問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
黒ウサギ、狐川、アルマの視線を感じ取ったアーシャは表情を強張らせて溜息を吐いた。
「………まぁ、そういう反応になるよな。アンタ達の前ではずっとゲーム用の衣装を着ていたわけだし。あの服もあれで着納めだと思うと色々と感慨深いよ」
「着納め?」
狐川はとりあえず聞き返す。
ある程度察してはいるがあえてだ。
黒ウサギも事情を察して息を呑んだ。
「アーシャさん。もしや引退なさるのですか?」
「そうだよ。ギフトゲームプレイヤー・”アーシャ=イグニファトゥス”は店仕舞い。此れからはコミュニティの参謀として運営に関わるつもりだから、よろしくな!!」
「主催者側に回られるのですか?」
アルマが確認するように言う。
「いや、違うな」
「やはりですか」
「ギフトゲームの開催を生業にするには興行収入が得られるような大規模な施設や
分かっていたように言うアルマと珍しく強い言葉で言い切る黒ウサギ。
狐川は冷や汗を流しながらおずおずと言う。
「もしかして、私のせいだったりする?」
「あの戦法に今更罪悪感でも出ましたか?」
「出るわけないでしょ。というか、今はそれ関係無いでしょうが!!」
「あー、勘違いするなよ?引退は前々から決めていたんだよ。今回のゲームで成績を残せなかったら参加者は引退するって。だから……その、なんだ。踏ん切りも付いたし負けて良かったんだよ」
「えーと、このままじゃ私が後味悪いし理由を聞いていい?」
「事情ってほどのことでもないけど…………まあ、よくある話だよ。私が参加者をやってたところでコミュニティの食い扶持は稼げそうに無いからさ。………私、才能無いし」
「あ?そ……イタァ!?」
「マスター。今は個人的な根性論はいらないです」
突然頭を叩かれて涙目になる狐川。
アルマは涼しい顔で睨んで来る狐川をスルーする。
近くの縁台に腰を降ろしてアーシャは天を仰いで少し遠い目をする。
青い長髪を山脈から吹き下ろした風に靡かせて、自分に言い聞かせるように呟いた。
「功績を多く残せるような一流の参加者っていうのはさ、箱庭の世界の花形なんだよ。幻想的な舞台に立って、難攻不落の
そこからアーシャは”鬼姫”連盟の収穫祭について語り始める。
両腕を広げて、子供の様に顔を輝かせて語った。
その様はまるで幻想の国に迷い込んできた少女のようだった。
そして、それはジャックの想いに繋がる。
だが、それでも引退は必要なのだった。
子供達を食べさせていくには。
黒ウサギとアーシャが微笑み合う。
それは
それら全てを聞いた上で狐川は言う。
「よし、決めたわ」
「何をです?」
「このままじゃ後味悪いままだし今回のギフトゲームで大戦果上げてやるわ」
「………今の話と関係ありますか?」
「ただの意気込みよ。それにほら、大戦果上げた者に負けたならそれなりに箔が付くでしょう」
「それはそれでどうかと思いますが」
「それにしても大きく出たな」
「もしかして、優勝なさる気ですか?」
「いや、それはメンバー的に難しいわ。だから、控えめに大戦果って言ってるのよ」
狐川的には忍には絶対に勝てる気がしないのだ。
そして、十六夜にも。
今の
「うん。とりあえず、あのいけ好かない奴は殴り飛ばすとして今のままじゃちょっと不安なのよね。というわけで、使えそうな恩恵がないか探すわよ!!」
「いきなりだな、おい!?」
「ちょ、黒ウサギはそろそろぉぉぉ」
困惑する黒ウサギとアーシャを無視して引っ張っていく狐川。
アルマは少し微笑みながらその後を付いていく。
だが、内心では何かが引っ掛かっていた。
何かを見落しているような感覚が心の隅から離れないのだった。
◆◆◆◆◆
「よ、予選Hグループ終了です!!現時点で一番採掘量が多いのは________え、えっと、釈天様!!お願いします!!」
「おう。一番多いのは逆廻十六夜だな」
「や、やった!!十六夜様、予選通過ですよー!!」
ひょコン!! と狐耳を立たせて十六夜に手を振るリリ。
十六夜は苦笑いでそれに応える。
応えながらその隣にいる男を見る。
(しっかしあの野郎。黒ウサギと同じ”
何時まで経っても黒ウサギが返ってこないので帝____否、御門釈天氏が代役を買って出てくれたのはありがたかったが、かといってそのまま協力させるわけにはいかないので、世話係として同行していたリリを間に挟んで審判に立たせることになった。
なにせ本人は正体を隠しているつもりだが、全く隠せていない。
何者かバレて大騒ぎになるくらいなら此処はリリに頑張って貰おうという話で纏まったのだ。
その十六夜の周囲には複数の参加者が岩盤に突き刺さっていた。
全員上位争いをしていた十六夜から鉱石を奪おうと襲ってきた者達の末路である。
奪い合いを始める者の多さに十六夜はルールを一考する必要があると思うのだった。
何はともあれゲームは終わったので鉱山から出ようとした時だった。
「やぁ、十六夜くん。予選通過おめでとう」
背後から突然声を掛けられるのだった。
気配など一切感じなかったが声を聞いて納得する。
何故なら彼女相手に”何故”など考えるだけ無駄なのだから。
「何しに来た、安心院?」
「僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい。僕としてはただ話をしに来ただけさ」
「そんなわけねぇだろ」
「いやいや、本当だよ?僕は何やら君が悩んでると聞いて相談しに来たんだからさ」
何処まで此方の事を把握していうかは分からないが分かっている様に言ってくる安心院。
十六夜は溜息を吐きながら振り返る。
安心院は何時もと変わらない笑みを浮かべて十六夜を見ている。
その瞳は何もかも見抜いてるかのようだった。
「お前に相談する様な事は何もねぇよ。あったとしても裏切り者には言わねぇよ」
「おいおい、裏切り者とは酷いじゃないか。僕は裏切ったつもりはこれっぽちも無いぜ?」
「じゃあ、何でコミュニティから離れて姿を消している?」
「僕にもやる事があるからね。君達ばかりに構ってはいられないのさ」
「なら、何処までがお前の狙い通りだ?」
「その言い方じゃ、
「
「言えるよ。だって、僕は企みはするけど先を視たりしないから。推理小説で最後を先に読むなんて無粋な行為はしないようにね。だから、僕は黒幕じゃない」
「だったら、お前はどういう立場なんだよ」
「ただの平等なだけの人外____と、言いたいところだけどそれだと今の僕は違うかな。少なくとも
「そうかよ」
「それじゃあ、僕も忙しいから今日は去るけどこの事は好きに話していいよ。それで
言うだけ言って安心院はさっさと姿を消す。
比喩も無しに十六夜の視界から一瞬で消えた。
十六夜は頭を掻きながら盛大に溜息を吐く。
「結局あいつは何をしに来たんだよ」
した事といえば雑談だけでそれ以上もそれ以下も無かった。
ただの遊びかもしれないのが安心院である。
深く考えても仕方ないと結論付けて十六夜は鉱山から退出するのだった。
そして、一言ポツリと呟くのだった。
「身内でも胡散臭い奴の味方と言われても信用なんて出来るかよ」
たとえ、味方でも、いや、味方だからこそ動きが読めず完全に信頼し切ることも出来ない者の味方と言われても安心なんて出来るはずも無いのだった。
突然現れて意味深な事だけ言って消える安心院さんでした
意味があるかどうかは本人しか知らない
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!