鬼はまず居ないだろう。

付き合いの長いアーシャなら思うことは狐川が想像出来ないくらいにあるだろう。

相談だけでは無く愚痴だろうが何だろうが聞きはしようと狐川は心の中で思うのだった。

そうこうしている内にアーシャは衣服屋から出てきた。

 

「よっ。お待たせ」

 

「そんなに待っては無いわよ」

 

言い切った物の最後の方は言葉が震えていた。

それ程に驚いてはいた。

黒ウサギもアルマも同様に驚いてはいた。

 

「その服装どうしたのよ?イメチェンじゃないのは分かるけど……」

 

「おう。アーシャ様の初スーツ姿だ。似合うだろ?」

 

言葉とは裏腹に物静かな立ち姿で答えるアーシャ。

その姿は普段のゴスロリツインテールから一転、タイトなスーツに身を包みネクタイを首に締めている。

ロングストレートに青髪を降ろした姿からは子供っぽさが消えて僅かだが洗練された雰囲気があった。

着る物変われば印象って大きく変わる物ね、と狐川は内心思いながらその変わり様に首を傾げるのだった。

 

 

 




狐川の体質にも徐々に変化が出るのでした!
アルマに関しては狐川にノリを引っ張られてたりします

それでは、質問があれば聞いてください
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