問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
活動報告にてアンケート実施中
サウザンドアイズの旅館の温泉に十六夜はいた。
温泉に入る前に知った顔の女性店長に一本取られたがそれは置いておき、先に進む。
温泉は中々に良い外観だった。
十六夜は心を弾ませながら湯船に入っていく。
その時、湯煙の奥から大声が聞こえてきた。
「ハハハハハハハッ!テメェは相変わらずよく飲むじゃねぇか、クソ爺!!」
「そりゃ、こっちの台詞じゃよ。この駄神!!」
「言いやがるねぇ!!そんでもって見かけより飲めるじゃねぇか、ギリシャの若人!!」
「まぁ頑張った方じゃのう!!ほれ、姉ちゃん達も拍手してやるんじゃ!!」
「きゃーすごーい♪」
「ギリシャの若人様すごーい!!」
「ギリシャの…………ええと、名前はなんでしたっけ?」
「馬鹿ね。ペルセウスの若頭でルジーイ様よ」
「……………うぇっぷ」
キャー!!ルジーイ様すごーい!!
_________と、御門釈天の接待の為に集められた娘たちの黄色い歓声が湯殿に響き渡る。
娘たちの姿は厚手の手拭いで白い肌を隠しているだけとなんとも気前がいい。
最早名前が「ル」しか合って無いが、酔いが回ってルイルイは訂正する元気も無いようだ。
お水の娘の種類がこの場にあって無くゲンナリして呆れながらも首を傾げる。
接待される側の御門釈天がいるのは問題無い。
だが、何故その隣で
「ったく、どういう事だ?」
「おお、来たか十六夜」
そこで十六夜に気付いたグリーが声を上げる。
「そんなところで立ってないで此方に来い。お前も飲むのだろう?」
「あいよ。グリーも楽しんでいるか?」
「うむ。ラム酒も良いが、この御神酒という酒も悪くないぞ」
「そうだな。で、これはどういう状況だ?」
「一升瓶一本空けるにつき、御門殿が武勇伝を一つ話すというような遊びをしていた。ルイオス殿が倒れたのは三本目だな」
「へぇ?ルイルイにしては頑張ったな。っていうか、神格隠すつもりねぇのな。それよりもあの爺さんが何でいる?」
「我々が来た時には既にいたのだ。御門殿がそのまま飲み始めてしまったので目的などは聞けていない」
「そうか。なら、まぁ後回しでも大丈夫か。それで武勇伝はどの話だ?太陽神との決闘か?阿修羅族との戦争か?」
「それはもう済んだ。今は”七天妖王”の征伐について拝聴させていただいていた」
盃を傾けていた十六夜は、うげっと苦い顔をする。
「………それはまた荒れそうな話題だな」
「いや、その心配は必要が無いようじゃぞ」
「あぁ、七天の兄弟たちは俺が下層にいることは知ってるしな」
十六夜が言い切る前に二つの声が割り込んできた。
ハッ、と二人が視線を移す。
ぬらりひょんは動かずにマイペースに酒を飲み続けていたが、酒が回って顔を真っ赤にしている御門釈天が二人の前で楽しそうに仁王立ちしていた。
その姿を怪訝な表情で十六夜は見る。
警戒は解いていなかった。
特にぬらりひょんに対しては。
御門釈天は下層に降りてきた理由が分からないので警戒しているが、ぬらりひょんに関しては未知な部分が大きいので一層警戒している。
◆◆◆◆◆
「弱い、弱い、弱い弱い弱い弱い弱い!!俺はまだ弱い!!」
森の中で茨が叫ぶ。
ただがむしゃらに刀を振るい叫ぶ。
その周囲には死体の山が積み上がっていた。
返り血に塗れ、全身を真っ赤にしながらも叫ぶ。
今のままでは茨にとっては足りないのだ。
力を求め、敵を倒し、死体の山を重ねる。
だが、それでも、否、だからこそ、目指す先との差が見えてくる。
ゆえに叫ぶ。
渇望のままに叫ぶ。
「予選は通過したのに荒れてますね、茨さん」
「何の用だ」
茨に声を掛けたのは伏目だった。
気配すら感じさせずに唐突に現れ、話しかけてきたのだ。
対して茨は特に興味が無い様子で視線だけを向ける。
そこに込められた苛立ちを伏目は気にすることも無く続ける。
「いやいや、姿が見えないので探していただけですよ」
「だから、何の用だ」
「用なんてありませんよ。私はただ見ているだけですから」
「なら、失せろ」
明確に殺気が込めて言う。
けれども、伏目は気付いた上で無視する。
恐れも怯みもせずに一方的に話し始める。
「それにしてもつまらないですね」
「アァ?」
「本当につまらない。素材としては若様と同じくらい良いはずなのにどうしてこう、つまらないんでしょうね」
「何が言いたい」
「力を、強さを求める。それはいいんですけどね」
「だから………何が言いたい」
「貴方には理由が無いんですよ。強さを求める理由が、力を必要とする理由が。ただ、衝動のままに強さを求める。これでは見ていても、視ていてもつまらないだけなんですよね」
「だからどうした。テメェにどう思われようが知った事では無いんだよ。俺の邪魔だけはするな」
「戦闘狂と言えば聞こえはいいんですけどね。けれど、私から言わせて貰えばただ本能に振り回されてるだけなんですよね」
「うるせぇ」
「渇望の理由すら分からない有様ではあんまり期待出来ないんですよね。それにただ強さを求めて暴れるだけじゃ、掴める物も掴めませんしね。そこらへんに関しては若様は実に良い!!野望の為になら身すら削るあの様は視るだけの価値がありますよ」
「うるせぇんだよ!!」
苛立ちが極まり、遂には茨は伏目に斬り掛かる。
間髪入れずに隙すら与えずに一気に間合いを詰めて斬った。
だが、振り下ろした刀は伏目に触れることは無かった。
現れた時同様に唐突に姿を消して去って行くのだった。
それは見えていて、視えているからこその行動だった。
「悪いですけれど、
「クソ
煽るだけ煽って去り際すら煽って伏目は去るのだった。
苛立ちに苛立ち、茨は天に向かって吼える。
その叫びは森中に轟くのだった。
◆◆◆◆◆
『やぁ、悟君待ったかい?』
「待ってねぇよ」
「むしろ、遅れそうになって焦ってたくらいよ」
「余計な事は言わないでくれよ」
ポロロとの話を終えた球磨川は悟と紅葉に会っていた。
さすがに自分は接待が向いて無い自覚があるので御門釈天の方には行かなかったのだ。
球磨川が一人なのを見て、悟は首を傾げる。
「皐はどうした?」
『皐君なら一人で散歩に行ったよ』
「なら、いいか」
『皐君なら心配することも無いだろうしね』
「にしても、お前らは本当に”ノーネーム”のトップになるつもりか?」
『僕としては困ったとこなんだけどね。僕なんかがリーダー向いてるとは思えないし』
「いや、割と向いてはいると思うぞ?とはいえ、お前をその地位に置くのは別の意図があるだろうけどな」
『そこらへんは何だっていいんだけどね。僕が役に立てるのなら喜んで引き受けるよ』
役に立つというよりもっとマイナスな理由な気はしているが悟はあえて口には出さないのだった。
球磨川はそれに気付かずに首を傾げる。
あまり触れない方がいいと思い話の方向性を変える。
「しかし、お前は参加しないんだな」
『今回のゲームはルール的に僕は向いて無いかね。君は無事予選通過したらしいね』
「こういう類のゲームくらい楽勝だ」
『そうかい。でも、君の戦法は決勝では通じないと思うよ?』
「そん時は新技使うだけだ」
『準備はしてあるんだね』
そうやって時間を潰す様に二人が話していると紅葉が悟の背から降りた。
その珍しい光景に球磨川と悟の視線が紅葉に集中する。
「どうした?」
『何かあるのかい?』
「ちょっと野暮用を思い出したわ。少し一人で行動させてもらうわ」
「別に構わねぇが」
「私がいない間の不幸を私のせいにしないでよ」
それだけ言って紅葉は何処かに歩いて行くのだった。
その背に悟は怪訝な目を向ける。
『怪しいね』
「確かにな。あいつが単独行動するとか珍しいにも程があるぞ」
『で、どうする?尾行するかい?』
「いや、必要無い。何だかんだ言ってあいつが俺を裏切るわけねぇからな」
そう言って二人はまた雑談へと戻る。
紅葉は二人を特に気にした様子も無しに歩いていく。
その顔は何処かつまらない様な表情を浮かべていた。
一部の連中が怪しく動き出すのでした
カテゴリ的には味方でも本質的には傍迷惑だったりするのでした。
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!