問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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旗印返還→ペルセウス襲撃

ゲームが終わり、“フォレス・ガロ”の解散令が出たのは間もなくの事だった。

居住区から避難していた人間は鬼化した木々が消えたのを知り門前に集まっていた。

 

『それでこれからどうする気かな十六夜君?』

 

「まぁ見てろよ」

 

そう言って十六夜はジンの所にいく。

 

「今より“フォレス・ガロ”に奪われた誇りをジン=ラッセルが返還する!!代表者は前へ!!」

 

十六夜は高らかに宣告をするとジンの背中を叩き、前に出させる。

そしてらしくない尊大な物言いで衆人に叫んだ。

 

「聞こえなかったのか?お前達が奪われた誇り___“名”と“誇り”を返還すると言ったのだ!!コミュニティの代表者は疾く前へ来い!!“フォレス・ガロ”を打倒したジン=ラッセルが、その手でお前達に返還していく!!」

 

「ま、まさか」

「俺達の旗印が返ってくるのか……!?」

 

衆人は身内同士で顔を見合わせながら、ジンの前に一斉に雪崩れ込む。

幼いジンを押し潰してしまいそうな人の群れを、十六夜は大一喝と大地を砕く足踏みで押し返す。

 

「列を作れ戯け!!統率の取れない人の群れなど、“フォレス・ガロ”の獣にも劣るぞ!!」

 

「ひ、ひぃ」

 

十六夜は年齢からは想像できない口ぶりと威圧感で衆人に列を作らせる。

脇で見ていただけの安心院は二人が何を企んでいるのか察して笑いながら十六夜に耳打ちをする。

 

「何か面白いことを企んでいるみたいだね?」

 

「さて、なんの事かな」

 

悪戯が成功した子供っぽい笑顔を交わす二人。

何の利益もないゲームのはずだったが、彼らは勝利だけでは手に入らない物を手に入れるつもりなのだ。

次々と返還されていく名と誇り。

返された者達の様子を見て十六夜は確信する。

この“箱庭の世界”において、コミュニティの名と旗印は何物にも代えられない代物なのだと。

 

(効果は予想以上だな。しっかし旗印ってのはそんなに大事なもんなのかねえ)

 

最後のコミュニティに旗印を返還したジンと十六夜は、全員の前に立ち、

 

「名前と旗印を返還する代わりに、幾つか頼みたい事がある。お前達の旗を取り戻した、このジン=ラッセルの事を今後も心に留めておいて欲しいというのが一つ。そしてジン=ラッセルの率いるコミュニティが、“打倒魔王”を掲げたコミュニティである事を覚えていて欲しい」

 

衆人が一斉にざわめいた。

 

「まさか……あの話は本気なのか……?」

「相手は魔王だぞ?あんな子供達で」

「しかし彼らのコミュニティは神格を倒したそうじゃないか」

 

ざわざわと波紋が広がる。

十六夜は話を続けた。

 

「知っているだろうが、俺達のコミュニティは“ノーネーム”だ。魔王に奪われた名と旗印、それを自らの力で奪い返すため今後も魔王とその傘下と戦う事はあるだろう。しかし組織として周囲に認められないと、コミュニティは存続出来ない。だから覚えていてほしい。俺達は、“ジン=ラッセル率いるノーネーム”だと。そして名と旗印を取り戻すその日まで、彼を応援してほしい」

 

(随分と饒舌じゃな)

 

隣で忍が聞こえないように呟く。

ジンも複雑な表情で立っていたが、十六夜に背中を叩かれてハッとする。

 

「ジン=ラッセルです。今日を境に聞く事が多くなると思いますが、よろしくお願いします」

 

衆人から歓声が上がる。

激励の言葉が贈られた彼らの作戦は、一先ず成功を収めるのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜、球磨川と暦は外から激しい光と雷鳴が聞こえ、外に出るとそこには十六夜と黒ウサギがいた。

 

「お前らか、ちょうどいい」

 

『これは一体どうしたのかな?』

 

「ちよっとした襲撃だ。これから白夜叉のとこに行くがどうする?」

 

『僕は……

 

「行こうぜ」

 

急に出現した安心院が球磨川の言葉を遮って言う。

 

『分かったよ』

 

「じゃあ、僕と忍は留守番かな?」

 

「そうじゃな」

 

そうして十六夜、黒ウサギ、球磨川、安心院の四人は“サウザンドアイズ”の支店を目指すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“サウザンドアイズ”の門前に着いた四人を迎えたのは例の無愛想な女性店員だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

 

「黒ウサギ達が来る事は承知の上、ということですか?あれだけの無礼を働いておきながらよくも{お待ちしておりました}なんて言えたものデス」

 

「……事の詳細は聞き及んでおりません。中でルイオス様からお聞きください」

 

定例文にも似た言葉にまた憤慨しそうになる黒ウサギだが、店員の彼女に文句を言っても仕方がない。

店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に黒ウサギ達が向かう。

中で迎えたルイオスは黒ウサギを見て盛大に歓声を上げた。

 

「うわぉ、ウサギじゃん!!うわー実物初めて見た!!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな!!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

ルイオスは地の性格を隠す素振りも無く、黒ウサギの全身をなめまわすように視姦してはしゃぐ。

黒ウサギは嫌悪感でさっと脚を両手で隠すと、球磨川と安心院が壁になるよう前に出た。

 

「これは分かりやすく外道だね。ゲスだね。クズだね。まぁそれも全部等しく平等だけど、これは君のご先祖様が可哀想に思えてくるくらいだね」

 

「このアマツ……言わせておけば!!」

 

安心院の挑発するような物言いに眉間に皺を寄せて立ち上がるルイオス。

 

『やる気かい?仲間が酷い目にあわされたらしいからね、今の僕は少し怒ってるぜ。だから喧嘩なら買うよ?』

 

睨み合う三人。

そこに白夜叉が割り込む。

 

「やめんか!!話し合いに来たんじゃろ?」

 

「そうです。二人共、今は落ち着いてください」

 

『そうだね』

 

一度仕切り直す事になった一同は、“サウザンドアイズ”の客間に移った。




今回は少しカットした場面が多目になりました。
カットしたところはほぼ原作と同じなので。

レティシアの出番はvsペルセウス終了までないです。


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