問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
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視点は戻り、温泉では十六夜達が話を終えたところだった。
話の続きは食事の後という事で御門釈天達が風呂を出ようとした時だった。
「この御門釈天が直々に褒美を授けてやろう!!」
唐突に、否、別段唐突というわけでも無いが御門釈天はそんな事を言い出すのだった。
対象は十六夜とぬらりひょんである。
ぬらりひょんの眼光が鋭くなるのを見て御門釈天は先手を打つ。
「今ならノリと勢いで大体の願いは叶えてやるがさすがに俺の首はやれねぇぞ?」
「いるかそんなもん。そんなもんよりそうじゃのう…………霊薬寄越せ」
「そんなもんでいいのか?」
あえて問い返す。
ぬらりひょんは面倒そうに言う。
「儂とあいつの
「まぁお前達の戦果はそれに値するしな。いいだろう、後で送っといてやる」
「そうか」
言うだけ言ってぬらりひょんは去って行くのだった。
十六夜達からしたらそもそも何でいたのか不明瞭だったがおそらく御門釈天に用があったのだろう。
御門釈天は視線を十六夜に戻す。
「それで十六夜、お前は無いのか?」
「そうだ。一つあったな」
「うむ。言ってみろ」
十六夜は探してはいたが元々当ては無かった恩恵を思い当てる。
それでも、目の前の男なら容易く叶えられるだろう。
グリーを指差しながら十六夜は言う。
「この男_________
_________願いを口にした瞬間。
”サウザンドアイズ”の湯殿は、眩いほどの極光に包まれた。
◆◆◆◆◆
女湯。
貸し切りの露天風呂でフェイスレスは休んでいた。
それでも、その口からは自然と溜息が出ていた。
まるでどうしようもならない問題に対する諦めを感じさせる溜息だった。
「私はどうしたいのでしょうね」
「それは君にしか分からないよ」
独り言に答えが返ってきた。
フェイスレスは素早くギフトカードから連接剣を抜き出して、声のした方向へ蛇蝎の剣閃を放つ。
しかし、手応えは一切無かった。
何にしても顔を見られるのを避ける為に仮面を付けようとするが、その手が遮られる。
背後から気配も音すら無く近付かれ腕を掴まれたのだ。
此処は温泉であり、足元には湯がある。
それなのに音が一切無いというのも奇妙ではあった。
「堅苦しい仮面を外して一人でゆっくり休んでいるところを邪魔して悪いけどちょっと話をしようか」
「何の用ですか、安心院なじみ!!」
「僕の事は親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」
声の主は安心院だった。
背後から抱き付かれてフェイスレスは脱出しようとするが中々抜け出せない。
それどころか、安心院はフェイスレスの側頭部に指を当て銃のようにして何かを撃つような動作をする。
「そう暴れないでちょっと話をしようぜ」
「ッ!?」
「
人形化のスキルで動きを封じられ、笑顔強制のスキルと動揺のスキルによって顔には笑顔が張り付けられて精神は揺さぶられる。
だらりと腕が下がった事をいいことに安心院はフェイスレスの体を抱いたまま湯殿に沈む。
後ろから手を回されて胸などを触られて不快感が溜まるのだが今のフェイスレスにはどうしようもない。
仕方が無いので唯一動く口で文句を言おうとする。
どうせ悲鳴を上げようものなら口も封じられるのだろう。
そして、何より女王騎士としてのプライドがそれを許さない。
「話って私とあなたが何を話すというのですか」
「何君にとっても悪い話じゃないよ」
笑顔で言ってくるが白々しいことこの上なかった。
フェイスレスの視線関係無しに安心院は話を続ける。
「悪い話じゃないというのは本当さ。僕は君の正体もクイーンとのゲームも知ってるしね」
「っ…………」
それはそれで聞き捨てがならないのだがこの人外相手にそこを問いただしてもも無駄な事は察している。
それに加えて精神の揺さぶりが大きくなって思考が纏まりにくい。
「けれど、今の状況じゃクリアは絶望的だ。だって、君がクリアするに必要な対象はいまだに見付かっておらず期日も近い。全く同情するくらいに絶望的だ」
「貴女に何が分かるというのです」
「分からないよ。いや、分かろうと思えば分かるけどそんな無粋な事はしないよ」
「なら…………アッ!?」
「そこは最後まで聞いてのお楽しみだよ」
耳元に息を吹きかけられ、背中を指で擦られる。
普段なら声さえ出していないだろうが今は体の自由が利かない上に精神を揺さぶられている。
これでは耐えられる物も耐えられない。
「そんなに笑顔になって気持ち良かったのかい?」
「笑顔は貴女のせいでしょう」
「それもそうだったね」
嫌味を言う間も貼り付けられた笑顔は崩れない。
安心院はそんなフェイスレスをニヤニヤと眺めながら話を続けていく。
「さて、そんな絶望的な状況の君に僕は一つ提案したい」
「なに、を………?」
「僕が君を救ってあげよう」
「はっ!?」
「もちろんただでは無いけどね。僕が提案した条件を満たせば君の望みを望んだ形で僕が叶えてあげよう」
「条件とは?」
ここで即座に断れない時点で弱みを見せているに等しかった。
けれど、それでも、聞いてしまう程度にはフェイスレスの状況は確かに絶望的だった。
この状況を楽しんでいるのは間違いなく安心院だろう。
「簡単な条件さ。______を_______してみせてくれればいいだけさ」
「ッ……………」
あまりに唐突で意図が分からない言葉に思わず息を呑む。
その条件の意図はたとえ精神が乱れていなくても分からなかっただろう。
その言葉はそれだけ唐突だった。
「貴女は何が目的で何の味方なんですか?」
「僕はただ楽しみたいだけさ。そして、僕は
「……………真っ当な答えを期待した私が愚かでしたね」
「これはこれで僕としては真っ当な答えなんだけどね。それで君はどうしたい?」
そう言って安心院はフェイスレスの正面に立つと手を差し伸べてくる。
気が付けば体は自由に動くようになっていた。
判断はフェイスレスに任せたようだった。
手を取り、条件を満たせば安心院は本当にフェイスレスの願いを叶えるだろう。
だが、これは悪魔の取引だ。
手を取ればそれは最早魂を売るに等しい。
ゆえにこの手を取っていいかどうか迷う。
チラリと安心院の目を見る。
まるで魅了されたかのように安心院は頼りがいのあるように見えた。
その迷う様子は安心院からすれば丸分かりだったのだろう。
安心院は笑いながら手を引いた。
「別に今すぐ答えを出す必要は無いさ。それでも速い方が君の為だろうけどね」
「………………」
「答えが決まったら呼んでね。僕は何処にいようと君の前に現れてあげるから」
「そう……ですか」
「あと、これはサービスだぜ」
「っっっっっ!?」
安心院は唐突にフェイスレスの首に手を回すと抱き付き、そのまま唇と唇を重ねる。
フェイスレスは混乱のままに声にならない悲鳴をあげる。
抵抗もままならない内に舌と舌が絡み合う。
数十秒たっぷりとキスを味わい唇を離す。
口と口の間に唾液の糸が滴る。
フェイスレスは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。
「そんなに顔真っ赤にして君も案外可愛いね」
「くっ……………」
その言葉に頭が冷えて冷静になる。
そこで自身の中に何か異物が混ざり込んでいるのを感じるのだった。
そう、まるで何か他人の長所を無理矢理植え付けられた様な感覚だった。
「君に一つスキルを譲渡したぜ。どう使うかは君次第だ。あと、これは別に先払いとかじゃないから安心していいよ。これはあくまでサービスだ」
「余計なお世話なんですよ」
「まぁどう受け取ってくれてもいいさ。何はともあれ、さっきの話は考えておいておくれよ」
そして、安心院は姿を消した。
文字通り前触れもなく音も無く安心院は目の前から消えるのだった。
フェイスレスはただ茫然と立ち尽くす。
安心院は色々と強烈な物を残していった。
ゆえにフェイスレスは立ち尽くす。
自分がどうするべきか決断し切れずただ立ち尽くすのだった。
その十数分後、貸し切りのはずの温泉に騒がしい声が入って来るのだった。
◆◆◆◆◆
「忍、これはどっちがいいと思う?」
「儂は右が好みじゃな」
「じゃあ、こっちにするか」
暦と忍は温泉街の土産屋で土産を選んでいた。
特にやることは無いがそろそろ合流した方がいいと思い、温泉街で待機しているのだ。
大体土産屋も見終わった時だった。
「暦さん!!忍さーん!!」
黒ウサギの声が聞こえてきてそちらを向くとヘタヘタになっている黒ウサギと狐川、アルマが歩いてきていたのだった。
二人は手を振りながら合流するのだった。
温泉回パート1でした!
安心院さんは神出鬼没!
フェイスレスの決断はいかに!
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!